HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

53 / 87
注意
今回は暗殺はありません。


HITMAN『失われしものを求めて』

『アッテムトへようこそ。47。』

 

『初めに言っておくと、あなたが今までやってきた任務とはだいぶ違う任務になるわ。』

 

『まず単独行動ではなく、タバサ・ブルー・シルバーを連れて行って一緒に行動すること。それと今回のターゲットは人ではなく文章。アッテムトの鉱山のさらに奥深くに有ると言われる古代神殿にある“進化の秘法”と呼ばれるものよ。それを取ってきてほしいの。』

 

『偵察ドローンの探査によると、最深部の王座にある古代の地獄の帝王エスタークの亡骸の側に放置されているのが確認できた。ドローンでの回収も試みたけど、内部に巣食う魔物がことごとく邪魔をしてくれてね。現地に人員を派遣せざる終えないの。』

 

『まずは我々が別の世界から調達したPMC集団がアッテムトとその周辺の半島を制圧するわ。制圧後にPMC部隊と一緒に鉱山内部に侵入してもらう。PMC部隊は最後まで付いていくように命じてあるけれど、我々の試算では9割以上が壊滅すると予想されてる。あてにはしないでね。でも優秀な人材を一人混ぜておいたからその人は期待していいわよ。』

 

『今回は作戦の状況から鑑みて隠密作戦は不可能よ。重装備を持参して頂戴。間に合うかどうかわからないし、使い所が有るかわからないけれど一応“カテゴリLOG”も準備中だから、いざというときは地上まで敵をひきつけてね。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

『作戦開始。』

「了解。」

 

 

私は今、大型の輸送ヘリにいる。タバサ・ブルー・シルバーと、他にも3名ほど兵士が乗り合わせている。

 

眼下には半島の真中付近にある小さな町を目指し、海からは多数のLCAC、多数の戦闘ヘリと輸送ヘリが押し寄せる形で向かっている。ここはベイルートかモガディシュだろうか。

 

 

「壮観ねえ・・・。」

「姉さん。あんまり身を乗り出しちゃ危ないよ。」

「・・・。」

 

 

後ろではすっかりICAの一員となった3人が並んで座っていた。内部に同行する部隊は別のヘリに便乗しているらしい。今回、ヘリに乗るときに与えられた情報によると、同行する人員は我々4人の他に15名居るらしい。それぞれが軽機関銃やショットガン、はてはレールガンからエレクトリックガンなるものまで携帯しているという。PMCの名前は“スワートハンド”とか言ったか。通信が入る。

 

 

『47。聞こえる?』

「聞こえている。」

『そろそろアッテムト半島5キロ圏内に入るわ。ガスマスクを着用して。』

「了解した。タバサ、ブルー、シルバー、ガスマスク着用だ。」

「はーい。」

「わかった。」

「了解。」

 

 

事前情報によるとアッテムト鉱山は最深部に有る神殿から硫化水素ガスが吹き出ているらしく、また一部の特殊金属がエアロゾル化して滞留しているという情報もある。ガスマスクは必需品と言える。

 

ヘリはやがてアッテムトの町のすぐ目の前の空き地に降り立った。町は既にスワートハンドが制圧しており、元々荒廃していて町民は少なかったが、その町民たちは現在、それぞれの自宅に軟禁されていた。

 

 

「さて、町の人達のためにもちゃっちゃと終わらせましょう。」

「それがいい。あまり住民を怖がらせる必要はないはずだ。」

 

 

私はブルーの意見に同意しつつ、少し離れたところに着陸していた部隊に近寄った。

 

 

「今回内部に同行するのは君たちか?」

「ああ、そうだ。スワートハンドの精鋭部隊だ。スワートチーム6。そう呼ばれてる。」

「わかった。早めに決着を付けたい。頼んでおいた私たちの武器は何処に有る。」

「ああ、アレならここに。」

 

 

そういうと隊長と思わしき男はヘリの中から木箱を一つ取り出した。中には私が頼んでおいた武器が入っていた。TAC-4とJaeger7 Lancerは私用、Sieger300 Ghostはシルバー用。Enram HVはブルー用。TAC-SMGはタバサ用だ。それらとは別に私はシルバーボーラー、他の3人はICA19 Chromeをもたせる。無論、ポケモンたちやタバサの杖などもある。通常は銃器を持ちながらのポケモンや魔法は動作が遅くなる原因となるが、彼らに渡した銃器は全て手放しても問題がないようにストラップかワイヤーが付いている。

 

 

「では今すぐにでも中へ向かいたいのだが。」

「わかった。こちらも部隊を集合させる。30秒くれ。小隊集合!」

 

 

大きな声で号令をかけると駆け足でまわりの兵士が集まってきた。時間にして15秒足らずできれいに整列した。30秒もいらなかったようだ。

 

私達は我々4人を中心に前4名、左右4名ずつ、後ろ3名で並んで進むことになった。念の為用意した酸素ボンベを各自1つずつ持ち、我々は荒れ果てた鉱山の入り口へ入っていった。

 

 

 

 

 

階段を降りると坑道内は少し開けていた。しかし全体的に天井が低い。立って歩けないほどではないが、相当な狭苦しさを感じる。階段横の広場で陣形を整えていると、壁の影からこちらを覗いている目が見えた。次の瞬間、

 

 

“ギラ”

ボォォォ

「うわわわ!」

「敵襲!」

ダダダダ

 

 

影から覗いていたのは魔物だった。この坑道で確認されている魔物は事前にブリーフィングで知っている。アレはおそらく“ひとつめピエロ”だ。

すぐさまスワートの部隊が交戦する。なかなかにすばしっこく、被弾も有るようだがしつこく逃げ回りつつ避けている。私はJaeger7を構える。魔物の動きを予測し、その動線を見切り・・・、

 

 

ダァーン!

ピギィ

ドシャッ

 

 

「す、すごい・・・あの素早い敵を一発で仕留めるなんて・・・。」

「流石47。精鋭もこれじゃ形無しだね。」

 

 

ブルーとシルバーが感想を漏らしているが感想を言わせるために連れてきたわけではない。ちゃんと各々戦ってもらわないと困るのだが。

 

気を取り直して先に進み始める。構内図の地図は予め用意されているので最短ルートを通ることができる。少し進むと分かれ道に来た。ここは右へ進む。

 

 

「敵襲!」

「くっ!何だこの多さは!」

 

 

後ろを警戒していた兵が叫ぶ。後ろを見ると6体は束になって襲いかかろうとしていた。銀色のサソリ、“メタルスコーピオン”だ。

 

後ろの部隊が応戦する。今度はそこまで素早い敵ではなかったが、体が硬い甲殻に覆われているらしく、5.56mm弾が弾かれてしまっている。

 

 

“エア・ストーム”

「私も、戦える。」

 

 

タバサのエアストームが炸裂。6体全てを坑道入口から外へ放り出した。一瞬の間があり外から爆発音が聞こえてきたので、おそらく戦闘ヘリ部隊が片付けたのだろう。

 

先に進むに連れ、周辺の魔物の気配がだんだんと濃くなっていく。地下2階に到達した時点で既に5回も襲撃されている。しかも段々と道が狭くなっていっている。既に輪形陣だった陣形は我々4人を中心とした単縦陣になっている。通路が突き当り、ここを右に曲がれば地下三階への階段があるはずだ。

 

 

 

 

ピギャー!

「ぐぁわああ!」

「マックス!くっそぉ!」

ダダダダダダ

 

 

右に曲がった直後に背後から奇襲を受けた。マックスと呼ばれた隊員1名が食虫植物のようなものに噛み殺された。アレはおそらく“デビルプラント”だ。他にも“とらおとこ”や先ほどのひとつめピエロなども混じっている。かなりの数が押し寄せており、このままでは数に任せて押し切られてしまう。

 

 

「隊長。部下に下の階に降りる階段まで走れと命令を。」

「なに!逃げろというのか?!仲間を殺されたのだぞ!」

「そうじゃない。ここは三叉路の真ん中だ。階段で戦うほうが幾分有利だ。」

「そういうことか。全隊!階段まで走れ!そこで迎え撃つ!」

「「イエッサー!」」

「シルバー、援護を頼む。」

「了解。出てこいオーダイル!」ガー!

 

 

シルバーのオーダイルが水の壁を作り出しつつ魔物を蹴散らしている。私は蹴散らされ床に転がった魔物を一体ずつJaeger7で仕留めていく。そのうち体制を立て直すのを完了したのかスワートの部隊も各々撃ち始めた。私達は何とか数十匹は居たと思われる魔物の大群を蹴散らすことに成功した。

 

 

「危ないところだったな。」

「くっそ・・・部下をひとり失ってしまった。」

「だが引き返す訳にはいかない。」

「そうだ。ここで引き返してはあいつは犬死だ。なんとしてもこのミッションを成功させるぞ。」

 

 

ここからは全周警戒を怠らないように進んでいく。ガスのことも有るのでポケモンは常時出しておくことは出来ないが、いつでも出せるように2人はボールを常に手に持っている。

 

幾多の襲撃を乗り越え、その都度消耗しつつも何とか最深部の神殿までたどり着いた。ここまでくるまでにマックスと呼ばれた彼を含めて5人が魔物の餌食になっていた。

 

 

「はわー、これはすごいわね。金鉱脈ってこうなってるのね?」

「違う。金鉱脈はここまで金が露出しては居ない。」

「タバサちゃん、知ってるの?」

「昔任務で鉱山に入ったことが有る。金鉱脈は岩の間の白っぽい部分に混じっている金を取り出すもの。100キロの金鉱石からは1グラム取れれば多い方。」

「それっぽっちしか取れないのか。初めて知った。」

「そりゃ金が高値で取引されるわけよね。」

 

 

3人が金について話している。金鉱石は本来黄金に輝いてなどはいない。だが目の前にある神殿にまとわりつくように分布している鉱石はまばゆいばかりの金色だ。目がくらみそうになる。サングラスを持参するべきだっただろうか。

 

 

「目的のものは金ではない。この神殿の中だ。行くぞ。」

「「了解。」」

 

 

私達は神殿の中へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

神殿内部には噴水が設置されていた。噴水の側には土があり、この神殿はもしかすると大昔は地上にあったのかもしれない。

 

真正面の扉を入ると薄暗い通路が続いている。多くの部屋があり、ドローンの偵察情報がなければ迷っていただろう。私は脇の部屋には目もくれず、通路を進んでいく。階段から2階のテラスへ上がり、ひたすらに奥を目指す。道中でも魔物が襲いかかってきた。玉座の間の前まで来る頃には隊員はさらに4名減っていた。残りは我々4人と隊長を含めたスワート隊員6名だ。

 

 

「やっとついたわね。」

「ああ。部下も大勢死なせてしまった。その価値があるものだといいがな。」

「危険な気配がする。」

「タバサ、わかるか。」

「(コクン)」

「私もわかるわよ。このイヤーなピリピリする感じ。アサダーバードでもなかったもの。」

「相当に強い魔物がいる可能性がある。十分に警戒して行こう。」

「シルバーの言うとおりだ。全員なるべく音を立てないように進むぞ。」

 

 

全員が頷くのを確認し、中へ足を踏み入れようとしたその時だった。

 

 

ピギャー!

「!タバサ!後ろ!」

「っ!」

 

ダァーン

 

 

物陰でこちらを狙っていたと思われる魔物がタバサを背後から強襲した。とっさのことで対応できていなかったタバサを救ったのは。スワート部隊のうち素顔がよくわからない仮面を被った男だった。

 

 

「危ないところだったな?嬢ちゃん。」

「・・・!その声は・・・。」

「おや?お前さんとこのオペレーターとやらから聞いてなかったか?“優秀な人材”が混じってるって。」

「47?この渋い声の人は知り合いなの?」

「オイオイ、渋い声って。俺はまだそんなに歳食ってる気はないんだが?」

 

 

男は仮面を取り外して素顔を見せた。そこには、あるときは南米のジャングルで、あるときはネバダの砂漠の施設で鉢合わせしたあの伝説の英雄が居た。

 

 

「俺はスネークだ。よろしくな嬢ちゃんたち。」

「スネーク。何故ここに。」

「ああ、お前らんとこの組織がうちに応援要請を出したんだよ。しかも俺を名指しでな。まあ昨日の敵は今日の味方ってやつだな。」

「フォックスハウンドは傭兵部隊だったのか?」

「違う。俺は今フォックスハウンドには居ない。詳しくは話せないが、資金を必要としている。今回はおまえさんとこの組織が多額の報酬を払ってくれたからな。」

「なんだかよくわからないけど、こいつは味方なのか?」

「お、坊主。年上には敬意を払えよ?」

 

 

少しゴタゴタしたがスネークが味方についていてくれれば心強い。数分間の自己紹介のあと、私達は改めて神殿内部に入った。中は相当な広さで、少し段を上ったところに柱が何本も建っている。そして段に備え付けられている階段をのぼるとその奥にそれはあった。

 

 

「でっか・・・。」

 

 

思わずブルーがつぶやくのも無理はない。そこには情報にあったとおり巨大な亡骸があった。高さは低く見積もっても20mは越えており、横幅も10m以上ありそうだ。これがかつて地の底を支配し、神との壮絶な戦争を繰り広げたという、地獄の帝王“エスターク”だろう。

 

 

「生きてなくてよかった。」

「生きてたら俺たちなんか、ポケモンたちもまとめて一瞬で消し飛ばされそうだな。」

「俺もいろんな敵と戦ってきたがこいつはメタルギアと同じくらいでかいな・・・。」

「さっさと目的のものを見つけて脱出するぞ。手分けして探せ。」

「「了解。」」

 

 

私達は念の為エスタークに触れないよう気をつけながら周囲を捜索した。小一時間捜索してやっとそれらしきものを発見した。しかし我々はそれを取るのに躊躇していた。なぜなら、

 

 

「なんでよりにもよってあんなとこにあるのよ・・・。」

「どうする?誰が取りに行くんだ?」

「決死隊。」

「死体なんだろう?」

「じゃああなたが行ってくれば?隊長さん。」

「い、いや私は部下を守るという任務があるので・・・。」

 

 

よりにもよってそれらしき書物はエスタークの亡骸の腕の中にあった。鎧のような関節の間に挟まる形であったそれを誰も取りにいけないでいる。それも無理はない。この亡骸は近寄るとわかるが微妙に温かいのだ。亡骸が温かいという話は聞いたことがない。“これは亡骸ではない”という可能性が全員を尻込みさせていた。

 

 

「私が取る。」

 

 

名乗りを上げたのはタバサだった。

 

 

「え!ちょ、大丈夫?もし起こしたりしたら私達一瞬であの世行きよ?」

「大丈夫。触れなければいい。」

「えっ・・・ああ!そうか!」

 

“レビテーション”

 

 

タバサは魔法で書物を手元に引き寄せることに成功した。皆が歓喜の表情でタバサを見ている。声が出せないのは万が一にでも起こしたらまずいという恐怖が優先されているためだろう。

 

 

「目的達成。」

「確かに情報通りのものだ。よし、撤退する。」

「了解。」

「早いとこ帰りましょ。もう外壁にロープ垂らして降りましょ。」

「姉さん・・・気持ちはわかるけど何かまずい気がするよ。」

「あらどうして?」

「いや、なんとなく・・・。」

 

 

皆が帰りかけたその時通信が入った。

 

 

『47、聞こえる?』

「聞こえている。」

『進化の秘法は見つかったかしら?』

「それらしき魔導書を発見した。タバサが魔法で取ってくれた。」

『そう。であればそこから至急脱出して頂戴。アッテムトを制圧していたPMC連中が次々と周辺の魔物たちにやられていってるわ。既に戦闘ヘリ部隊は全滅したみたい。アッテムトの住人は全員避難させたから無事だけれど、このままでは魔物がそちらに押し寄せることになるわ。』

「わかった。できる限り急ぐことにする。」

 

「どうしたの?47。」

「本部から連絡があった。上の部隊がやられているらしい。急がなければ退路を断たれる。」

「なんだって!」

「馬鹿な!戦闘ヘリに強化スーツ兵まで呼んだのだぞ!」

「強化スーツ兵とやらは分からんが戦闘ヘリは全機撃墜されたようだ。」

「なんと・・・!」

「スネーク、武器はどれだけ有る。」

「俺もあまり装備が充実してるとは言い難いな。」

「そうか・・・ともかく議論している余裕はない。至急ここから脱出する。」

「「了解!」」

 

 

私達は急いで神殿を出た。もう襲ってくる魔物たちを相手にしている時間もないため、全員避けることに専念して走った。隊員の何名かは黄金を名残惜しそうに見ていたが回収している時間もないだろう。

 

坑道を走り、階段を駆け上り、各々持っている武器を総動員して魔物を蹴散らしつつ、出口へ向かった。坑道はだんだん広くなり、そして出口の階段が見えた。私達は周囲の警戒をしつつ階段を上がった。

 

 

ピギャー!グギャー!

「・・・遅かったか。」

 

 

アッテムトの町中には既に大量の魔物が居た。とても捌ききれる量ではないのが一目瞭然だった。既に鉱山入り口の鉄格子の向こう側にこちらに向かって威嚇している魔物たちも居る。隠れてやり過ごすこともでき無さそうだ。

 

 

「・・・。」

「・・・どうするの・・・?こんな量・・・いくら私達でも・・・。」

「・・・クッ・・・姉さんだけでも・・・。」

「ちっ、この量は流石にまずいな・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『47。カテゴリLOGの準備が完了したわ。上級委員会の許可も取り付けてある。そこからできる限り動かないでね。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

シュユルルル

ボォーン!

「!全員、階段の下に身を隠せ!」

 

 

遠くで着弾音が聞こえた。すぐに凄まじい爆風が来る。辺り一面に居た魔物たちは軽いものは飛ばされ、重いものは地面に這いつくばって耐えている。ギリギリのところで我々は坑道へ降りる階段にへばりついてやり過ごすことができた。1発、2発と着弾するに従ってだんだんと着弾点が近づいてくる。アッテムトの町は度重なる衝撃波と爆風により、ただでさえボロボロだった家屋は軒並み崩れ去っていた。そして

 

 

ドォォォン!!

「きゃあ!」

「うわあ!」

「くっ!」

「な、何なんだこの攻撃は!」

 

 

かなり近くに着弾した。坑道内では落盤と思われる音が響いている。目の前に大きな地割れができ、鉄格子の前に屯していた魔物は鉄格子ごと地割れに飲み込まれていった。以前、幻想郷であった支援砲撃に似ているが、今回は明らかにその時よりも地割れの本数や規模などが段違いに大きかった。アッテムトの町はほぼ完全に崩壊しており、このままでは我々もいつ地割れに飲み込まれてもおかしくはないだろう。

 

 

「おい!この攻撃はいつまで続くんだ!俺たちも飲み込まれるぞ!」

「本部。」

『今回収用のヘリが向かってるわ。砲撃を中止すれば魔物が襲いかかる可能性が高い。それでも良いなら中止させるけれど?』

「・・・。」

『ヘリは後数分で到着するわ。タッチアンドゴーになるから準備して頂戴。』

 

 

ドォォォン!!

「47!お前さんの本部はなんて言ってたんだ!」

「もうすぐ迎えのヘリが来る。全員乗車準備。タッチアンドゴーで離脱するぞ。」

「姉さん!大丈夫かい!姉さん!」

「聞こえてるわよシルバー!他の隊員さんは大丈夫なの!?」

「今点呼を取った。少なくとも生き残ってたやつは全員いるぞ!」

「ヘリ。」

「本当!来たわよみんな!」

「全員、用意しろ。」

 

 

近くに着弾した砲撃により発生した地割れは海岸まで貫いたようだ。地割れの中に海水が入り込んできているのが見える。地割れの大きさは既に相当なもので、かろうじて残っていたアッテムトの教会の建物が地割れに飲み込まれ崩れ落ちていく。既に対岸との幅は数十mに達している。

 

その地割れに沿うようにヘリが降りてきた。後部扉が空いている。私達は身を隠していた階段から立ち上がると一目散にヘリに飛び乗った。最後の一人の隊員が転けそうになりながらも、なんとか後部ハッチにしがみついた。ずり落ちそうになるも私はその腕を掴んだ。

 

 

「よし、出してくれ!」

 

 

ヘリは急上昇を開始した。ぐんぐん地上が離れていく。しがみついていた隊員を中に引きずり込んだ直後、私達が今まで居た階段に砲撃が着弾した。凄まじい爆風がヘリを襲い、その爆風の後押しで一気に上昇した。

 

私達はそのままヘリでこの地域を脱出した。開いたままの後部ハッチからは半島が4つに分割された大陸が見えた。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

~1週間後~

 

 

 

『それで。使えそうなの?』

「うーんなんとも言えませんね。」

『せっかく大規模な作戦を実行して、町一つを海に沈めたってのに収穫なしは許されないわよ。』

「おそらくプロジェクトに応用するのは可能だと思います。しかし・・・」

『しかし?』

「我々技術部は科学技術を主に使用して兵器や技術を生み出しています。この“進化の秘法”はどちらかというと魔術に当たるものです。」

『つまり専門ではないからわからないと?』

「まあ、端的に言えばそうなりますね・・・。」

『・・・。じゃあ専門家を連れてくればいいわけね?』

「え?まあ・・・専門家の方が居ればその理論から応用研究もできると思いますが。」

『わかったわ。』

「居るんですか?専門家が。」

『この世界には居ないわ。この世界は科学しかないからね。でも・・・。』

「でも?」

『・・・いくつか魔術の専門家がいる世界に心当たりがあるのよね。』

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「生か死か。」 +1000 『魔物と10回以上戦闘する。』

・「眠れる帝王」 +1000 『エスタークを覚醒させない。』

・「大脱出」   +2000 『5分以内に神殿内部から地上までたどり着く。』

・「Sは落ちない」+1000 『隊員を脱出ヘリから落下させない。』

 

 




一応別アプローチとして隠密作戦も考えていましたが、いざ書いてみると壮絶に地味(かつ内容少)だったので没になりましたwもう一つの世界線では(また)予定を変更して別の町に向かいます。


次回は温泉街に向かいます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。