HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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『現世との決別』の別アプローチ版です。


HITMAN『現世との決別』(もう一つの世界線)

『ラグドリアン湖へようこそ。47。』

 

『今回のターゲットはこの美しい湖を汚染する軽工業の社長、ガンダ・ボルゴレッゾよ。工業排水を湖に流しているらしいわ。』

 

『依頼人はこの湖の主である“水の精霊”よ。ある約束によって水位を上げることが出来ず、ターゲットを排除できないため我々に接触してきたってわけ。』

 

『それと副目標で先日ついに完成した蘇生薬【リザレクター】の実証試験が必要でね。近くの街に以前暗殺したシャルロット・エレーヌ・オルレアンが埋葬されてる墓地が有るらしいからそこへ行って蘇生薬を試してきて頂戴。』

 

『今回、報酬は金貨と水の精霊の涙という貴重な材料よ。忘れずに受け取ってね。あともし水の精霊にあったら言っておいて、今度依頼するときは使用中のシャワーからじゃなくて近くの水場から現れるようにって。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

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空気は澄んでいる。深呼吸したいと思えるのは久々だ。最近はやたら湿気の多いジャングルか排気ガスだらけの大都市ばかりだった。

 

今回私は、リモコン爆弾を持参しようとしたが、在庫が切れているとのことなのでブリーチングチャージを代わりに持ってきた。人を殺傷するには密着させる位近づけなければならないが、これでも機械を壊したり陽動には十分のはずだ。

 

私は今、【ロキニョル村】に来ている。ラグドリアン湖の辺りに位置するこの村のなかで、湖から一番離れた位置にある大きめの納屋、あそこの建物だけ白煙ではなく黒煙を煙突から出しているところから見てあそこが工場だろう。明らかに軽工業とは思えない煙の出方をしているが何をしている工場なのだろうか。

 

近づいていくに連れ内容がわかってくる。それなりな頻度で作業員が内部から出ては何かを近くの窪地に捨てている。建物の西側にあるその窪地に近づき、それを確認した。どうやら籾殻や野菜くずのようだ。ということは少なくとも何かの食品加工業だといえる。

窪地の向こう側、建物の北側に回り窓から中を覗くと、内部では何やら大きな機械が動いているのが見えた。歯車がむき出しで駆動しており、機械というよりは絡繰に近い。

 

北側の窓から建物の全容把握に務める。まず西の端には食材が入ってると思われる樽や麻袋、木箱がおいてある。時折それから取り出した食材を中央に置かれている大きな機械のうち北側にせり出した部分に入れている。おそらくアレが裁断機だろう。裁断された食材は簡易的なベルトコンベアのようなもので奥の大きな釜に運ばれている。湯気が立ち上ってる辺りおそらく中で茹でているのだろう。一定時間ごとに中身が取り出され、中身はなにかの液体をかけられた後缶詰に詰められている。ここはこの世界にしてはそれなりに近代化された缶詰工場のようだ。

 

東側の端にはエレベーターらしきものの上に外廊下のような金網床のテラスがあった。その上に全体を見回す男と、ベレー帽をかぶった小太りの男が居た。

 

 

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『アレが、ガンダ・ボルゴレッゾ。日中はずっとあそこにいるみたいだけど、どうしましょうか。』

 

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ジリリリリ

何かのベルが鳴った。機械が止められ、作業員たちが何かをもって外へ出ていく。すぐに工場内にはターゲットとその近くに居た男だけになった。男の方はエレベーターに乗った。やたら動きがぎこちなく、凄まじくうるさいエレベーターだ。どうやらスチームパイプで歯車を動かしているらしい。エレベーターの脇には太いパイプが通っている。私はエレベーターの騒音を利用して窓を開けた。窓も立て付けが悪く、ギーギー音を立てているがエレベーターのそれはその何十倍もうるさいので、エレベーターに乗っている男も上に残っているターゲットも気がついては居ない。

 

私はすばやく大きな機械に身を隠した。ターゲットを見ると、どうやら上で食事をとっているようだ。エレベーターから降りてきた男は他の作業員とは行動が異なり、ターゲットとも近い位置に居ることからこの工場の現場責任者のようだ。現場責任者の男が隠れている機械の向こう側まで来た。どうやら機械を弄っているようだ。

 

「っち、こいつもか。ったくどいつもこいつもガタが来てやがる・・・。」

 

悪態のような独り言を喋り始めた。

 

「しかしエレベーターは大至急直さないとな。アレじゃいつパイプが破裂して爆発するかわかったもんじぇねえ・・・。」

####アプローチ発見####

 

 

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『エレベーターに使われているスチームパイプは老朽化の影響で破断寸前のようね。スチームパイプが至近距離で爆発したらどうなるか。現場責任者の彼はよく知っているみたいよ。』

 

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私は場所を変え、エレベーターに近づき、よく観察した。スチームパイプはエレベーターの北側の壁についている。よく見ると一番下から50センチほど上に歯車と結合している部品が見える。しかし、その上下のパイプの結合部が錆びており内部圧力によって心なしか膨らんでいるようにも見える。なにか大きな衝撃でもあれば破裂して爆発するだろう。

エレベーターの構造をもっと詳しく見ていく。スチームパイプから出ている歯車が噛み合ってエレベーター本体につながっており、歯車の形からしてスチームパイプ内を下から蒸気を出せば上がり、上から蒸気を送れば下る仕掛けになっているようだ。エレベーターに近いいくつかの歯車は壁から5センチほど浮いていた。おそらくエレベーターの箱部分の構造上浮かせなければならなかったのだろう。

私は現場監督が機械に夢中なのを確認し、ターゲットもエレベーター方面から見れば後ろ向きでこちらを見ていないのを確認した。そしてエレベーターにつながる根元の歯車の裏側にブリーチングチャージを仕掛けた。これでリモコンを作動させれば歯車が吹っ飛ぶはずだ。この根本の歯車が吹っ飛べばエレベーターは支えを失って急降下することになる。

 

 

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『素晴らしい仕事ね。後はターゲットが乗ってくれるのを待つとしましょうか。』

 

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仕掛けし終えた私は現場監督のいじっている機械の裏に戻った。機械の側に金槌を見つけた。金槌を窓とは反対の方向に投げる。

 

カランカラン

 

「ああ?なんだ?今度は何が壊れたんだ?」

スタスタ

 

うまく金槌の音で誘導できたので、この隙に入った窓から再び外に出る。後はタイミングを見計らってスイッチを押すだけである。願わくば私が爆発させるより前にパイプが破裂しないことを祈る。

 

 

 

 

 

ジリリリリ

日も傾き、夕暮れである。おそらく終業のベルと思わしき物が鳴り、作業員たちが次々と工場を出ていく。現場責任者も途中から下に降りていたため今テラスに居るのはターゲット一人だけだ。そのうち現場責任者も工場を出ていった。

 

「さーて、俺も帰るかあ。」

 

伸びをした後、ターゲットが椅子から立ち上がった。午後の大半を机に座って眺めるか何かを書いていたようだ。もう少し運動したほうが良いと思う。もうその機会が訪れることはないだろうが。

ターゲットはいつもどおりエレベーターに乗った。またけたたましい音を立てて動き始める。私は動き始めたのを確認して爆弾のスイッチを押した。

 

バァン ガギギギギギ

 

「うわ!うわああ!!」

 

爆発は小規模で、その音さえもエレベーターの音のほうが大きいくらいだったが、爆発で歯車が吹っ飛び、ブレーキがなくなったエレベーターは見違えるようにスムーズかつ高速で下った。そして

 

ガシャーン! パキッ ボォォォォン!!!!

 

エレベーターは1階に全速力で激突した。しかし所詮2階から1階へのエレベーターなのであれだけではターゲットは殺せない。しかし、その落下の衝撃でついにその側面についていたパイプが破裂した。高熱の蒸気が凄まじい勢いで工場中に充満する。おそらくパイプの破裂の衝撃でも生きてはいないだろうが、この高熱によってその死は確実のものとなるだろう。

っと。ここも危なくなってきた。部屋中に充満した蒸気は逃げ場を求めている。扉は内開き、窓も締め切られており、今にもぶち破りそうだ。私はとっさにゴミ捨て場になっていた窪地に身を投げた。瞬間。

 

 

ドォォォン!!

 

 

工場のガラスから外壁から色々なものがその蒸気に押し出される形で爆発四散した。工場はまだかろうじて建っているが、崩れるのも時間の問題だろう。私は急いで窪地から這い出し、村の方へ走った。

 

 

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『衛星からの観測によってターゲットの死亡が確認されたわ。ご苦労さま。ラグドリアン湖で報酬を受け取ったらサブ目標に取り掛かって頂戴。』

 

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村に着くと村民たちは突如爆発した工場を不思議そうに遠目で見ていた。工場だったものからは蒸気が白い太い煙となって放たれている。ニューヨークで起きたスチームパイプの事故を思い出す光景だ。私は数少ない村民に気が付かれないように湖の方へ向かった。

村民たちは皆一応にして工場を気にかけており、火事だと思ったのか対処するために村民総出で消火作業に当たるらしい。私は無人となった村の、桟橋と手こぎボートくらいしか無いような小さな漁港に来た。桟橋に到着すると、桟橋のすぐ横の水面が波立ち始めた。すぐに水面から女性の形をした半透明の像が現れた。

 

「汝が余の願いを叶えたものか。」

「おそらくは。」

「不届き者の生命の気配が消えた。礼を言う。」

「報酬は。」

ヒューン

湖の中から飛んできたのは金貨の袋3つと大きめの水瓶が2つだった。

 

「たしかに受け取った。」

「ではさらばだ。」

「ああそうだ。一つ言い忘れていた。」

「なんだ。」

「今度依頼をするときは噴水か池から出てほしいそうだ。使用中のシャワーから出るのは止めてくれと。」

「わかった。善処しよう。」

 

そう言うと水の精霊は水の中に戻っていき、水面は他と同じような静かな湖面に戻った。

 

 

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『報酬は確認できたわ。うちの部隊が回収に向かうからそのままにしておいて。この液体は技術部の技術をさらに向上させてくれそうね。じゃあサブ目標だけど、ここから南に街道沿いに進むと【カンブレン】という街があるの。その街の外れにある墓地にシャルロット・エレーヌ・オルレアンは眠っているらしいわ。向かって頂戴。』

 

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私は報酬をその場に残し、無人になっている馬車小屋から馬を1頭借りて一路南へ向かった。

 

 

 

 

 

カンブレンの街についたのは既に夜も大分更けたところだった。元々ロキニョルの村を出たのが夕方近かったのもあったが、既に手元の時計で午前2時を回っていた。

 

しかし、街に入る直前、左手の奥に墓地らしき一角を丘の上から視認していた。私は馬をその近くに止め、早速目的の人物の墓を探した。墓地はそれなりに広く、探すのに多少手間取ったが、午前3時を回ったところでやっと発見した。墓標には“タバサ”とだけ刻まれており、政治的理由から本名を明記することが出来なかったのだと推測する。

 

私は墓地に入る前に借りておいたスコップで墓を掘り起こす。金品目当ての墓荒らしの話はたまに聞くが、火葬せずに土葬すればエジプトのツタンカーメンのように金品を入れるやからも出てくるのは考えられることだと思う。最も私は供えられた金品より遺体本体に用があるわけだが。

 

しばらく掘っていると、棺桶が出てきた。開けやすいように周りもそれなりに掘る。深さ1mほどに埋められていたそれを中に土が入らないように慎重に開ける。中には魔法学院の制服を着たままの腐敗した遺体があった。骨格の感じからして本人だろう。私は懐から例の新薬【リザレクター】を取り出すと、それをまんべんなくふりかけた。

 

 

 

 

 

「ん?誰か居るのか?」

「・・・!」

 

まずい、巡回警邏中の兵士だ。この地域の治安維持用の駐屯部隊だろう。私は隣でみるみる若返っていく死体を横目にどうしたものか思案したが、既に相手の視認範囲に入っているためにここから脱出して物陰に隠れるのは無理だろう。

 

「・・・!貴様!そこで何をしている!」

「・・・。」

「墓荒らしだ!」ピィーー!!ピィーー!!

 

しまった。笛を鳴らされた。仕方ない。ここで応戦するしか無さそうだ。私はシルバーボーラーを構え、笛を吹いている兵士の頭を狙った。

 

パシュン バタッ

 

弾丸は正確に頭部を捉え、側頭部こめかみ部分に風穴を開けた。しかし遠くの方からこちらに向かって走ってくる集団がいる。応援部隊だろう。私は掘った墓を塹壕のようにして身を隠しつつ正確に一人ずつ倒していった。

 

パシュンパシュンパシュン

 

「くっ!物陰に隠れろ!もっと応援が必要だ!」

 

これ以上応援が呼ばれると非常にまずい。いっその事このまま撤退することも視野に・・・。

 

 

 

「どいて。」

「・・・!」

 

 

 

“スリープクラウド”

 

 

 

青白い霧が背後から発生し、操られた風に乗って増援に来た兵士たちに降り注ぐ。たちまち兵士たちは倒れた。どうやら眠ってしまったようだ。

後ろを見ると、完全に元の状態に戻っていた元遺体、タバサがいた。1年近く棺桶に居たため服はだいぶ劣化してところどころちぎれてはいるが。

 

「どういうこと。」

「色々聞きたいことは有るだろうが話は後だ。ともかく次の増援が来る前にここを脱出するべきだと思うが。」

「わかった。でも説明はしてもらう。」

 

 

私達は墓穴から這い出し、近くの茂みに隠れながら馬のある場所まで戻り、そのまま馬に乗って脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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~2日後~

 

「学院長。ヴァリエール、ツェルプストー、グラモン、サイト、只今参上いたしました。」

「うむ、入りたまえ。」

 

ガチャ

 

「なんでしょう学院長。重大な話って。」

「先程王宮にいるワシの伝手から連絡があっての。君たちはミス・タバサの事を覚えていると思うが。」

「タバサ?まさかまたガリアがなにか嫌がらせを!?」

「そんな!死んでもなお嫌がらせをするなんて!」

「これこれ、そうではない。ミス・タバサが埋葬されていたガリアの辺境の街カンブレンで墓荒らしが発生したらしいのじゃ。」

「墓荒らし?!」

「こっちの世界でもやっぱそういう奴はいるのか・・・。」

「うむ。で、その墓荒らしなんじゃがどうやらミス・タバサの墓を荒らしていったそうなんじゃ。」

「そんな!」

「なんでタバサの墓を!?」

「サイト、君はなにか金品を居れていたのかい?」

「そんなもん入れてねえよ!」

「私が一緒に入れたタバサの大きな杖なら多少は価値があるかもしれないけど・・・。」

「被害状況は奇妙でな。普通墓荒らしは遺体の周囲に有る金品を目当てに荒らすんじゃが、周囲に供えられたブレスレッドやネックレスなどには一切手を付けず遺体と杖だけが消えていたそうじゃ。」

「タバサと杖だけ?何故そんな事を!」

「そしてもっと奇妙なのが、墓に続く道は君たちも知っての通り土じゃ。墓に向かっていく足跡は1人分しか見当たらなかったのに対し、墓から逃走した足跡は2人分あったそうじゃ。」

「ええ??それってどういうこと?」

「タバサの遺体が歩いたっていうんですか?」

「ワシにも分からん。しかし棺桶の状況はその奇妙さに拍車をかけておる。普通腐敗した遺体などを持てば何かが崩れて痕跡が残ったりするものなんじゃが、痕跡もまったくなく、遺体が独り歩きして自ら出ていったとしか思えん状況らしいのじゃ・・・。」

「どういうこと・・・?ガリアの陰謀?」

「ガリアって死体を操れるほどの技術があるのか?」

「あ!アンドバリの指輪!」

「それはない。あの指輪で操れる死体は比較的新鮮なもの、死後1週間以内のものでは無くてはならない。彼女が埋葬されてから来週で1年になろうというところなのじゃぞ。」

「じゃあ一体誰が・・・」

「もしかしたら君たちの前にひょっこり現れる可能性もある。じゃがそれは何者かに操られている可能性が高い。十分注意するんじゃ。」

「「わかりました。」」

 

 

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「排水ストップ」 +3000 『工場を稼働停止させる。』

・「スプラッシュ!」+2000 『スチームパイプを破裂させる。』

・「蒸気浴」    +3000 『高熱蒸気でターゲットを暗殺する。』

・「盗掘者」    +1000 『墓地の警邏隊に発見される。』

 

 




「死は存在しない。生きる世界が変わるだけだ。」
-アメリカ先住民 ドゥワミッシュ族-


2019/06/17追記
2期でも似たような話を書く予定です。(というか書けてる。)


次回は海へ出ます。
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