『道後温泉へようこそ。47。』
『最近忙しかったから疲れてないかしら?そんなときは温泉に浸かってゆっくりしたいものよね。でも残念ながらゆっくりしている時間はないわよ。』
『今回のターゲットは加木屋源次郎。日本の裏社会を取り仕切っている山田組の経理担当を努めていた、いわゆる極道っていうやつね。彼は様々な犯罪に手を染めているわけだけど、そのうちの一つに日本国内での大麻取引があるわ。米国では合法化されたところも出てきているけど日本ではまだだいぶ先のこと。当然かなりの高額で取引されていてそれが世界有数の高収入犯罪組織の主な資金源となっているわ。』
『クライアントはその大麻の輸入先であるメキシコの“シナロイ・カルテル”のメンバーのロン・ジョリス。彼のアジアへの麻薬密売ルートの一つを山田組が横取りしたらしいわ。その報復と警告を兼ねての依頼よ。警察が優秀である日本国内ではカルテルメンバーは暗躍できないようね。』
『今回ターゲットはこの道後温泉に単独で慰安に来ているらしいわ。狙われると思っていないみたい。仕事は簡単そうよ。』
『準備は一任するわ。』
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町は賑わっている。ここは日本でも有数の温泉街らしい。温泉自体は入ったことはないが、知識としては知っていた。だが私はどちらかと言えばシャワーのほうが面倒がなくて好きだ。
レトロ調の駅を出て市内を目的のホテルまで歩いた。人通りは多く、平日にもかかわらず観光客で賑わっている。5分ほど歩くと山の麓にあるホテル、“ベルツリーリゾート道後”に着いた。早速中に入るとホテルの従業員と思わしき和装のスタッフが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。ご予約はありますでしょうか?」
「四条七之助で1人だ。」
「かしこまりました。只今確認してまいります。」
そう言うとスタッフはフロントの方へかけていき、予約を確認している。
「四条様お待たせいたしました。それではお部屋へご案内いたします。」
私は案内されるままにスタッフへついていきながら館内を観察した。ロビーには大きめの噴水があり、植木などを挟んでカフェテリアのようなものもある。洋風の内装に和のテイストを取り入れている。
ロビーには非常階段の他にはそれなりの大きさのエレベーターが3機。そのうちの1機に乗って10階へ上がった。このホテルは20階建てのようなのでちょうど真ん中の位置だ。
「こちらが四条様のお部屋になります。露天風呂は最上階にございます。15時から22時までとなっておりますのでお間違えの無いように願います。」
「わかった。」
「ではごゆっくり。」
部屋は1002号室。荷物…と言っても怪しまれないための適当な着替えといつもの装備が入ったカバン1つだけだが。それを置いて早速ターゲットの止まっている部屋を探りに出かけることにする。
「ねえ!こっちから市内が一望できるわよ!」
「あ~?そんなことよりもまずは温泉だろお。混浴だったりしねえのかな?」
「もう!お父さん!」
扉を開けると娘と父親の旅行客が居た。・・・!あの後ろから続いて出てきた小学生くらいの少年は以前に見た記憶がある。というか以前喫茶ポアロの前でターゲットを暗殺した際に私の正体を見破った少年そのものだ。私は足早に廊下を進みエレベーターホールまで向かった。
「ん?今の男・・・?」
「どうしたのコナンくん?」
「あ、なんでもないよ。僕ちょっとトイレ!」
「あ、コナンくん!園子との待ち合わせは14時にホテル前だからね!忘れちゃダメよ!」
「はーい!」タッタッタ
「・・・クソッ。今の男。たしかにあのときの・・・。」
私はエレベ-ターホールの脇にある非常階段に身を隠していた。しかしどうしたものか。あの少年は中身は有名な高校生探偵。邪魔されないとよいのだが。
私はとりあえずそのまま非常階段を降りて1階ロビーへ向かった。
1階ロビーでは様々な客がいる。若い女性客から年配の老夫婦、カメラマンのような男性も居た。その中に顎髭を生やし新聞を読んでいた大男が居た。
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『アレが加木屋源次郎よ。首尾よく見つけられたわね。手早く片付けてしまいましょう。』
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手早く片付けたいのは山々だがここでは人が多すぎる。事を起こせば必ず発覚するだろう。ここはまずは観察することにした。
新聞を読んでいたターゲットはそのままコーヒーを何杯か飲みながらくつろいでいた。するとそこへ先程のカメラマン風の男が近づいていった。
「なあ、あんた加木屋さんでしょう?」
「なんだあんた。」
「ああ、申し遅れました。私“週刊夕朝”という雑誌でライターをしている林というんですがね。ここにこの日本を牛耳る影の組織の重鎮が居ると聞いてやってきたんですわ。」
「しらん。私ではない。」
「またまた。知ってるんですよ。山田組の実質的なナンバー2。最近でかいことに手を出したせいで命を狙われてるとか・・・。」
「しらん!失礼な男だな!失せろ!」
「おっとと。あまり大きな声を出さないでくださいよ。ほらみんな見てますよ?」
「ぐっ・・・。」
「折り入ってお話がありますんで。このあと15時に屋上の露天風呂に来てくださいよ。裸同士なら下手なこと出来ないから安心でしょ?」
「・・・。」
「じゃあ頼みましたよ。もし来なかったら・・・こっちはあなたの秘密をいくつか握ってるんだ。それを・・・。では。」
「・・・クソッ。」
####アプローチ発見####
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『ターゲットはこのあと露天風呂でライターと会う約束をしているみたいね。しかもあまり気乗りしてないみたい。彼は日本のマフィア。こういう場合の対処方法と言えば一つしか無いわ。私達が先回りできればその方法でターゲットを始末できるかもしれないわね。』
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どうやらこのあと屋上の露天風呂で会談するようだ。先回りして色々仕込んでおきたいところであるが、問題はその最中に例の少年に鉢合わせ無いかということだ。いざとなればその少年の口封じも検討しなくてはならない。
私は更に彼を観察する。っと、彼の目の前の机には彼のものと思われる持ち物が色々置いてあったが、先程の騒ぎで一部がずれ部屋の鍵が見えている。部屋番号は1001だった。奇しくも隣の部屋だ。確かこのホテルはベランダは狭く隣の部屋と防火扉で仕切られているだけだったはずだ。ということは侵入はそれほど難しくはないかもしれない。
「もうお父さんったら・・・こんな時間からビールだなんて。」
「ははは・・・仕方ないよおじさんこのところ事件続きだったから・・・。」
っと、先程の少年だ。私は持っていた雑誌を戻すと足早にエレベーターに向かう。エレベーターは1機この階に止まっていたためすぐに開いた。
「!!あいつ!」
「どうしたのコナンくん?」
「蘭姉ちゃん!ちょっと用事できたから園子姉ちゃんと二人でいってて!」
「ちょ、ちょっとコナンくん!?」
タタタタ
私はエレベーターに乗って10階を押した。扉が閉まる。と、締まりかけている扉に向かって全力疾走してくる人影があった。例の少年である。だが無常にも後数歩のところでエレベーターは完全にしまって動き出した。ある意味間一髪と言えよう。私は8階のボタンを追加で押した。
このエレベーターは新しい方のようでかなりのスピードで上っている。あっという間に8階に着くと一旦扉が開く。私は誰も居ないのを確認しすぐに扉を閉め、18階のボタンも押した。その後は10階で普通に降り、そのまま無人のエレベーターは18階へ向かった。そのままエレベーターホールで隠れて待っていると、非常階段から少年が飛び出してきた。彼はエレベーターの行き先を確認するとまた非常階段へ走り始めた。彼は私を黒の組織とやらの人間と勘違いしていたようだが、あそこまで必死になるほど彼にとってその組織は重要なものなのだろうか?
私は部屋に戻ると早速ベランダに出た。予想通り、ターゲットの部屋とは後付けの防火扉でのみ仕切られていた。私は部屋にあった手鏡を使ってターゲットの部屋を確認する。部屋に誰も居ないことを確認した私はそのまま手すりを乗り越え外側からベランダ伝いに隣の部屋に侵入した。防火扉は開けるとセンサーが作動する仕組みになっていたようなので開けるわけには行かなかったためだ。
さて、ターゲットのベランダに到着したが当然のごとく窓には鍵がかけられていた。しかしこの窓は最新の特殊な窓のようで鍵の部分には何やら機械があった。
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『47。その窓は自動開閉機能付きの最新式の窓みたいよ。IoT家電の一種で専用リモコンで窓を開け閉めしたりもできるみたいね。少し待って。クラッキングしてみるわ。』
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少しして窓の鍵が自動で開いていく。そのまま窓自体も開いた。IoTの弱点はクラッキングに弱いという点だろうな。
難なく室内に侵入した私は部屋を物色し始める。ベッドの上にはターゲットのものと思われるスーツケースが開かれた状態で放置されていた。私はその中に45口径拳銃と少量のプラスチック爆弾を発見した。拳銃はともかくこのプラスチック爆弾を彼は何に使用しようというのだろうか。しかしこれは非常に使えるものである。その2つ以外には特に変わったものはなかった。
私は拳銃を手に取り、装填されていた12発の弾丸の内1発を取り出した。弾頭を取り外し、内部の無煙火薬をすべて出した。そこへ代わりにプラスチック爆弾をちぎって詰め込んだ。雷管はそのまま残っているため撃鉄が当たれば爆発するようになるだろう。そしてこの量でもおそらく相当な破壊力を発揮し、発砲したものを死に至らしめること位はできるだろう。弾頭を装着し直し、マガジンの一番上に戻した。
漁った箇所を全て元に戻し、取り出した無煙火薬は窓からばらまいて捨てた。プラスチック爆薬は発見されると面倒なので全量持って出る。そろそろターゲットが戻ってくるので一度自室へ戻った。もちろん部屋から出た直後にクラックされた窓は自動で鍵がかかった。
自室に戻った私は残ったプラスチック爆薬に火を付けて灰皿に乗せてベランダに放置した。しばらくしてプラスチック爆薬が完全に燃え尽きると、私は屋上の露天風呂に向かうことにした。そろそろ先程のライターが指定した時間になるためだ。部屋を出ると丁度ターゲットが戻ってきてすれ違った。私は気にせずそのまま露天風呂へ向かった。
露天風呂はかなりの広さがあった。スパリゾートなだけあって様々な風呂が備わっていた。私は怪しまれないように適当に湯に浸かりながらターゲットを待った。
しばらくするとライターの方が先に到着した。私は風呂から上がり、体を洗うふりをしつつ様子をうかがった。この時間帯はあまり人は入ってこないようで、今は私とそのライターしか居なかった。私は洗い終えると脱衣所へ向かい、風呂を出た。
脱衣所で着替えているとターゲットがやってきた。自前の風呂桶を持っているが近くを通り過ぎた時に桶の中に黒光りする物体を視認した。おそらく先程の拳銃だろう。
####アプローチ完了####
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『うまく爆薬入り拳銃を持って露天風呂へ行ってくれたわ。あとは彼が“自殺”か“事故”にあうまで見守りましょうか。』
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ターゲットはそのまま服を脱ぐと桶を持ったまま風呂場へ入っていった。私は脱衣所にあったマッサージチェアに身を委ねながらその時を待つことにした。万が一、もう片方が死にターゲットが生き残ってしまうと面倒なことになってしまうためだ。
ー…ー!ー!
何やら言い争いをしているようだ。最も拳銃を風呂場に持っていく辺り、はじめから交渉も和解もないと踏んでたのだろうが。
そのうち片方の男の声が更に怒気を含んだものになり、もう片方はそれを必死にたしなめるような物言いになった。そろそろだろう。
ボォーン!
風呂場から爆発音が聞こえた。おそらくターゲットが発砲し、装填されていたC4入りの薬莢に添加して炸裂したのだろう。
「な、なにごとだあ!?」
「くっ!」タタタタタ
っと、あの少年とその保護者とみられる男が脱衣所に駆け込んできた。私には気がつかず、そのまま風呂場へ突入していった。私はゆっくりとその後ろから風呂場を覗く。ターゲットが風呂場に仰向けになって血だらけで倒れていた。暴発した拳銃は粉々に砕け、破片が破片手榴弾のようにターゲットに襲いかかったようだ。少し離れたところでは先程のカメラマンがうつ伏せになって倒れている。こちらも多少破片を食らっているようだが息はあるらしい。
「なっ!何があったんだこれは!」
保護者と思わしき男が驚愕の声を上げていた。少年はというとスプラッターな状態になっているターゲットに近づいていき脈を測り始めた。
「ダメだおじさん。もう息はないよ。」
「クソッ!っと、あんた。警察を呼んでくれ!」
「わかった。」
「おじさんあっちの人はまだ息があるよ!」
「なに!じゃあ救急車もだ!」
「了解した。」
撤退しそこねた私は仕方なくその男の指示に従い緊急電話をかけた。
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『ターゲットの死亡を確認。任務は完了したけれどその場から撤退できるかしら?』
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「!?お前は!」
「・・・。」
「・・・、おじさん。外に行ってスタッフの人を呼んできて。こっちの人は早く手当しないと。」
「お、おうわかった。」タッタッタ
「で、これはお前がやったのか?」
「何の話だ。」
「とぼけるな!ポアロでの一件といい、今回といい。何が目的だ!」
「私は偶然この旅館に泊まり、偶然この風呂を利用していただけだ。」
「・・・。」
「それに私がやったという証拠は残っているのか?現場の状況から見て彼ら二人くらいしか関係者は居ないようだが。」
「くっ・・・ともかく警察には一緒に会ってもらうぜ。」
「もちろん。一応現場に居合わせた当事者の一人だからな。」
程なくして愛媛県警が到着した。救急隊も到着し、ホテルは一時封鎖された。
「警部殿!?何故ここに!?」
「おお、毛利君。いや、愛媛県警に出張中でな。今日は松山東署で講義した後、すぐに東京に帰るつもりだったんだが、ホテルで爆発事件が起こったと聞いてな。今松山東署は人手不足で駆り出されたというわけなんだよ。」
「なるほど。警察も人員不足とは世知辛い世の中ですな。」
「まったくだよ。で、状況は?」
「は、私が露天風呂に入ろうと風呂場の前まで来たら、中から爆発音が聞こえ、急いで駆けつけてみるとこの状況で。」
「ふうむ・・・。」
「床に付いている跡とその周囲に転がっていた破片の部品などを見ますと、どうやら拳銃を発砲しようとして暴発したものと・・・。」
「拳銃だと?」
「死亡した被害者が所持していた拳銃だと思われ、正確な型式は現場検証を待ちませんと。」
「一体何者なんだ、その拳銃を持っていた被害者というのは。」
現場検証が風呂場で行われている。私は警察と少年の監視のもと(主に後者だが)脱衣所に軟禁状態になっている。
この状況から脱出するのは容易ではないだろう。無理に逃走しようとすれば犯人は自分だと言っているようなものだ。まあ半分以上自分なのだが。
そのうち一通り現場検証が終わったのか警部と呼ばれた男がこちらへ来た。
「あなたが脱衣所に居合わせた男性ですか?」
「私の名前は四条七之助。アメリカで仕事をしていたが、今は父方の故郷である日本に休暇できている。」
「なるほど。で、四条さん。あなたが風呂に居る時になにか変わったことはありませんでしたかな?例えば妙な音とか声がしたとか。」
「被害者二人はホテルのロビーで見かけた。なにか言い争いをしていたが内容まではわからない。」
「ほう・・・、となると被害者二人は知り合いでなにかもめていたと・・・。」
「私が風呂に入った時は助かった方の男しか居なかった。私が風呂から出て脱衣所で着替えていると死んだ方の男が入ってきた。」
「なるほど・・・。その時に風呂場の方から何か聞こえませんでしたかな?」
「着替えてる最中の段階で言い争いをしている声が聞こえた。マッサージチェアに座っている時もしていたが、そのうちに片方の声が大きくなり、片方の声は気弱になっていった気がする。」
「風呂場でも言い争いを。」
「警部殿、おそらくその言い争いの最中に拳銃で発砲したときに暴発したものと・・・。」
「ああ、そのようだな。となると何故暴発したかが焦点になるな。」
私は見たままを正直に答える。いらぬ虚偽供述はあとでいらぬ疑惑を生む。現場検証に付き合って事故と判断されれば無罪放免、その後で帰還すればいい。
「ねー、へんじゃない?」
「え?」
「・・・。」
「あっ坊主!また!」
「普通銃が暴発したくらいで原型とどめなくなるまで粉々になるかなあ?」
「確かに・・・銃が暴発しても薬室付近が粉々になるだけで、こんなグリップも銃身もバラバラになったりはしないな・・・。」
「火薬量の多い拳銃だったんスよ!だからこう、ドカーンと・・・。」
少年の知識と洞察力はやはり群を抜いている。通常の拳銃暴発では被害が大きくてもせいぜい手がなくなる程度だが、今回に至っては拳銃は元の型がわからない程にバラバラになっており銃身も複数に分裂、グリップもバラバラになっており、かろうじて銃だったのだろうと認識できる程度しか残っていない。
彼らの疑問に拍車をかけるべく鑑識官が寄ってきた。
「警部、そのことで妙なことが。」
「妙なこと?」
「はい。拳銃が暴発したと仮定しても硝煙反応が出すぎるのです。」
「出過ぎる?どういうことだ。出ないという疑問はよく聞くが出過ぎるというのは初めて聞いたぞ?」
「破片の数と部品の形状から推察しておそらく45口径以下のオートマチック拳銃と推察されるのですが、現場周辺の硝煙反応は45口径どころか50口径弾よりも多く、広く分散しているのです。」
「それはつまり・・・拳銃の暴発は直接的な爆発の原因ではないということかね?」
「いえ、爆発自体は暴発が原因でしょう。しかしその爆発の威力は拳銃弾に内包されている火薬量ではどう考えても無理なのです。」
「複数の弾丸が同時に暴発したという可能性は?」
「それもありません。周囲から弾丸が未発射の状態で発見されており、数は現在確認されただけで10発。複数暴発の可能性は低いかと・・・。」
「ううむ。どういうことだ・・・。」
硝煙反応は爆発物の成分に使われている窒素が爆発によって二酸化窒素になり、それをジフェニルアミンで検出するわけだが大抵の火薬爆薬において反応は出るものだ。プラスチック爆弾も例外ではない。しかしその範囲からどの程度の口径の弾丸が使われたくらいは割り出せると聞いた。C4爆薬ならば45口径どころか.500S&W弾すら凌駕しているだろう。
彼らは一様に現場の不可解さを検証しようとしているがただ一人、例の少年だけはこちらを見ている。ここらで早めに動くとしよう。
「警察の方。私はそろそろ部屋に戻っても良いですかな?流石に浴衣姿で脱衣所にずっといるのは寒い。」
「ああ、申し訳ない。もう少しだけお付き合いを。毛利君、何か閃かんのか?ほらいつもみたいに。」
「ともうされましても、拳銃を撃った人物は判明しておりますし、撃たれた方は病院送りだしで・・・。死亡した男がもう一方を殺そうと拳銃を撃とうとしたら不運にも暴発して自分が死んでしまったという事故としか・・・。」
「うむむ、しかし解決していないことがまだある。やたら威力の高かったその拳銃弾を誰が仕組んだのかだ。」
「この日本という国は銃規制が行われている国。私が居たアメリカならともかく、拳銃自体入手困難なこの国では、その拳銃を持っていることを知る人物も、それに細工できる人物も少数なのでは?」
「この方の言うとおりです警部殿。ここは被害者の身元を洗ってあの拳銃の入手ルートを探るほうがよいかと・・・。」
「そうするしかないか・・・。じゃあ四条さん。お部屋に戻っていただいても結構です。ご迷惑をおかけしました。」
「いえ、お役に立てず申し訳ない。では。」
私は警察達に別れを告げ、脱衣所を出て集っている野次馬の間を縫ってエレベーターに乗った。
「あ、僕も乗るー!」
「・・・!」
例の少年が飛び込みでエレベーターに乗ってきた。エレベーターには私と少年以外は乗っていない。しかしここで何ができるわけでもないだろう。私はそのまま自分の部屋の階を押した。エレベーターが動き出すと彼は不意に話しかけてきた。
「どうやったの。」
「・・・何の話だ。」
「教えてよ。どうやってあの人を殺害したのか。」
「私が殺したとでも?」
「お兄さん外国の人でしょ。外国の人は基本的にお風呂には長くは浸からない。なのに平日の昼過ぎのお風呂が開いた瞬間のあの時間帯にあそこに居たのは何故?」
「風呂は好きな方だ。外国人は長く浸かってはいけないのか?」
「だったらなんでお風呂から上がった後も脱衣所に居たの?」
「マッサージチェアを堪能していたと言ったはずだ。」
「40分以上も?それにあのマッサージチェア、さっき見たら自動で止まるコイン式で15分しか連続運転できなかったよ。25分も脱衣所で何してたの?」
「・・・。」
「本当は彼らの話聞こえてたんじゃない?聞こえてなかったとしても銃が暴発することを知っていた・・・。」
「どうしてそう思う。」
「それぐらいしかあの場に留まる理由がないからだよ。刑事さんたちは周囲にあったゲーム機や牛乳自販機で時間を潰してたと思ったみたいだけど、ゲーム機は故障中、牛乳自販機の牛乳は瓶でその瓶は何処にも捨てられてなかった。」
「・・・。」
「でも僕でもそこまで。どうやって彼の拳銃をつまらせたのか、どうやってあんな高威力を出したのか。さっぱりわからないんだ。」
「なるほど。で、私にどうしろと?」
「教えてもらっても証拠がない限りおじさんを逮捕できない。だから教えてもらってもいいよね?」
「面白い話ではないと思うがな。」
「それでも。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・少し待ってろ。」
「・・・うん。」
私は部屋の中に少年を招き入れ、荷物の中からいつも常備している“ある機械”を取り出した。私はそれを少年の目の前で起動した。
ピィィィン
「!それは?」
「君の考えていることなどお見通しという意思表示だよ。」
「クッ・・・。」
少年はポケットに入れておいたものを取り出し、何かを確認している。おそらくその機械は録音機。私の証言を元に逮捕するつもりだったのだろう。だがそれは私も想定していることだ。私が出した機械は小型のEMP発生装置だ。半径1mの範囲に強力なEMPを発生させ周囲の電子機器を軒並み使用不能にする。無論録音機も、少年が腕にはめている時計型麻酔銃も、その眼鏡も。
「さて、どうする?」
「・・・。」
「密室の部屋の中で二人きり。君は殺されてもおかしくない状況にある。」
「・・・。」
「だが私は目的以外に興味はない。よって君の存在も正直なところ済んでしまった後ではどうでも良いことだ。」
「・・・いつか絶対。絶対捕まえるからね。」
「楽しみに待っていよう。」
そういうと彼は扉を開け部屋を出ていった。私は荷物をまとめるといつものスーツに着替えフロントへ向かった。死亡事故があったホテルにはいられないということで、宿泊予定をキャンセルして堂々と正面から出て脱出した。
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~同時刻~
「やっぱり!安室さん!」
「おや、蘭さんに園子さん。奇遇ですねえ。」
「そっちこそ。こんなところで何を?あ!もしかして梓さんと・・・。」
「ち、違いますよぉ!このホテルに知り合いが来ているという話を聞きましてちょっと会いに行こうかと思ってたんですけどね。」
「そりゃ残念ねえ。今事故だか事件だかがあってホテルには入れないわよ。」
「のようですね。部外者である私が入ることもでき無さそうだし、一旦撤退するかなあ。」
「じゃあ、じゃあ、私達とお茶してかない?」
「園子さんたちとですか?」
「あー、えっと、実は私達もこのホテルに泊まってたんだけど閉め出されちゃって・・・。」
「あーそれは大変ですね。僕なんかで良ければ付き合いますよ。」
「助かるー!見知らぬ土地で暇するのもアレだったのよねー!」
「あはは・・・。っ!?」
「?どうしたんですか?安室さん。」
「ん?どったの?」
「ああ、いえ、先程話した知り合いに似ている方が居たんですが・・・」キョロキョロ
「あら、そうなの?」
「いえ、見間違いだったようです。すみません。では行きましょうか。」
「(アレは、あのときの・・・こんなところで一体何を・・・。)」
ミッションコンプリート
・「情報化社会の脆弱性」+2000 『ターゲットの部屋をハッキングで開ける。』
・「榴弾装填」 +2000 『ターゲットの拳銃に細工をする。』
・「男なら拳で語れ」 +3000 『ターゲットを銃の暴発によって暗殺する。』
・「呉越同舟」 +3000 『江戸川コナンと同じ部屋に2人だけでいる。』
900話以上あるエピソードの内、コナンくんが解決できなかった話ってあるんですかね?
次回は別アプローチです。