HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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HITMAN『ICAの試験 ~side.ブルー~』

『ようこそ。アサダーバードへ。ブルー。』

 

『私は今回の作戦をサポートするAIオペレーターです。』

 

『作戦概要。アサダーバード内に潜むターリバーン系武装組織“ナルフッタ・クイール”の参謀を務めているハルドゥエラ・カリがターゲットになります。』

 

『依頼人情報。アメリカ国防総省統合参謀本部長様より承っております。依頼理由。同地域内におけるアメリカ軍兵士の補給路確保のため。対抗勢力弱体化工作。』

 

『今回の作戦は上層命令として“ターゲット以外の殺傷の不許可”が出されています。ご注意ください。』

 

『準備は一任されています。ご武運を。』

 

 

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はじめての一人での実戦任務。それだけ信頼されてきたってことかしら。シルバーは別の任務で頑張ってるみたいだったし、私がここでしくじる訳にはいかないわよね。目標は武装勢力の参謀。人を殺すのはまだあまり気がすすまないけど私ならやれるわ。自信を持たなくちゃ、何のために今まで頑張ってきたのかわからなくなっちゃう。

 

まずは町の外周部から偵察ね。私が今いるのは町の北側、結構広い田園地帯の西の端っこ。ここは微妙に標高が高くて町の詳細がよくわかるわ。

 

 

・・・っと、一番目立ってる建物の屋上に銃を持った兵隊が居た。他の家にはそんな兵隊は立っていないし、あの建物はこの町でどうやら一番大きそう。軍事拠点化するのには最適ね。とりあえずあそこを目指しましょう。

 

まずは田園地帯を通り抜けなければならないのだけど、このまま進んだんじゃすぐにあの兵隊に見つかってしまうわね・・・そうだわ。

 

 

「でてきて、メタちゃん。」ポポン

「メタちゃん、この田んぼの色と感じに変身して私を覆って。」

 

 

メタちゃんは詳細に体の大部分を田んぼの色合いと少し茂った草に擬態させた。そして半球ドーム状に展開すると私に覆いかぶさった。これで遠目からではまず見破られることはない。私ってば冴えてるぅ!

 

私とメタちゃんはそのまま田んぼが終わるところまでその状態で移動した。何処からも撃たれず騒ぎにもなっていないところを見てバレずに進んでこれたようだ。市街地との境界にたどり着いて、直ぐ側の路地裏に入った。

 

 

「ありがと。メタちゃん。戻って。」パシューン

 

 

メタちゃんを戻した後、慎重に目的の建物まで路地裏を伝って進んだ。路地裏には偶に兵士が巡回しているようで何度かバレかけたけど大事にならずに目的の建物までたどり着くことに成功。この塀の向こう側が目的の建物、どうやら元々スーパーか何かだったみたいね。でも塀から建物までが少し距離があって、塀を乗り越える時にかなりすばやく越えないと屋上の兵隊に見つかりそう・・・。でもあの兵さっきから一方向ばかり見てるからひょっとしたら行けるかしら・・・?

 

観察していると兵隊に動きがあった。胸につけている通信機となにか連絡をとったと思えば屋上の奥の方へ歩いていってしまった。よくわからないけどこれはチャンスね。塀自体は大した高さじゃないから訓練を積んだ私にとって越えることはお茶の子さいさい。この程度ならぷりりの力を借りるまでもないわ。

 

首尾よく建物に張り付くことが出来た。敷地内は雑草が生い茂っていて隠れるところは十分にありそう。建物内はなんか騒がしいけどとりあえず入れそうなところを探しましょ。建物のこの面はドアどころか窓すら無いからとりあえず少し西に移動して・・・。

 

 

「ん?何だ?今音がしたような・・・。」

「(やば。)」

 

 

草むらを進んでいく音を西側を巡回していた兵隊に気付かれたらしい。どうしよう・・・やり過ごせればいいけど、この世界の人って発見したら反射で銃を撃っちゃうからポケモン出してる余裕もないし・・・。うん、やっぱり今のうちに先制攻撃有るのみ!

 

 

「でてきて、ブルー。」ガウッ

「ブルー、茂みに隠れながらあの兵士の後ろに回り込んで“とっしん”よ。くれぐれも見つからないようにね。」ガウッ

 

 

ブルーは巧みに茂みに身を隠しながら移動している。私は少し離れたところから見守る。兵は段々とこちらに近づいてきている。間に合って・・・!私と兵の距離が2mを切ったその時。

 

ガウッ!

「ん?うぉわ!」ゴッ

「やった!」

 

「お疲れ様。ブルー、いい感じよ!」パシューン

 

 

ブルーの突進は綺麗に兵士の腰のあたりに直撃し、兵士は壁に叩きつけられてノビてしまった。作戦成功!でも大きな音が建物の中に響いた可能性もあるから早めに移動しなくちゃね。

 

私は西側をちら見すると直ぐ側に中にはいれそうな壊れた窓があった。周囲に目を配りつつ窓を覗いた。窓の向こう側は荒れ果てた部屋があった。余り物が置いていないので何に使われていたのかさえよくわからない。しかし敵兵も居なかったので私はそのまま窓から内部に侵入した。

 

 

入った部屋には何もなかったが、隣の部屋には機械が色々置いてあった。隣の部屋との壁が崩れて通れるようになっていたので、そのまま部屋の中を探索した。入り口はコンクリートか何かで塗り固められていた。ということは本来この部屋は入ることはできない部屋になっているということ。私はこのおいてある機械に何が秘密があるんじゃないかと思い詳しく調べることにした。

機械はボイラーのような構造をしていたけど、動いている音はするのに熱は発せられていなかった。

 

 

「でてきて、ニドちゃん!」ガー!

「この大きな機械を取り外して。」ガウ

 

私はニドちゃんに頼んで地面にめり込んでいる空気清浄機付きダクトのようなものを外してみた。中は結構深い。私がどうやって内部を調べようか思案していると、

 

 

 

ダダダダダダ

 

外から銃声が聞こえた。何やら戦闘が勃発しているらしい。物騒な地域だとは聞いていたけど日常的に襲撃があったりするのかしら?

するとダクトの下から重い扉が開く音がした後、声が聞こえてきた。

 

 

「い、いいかおまえら!敵が排除されるまで俺はこの部屋から出ないからな!」

「わかってますから落ち着いてください。ハルドゥエラ様。ここなら安全ですから。」

「お前たちは全員侵入者の排除に向かえ!急げ!」

「わかってますわかってます。ではここから動かないでくださいね。扉を閉めます。」

「早く!急げ!」

 

 

どうやらこの下はセーフルームっぽいわね。ということはこの部屋にあるいろいろな機械はそのセーフルームの生命維持装置ってことなのかしら。

私はとりあえず下のセーフルーム内にいるのが何人かを確認することにした。声が1人以外聞こえないので多分1人だとは思うのだけど。

 

 

「メタちゃんもう一回お願い!」ポポン

「望遠鏡に変身できる?この下の部屋がどうなってるのかがみたいの。」

ウニュウニュ

 

メタちゃんはぐねぐねと体をこね回すと、ダクトの中に体を半分垂らしていった。そのうち流体状の体が固まって黒い望遠鏡みたいなものになった。潜水艦の潜望鏡を上下逆にした感じといえばわかりやすいかしら?

私はそれを覗くと、下のダクトカバーの手前にレンズの先があるような感じに見えた。ダクトカバーは格子状で中が微妙に見える。中にはやはり人は一人しか居ないようだ。私はその人物の顔を確認した。

 

 

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『映像解析中・・・完了。ターゲットを確認しました。ハルドゥエラ・カリです。任務を遂行してください。』

 

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私はそのままセーフルームの構造を把握しにかかる。セーフルームはベッドやソファなどがあり、壁には重火器が見える。しかし扉は厳重に閉められており、NBC対策なのかドアは水密式。これはチャンスね!

 

 

「ニドちゃん、メガトンパンチでこの部屋にある機械を全部壊しちゃって!」ガー!

 

 

ニドちゃんは手始めに一番手前にあった配電盤のような機械に一発お見舞いした。ダクト下から漏れ出ていた光が消えた。どうやら本当にセーフハウスの配電盤だったようね。ようし!この調子でどんどんやっちゃいましょ!

 

色々なものを手当たり次第に壊していく。ボイラーのような大きな機械、貯水タンク、もう一つあった空気清浄機っぽい室外機も。ありとあらゆる物を壊している。結構派手な音がしてるけど、外でも似たような音がしてるから多分大丈夫よね?

 

あらかた壊し終わった後の惨状はなんとも言えないものね。一発ミスって壁に穴開けちゃったけど大丈夫かしら・・・。

 

 

「ご苦労さま。今は休んでて。」パシューン

 

「なんだ、何が起こってるんだ!暗くて何も見えないぞ!」

 

 

下にいるターゲットは相当慌ててるわね。でもやってるうちに気がついたけど、ここの機械壊してもせいぜい扉が開かなくなるくらいでターゲット自体は生きてるのよね・・・一緒のこと唯一の換気口であるここを塞いじゃうって手も・・・。ああ、そうだ。

 

 

「カメちゃん、でてきて!」ガメー

「カメちゃん!このダクトに水を大量に流し込んで!」ガメー

バシャー

「うわ、なんだ!水が!どうなってるんだ!」

「いいわよカメちゃん。どんどん流し込んで。」

 

 

セーフルームはこの換気ダクトしか出入り口がない状況。そこから大量の水を流し込んで水で満たしてしまえば・・・扉を開けられないターゲットは万事休すってわけ。

カメちゃんは順調にセーフルーム内を水で満たしていってる。ターゲットはもうバシャバシャもがいている音がするだけになっている。そのうち水面が上からでも確認できるほどになった。セーフルーム内を完全に水で満たせたようだ。

 

 

「カメちゃんもういいわ。水を止めて。」ガメッ

「ついでにこのあたりにある瓦礫で蓋しときましょうか。」

 

 

私はカメちゃんに適当な瓦礫を指定すると、換気ダクトを完全に塞ぐように設置してもらった。これで完了っと!

 

 

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『ターゲットの生命反応消失を確認。作戦地域からの離脱を開始してください。』

 

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「ご苦労さま!ゆっくり休んでて。」パシューン

 

どうもこのAIオペレーターってのは人間味がなさすぎて好きじゃないわね・・・。ともかく作戦は完了。さっき壁に開けてしまった穴から外を確認する。なんか遠くでやってたゴタゴタもいつの間にか静かになってるし、巡回が戻ってくる前に早めに脱出しなきゃ。周りに人が居ないことを確認した後、慎重に穴から出て塀の近くの茂みに身を隠す。屋上を確認すると誰も居ないようだったので、私はすばやく塀を乗り越えた。

 

 

ビービービー

 

塀を乗り越えた瞬間、後ろの建物内で警報音がなり始めた。もしかしてもう発見されたの?セーフルームなだけあって予備電源くらいは用意してたってことかしらね。まあともかくすでに建物の外にいる私は捕まえられないわよっと!

 

そのまま来た道を戻るように路地を縫って進む。途中何度か巡回兵に出くわしたけどブルーとニドちゃんの“とっしん”の前に銃を打つ前に気絶させることに成功したから無問題。私はそのまま市街地を抜けて北側の田園地帯の端まで走り、ICAの用意した車両で脱出した。

 

 

 

 

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~3日後~

 

 

『では結果を発表するわ。』

「・・・。」

『ブルーあなたは85点。合格よ。』

「!・・・やった!」

『敵兵を1名も殺傷せず、敵兵に侵入を気づかれこそしたものの位置の把握をさせなかった。そして確実にターゲットのみを暗殺することが出来た点が評価されたわね。』

「あのときはこれが試験だとは微塵も思ってなかったですけどね。シルバーも別の地域に行ってるのかと思ってたし。」

『あら、シルバーはあなたがあそこに居るのはわかっていたようよ?あなたは気が付かなかったのね。』

「えっ?もしかして近くに居たのかしら?」

『いいえ、どうやらそういう気配とか感覚的なことらしいわね。確証を持ったのが撤収してる最中だったらしいけど。』

「そう・・・後で問い詰めなきゃ!そういう気配みたいなのが命取りになるってこの前47も言っていたし。」

『そういえば47が居ることも気がついた?あなた達の監督役をやっていたのよ?』

「えっ!?全然気が付かなかった・・・。」

『あらあら。一番目立つところに居たのにね。それに気が付けないようでは後の15点はあげられないわね。』

「うーんまだまだ精進が必要みたい・・・。」

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「チュートリアル」  +1000 『潜入してターゲットを暗殺する。』

・「サイレントガール」 +3000 『敵兵に位置を把握されないで任務を遂行する。』

・「仲間とともに」   +1000 『3匹以上のポケモンを使用する。』

・「プライベートビーチ」+3000 『セーフルーム内にいるターゲットを溺死させる。』

 

 

 

 

 






次回は47sideです。

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