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『道後温泉へようこそ。47。』
『今回のターゲットはこの道後温泉に慰安に来ている日本のマフィアである山田組の元経理担当、加木屋源次郎。クライアントは彼にマリファナ流通ルートを横取りされたメキシコは“シナロイ・カルテル”のメンバーのロン・ジョリス。警告と報復を兼ねた依頼よ。』
『準備は一任するわ。』
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ブロロロロロ
人も交通量も多い市内を車で走るのはなかなかに苦労するものだ。だがいざとなれば歩行者などは気にしてられないだろう。
私は今、道後温泉駅前の道をICAが用意してくれた車両をつかって走っている。ちなみに用意してくれたのは白いホンダNSXのタイプRだ。型式は多少古いもののチューニングされている影響か走りはとても良い。逃走用としてこの機動性は最適だろう。
トランクにはJaeger7を積んでいる。かさばるこの銃も車ならば比較的安全に運ぶことができる。それにこのあたりはそれなりに高層の建造物が多く、近くには山もあって狙撃場所には事欠かないだろう。
道後温泉駅を通り過ぎ、人と車を縫って走り、ターゲットが泊まっていると思われるホテルへ到着した。ベルツリーリゾート道後。看板にはそう書かれている。しかし今回はこのホテルには泊まりに来たわけではない。ターゲットの確認と部屋の確認だ。私は駐車場に車を停めるとホテルの中に入った。
「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」
「いや、少し休憩したいだけだ。カフェは利用できるのか?」
「はい。ご利用できます。カフェテリアはそこの水色の看板のところでございます。」
「ありがとう。」
私はカフェに着くと適当にコーヒーを注文する。そのまま辺りを伺い、状況を把握する。
カフェはそれなりに広く、テーブルも10個はあるだろうか。そこには様々な人が座っていた。若いカップルから老夫婦。ビジネスマンと思われる背広の男性からカメラを持っているやつも居る。その中でも髭面の大男、あれはブリーフィングで把握している。ターゲットだ。
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『ターゲットの加木屋源次郎よ。さすが日本で一番隆盛している犯罪組織の重鎮なだけあって雰囲気あるわね。さて、どうやって送ってあげましょうか。』
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私はコーヒーを飲み干すと席を立った。トイレに行くふりをしてロビー奥の廊下へ入る。どうやらこの先はスポーツジムなどがあるらしい。だが私が用があるのはその手前の従業員用通路を入っていったホテルマンだ。私はホテルマンの後ろをついていき、丁度隣に大型ダストボックスがある位置で後ろから首を締め上げる。とっさのことで彼は慌てていたが、あっさりと気絶した。
気絶したホテルマンから服を借り、ホテルマンはそのままダストボックスへ隠した。私はそのまま何食わぬ顔で従業員通路を進み、フロントのちょうど裏側に当たる事務所に入った。
事務所にはあまり人は居なかったが無人というわけでもない。1人が机に向かって何かを書いており、もうひとりはパソコンを眺めながらペットボトルのお茶を飲んでいた。私は事務所内を見渡し目的の物を探した。しかし、目的のものは何処にもなく、私は借りた服に入っていた手帳に書かれたIDとPWを使って部屋の端に置かれているPCにログインした。
PCは思ったとおり宿泊名簿が入っていた。このホテルでは宿泊客の個人情報や宿泊情報は電子化して保管しているようだ。私はその名簿の中からターゲットの名前を探し出し、何処に泊まっているかを割り出した。ターゲットは10階の1001号室。そこが見えるのは南側だ。つまり南側で待っていればターゲットは自然にそこへ現れるということだ。
私は先程のダストボックスへ戻り、愛用のスーツに着替え直した後、ホテルマンに元通り着せたあと、廊下に寝かせて放置してホテルを出た。
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~コナンside~
今日は俺と蘭と園子と小五郎のおっちゃんで愛媛県は道後温泉へやってきた。新しくできた鈴木財閥の系列ホテルであるベルツリーリゾート道後に招待されたのだ。
「温泉楽しみだねー!」
「うん!小五郎のおじ様には申し訳ないけれど混浴では無いのよね。」
「へっ!誰がお前らなんかと・・・。」
「ハハハ・・・。」
蘭と園子は温泉が目当て、おっちゃんは混浴でないと知ってからはあまり気乗りがしてないようだが、食事が豪華だと聞いて気を取り直したようだ。相変わらず現金なオヤジだ・・・。っ!?
「ん?どうしたのコナンくん?」
「え?ああなんでもないよ!気の所為みたいだから!」
「ふ~ん・・・?」
今たしかにあのときの感じが・・・。黒の組織でも警察関係者でもない純粋な殺意を持った男の気配・・・!だけど周りを見回してもそれっぽいやつは居ねえし、気のせいだよ・・・な。
「ほら、早く行こ!」
「う、うん!」
ま、まあ今はゆっくりするとしよう・・・。
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~47side~
例の少年が見えた。私のカモフラージュを見破ったあの洞察力に優れた元高校生探偵工藤新一、現在の名前は江戸川コナンだったか。何故ここに居るのかはわからないが彼らはホテルに入っていくようだ。私の仕事のじゃまにはならないだろう。
私は車に戻ると、駐車場を出て、狭い道を下りつつ南を目指した。南には市街地の中に大きな山があった。まずはそこから狙えるかどうか試す。
山は正確には公園だった。道後公園というらしい。元は城があったらしく史跡が公園内いたるところに残っているが、ここに来る観光客はあまり城の歴史には興味が無いようで、観光客はもっぱら麓の運動場に居た。私は公園の側の駐車場に車を停めると、Jaeger7が入ったケースを持って公園内の山を登り始めた。
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~コナンside~
「知らん!失礼な男だな!失せろ!」
「え?なに?」
「なにか揉めてるっぽい?」
どうやら客の一人がカフェで大声で怒鳴っていたようだ。隣りにいる男にたしなめられて気まずそうにしている。そのうち其の隣の男はなにか言った後その場を離れていった。
「何だったんだろうね。」
「さあ。そんなことよりお風呂よお風呂!早速入りに行きましょ!」
「あー、申し訳ありませんお客様。露天風呂の開放は午後3時からとなっておりまして・・・。」
「え~!蘭、今何時?」
「え~と今2時15分くらい。まだ結構あるね。」
「うーんどうしたもんか・・・。」
「俺は部屋に行くぜ。風呂の時間になったら一番風呂を貰いに行くつもりだからよ。」
「おじさまはお風呂かあ。私達もそうしようっか?」
「そうだね。45分じゃあっという間だし。コナンくんもいい?」
「うん!」
俺たちは予定を変更して一旦部屋に戻ることになった。
部屋は園子のコネもあってそれなりに豪華だった。2つの部屋がある和と洋が混じった部屋だ。もっと豪華な部屋もあるらしいが、豪華すぎるとかえって疲れるといってこの部屋なんだそうだ。たしかに豪華すぎる部屋は異様にかしこまっちゃって俺らには合わないな。俺とおっちゃん。蘭と園子で部屋を別れた。
おっちゃんは「ホテルに来たら恒例なんだよ」と言って備え付けのテレビでアダルト放送がやってないかチェックし始めた。こんな真っ昼間からやってるわけねえだろ・・・。俺はというと部屋でじっとしているのは性に合わないので、この階だけでも探検してみることにした。小高い山の上にホテルが建っているので10階でも結構見晴らしがいい。市内一望はもちろんのこと、遠くには瀬戸内海まで見える。あの広い土地は松山空港だろうか。
ガチャ
後ろでふいに扉の開く音が聞こえた。さっきロビーで叫んでいた男だ。浴衣姿に風呂桶なので風呂に行くつもりなのだろうか。まだ2時半だから開いていないはずだけど。
「おじさん。お風呂は3時からみたいだよ。まだ開いてないと思うよ。」
「・・・。」
一瞬こちらを見たが無視していってしまった。感じ悪いおっさんだな。もしかしたら早めに開くのかもしれない。・・・ん?今桶の中からカタカタ金属音がしたような・・・。まあいいか。俺は部屋に戻った。
「さっき風呂桶持った人が上に行ったみたいだよ。もしかしてもう開いてるんじゃない?」
「お、マジか。じゃあひとっ風呂と行くか!」
「私達も行こう。園子。」
「そだね。」
俺たちは各々の部屋で準備してエレベーターで最上階の露天風呂へ向かった。
「あ、やっぱり。もう掃除終わって開いてるよ。」
「やっぱ早めに来て正解だったわね。じゃあおじさま、ガキンチョ。私達はこっちだから。」
「お父さん。コナンくんのこと見ててね。」
「おうよ。」
「いってらっしゃい。」
「じゃあ俺たちも行くか。」
「うん!」
ダァーン!
「な、なんだ?!」
「銃声!?」
男湯の方から突然銃声が響いた。俺たちは急いで駆け込んだ。
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~47side~
困った。非常に困った。
「すっげー!ボディーガードってやつなんじゃね?!」
「おじさん熱くないのー?」
「知ってるぞ!そのカバンには銃が入ってんだ!」
ワイワイガヤガヤ
近所の子供と思われる集団に掴まってしまった。私の周りを駆け回ってはちょっかいを掛けてくる。ケースを開けられそうになるのは流石に洒落にならない。しかし乱暴に振り払うと後々まずいことになりかねない。さてどうしたものか。
「こらー!健太!まーたいたずらして!」
「茜!人様にちょっかい出しちゃダメじゃない!」
「げ!やべ!逃げろ!」
ワーワー
「まちなさーい!・・・どうもすみませんうちの子が・・・。」
「いや。大丈夫だ。」
「何処か怪我とかされてませんか?ああ、スーツにシワが・・・。」
「大丈夫だ。このシワも仕事で付いたもの。気にしないで追いかけたほうがいい。」
「もうほんとにすみませんでした。・・・コラー!けんたー!」タタタ
やっと開放された。母は強しだな。私は気を取り直してさらに山を登る。少し時間を食ってしまったがもう少しで頂上だ。ここから見える頂上には東屋のようなものが立っているのが見える。
私は頂上につくと東屋に上った。東屋は2階建てで2階部分には手すりとベンチが置いてあった。しかしもう冬も間近というこの時期にこの吹きさらしの所に人はいなかった。私は東屋のベンチにケースを置くと中からスコープだけを取り出した。12倍率の望遠スコープだ。先程のホテルを確認しようとした。
ターン
遠くの方で銃声がした。かなり小さな音だったので工事現場の音にも聞こえるそれであったが私は間違えない。私はスコープを覗きホテルを見る。ターゲットの部屋と思われる部屋には誰もいなかった。少し上に向けると、露天風呂と思わしきところから男が身を乗り出して何かを階下へ捨てていた。スコープの倍率を上げる。顔が見えた。アレは・・・ターゲットだ。どうやら露天風呂に移動していたらしい。
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~コナンside~
「何があったあ!?」
「?!」
そこには頭から血を流して倒れている一人の男が居た。下のロビーで大声を出した男をたしなめていた男だ。
「コナン!警察だ!」
「うん!」
俺は即座に警察に連絡した。同時に電話をしながら状況を確認する。露天風呂は死んだ彼以外無人。凶器である拳銃も見当たらない。おまけに死体のすぐそばにあるシャワーが辺りの血を洗い流し続けている。出入り口はここだけ。他に人がいる気配もない。これは・・・擬似的な密室殺人だ!
程なくして愛媛県警が到着した。近くの松山東署で講義をしていたという目暮警部も加わって現場検証が行われている。凶器は45口径拳銃。しかし凶器自体は何処からも発見されず、発射残渣などもシャワーの水で流れてしまって判別不能。犯行当時の出入り口には俺とおっちゃんが居て、脱衣所には誰も居なかった。出入り口はここだけ。隣の女子風呂には蘭と園子がいたからそこに移って脱出も不可能。どうやって犯人はこのライターの林さんを殺害して脱出したんだ・・・。
俺はいつもの通り風呂の中を見て回った。別段おかしいものはないが・・・ん?何だこの柱の擦り傷・・・。
「警部殿。この方です。」
「あなたが彼と言い争いをしていたという方ですか?」
容疑者候補として被害者と言い争って大声で怒鳴っていた男が呼び出されていた。たしかに現状彼以外容疑者は居ないが・・・。
「ああ。加木屋源次郎だよ。刑事さん。」
「加木屋・・・ってお前!山田組の会計係の!」
「おおっと、“元”を付けてくれよ。もうあの組とは関係ないんだからよ。」
「どういうことだ?」
「いや、俺も年なもんでね。若いもんに仕事は引き継いで引退したってわけさ。」
どうやら元暴力団員のようだ。おそらくあいつが犯人だろうが証拠もなければどうやったかすらわからねえ。なにか手がかりになるようなものが・・・。
「それで。死んだってのは・・・ああ。そいつか。」
「知ってるのか?」
「ええ。そいつは・・・」
バシュン
・・・え?
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~47side~
ここからだと露天風呂がよく見える。流石に12倍望遠でもなかなかに小さいが。ターゲットは露天風呂の端でなにかしていたと思ったらいきなりラペリングをし始めた。そして彼の部屋である1001号室に入って行った。なかなかアグレッシブである。
どうやらホテルでなにか事件があったようだ。ホテルの前に警察車両がどんどん集まってくる。っと、露天風呂でまた動きがあった。どうやら事件があったのは先程の露天風呂のようだ。ということはまたターゲットが呼び出され同じ場所に現れる可能性がある。私はじっとその時を待った。
その時は意外に早く訪れ、今度は普通に服を着たターゲットが警察官に囲まれてやってきた。おそらく現場検証につきあわされているのだろう。私はあたりに人が居ないことを確認し、ケースからすばやくJaeger7を取り出し、スコープを装着、構え直した。周囲の木々とホテルまでの道中の幟などで風を確認し、ターゲットの頭部に狙いを定め、そして
バシュン!
引き金を引いた。距離にして750m。なかなかの長距離狙撃ではあるがJaeger7の精度の良さならば出来ない距離ではない。放たれた弾丸は数人の警察官、そしてちらっと見えたあの少年。それらの衆人環視のさなか、ターゲットの頭部に正確に命中した。
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『ターゲットダウン。いい腕ね。ただ警察の目の前で殺るのは大胆すぎないかしら?急いで脱出したほうが良さそうよ。』
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言われなくとも脱出は急いだほうが良いだろう。私はまたすばやく銃をケースにしまうと山を降りた。
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~コナンside~
「うお!?」
「な!?」
「狙撃だ伏せろ!!」
容疑者と思われた男がいきなり頭に弾丸を食らって吹っ飛んだ。一体どこから・・・!俺はすばやく弾が飛んできたと思われる方向を見てその延長線上に山があるのを確認した。追跡メガネの望遠機能でその山の頂上を見る。流石に距離が遠いが・・・!?あの特徴的な風貌!間違いない!あいつだ!
それを確認するやいなや俺は走り出した。ダッシュで部屋に戻ると荷物からスケボーを取り出してエレベーターに飛び乗った。1階についた瞬間からスケボーをかっ飛ばして公園に向かった。人と車の波を縫って飛ばす。見えた、さっきの公園・・・!
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~47side~
私は駐車場にある車にケースを放り込むと料金を払って駐車場を出た。正面の大通りに出て交差点を通過する・・・っ!交差点を通過するときに横目に少年が見えた。追ってきたのだ。どうやらこの車の性能に頼らなければならないようだ。私はアクセルを踏み込んだ。
車道は片側2車線であるが交通量が多い。その間を縫うように走る。一般道ではあるがすでに速度は140キロだ。時折対向車線に飛び出しながら逃げる。ルームミラーを見ると後ろから猛スピードで追いすがってくる小さい影がある。私はさらにアクセルを踏み込んだ。もうほとんどベタ踏み状態だが。
どうやらこの道は平和通りというようだ。日本人はやたらと平和という単語を使いたがる人種だ。しかしそんなことを考えている余裕はあまりない。多い一般車を凄まじいスピードですり抜けながら走る。
パッパーガシャーン
私は何個目かの交差点をドリフトで強引に曲がりつつ左に折れる。曲がった拍子に通過中だったトラックが避けようと横転したようだが気にしている暇はない。前の交差点の横から警察のパトカーが勢いよく飛び出してきた。どうやら体当たりで止めるつもりのようだ。私は軽快な機動力を生かしてギリギリのところで躱した。後ろの少年もギリギリで付いてきている。
後ろを見るとかなりの量のパトカーがいた。おそらく市内のパトカーを総動員したのだろう。・・・っと、あんなにパトカーが多い理由がわかった。すぐ左側に愛媛県警の本部があるようだ。横目に見た案内表示に書いてあった。私はそのまま道を南に向かって道なりに飛ばした。
大洲街道というらしい。なかなかに整備されており走りやすい道だ。相変わらず交通量は多いが。後ろのパトカーと少年もしっかり着いてきている。しかしこのまま脱出ポイントまで引き連れるのはまずいだろう。まあその手前でおそらく撒けるとは思うが。
私はしばらく走り続けた後、右に曲がった。もちろん速度は落としている余裕はないのでドリフトであるが。真新しい高架橋と道路を通った。外環状道というらしい。1車線だけであるが歩道側も中央分離帯もなにもないため、時折そこに乗り上げながら更に飛ばす。パトカーは大部分が詰まってしまっているようだ。少年のスケボーは相変わらず着いてきているが。そのスケボーは一体どういう動力で動いているのだろうか。
予定地点で左へ曲がる。此処から先は狭い道だ。しかし両脇に空き地が多く、歩道も広かったため走るのには苦労はしなかった。それでも何回かぶつかりそうにはなったが。
市街地を抜ける。と目の前に小高い丘の空き地がある。私は道路を無視してガードレールを強引に突破して小高い丘へ侵入する。小高い丘はすぐに終わり、小さな小川になっていた。その時点で速度は100キロをゆうに超えていたため車はそのまま大ジャンプし、その先にあった有刺鉄線付きフェンスを底面が掠りながらも乗り越えた。
流石にこれはかなり無理があったのか全面のボンネットが捲り上がりかかっている。白煙も見える。超えた先はただただ平坦な土地だ。私はルームミラーを再度確認する。・・・っと。少年が有刺鉄線にスケボーを引っ掛けたようでその先にあったアスファルトを超えて茂みの中に転げ落ちていった。これで追手は全て撒いた。
アスファルトの道沿いに車を走らせて敷地の西の端まで走らせる。となりでは大型旅客機が着陸した直後のようだ。そう。ここは松山空港だ。
松山空港の西の端は海に面している。私は今回事前にICAに頼んでこの西の端の岸壁にゴムボートを用意してもらった。本来なら瀬戸内海にゴムボートで出ても仕方がないだろうが、今回は“迎え”が来ているので問題はなかった。
私は岸壁の近くに車を停めると中のケースをもって岸壁を乗り越えた。
「遅かった。」
「そうか?これでもかなり急いできた。おかげで市内はめちゃくちゃだろうが。」
ゴムボートではタバサが待っていた。すでにゴムボートを操縦できるまでにこの世界になれたということだろうな。
私はちらっと後ろを見る。かなり遠くだが体制を立て直したスケボー少年と空港に乗り込んできた警察が総出で追ってきていた。なんとヘリコプターまで動員している。ゴムボートに乗り込むと沖に向けて出発した。出発してから数分後に今まで居た岸壁に警察やあの少年が立ちすくむのが見えた。しかし警察のヘリコプターは相変わらず追ってきている。
「ここでまつ。」
「と言ってもすぐ側だろうに。」
岸壁から3キロほど離れた位置でボートを止めた。上では警察のヘリコプターがしきりに投降を呼びかけている。
ゴゴゴゴ
そのうち海面がうねりを上げ始めた。そして黒光りする物体が我々のゴムボートごと海面から持ち上げた。ICA所属の潜水艦である。
私はゴムボートから降りてすぐ近くにあったハッチを開ける。上空のヘリコプターに追われると厄介だが海中ならば手は出せまい。
っと、ICAは念を入れるようだ。潜水艦後方のVLSハッチが開いた。凄まじい轟音とともにミサイルが発射され警察のヘリコプターに直撃した。何もそこまでやらなくてもいいと思うのだが。
バラバラになって墜落するヘリコプターを横目に私は潜水艦の中に入りハッチを閉めた。潜水艦はゆっくりと潜行を始め、そのまま太平洋へ脱出した。
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~同時刻 コナンside~
「な、何だあれは!?」
「潜水艦だと!?」
何処へ逃げるつもりなのかは予想していて、松山空港に警察を先回りさせて飛行機での脱出を阻もうという作戦だったが、まさか潜水艦だと!?
そのうち彼らを収容している最中に後部VLS発射管から対空ミサイルが打ち出され、追っていた警察のヘリコプターが撃墜された。ミサイルまで持ってんのかよ!奴らの収容が終わると潜水艦は海中に沈んで行った。
「くっ!海上自衛隊に協力要請だ!相手はミサイルを持ってる。十分に気をつけろと伝えろ!」
「はい!」
となりでは駆けつけた目暮警部が他の警官に指示を飛ばしている。だがおそらく逃げられてしまうだろう。
何者なんだあの男。黒の組織だってあそこまで大胆じゃない。ともかくあいつが乗ってきてたあの車を調べてなにか手がかりを・・・。
ピピピドカーン!
時限爆弾!証拠もたった今吹き飛んでしまった!
「くっそお!」
全てが計画的で計算しつくされてる。読み負けだ。
どうやら黒の組織以上に厄介なのが居るようだぜ・・・。
ミッションコンプリート
・「外部犯」 +1000 『コナン・毛利一家・園子に会わない。』
・「風を読み切って」 +3000 『700m以上の距離で狙撃する。』
・「クレイジーヒットマン」+3000 『車で200km/hを出す。』
・「ICAの実力」 +5000 『潜水艦で脱出する。』
なんか劇場版並みに派手になってしまった・・・w
2019/06/17追記
この話を書く直前にコナンの映画を2~3本連続で見てた記憶があります。最近のコナン映画はとりあえず開幕でどっかの施設爆破するのやめましょうよ・・・w爆発オチならぬ出落ち爆破になってますがなw
次回はすこし趣向を変えてお送りします。