HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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###注意###

原作に登場するキャラが死亡する描写があります。作品に思い入れが有る方はご注意ください。


HITMAN『メインディッシュは悲しみの詩』

『ガリア王国へようこそ47』

『ガリア王国はハルケギニアの中央部に位置していてハルケギニア1の超大国。とても栄えていて軍事超大国でもある。我々の感覚で言えばまさに合衆国ね。でも地理や風土、風習、文化に関してはどちらかというとフランスかしら?今回の任務はガリア王国にとってとてもデリケートな問題で、任務自体も国家の盛衰に関わることよ。』

 

『今回の任務はガリア王、ジョゼフの暗殺。ターゲットは一人だけだけど超大国の国王だけあって警備は今までで最高クラスでしょうね。我々のインフォーマントによれば、ジョゼフはこの世界に伝わる“虚無魔法”という特殊な魔法を使うそうよ。どんな魔法かまでは調べられなかったけれど。』

 

『前回のトリスタニアでの任務の後、我々のメッセンジャーに接触してきた人物が居たわ。今回の依頼はそのジョゼフに父親を殺され、母親に精神疾患を患わせる毒をもられた一人娘から。国王暗殺という危険な任務だから依頼料も膨大な額になったけど彼女はそれを用意してみせた。期待に答えなくちゃね?この暗殺が成功すればガリア王国は間違いなく衰退するでしょうけど、我々はあくまで依頼された内容をこなすだけ。常に中立でいなくてはならないの。』

『今回の任務は難しいかもしれないわ。必要ならばライフルや爆薬の使用も許可されている。』

『準備は一任するわ。』

 

 

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私は今ガリア王国の首都、リュティスに来ている。目の前にある王宮は、バンコクにあった高級ホテルよりも数倍は大きい。聞くところによるとハルケギニアで最大の都市なんだそうだ。外周は高さ数mの白塗りの壁で囲われており、整備が行き届いているため穴や亀裂などは見当たらなかった。侵入するには内部の職員か兵士になるしかなさそうだ。しかし物は試しだ。

 

「すみません旅のお方。ここはガリア王国の王宮です。一般人の立ち入りは禁止されています。」

「とてもきれいな宮殿でしたので、一度中を見学させていただきたいのですが。」

「申し訳ありません。王宮内に立ち入る際は事前にアポイントメントが必要なのです。これは規則ですのでまた後日アポイントメントを取っておこしください。」

 

やはり正面からは無理のようだ。ひとまず離れて城下町を探索する。

 

 

日も暮れ始めた頃。一軒の酒場の周りに兵士がたむろしているのを見かけた。私は酒場に入り窓際の席で彼らの会話を聞くことにした。

 

「しかしどうなるんだろうなこれから」

「ん?何の話だ?」

「聖戦だよ聖戦。ロマリアの教皇様がしきりに騒ぎ立ててるアレだよ。」

「ああ、アレか。エルフの国に攻め込んで聖地を奪還するとかいう。正直オレは御免こうむりたいね。エルフと対峙するのはさ。」

「オレだってゴメンだよ。先住魔法をバンバン撃ってくるやつ相手に魔法も使えない一般兵士の我々に何ができるってんだ」

「でも噂で聞いたんだけどよ、ガリア王家は裏でエルフと取引してるって話だぜ」

「え!?マジかよ?取引って何やってんだ?やっぱ最新兵器とかか?」

「そこまでは知らねえよ。でも正門の警備やってるときに上から「ビダーシャルの使いと名乗るものは通せ」ってお達しが来たんだよ。」

####アプローチ発見####

「ビダーシャル?それがエルフの名前なのか?」

「さあな、エルフとなんか関わりたくもねえし、それに関与してるかもしれない王室のゴタゴタに巻き込まれるのもゴメンだよ」

 

 

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『どうやらガリア王家は裏でエルフと繋がってるみたいね。正門を通るためにはビダーシャルの使いになりきるのも悪くないんじゃないかしら。うまくすればそのビダーシャルさんに会うことができるほど王宮の深部にまで潜り込めるかもしれないわよ?』

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私はひとまず更に情報を収集することにした。集めた情報は大したものではなかったが、【カリマンタンの雫】という酒場にその使いらしき東方の商人がよく出入りするということだった。私はその酒場へ向かった。

 

 

 

「いらっしゃい。見ない顔だね?旅の人?」

「ああ、そのようなものだ」

 

【カリマンタンの雫】は先程の酒場にも負けず劣らずの盛況ぶりだった。店の奥にトイレがあるらしく店主に言って貸してもらうことにした。無論、用を足すわけではなく近くを通りかかったウェイターを首を絞めて気絶させ、近くの大型の業務用ゴミ箱に隠した。ウェイターは液体の殺虫剤を持っていたようで、服を借りたついでに懐に忍ばせる。私はカウンター兼バーに陣取り、テーブルを拭く作業を装いながら東方の商人が来るのを待った。

「よお大将。いつも元気だな」

「ああアンディーヌさん。また王宮から呼び出しかい?」

「そうなんだよ。あの貴族連中と相対するにはちょっとばかしスタミナが居るからね!大将のマンガリ肉のハチミツ焼きを食いたくてよ!オイ、そこのウェイター、名前はええと…なんでもいいや!今の聞こえたよな?頼むぜ!」

「かしこまりました」

奇しくも一番近くで拭き掃除をしていた私にご指名がかかった。

「あいつどっかで見たような・・・気のせいか?」

 

 

厨房に注文を伝えると10分足らずで焼き上がったようだ。私は運ぶ道中。懐に隠していた殺虫剤を混入させた。大将と呼ばれた店長クラスの人物は今は他の客を接客していた。

「どうぞ、マンガリ肉のハチミツ焼きでございます」

「おお!きたきた!」

私は不自然無いように離れた。

 

「ムグムグムグ…かーっ!うめえ!やっぱここのマンガリ肉は最高…ん?」

「ンンン!うごごご…腹が…何だ一体…?トイレトイレ!」

 

肉をいくらかかじったその商人は腹痛をもたらしたようで急いで店の奥のトイレに駆け込んでいった。私はその身を案じるようについていった。もちろん案じるためではなく服装を借りるためではあるが。

 

トイレに入った商人はひとしきり出すものを出した後、トイレから出てきたところを首を絞めて気絶させた。服を借り、ウェイターと同じくゴミ箱へ隠した後、裏口から出た。ちなみに服を借りたときに1枚の通行証が出てきた。おそらくこれを使って貿易をしているのだろう。私はそのまま王宮へ向かった。

 

 

 

「ん?そこのもの、止まれ!」

「私はビダーシャル様より召喚を承りました商人でございます。」

「ビダーシャル…ああ、あの勅命か。通れ」

「ありがとうございます」

 

とりあえず手間はかかったものの王宮内部に侵入することは成功した。しかしここで問題が起こった。王宮内部に入るのであるから案内役のような人間が居るのかと思いきやそのような人物が出てくる気配もなく、周りの警備兵も勝手に進めと言わんばかり。これでは何処にジョゼフはおろかビダーシャルの居場所さえわからない。ひとまず私は近場の無人の詰め所にあった兵士の服装に着替え、警備隊になりすまし、再び情報収集に当たることにした。

 

 

1階から3階へ上がる大階段の下で老齢の貴族がなにか相談しているようだ。

 

「ジョゼフ様は一体何をなさっているんだ?毎晩毎晩自室で独り言をブツブツ囁かれている御様子だが…」

「私にわかるわけ無いじゃろう。最近はいつも夜の帳が下りた後、一人で部屋の模型に向かってブツブツと独り言をなさって、いつも寝るのは夜も更け子の刻になってからじゃ。」

「お体を壊してしまうことだけは避けなければならん。今夜は寝付きが良くなる東方の茶でも進呈してみようか?」

「止めておいたほうが良いじゃろう。前に一度独り言をつぶやいているときにある貴族が止めるよう進言したときなど、その次の日にはその貴族は逆賊として監獄行きじゃったのだから。」

「なんと…それはおいそれとは近づけんな…」

「まあ大丈夫じゃろう。子の刻にはちゃんと床に入っておられるようだし。若い頃からそうじゃったが陛下は一度眠りに付かれると簡単には起きないのじゃ。」

####アプローチ発見####

「まあちゃんと眠れているなら問題はないのだがな…」

「気味悪がるのも無理はないが、触らぬ神に何とやらじゃぞ」

 

 

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『ガリア王ジョゼフは、子の刻、つまり深夜0時には眠っているそうよ。しかも簡単には起きないと。我々の情報の中には最近悪夢にうなされることもあったみたいだから、あなたが悪夢から解放してあげたらどうかしら?』

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私は3階へ上がり、更に状況を整理した。どうやら王の居室は最上階である5階にあり、その間の4階は専門の近衛部隊が。最上階の5階にもまたさらに親衛隊の部隊が控えており、それぞれ互いの顔と声を熟知しているようで警備員になりすまして侵入するのは困難だろう。5階には王族の個室が。4階には各閣僚たちの個室があてがわれているようだ。先ほど外壁を確認したところ外壁は漆喰のようなもので塗り固められており、5階へ壁を登ったりぶら下がったりしていくことは困難だろう。しかし私は、4階の角の部屋からパイプのようなものが下に伸びているのを確認していた。私は3階の角部屋を目指した。

 

 

3階の角部屋は倉庫のようだった。いろいろな調度品が置いてある。と、私は壁に悪魔のような形をした銅像が飾ってあるのを発見した。その目は赤く発光しており、私が前を通ると一瞬だけ光が強くなるのだ。思えば1階の大広間や大階段にも似たような像があったが、もしかするとこれは監視カメラの一種なのではないだろうか?だとすれば今のところ確認できるだけで4回はこのカメラに映ってしまっている。この手の監視体制は大抵の場合地下や1階などで一括管理されており、確認する必要があるだろう。私は一旦1階に戻り、警備室のようなものを探した。しかしどの詰め所にもそれらを確認するモニタはおろか水晶のようなものでさえ見当たらなかった。

 

 

焦る気持ちを抑えつつ探索を続けているとある部屋を見つけた。

【シェフィールド執政官】と扉の横に書かれている。執政官といえば大臣クラスと大差ない重役ポジションであり、それが何故4階ではなく1階にあるのか。もしかするとここが一括管理を行う場所なのではないか?私は一旦外に出て、中庭からその部屋を確認する。幸いにして今現在は無人のようだ。机の上に壁に飾ってあった悪魔像を幾分小さくしたものに大きめの水晶がはめ込まれているのを発見した。おそらくアレが記録媒体なのだろう。私は中庭から換気のためなのか開いている窓から侵入し水晶を手にとった。スイッチらしきものはないためおそらく魔力駆動なのだろう。私はそれをシーツにくるむとベッドの上で思いっきり叩いた。

 

カシャン!

 

シーツにくるまれていたため音はさほど大きくなく、粉々に砕け散った。枕元にあったエンドテーブルを窓のそばまで持っていき、その下に砕けた水晶をばらまいた。窓のカーテンをまとめている紐を外し、私は窓から中庭へ出た。

 

 

悪魔像カメラ対策をしていたら既に子の刻を過ぎていたようだ。私は中腰忍び足で誰にも見られることのないように3階の角部屋に到達した。悪魔像の目は依然として赤かったが発光はしていなかった。窓の外には上の階から伸びているパイプがあり、掴まりよじ登ることができた。元よりこの兵士の服はこげ茶色というべき濃い茶色をメインカラーにしており、夜の闇に紛れるのは十分可能だった。

 

4階の角部屋には大臣が眠っていた。どうやら私室兼研究室にしていたようで、パイプはその排水用だったようだ。パイプは自家製だったようで試作品と思われる鉄パイプが転がっていた。私はその鉄パイプを使って寝ている大臣の首元を殴打し、起きないようにした。服を借り、大臣をタンスに隠した後、横のエンドテーブルにあった大きめの布を頭からかぶった。

 

 

「お待ち下さい大臣閣下。今陛下は既にお休みですので夜が明けてからにしていただきたい。」

「緊急の案件である。でなければこんな時間に謁見などしない。」

「緊急・・・ですか?」

「そうだ。もしこれを報告しなかった場合国内に重大な問題が発生するのだ。君はその責任を取れるのか?」

「い、いえ!承知しましたどうぞお通りください。」

 

私は大臣に扮し5階に侵入することに成功した。布で顔を隠した状態では薄暗い王宮の中では別人だとは思われなかった。王の居室の前にも衛兵が立っている。

 

「大臣閣下。このような時間に何用で?」

「緊急の案件である。通せ。陛下を起こしてしまう不敬は私が負う。」

「・・・承知しました。少々お待ちを」

 

カチャカチャ…ガチャ

 

「どうぞ。」

「うむ。ああ、君たちは外で待っておれ。これは王家にとって重要な案件であるがゆえ陛下以外の何者の耳にも入れるわけにはいかんのだ」

「承知しました…?」

 

バタン

 

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『さあいよいよご対面よ。この世界一の超大国の最高権力者様にね。』

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ガリア王ジョゼフはベットの中ですやすや寝息を立てている。しかしその表情は安らかにとは言えないものだ。やはり情報通り悪夢を見ているらしい。

私は懐から愛用のシルバーボーラーを取り出し、彼の額に押し当てた。

「ううむ…シャルル…すまない…」

寝言だろうか。シャルルとは?しかしその答えは今の私には必要のない情報である。

 

 

 

パシュン!

 

 

 

額に穴が開き、血が流れ、もはや寝息は聞こえない。

しかしその表情は何処か安らかにも見えた。

 

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『任務達成。でもまだ油断はできないわ。すぐにそこを脱出して47。』

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私は居室を後にし、途中、詰め所で商人の服に戻った後、正門から帰還した。

 

 

 

 

 

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~1週間前~

 

「余のミューズよ。最近余は夢を見るのだ」

「どんな夢なのでございましょうかジョゼフ様」

「余が死ぬ夢。余が無残にも刺客に殺される夢だ」

「なんと・・・!しかし、そのようなことは決して起こさせはしません。」

「夢の中ではあっけないほど簡単に死んでいた。無論現実になるとは思っておらん。だが余はその夢を見て思ったのだ。簡単ではないにせよ現実に起こりうる可能性の一つなのだと。」

「ジョゼフ様・・・」

「余は決断しよう。余が死んだときは全権をミューズ、そなたに託すと。」

「そんな!ジョゼフ様!恐れ多くとても受け取れるものではございません!」

「しかし余の考えを理解し、余の政治を一番うまく引き継げるのはミューズに置いて他におらんのだ。」

「しかし、ジョゼフ様…」

「もう決めたことだ。リュティス大司教にも明日そう告げ、遺書も書くつもりだ。」

「・・・承知しました。しかしジョゼフ様のお命は私めが必ずやお守りいたします!最近研究所の方で開発された監視用ガーゴイル。まだ試験も終わっておりませんが、いち早く王宮に設置させましょう。」

「余は果報者だな。そこまで考えてくれるとは。だが運命には逆らえぬ。そんな気もするのだよ。ミューズ。」

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「14人目の騎士」+2000 『閣僚に変装して王の居室に入る』

・「一帯ゼロ路」+1000 『東方の商人に変装する』

・「割れ物注意」+3000 『監視用ガーゴイルの水晶端末を事故に偽装して割る』

・「甘いものには棘がある?」 +1000 『【マンガリ肉のハチミツ焼き】に毒を盛る』

・「鎮魂の灯火」+1000 『ジョゼフの寝言を聞く』

・「伝説は伝説」+1000 『ジョゼフに虚無魔法を使わせることなく始末する』

 

 

 




タバサのジョゼフ暗殺が早い段階で成功していたらどうなっていたんでしょうね?
ガリアはめちゃくちゃになる気がしますがタバサにそれを止めることはできず、己の無力さに打ちのめされる展開が見える気がします。


次回は別アプローチです。

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