『ネバダテストサイトへようこそ。47。』
『ここは1951年からアメリカ軍によって使用されている核実験場。今回の目的は2つ。この実験場に視察に来ているアメリカ上院議員タカ派の"ケビン・クロッソノス”の暗殺。彼は国際査察から逃れられる、秘密裏な核攻撃を目的とした新しい核兵器を軍と共同で開発しているの。今回、このネバダテストサイトでその最初の実験が行われる予定。』
『クライアントは同じくアメリカ上院議員のオーマッド・スコット議員。もともと穏健派だった彼はクロッソノスのやり方に早くから反対し、秘密裏の交渉や説得を何度も行ってきたけど、態度を軟化させるどころか逆に計画を早める結果になってしまった。このままでは合衆国が第三次世界大戦の口火を切ることになる。一刻の猶予もないと感じたのでしょうね。それで我々に依頼するという最終手段に出たわけ。』
『それと、今回は別件の任務も同時に入っているわ。それはターゲットを排除した後に通達するわね。』
『準備は一任するわ』
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ブロロロロ…
私は今、ICAが用意した軽装甲車両に乗って指令センターの建物を目指していた。どうやらタバサがネリス基地から拝借してきたらしい。
今回の任務は色々と厄介なことになるだろう。私は今回技術部に以前から要望していた装備が完成したということで持参した。シルバーボーラーをベースに開発した新型の麻酔銃だ。直径0.001mmの針を打ち出す方式になっており、先端部分には例の新型麻酔薬が塗布されている。体のどの部分に当てても数秒で深い眠りに誘い込まれ、数時間は眠り続けるという。潜入にはもってこいだ。しかも針自体が非常に小さいため、元になった銃のマガジンをすべて使って針を装填した結果、弾数は驚異の670発だ。乱発しても問題はないだろう。
しばらく荒野をひた走ると、水平線上に建物が見えてきた。近づくに連れてその建物が最近新しく立てられたものだということがわかる。L字型の2階建てのコンクリート造り。屋根の上には巨大なレーダードームのようなもの。周囲には簡易的な駐車場と申し訳程度の花壇。そしてそれらを囲う高さ2mほどのフェンス。急造のためなのかフェンスに有刺鉄線は付いていなかった。私は建物正面に立つ兵士を避けるように駐車場の一番端に車を止める。私は車から降り、正面ではなく建物の側面へ回る。現在時刻午前10時。あまり大胆な行動は十分に日が昇っている今は避けざる終えない。
フェンスの向こう側に建材と思われる資材が置かれている場所があった。私は周囲に人が居ないのを確認してフェンスを乗り越える。乗り越えるとすぐに資材と資材の間に身を隠した。
とりあえず敷地内には潜入できた。この建物自体はそれほど大きな建物ではない。この新型麻酔銃ならば制圧できるだろう。私は早速新型麻酔銃をテストすることにした。建物の周囲を巡回している警備兵がいる。私はその警備兵の足に向かって麻酔銃を撃った。心臓や脳から一番遠い足首の部分に麻酔弾を食らった兵士が何分持ちこたえられるのかを見たかった。
パシュン
プス
「ん?蚊か?今何か触った・・・よう・・・な・・・。」
バタッ
・・・効果が早すぎる気がする。針が刺さってからものの5秒足らずで昏倒した。これは頭部に直接打てばその瞬間に昏倒するかもしれないが後遺症が残らないかが心配だ。ともかく実験は成功。私はそのまま建物に張り付く。換気のために開いていた窓から内部を覗く。
ハハハハ
中で談笑しながらポーカーをしている3人集団を発見した。私は一番奥に一発。手前側の2人にも一発づつ連続で食らわせる。
パシュパシュパシュ
「んあ、なんかさわっ・・・た・・・」
「う~ん・・・」
「・・・グゴー」
我ながらとんでもないものを要求して、とんでもないものが配備されたかもしれないと思い始めた。これでは素人でも潜入任務ができそうだ。だが有用なことに変わりはないし、私は暗殺に関してポリシー等を持っていたりもするわけではないので今後も利用させてもらう。
机に突っ伏して眠りこけた3人を確認し、窓から内部に潜入する。そのまま休憩室と思われるこの部屋を通り抜け廊下に出る。廊下といっても扉の先はロビーのような広間になっていた。ソファが置いてあり、観葉植物がエアコンの風に吹かれてたなびいていた。私は広間の端に階段を見つけた。近寄ってみるとなるほどそういうことかと思った。
実験施設の指令センターにしては作りが簡素だと思ったものだが、この建物自体は見せかけだ。どうやらかなり深い位置に地下室が有るようだ。私は横に備え付けられていたエレベーターに乗り、表示上の最下層である地下2階へ降りた。階段の隙間から見た高さは少なくとも地下数百mは有ると思うが。
地下2階に到着した。念の為エレベーターの扉の上のスペースに隠れていたが、扉が空いても向こう側に人の気配がしないので私は慎重に廊下へ出た。廊下は白一色で無機質この上なかった。いくつか扉が有るが、その一番奥に赤い絨毯が敷かれている部分があった。おそらくあそこが司令室だろう。しかしいきなり行くのも後々厄介なので、私は部屋を一つ一つ制圧していくことにした。
最初の扉を開けると中で数人の職員が事務作業を行っていた。私は扉から目に見える範囲の人物に麻酔弾を片っ端から打ち込んでいく。目に見える範囲が全て眠ったのを確認して部屋に入り、更に誰かいるかを探る。居た場合はすかさず麻酔銃だ。
そんな事を繰り返しているうちに、とうとう司令室以外のすべての部屋のクリアリングが終了した。5番目の部屋に居た数十人を全員眠らせているときは、流石に自分の行動に疑問を持ち始めてしまったが。ともかくこれで司令室以外に人気はなくなった。
私は司令室の重厚な木の扉を開ける。当然監視カメラが設置されていたが、先程監視カメラの記録装置のある警備室は制圧したので問題はない。私はターゲットを探した。今まで制圧した部屋にはターゲットが居なかったためだ。私は中央モニタの前で数人と話している人物の中に一人だけスーツの男が混じっているのを確認した。慎重に近づきつつ本人確認を行う。いくつか有るコンピューターの操作盤や、書類やファイルが山積みされた事務用机は、身を隠すにはうってつけだった。私は操作盤に隠れながら何とか集団の10m手前まで近寄ることに成功した。彼らは机の上に広げていると思われる設計図などを、ターゲットに説明しているようだ。
「それで今回はこの新型の亜鉛合金を使うことになりました。」
「ほほう?亜鉛合金。」
「はい。この合金は極めて安定性が高く、高熱高圧に耐え、絶対零度に近い環境化でもその性質を失ったりはしないのです。」
「今回その亜鉛合金が我々が開発した新型弾頭の雷管を構成する部品に使われています。モニタをご覧ください・・・。」
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『アレが、ケビン・クロッソノス上院議員。モニタに注意が向いている今ならやれそうよ。』
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私は近くの机の上に置いてあったペンを取り、彼らよりもさらにモニタ側に放り投げた。
カンッカラカラカラ
「ん、何の音だ?」プス
「どうかなされましたか?」プス
「今何かが落ちた音が・・・。」プス
ドサドサ
気がついた人物から順番に足首、太もも、腰辺りと3人連続で撃った。位置をずらした理由は、薬品の周り具合が先程までの制圧でだいたい把握できていたので、その時間差を利用して3人が同時に眠りに落ちるように調節したためだ。
概ね想定通り3人はその場に崩れ落ちた。異変に気がついた周りの操作盤に居た兵士たちも近くに駆け寄るが、その都度麻酔銃の餌食になった。ついには司令室内もあらかた制圧し終え、この建物の地下の中枢部分は完全に制圧された。
私は物陰から出てターゲットに近寄った。そしてブリーフィングで確認した顔と一致するターゲットを確認し、彼の首を静かに折った。すると珍しく相互通信の方でオペレーターから連絡が入った。
『ターゲットダウン。よくやったわ。じゃあ脱出、と言いたいところだけど、ここからは別件の仕事をすぐに通達するわね。』
「珍しいな。」
『でしょうね。本来なら相互通信は当人の注意が散漫になるから行われないのだけれど、今回は特別。』
「それで、追加任務とは。」
『そこは司令室よね。当然通信設備も有る。47、あなたにはICA本部から送られてくるソフトウェアで、その司令室からある物を制御してもらうわ。』
「ある物?」
『詳しいことは機密事項だから話せないわ。とにかくコンピュータを操作して頂戴。』
「了解。」
何をさせる気かはわからないがとりあえず指示に従う。いくつか有るコンピュータのうち手近なものを触る。まずはICAのサーバーとのコネクションを繋ぎ、セキュリティポートも開けた。
『画面にいくつか承認要求が出るから全部承認して頂戴。』
ポートを開けたそばから画面上にいくつかのポップアップが出てきた。それらを承認し続ける。書かれている内容はどうやら衛星となにか連絡をとっているようだ。遠隔操作でサーバーからデータをICAにアップロードしている。
『そんな・・・まさかすでに完成して・・・。仕方がないわね。』
「どうした?」
『47。今から制御盤をモニタに出すわ。そこに今から言う数値を入力して頂戴。』
「了解した。」
『でたわね?行くわよ。SPEに1056。RAY1に90。RAY2に74.42。TIMに1800。』
「・・・入力した。」
『私の合図でエンターを押して。行くわよ・・・・・・3,2,1,今!』
カチッ
変更完了。そうモニタには出ていた。どうやら軌道計算か何かを弄ったらしい。
『よくやったわ。これで・・・っと、まずいわね。私達の行動に気がついたものが居るようよ。』
「・・・。」
『少なくとも後30分は誰にもコンピュータに触らせてはいけない。侵入者はすでに上の階からエレベーターで降りてきている。』
「迎撃しろと?」
『お願いできるかしら?』
「あまり装備は潤沢ではないがやってみよう。」
私は部屋の入口まで戻り、入り口を警備していた兵士からMP5SDとM9を拝借した。そのまま入り口からエレベーターの方を見る。
エレベーターの扉が開く。私は慎重に乗っている人物を確認する。
「・・・?」
誰も乗っては居なかった。・・・いや。正確には乗っているのが見えなかったと言うべきだ。微妙に空間がゆがんでいる。これはもしや・・・。
私は隣で眠っていた兵士の懐からスモークグレネードを拝借するとピンを抜き、空間の歪みへ向けて放り投げた。1回2回と床をはねた後強烈に煙が噴出される。と、いきなり歪みのすぐ隣にあったドアが勢いよく開いた。やはりあそこに誰か居るのは間違いない。私は威嚇射撃もかねてその扉にMP5で制圧射撃を行った。
パララララララ
サプレッサー内臓のため音はそれほどしていないが、すべての兵士と職員が眠っているこのフロアではその消音器も役には立っていないほどに響いている。私はマガジン交換直前に一旦発砲を止める。空間の歪みが少しドア枠から出てきたところに残りの数発を打ち込んだ。でごたえはない。全て背後のもう片方のドア枠と押し開かれたドアに着弾している。私はすばやくマガジンを交換する。
っ!精密射撃に切り替えたと見せかけたはずだったが相手はマガジン交換のタイミングで一気に近づいてきた。
急いで装填を終えるとまた射撃する。再びすぐ横の扉が押し開けられる。このままでは埒が明かず、いずれここにたどり着くだろう。私は制圧射撃を止め精密射撃に本格的に切り替えた。私が撃たなくなると歪みも廊下へ出てこなくなった。そのまま数分睨み合った後、何かがドアから投げ込まれた。・・・っ!スタングレネードだ!
バシュン!
私はとっさに壁に身を隠してなんとかやり過ごす。やりすごしたあと再度扉に銃を向け…
ガチン!
ガ!ガ!ガ!
向けることはできなかった。廊下へ銃を出した途端、銃は強い衝撃を受けて弾き飛ばされてしまった。間髪入れずに空間の歪みから何かが飛んできた。拳だと理解し、それを受け止めるのに後コンマ何秒か遅ければまともに食らって昏倒していただろう。そのまま近接戦闘に入った。
張り手、回し蹴り、様々な技が飛び交い、一進一退の攻防を演じた。ハリウッドならシュワルツネッガーかジャック・バウアー、中国ならジャッキーチェンが主演を演じるだろう。そんな事を考えていると強烈な蹴りが私の腹部を直撃した。吐きそうな痛みに耐えつつ、一旦距離をとった。
「いいセンスじゃないか。久々だ、ここまで動けるやつと戦うのは。」
「私の体に一撃を入れたのも訓練初期の指導官以来だ。しかしステルス迷彩は反則ではないのか?」
空間の歪みの正体はいつぞやの南米以来の伝説の英雄、スネークだった。また会えるとは光栄だ。
「お前はここで何をしているんだ。暗殺組織なのだから暗殺したらさっさと帰れば良いものを。」
「野暮用だ。」
「野暮用ねえ・・・だがどうやらその野暮用は俺達にとっちゃ許せない案件の一つのようだ。」
「そのようだ。」
軽口を言い合っていたがスネークがついに本題に切り込んできた。ちなみにこの間何発か拳銃を打ち合っている。
「軍の機密衛星を落下させて何を企んでいる!目的は何だ!」
「知らない。私は本部の命令に従っている。」
「あやつり人形ってわけか。お前のやっていることは合衆国を敵に回すことだぞ!」
「繰り返すことになるが私は何も知らないし興味もない。合衆国を敵に回したところで今の状態から何が変わるでもない。」
「だった俺はそれを全力で阻止するだけだ!それがこっちの任務だからな!」
「やらせる訳にはいかない。こちらもそれが任務だからだ。」
スネークはこちらに発砲しつつコンピュータ郡の中へ駆け込んでいった。私は隠れていた柱から飛び出し、机やコンピュータを足場にしながら一直線に向かっていく。先程入力したコンピュータのすぐ手前でぶつかりまた近距離戦闘に発展する。
手や足をお互いに色々なところにぶつけ合いながら、時には別のコンピュータのモニタを割りながら、転がっていた椅子を使って相手の足場を崩したりもした。しかし、さすがは伝説の英雄だった。ほんの少しモニタに注意を取られた瞬間に盛大にボディブローを食らってしまった。私は数mほど後ずさりして痛みに耐えた。その隙にスネークがコンピュータに張り付いた。
「オタコン!どうなってる・・・なんだと!遅かったというのか!」
「・・・。」
ギリギリのところでカウントダウンタイマーは0になった。スネークはコンピュータを操作して映像を中央モニタに出した。他の衛星からの映像だろうか。映像には色々な破片を撒き散らしながら、なにか大きな人工衛星が大気圏に向けて突入していくさまが映し出されていた。
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『47。30分間よく守り通せたわね。すべての任務は完了したわ。帰還して頂戴。スネークとやり合う必要はないわ。』
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私はボディブローから回復すると、焦ってなにかを操作しようとするスネークを横目に司令室を脱出した。エレベーターに乗り地上へ出ると、エレベーターホールの前には数人の倒れている兵士が居た。全員寝ているか気絶しているかのどちらかだった。私は施設の外に出る。正面の警備員も寝ていたので普通に正面から脱出し、乗ってきた車に乗って脱出した。
脱出している最中に背後の実験場内に光り輝く物体が降り注ぎ、そして落下した。
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~3日後~
「それで。結論は?」
『アメリカ軍はすでに施設を完成させておりました。』
「そうか・・・。アレは一度作ってしまえば奪取はほぼ不可能だろう。」
『ええ。ですので47の軍施設への潜入の折に施設のメイン制御コンピューターに侵入を試み、成功した結果がいまテレビを賑わせている“ネバダ大火球事件”です。』
「洋上に落とすことはできなかったのかね?アレでは否応なく目立ってしまう。」
『施設の軌道は巧妙に大洋を避けるように設定されていました。その進路上で一番目立たずにアメリカ軍が処理できるのが、ネバダテストサイトだったのです。』
「ふむ・・・、まあいい。アメリカは今まで以上に宇宙開発を慎重に行わなければならなくなった。それは我々にとって好都合と言える。」
『また、先程入った情報ですが、NASAに潜入していたインフォーマントから、シャトルの設計図の奪取に成功したと報告がありました。』
「おお、それは朗報だ。今のICBM発射機を改造した衛星射出機では小さすぎたからな。」
『もうひとつ。先日カントー地方へ別件で仕事をしていたブルーとシルバーですが、興味深いものを現地で発見し持ち帰りました。場合によってはプロジェクトに寄与するものと。』
「ふむ。そちらに関してはイレギュラーだ。詳細な資料をまとめて提出したまえ。こちらで精査する。」
「了解しました。」
ミッションコンプリート
・「楽な仕事のために」 +1000 『施設地下2階を制圧する。』
・「安らかに眠れ」 +1000 『ターゲットを眠らせてから殺害する。』
・「格闘選手権inネバダ」 +3000 『スネークと近距離戦闘を行う。』
・「ログに残さない仕事」 +5000 『スネークから操作盤を30分間防衛する。』
本来ならば別アプローチを書くところですが、予定を変更して今回はブルーとシルバーの“別件”についてあちらで書こうと思っています。
次回はカントー地方へ向かいます。