『アサダーバードへようこそ。47。』
『ここは世界一危険な国境として裏社会ですら恐れられるパキスタンとアフガニスタンの国境地帯。アメリカ軍ですらあまりの攻撃頻度に撤退を余儀なくされた超危険地帯よ。』
『でも今回、47にやってもらいたいのは実は暗殺ではないの。ブルー、シルバー、タバサが最近加入したおかげでICAも諜報員補充のめどがたったんだけど、上層部はまだ彼らを暗殺者としては信頼しきれていないみたいなの。そこで上層部は3人を試験することにしたの。』
『ターゲットは3人。このアサダーバードを拠点とする武装組織、最近急速に勢力を伸ばしているターリバーン系の過激派組織の一つ“ナルフッタ・クイール”。その指導者アルザ・エラード。その側近であるハルドゥエラ・カリ。最後の一人はアメリカからやってきた軍事顧問のパーリー・シモンズ。この3名よ。』
『彼ら3人をブルー・シルバー・タバサの3人が個別に別々の目標を暗殺するわ。47にはその成果査定と緊急時の対応をお願いしたいの。上層部からは、くれぐれも47がターゲットを始末するような事態にならないようにと厳命されている。注意してね。』
『準備は一任するわ。』
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ジリジリと照りつける太陽が道に陽炎を作っている。私は今、ターゲットの所属する武装組織の兵士に扮して最上階から周囲を監視している。今回試験が行われる3人にはターゲット以外の死者を出さないようにと命令が下っているとのことだ。よって私が見晴らしの良いところで監視していても、弾丸が飛んでくる可能性は低いだろう。
今回は特別に技術部特製の耳あてとガスマスクが支給されている。ブルーのポケモンの眠気を誘う歌やタバサの眠りの霧から身を守るためだ。しかし耳と口と鼻を覆うこの装備はこの炎天下ではかなり暑い。ここで通信が入る。
『47、シルバー、ブルー、タバサの三名が町に入ったわ。そちらから確認できるかしら?』
「いや、こちらからは確認できない。少なくとも訓練施設では堂々と街のメインストリートを歩けとは教えられないはずだ。」
『そう。少なくとも第一歩は合格ね。』
「こちらは普通に現地兵と同じように対応してよいのか?」
『基本的には現地兵になりきって行動して頂戴。ただ弾丸は当てないようにね。』
「了解した。」
私はそのまま屋上で見張りを続ける。この建物は廃業したスーパーマーケットをベースキャンプに改造して使用しているようだ。3階建てで、私はその上の屋上にいる。内部にはアサルトライフルで武装した多数の兵士がおり、3階中央の部屋にターゲット3名の内2名が居る。もうひとりは地下の駐車場を改造して作られた研究施設におり、どちらも警備はかなり厳重である。
私は見張りを続けながら、彼らがどんなアプローチを仕掛けてくるのかが楽しみになっている。っと、建物の敷地の外で巡回中の兵士が一人路地に後ろ向きに入っていくのを確認した。おそらく3人のうちの誰かだろうが私は現地民と同じように対応する。
「6-7-4、こちらG-1、何をしている。状況を報告せよ。」
「・・・。」
「6-7-4、応答せよ。」
「・・・あー、こちら6-7-4。」
「6-7-4、そんなところで何をしている。通常の巡回ルートから外れているぞ。」
「あー、えーと・・・少し気になるものを見つけたもんで。大丈夫、すぐ戻る。」
「ううむ・・・G-1了解。早めに戻るように。」
「6-7-4、了解。」
かなりギリギリだがまあセーフにしておこう。あの声はシルバーか。すぐに6-7-4が路地から出てきた。だが遠目からでもわかるその赤黒い髪はシルバーの髪だ。小隊長クラスならば見破るかもしれないな。
「CPより各小隊へ。アサダーバードに不審人物が少なくとも3名侵入したとの報告あり。厳重に警戒せよ。」
CP、つまりコマンドポストからの通信が入った。3人の侵入が発覚し、建物内の兵士も警戒態勢に移行した。
『47、3名の侵入の情報をHQに流したわ。行動が雑になって露呈するかもしれないから注意深く見てて。』
「了解。」
私は一度屋上から降りて、3階の作戦司令室に移動した。中ではターゲットのうちの一人である、パーリー・シモンズが各小隊長に指示を飛ばしていた。
「屋上の警備だな、お前も手伝え。」
「なんなりと。」
「第4小隊に随行して東側で先程定時連絡が途絶えた第8小隊の状況を確認してきてくれ。」
「了解。」
私は第4小隊の隊長についていく形で部屋を出た。正面から出て東へ向かう。路地裏は入り組んでおりいつ何処から敵が出てきてもおかしく無さそうな雰囲気をしている。
路地裏を数百メートルほど進むと通路の奥、定期巡回コース上で複数の倒れている兵士を発見した。私は小隊長に許可をとって、用心しながら現場へ向かった。
「・・・。」
「・・・。」
兵士が倒れている角を曲がると、ターバンに身を包んだ小柄な人物が、路地裏の奥まった場所に眠らせた兵士を運んでいる最中に出くわした。私は兵士になりきらねばならないのでそのとおりに行動した。
「コンタクト!」ダダダダ
「!」サッ
「どうした!」
「前方のゴミ箱に不審者1名。仲間の兵を引きずって何処かへ運ぼうとしていました。」
「何だと!あの箱だな!小隊!攻撃開始!」
「私は通信を。」
ダダダダダダダダ
「CP、CP、こちら4-10。」
「こちらCP。」
「正体不明の不審人物をエリアK-7にて発見。現在交戦中。」
「CP了解。全隊に通達。最寄りの小隊は至急応援に向かえ。」
私は手順通りに通信をして応援を要請した。すると向こうもまずいと思ったのか応戦してきた。路地で制圧射撃をしていた兵士何名かがエアハンマーで吹き飛ばされ壁に体を打ちつけて気絶した。私も路地から身を乗り出して応戦する。するとゴミ箱の向こう側から青白い霧が出てきて私達を包んだ。通信が入る。
『47、スリープクラウドに被曝。10分間行動停止。』
「了解。」
周りに居た第4小隊の面々もその霧にやられ次々と倒れ眠っていく。私はガスマスクのおかげで防げてはいるが効いたという体でその場に倒れる。
その場に居た全員が倒れ伏すと、ゴミ箱の奥からタバサが出てきた。兵士ひとりひとりをレビテーションで浮かばせながら順番に引きずっていった。しかし時間が足りなかったようだ。3人目を運ぼうとしたときに,なにかに気がつく素振りを見せると足早にその場から去っていった。
少ししてから路地の反対側から別の小隊が駆けつけてきた。兵士一人ひとりを起こして回っている。私も何度か顔を叩かれて起きたふりをする。
「どうした!なにがあった!」
「わからない。敵性勢力と交戦中に急に意識がなくなった。」
「敵は何処へ行ったかわからないか?」
「気を失っていたのでわからない。ただ相手は一人だった。」
「一人か。他にも2名ほど侵入しているようだからな・・・我々は第5小隊だ。これより第4小隊と合流する。」
「了解。」
私達は一度本部の建物へ戻ることになった。第5小隊に先導されつつ本部の建物に戻ると、入口に居た兵士二人が気絶しているのを発見した。周りはなぜか水浸し、彼らもびしょ濡れだ。小隊長が駆け寄って声を掛ける。
「どうした!何があったんだ!」
「・・・うっ・・・ここは・・・。」
「気を確かにもて、本部の前だ。」
「あいたたた、何故か急に洪水のような水が押し寄せてきて・・・後は覚えてねえ・・・。」
「洪水だと?そんな物起きるわけがないだろう!」
「本当だよ!現にこの辺濡れてるじゃねえか!」
「ううむ、一体どういうことだ・・・。」
小隊長が首を傾げるのも無理はないだろう。この周辺は乾燥した山岳地帯だ。雨が降ることはあっても洪水などはめったに起こらない。ましてや同じ町中に居た我々には、影響どころか音すら聞こえなかった洪水など、夢でも見ていたのではないかと思うのも仕方のないことだろう。
私はそのまま正門の二人を起こしつつ、確信する。すでにこの建物の内部に誰かが潜んでいるか誰かに変装しているのだということを。通信が入った。
『47,ターゲットの一人、ハルドゥエラ・カリの死亡を確認したわ。暗殺に成功したのはブルーのようね。彼女のポケモンがパニックルームを水で満たしたみたい。』
「ほう。なかなかやるな。では後二人か。」
『ええ、ブルーはすでに脱出を始めてるわ。』
「そう言えば今回は彼らにオペレーターは付いていないのか?」
『付いてはいるわ。ただ人間ではないけれどね。』
「人間ではない?」
『ええ。外部招致でICAに来たAIの専門家が作った管理AIが彼らのオペレーターを務めているわ。これも試験のうちなの。』
「なるほど。そのうち君もお役御免になる日が来てしまうかな。」
『あら、私は今のこの仕事を譲る気はなくてよ。今回も試験段階で採用はまだ当分先。採用される頃には私は引退してるわ。』
「なるほど。とにかく、後二人。このまま観察を続ける。」
『ええ、お願いね。』
今更だが通信は体内通信で行われている。フォックスハウンドの技術を流用して作られているらしく、これがあれば周囲に気取られること無く本部と通信が可能ということで今回導入されたものだ。
私は本部内に戻り、3階の司令室へ向かった。司令室ではターゲットのパーリー・シモンズが引き続き陣頭指揮を取っていた。私が部屋に入り、路地で起こったことを報告していると伝令と思われる兵が駆け込んできた。
「報告!ハルドゥエラさまが敵の攻撃により死亡!」
「なんだと!?それは本当か!彼はパニック・ルームにいたのではないのか!」
「それが、パニック・ルーム自体が水で満たされていたようで。外から開いたときにはすでに溺死されておりました。」
「なんと・・・一体どうやってそんな大量の水を・・・。」
「わかりません。現在、地下司令部はエラード様が指揮しておられます。」
「わかった。私も少ししたらそちらへ移る。準備をしておけ。」
「はっ!」
伝令兵は威勢のよい返事をした後部屋を出ていった。シモンズは頭を抱えてなにかぶつぶつと独り言を言っている。そのうちのどが渇いたのか台に乗せてあった飲み物を口にした。ああ、なるほど。そういうことか。
「うぐぐ、こんなときに・・・うっぷ・・・」
「シモンズ殿。いかがされましたか。」
「ちょっと気分が悪い。トイレに行ってくる。私はその後そのまま地下へ向かう。後を頼むぞ。」
「了解しました。」
私は彼がトイレに行くのを横目で見つつ作戦司令室の台の上の地図を眺めていた。少ししてから通信が入った。
『47,二人目のターゲット、パーリー・シモンズの死亡を確認したわ。やったのはシルバーのようね。』
「ほう。やはりあの後そのまま内部に潜伏していたか。死因は予想通りだろうな。」
『そうでもないわよ。トイレの中でワイヤーによる絞殺。この辺は水道が通ってないからトイレにも水が溜まってないのよ。』
「そうなのか。ともかくあと一人だな。それが終われば私も退却してよいのか?」
『ええ。そう・・・っと。もういいみたいよ。』
「ん、ということは。」
『ええ、アルザ・エラードの死亡を確認。タバサがやったわ。死因は氷の矢による串刺しね。』
「あいつらしいやり方だ。」
『直にそこも騒がしくなると思うから今のうちに覚悟しておいてね。』
「了解だ。」
ビービービー
その言葉通り、少し経ってから建物内で警報がなり始めた。戦闘態勢になって外を見る。外では兵士たちが右往左往しながら侵入した敵を探していた。私は屋上警備に戻っていたが、警報に際しあたりを見回すと、東の外壁から小柄な不審者が飛び降りるのが見えた。そこで通報しても良かったかもしれないが、それ以降姿が見えなくなったので見間違いということにしておいた。
それから数十分ほど屋上で警備した後、建物から出て外の警戒を始めるついでに街の端まで行って、放置されていた車を使って脱出した。
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~1ヶ月前~
『あなたがAIの専門家さん?』
「ええ、いかにも。私がそうですね。」
『注文しておいた3つの管理AIはどこ?』
「ああ、アレならすでに係の人に渡しましたよ。今モニタに出しますね。」
『これが・・・AI?』
「ええ。私達が生体工学や量子力学等、数十種類の学問を組み合わせて作った、最先端の学習型AIです。」
『見た目は10代の若者って感じだけど・・・で、何ができるわけ?』
「それはあなた方次第です。逆に言えば何でもできる。実際に物を動かすようなこと以外はね。それも専用のアタッチメントを動かす権限を与えれば自在に動かしてみせますよ。」
『それぞれ容姿が違うデザインだけど2人は女の子で1人は男の子なのね。』
「ええ。バリエーションがあったほうがいいということですよ。アダムとイヴみたいにね。ちゃんと名前も決まっているんですよ!」
『名前は決めてあるのね。聞かせて頂戴な。』
「ええもちろんです。ご紹介します。」
「左がキャロライン。真ん中がチェル。右の男の子はウィートリーです!」
ミッションコンプリート
・「エージェント達」 +5000 『3人全員がターゲット排除に成功する。』
・「街路掃討戦」 +1000 『エージェントと交戦する。』
・「シエスタタイム」 +1000 『タバサのスリープクラウドを食らう。』
・「首席卒業」 +1000 『1人以上が47を顔を合わせずに任務を完了する。』
3人に別ルートから侵入してもらいました。47も後輩ができて嬉しそうです。表情は全く変わりませんけど。
2019/06/17追記
一番頭を悩ましたのが実績部分だったような気がしますwこの辺りからネタが尽きかけてきてます。
次回は極寒の大地へ向かいます。