HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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HITMAN『魔術師に必要なものは?』

『ロンブリエールの町へようこそ。47。』

 

『ここはトリステイン王国の王立魔法研究所、通称“アカデミー”の実験場があることで有名な町よ。土地の管轄は領主であるヴァリエール家が努めてるんだけれど、領主の三人娘のうち長女がアカデミーの研究員なので、その実験用にとヴァリエール公爵が用意した土地らしいわ。でも長女の研究内容にここまでの広大な土地はいらなかったみたいで、余らせるのももったいないということで、今はアカデミーの研究員が共同で使わせてもらってるみたい。』

 

『今回のターゲットはその王立魔法研究所の評議会役員のエスペランサ・レイモンド・ド・ジュリアネス。周囲の人物からはエスペランサ卿と呼ばれているみたいね。彼はアカデミーの評議会の重鎮でありながら、狡猾にして悪質な汚職官僚でもあるわ。』

 

『彼の汚職の手口はクライアントによると未だ全容が明らかになっていないらしくてね、エスペランサ卿が実質的な首謀者なのは間違いはないんだけれど証拠が無い。以前一度だけ証拠をあげて逮捕した時は裁判員を買収して無罪放免になってるわ。もはや司法では彼は裁けない。だから我々に白羽の矢が立ったわけ。』

 

『クライアントはトリステイン王国銃士隊隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン。女王お抱えの女性だけで構成された親衛隊の隊長殿よ。王国内の汚職取締も彼女が女王から命ぜられた任務の一つだけれど、メイジ殺しで有名な彼女を持ってしても、エスペランサ卿だけは足がつかなかったらしいわね。今回の依頼は一応、女王に許可はとってあるらしいわよ?』

 

『今回、この実験場でアカデミーで極秘に開発されている攻撃魔法の試験が行われるみたい。そこにターゲットも同席しているわ。できれば事故に見せかけてほしいけれど暗殺だとバレても特に問題はないみたい。』

 

『そうそう、魔術試験には多くの魔術師たち、この世界で言う“メイジ”が参加しているわ。我々ICAは最近優秀な魔術研究員を募集していてね、機会があれば誰か優秀そうな人物を“スカウト”してきてくれないかしら。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

 

 

 

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~???side~

 

 

「全く信じられないわ!ここまで腐っていたとは!」

 

 

腹の底から怒りだけが次々と湧き上がる。怒りっぽい性格なのは自覚しているがここまでの怒りはここ数年でも片手で数えるほどしか無い。

 

有ろう事か評議会のトップであるリッペン議長があの悪名高きエスペランサ卿に協力していた反逆者だったとは!始祖ブリミルは何故彼らを野放しにしているのか。そして何故敬虔な信者たる私にばかり試練を与えるのか。

 

ここ数年の出来事は私自身自覚できるほどにまで始祖ブリミルへの疑問が次々と湧き上がってしまっている。近年に至ってはその数々の試練と仕打ちに対し、信仰心自体かなり薄れてきてしまっていて、このハルケギニアの社会で生きていくために仕方なく信仰しているレベルにまで落ちてきてしまっている。それでもまだ体裁を保てているのは今までの行いの積み重ね故だろうか。

 

 

「始祖に頼ってばかりではいけないということなのかしら・・・。」

 

 

その瞬間、私の中にどす黒くも現状を打開しうる方法が浮かんだ。しかしそれを実行するだけの経験も度胸も私には備わっては居なかった。その方法をこの国のため、この世界のために実行に移してくれる始祖のような方が現れることを心の片隅で願いつつ、私は少しばかり冷えた頭を回転させて研究に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~47side~

 

 

私は今、ロンブリエールの街を歩いている。街と言ってもかなり閑散としており、村といったほうがしっくり来るだろう。しかしヴァリエール家の屋敷と王都を結ぶ街道沿いに有るため、宿場町としてはそこそこ機能を備えているようだ。町一番の大通りはその街道であり、その道沿いには酒場や馬屋、無論宿泊施設も多数備えている。

 

しかし北側に町を出れば地平線まで続く田園風景であり、なっている作物からするとこのあたりの名産はおそらくテンサイだろうか。南側は畑はほとんど無く、荒れ地が続いている。その荒れ地のさなかに一箇所だけ開けた広場になっている箇所があった。遠目に人が何人か見えるのでおそらくあそこが“実験場”だろう。

 

私はまず町中で情報を収集することにした。丁度近くに酒場があったので入ってみる。酒場はまだ日も高いというのに結構な客で賑わっていた。そう言えば今日は虚無の曜日と言われる私達の世界で言う日曜日にあたる日だと聞いた。何処の世界でも休日の飲食店は混雑するのが定番らしい。開いていた適当な席に着くと適当にエールを注文した。ちなみに私は意図的かはわからないがかなりアルコール耐性が高く、スピリタスを1L飲んでも全く酔わないためエールジョッキ一杯くらいでは任務に全く支障はない。

 

周りの客の話は大半が、“親方がこき使ってくる”だの“隣の店の子が可愛い”といった他愛のない話ばかりであったが、その中で一組だけ、鼻から上側をマスクで被った仮装のような格好をしている二人組だけは他とは違う話をしていた。

 

 

「なあ、やっぱり目立ってるってこれ。」

「大丈夫だよ。たとえ目立っていたとしても俺らが誰かまではわかんねえって。」

「そもそもなんでこんな仮面付けなきゃならねえんだよ。」

「仕方ないだろ。今度の実験は王宮にも伏せられてる極秘試験なんだから。」

「だからってこんな仮面つけてたら余計目立って感づかれるんじゃねえのか?」

「実験場の入口はこの仮面つけてないと入れないようになってる。脱いで何処かに忘れでもしたらもう入れなくなるぞ。」

「物忘れの激しいお前らしい意見だな。」

 

 

どうやらあの仮面は実験場に入るための通行券の役割を果たしているらしい。となるとどうにかしてあの仮面装束を借りなければならないだろう。

 

しばらく酒場で飲んでいると、仮面を付けた男の片方がトイレに行くのだろうか席を立った。私もその後に続きトイレへ向かった。酒場のトイレなだけあって清潔とは言えない内装と、個室が2つだけという質素なものだった。丁度良くトイレには私とその仮面の男しか居ないようだったので、私は個室に入ろうとしていた仮面の男を背後から首を絞めて気絶させた。そのまま個室に押し込み、仮面装束を借り、服についていた紐を使って外に出た後内側から鍵をかける。そのまま裏口から酒場を出て実験場に向かった。

 

 

 

 

実験場の周りにはフェンスらしきものは無く、侵入は容易そうに見えたが、念の為正門と思われる警備員が建っている道路から侵入を試みた。

 

 

「止まってください。」

「・・・。」

「ネームを確認させてください・・・。はい、ありがとうございます。もう通って良いですよ。」

「一つ確認したいのだが。」

「なんでしょう?」

「柵もなにもないようだがこれで警備は大丈夫なのか?」

「ご安心ください。最新式の侵入検知魔法が実験場全体に張り巡らされています。侵入検知に引っかからずに通過できるのはこの入り口だけですよ。」

「それならよい。では。」

「はい。いってらっしゃいませ。」

 

 

案の定、通報装置があったようだ。知らずに通過していたら侵入がバレていたところであった。私はそのまま道沿いに進み、実験場の中央へやってきた。

中央には何人かの同じく仮面装束の集団が居た。その少し先には地面になにか魔法陣のようなものが描かれている。

 

 

「うーん・・・どうも火力が出ないのぉ・・・。」

「硫黄の量を増やしてみてはいかがか?」

「いやそれよりも硝石の量をだな・・・。」

 

 

数人の魔術師と思われる集団が何やら話し合っている。どうやら研究が行き詰まっているようだ。その集団を少し離れたところから見守る女性の人物が居た。私は女性に近づいて隣に立ち適当にカマをかけてみる。

 

 

「どう思われますか。」

「・・・。私は正直言ってこの実験になにか意味があるとは思えません。」

「というと?」

「まずあの術式の長さでは戦場では全く使いものにならないでしょう。また使用する秘薬も種類が多く、戦場でそれらが安定供給できるとは到底思えませんわ。」

「なるほど。」

「あなたは?」

「私は最近入ったばかりの新参者なので。」

「そう・・・。」

 

 

確かに研究していると思われる魔法は先程から試験しているのを見ていても、詠唱に少なくとも3分はかかっている。更に硫黄やマグネシウム、木炭や硝石など投入される材料が多いのも見て取れる。この女性はそれらの問題点を的確に把握している。だがそれを指摘しないのは彼女の仮面の奥に見える瞳が失望に満ちているからだろうか。

 

ともかくターゲットの居場所が最優先だ。私は本題に入った。

 

 

「お尋ねしたいのですが、エスペランサ卿は何処にいらっしゃいますか。」

「え?ああ、エスペランサ卿は今向こうのテントで論文とにらめっこ状態だと思いますわ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「入ったばかりのあなたには忠告しておきますけど、邪魔しないほうが良いと思いますわよ。卿は論文とにらめっこしている時は周りに邪魔されるのがこの上なく不快に思う方なので。」

「わかりました。」

 

 

私は指し示されたテントへ向かった。テントは軍隊が使うような壁も有るタイプで、ターゲットはその中で羊皮紙で作られた論文を読みふけっていた。

 

 

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『彼が“エスペランサ・レイモンド・ド・ジュリアネス”王立魔法研究所、上級研究役員。数々の汚職から逃れ続けてきた男。でも彼の逃走劇も今日が最後になりそうね。』

 

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彼はテントの一番奥にいた。手前には即席の棚が備え付けられており、様々な薬品や材料が並べられていた。硫黄や硝石といった基本的なものから、リチウムやナトリウムなどが固形のまま瓶に詰められている。

 

私はその中にあった竜の血と書かれている瓶を手にとった。手にとった理由としては何処か見覚えのある液体だったためだ。蓋を開けて嗅いでみると嗅ぎ慣れた匂いがした。これは竜の血などではなく、紛れもない“ガソリン”だった。

 

私はガソリンを論文を読んでいるターゲットの足元にこぼした。辺りにガソリン特有の匂いが立ち込めているというのにターゲットは全く気にする素振りもない。私はテントを離れ別のテントへ向かった。距離にすれば10mも離れては居ない。私は地面に転がっていた石を拾うと、ターゲットの手元を明るく照らしているオイルランプに向かって投げた。

 

 

シュッ

ガンッ!

 

 

オイルランプに勢いよく石が直撃した。机の端にあったオイルランプはそのまま床へ真っ逆さまに落ちた。その先にあるのは床に溢れているガソリンである。

 

 

シュボボオオオオ!

「うわっ!な、なんだ!」

 

 

ターゲットは元々丈の長いローブを着ていたため、ローブの端に微妙にガソリンが染み込んでいた。そのせいもあり、彼はまたたく間に炎に包まれた。

 

 

「あああじゃあああ!ぐわああ!」

ジジジ…ボォォン!

 

 

ターゲットに燃え移った炎は激しさを増し、彼を一瞬のうちに黒焦げにした。そのまま棚にあった別の薬品や素材などにも燃え移ったようで、仕舞いにはテントがまるごと吹っ飛ぶ爆発が起こった。

 

 

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『ターゲットダウン。浄化の炎ってところかしら。任務完了よ、脱出して頂戴。』

 

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爆発音を聞きつけて仮面装束の集団がわらわらと近寄ってきた。しかし既に火柱はかなりのものになっていた。水メイジと思われる者たちが火を必至に消し止めている。私はその混乱に乗じてその場を後にした。

 

出口に向かって歩いていると、後ろから何者かが付いてくる気配を感じた。私は実験場を後にすると小走りで町の路地裏に入った。後ろからついてくる者が慌てて路地裏に入ろうとするところを、待ち構えていた私は手刀で首筋を殴打し気絶させた。こいつは・・・。

 

私はセーフハウスに尾行者を連れ込んだ。尾行していたのはさきほど、ターゲットの居場所を尋ねた、失望に満ちた目をしていた女性だった。念の為動けないよう縄で縛ると撤退の準備をしながら目覚めるのを待った。

 

 

 

 

意外に目覚めるのに時間がかかり、酒場に置いてきた仮面装束の持ち主に服を返し、私のスーツを回収する余裕すらあった。私は軽く頬を叩いて起こした。

 

 

「んむう・・・。」

「起きたか。」

「ここは・・・。」

「何故私を尾行していた。」

「・・・。あなたがエスペランサ卿を殺すところ見てしまったから。かしら。」

「ならばその場で叫べばよかったのではないか。」

「それは・・・。」

「出来なかった。叫べなかった。その理由は何だ。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・私はもうアカデミーには居たくない。あなたなら・・・、この現実を変えてくれそうな気がしたから・・・。」

「買い被り過ぎだな。」

「ぐっ・・・。」

「だがちょうどいいかもしれない。」

「・・・どういうこと?」

「我々は今、魔法研究員を欲している。君さえ良ければ協力してくれないか。」

「・・・何の研究ですの?」

「今は明かすことは出来ない。協力してくれるという意思がなければ話せない。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・わかったわ。あなたについていく。」

「・・・少し待て。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『あら、早速魔術師をスカウトしてくれたのね?ではすぐに回収要員を派遣するわ。そこで待っていてもらって。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「すぐに迎えが来る。ここで待っていろ。詳しいことは向こうで聞くと良い。」

「あなたは教えてくださらないのかしら?」

「・・・私の管轄ではない。とだけ言っておこう。」

「そう・・・。」

「では私はひと足先に帰らせてもらう。」

「・・・最後に、最後にあなたの名前だけでも教えてくださらないかしら?」

「・・・。47。そう呼ばれている。」

「そう・・・私はエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールよ。」

「長い名前だ。」

「エレオノールでいいわ。またあったら覚えておくように。」

「・・・。」

 

 

私は静かにセーフハウスを出ると、町の馬屋に行き馬を借りて街を脱出した。

 

 

 

 

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~同時刻~

 

 

 

「まあそんなわけで私達に協力してくれない?」

「断る。メリットが見当たらない。」

「まあそう言わずに!ほら!こんな珍しい秘薬だって有るのよ!」

「興味がない。今は“科学”というものを研究するので手一杯。」

「あら!科学なら私達のところにも有るわよ!技術ならこちらでも学べるわ!」

「・・・。」

「・・・うーん・・・どうしたもんかなあ・・・。」

ガチャ

「戻ったよ姉さん。」ニュラ!

「あら、おかえりシルバー、ニューラ。」

「・・・!」

「その子は?」

「ああ、紹介するわ。こちらレレイ・ラ・レレーナさん。魔法使いの賢者さんよ。」

「ああ、こんにち・・・わ・・・?」

 

ニュラ!?

「興味深い。」

「えっと・・・レレイさん?」

「これは何という生物?」

「あっ・・・っと、ニューラ。ポケモンだよ。」

「ぽけ・・・もん?」

「この世界には居ないわね。ポケモンは。居るのはドラゴンばかりで。」

「触ってみても?」

「ああ、大丈夫だ。」

サワサワ

ニュー

「・・・かわいい。」

「・・・!私達に協力してくれたらもっと色んなポケモンを触らせてあげるわよ!」

「・・・本当?」

「ええ!ね!シルバー!」

「え?あ、ああ!」

「・・・行く。」

「やった!」

「うーん、いいのかなあ・・・。」

「良いのよ!じゃあ早速本部から迎えの人員を呼ぶわね!」タッタッタ

「・・・ふかふか・・・」モニュモニュ

「うーんまあ、いいか・・・。」

 

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「特産品はいかが?」+1000 『街の酒場でエールを飲む。』

・「仮面舞踏会」   +1000 『仮面装束に変装する。』

・「汚職は消毒」   +3000 『ターゲットを焼死させる。』

・「新たな道の扉」  +5000 『エレオノールをICAに招待する。』

 




動物はどの世界でも癒やされる存在になり得ると思います。


次回は別アプローチです。
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