HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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短めになっております。


HITMAN『魔術師に必要なものは?』(もう一つの世界線)

『ロンブリエールの町へようこそ。47。』

 

『この街は王立魔法研究所、“アカデミー”の実験場のある街。この実験場で何やら極秘実験しているアカデミーの評議会役員のエスペランサ・レイモンド・ド・ジュリアネスが今回のターゲットよ。』

 

『クライアントはトリステイン王国女王直属親衛隊隊長、アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン。法で裁けないターゲットを始末してほしいようね。』

 

『それと、魔法研究所の優秀な人材が揃ってるのだから誰かスカウトしてきて頂戴。手段は問わない。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

 

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私は今、ロンブリエールの町から見えた空き地の外周部に来ている。先程からその空き地の中へ続いている道を、仮面装束をつけた人間が頻繁に通り、少し先に見える検問所のようなところを通り空き地方面へ向かっている。検問所は簡易的な小屋と道の両側に立つ兵士で構成されており、道を通る馬車や人を検問している。

 

今回私は100グラムほどのプラスチック爆薬を持ってきた。実験場での事故に見せかけるのに使用しようと思っている。

 

不思議なことに検問所の横にはフェンスらしきものはなく、森のなかに有るのもあって侵入自体は容易そうに見える。しかし警備が極端に薄い場合は何かしらの仕掛けがしてあるものだ。フェンスがないということはフェンスに変わる何かしらの防護柵が有るのだろうか。

 

私は手始めにできる限り近づいてみた。無論検問所からだいぶ離れた森のなかでは有るが。実験場自体はかなり広大であり、その広大な敷地の境界線に地雷を仕掛ける可能性はまずない。もとより外部からの侵入者を防ぐなら地雷よりもフェンスのほうがマシだ。だが完全スルーにしては検問を置く意味がない。もとよりここは魔法世界、空を飛んで侵入する可能性もある。ということは目に見えない侵入検出装置のようなものがドーム状に張られていると見て間違いはないだろう。

 

私は一旦道に戻った。実験場へと続く道は数百m離れたところにある街道から分岐してつながっている。街道自体は偶にでは有るが一般人もとおる。

 

 

 

丁度良く街道沿いをウマで走ってくる男が来た。私は近くにあった太めの枝をウマの足元に向かって投げつけた。

 

ヒヒン!?

「うわぁ!?」

ドシン

 

 

ものの見事にウマは足がもつれすっ転び、乗っていた男性は投げ出されて地面に叩きつけられた。下がアスファルトやコンクリートなら即死級だが、落ちたのは草原の上であるので草がそこそこなクッションになり、男性は気絶しただけだった。・・・この男、何処かで見た顔だと思っていたら、カールトン・スミスだ。よく私の周りに出没する男だが、まさかハルケギニアで見かけるとは思わなかった。

 

 

私は気絶したスミスを抱え、再び森のなかに入る。そのまま、先程の境界線の内部に入る。入ってから数十mのところにスミスを下ろし、頬を軽く叩いてからその場を離れた。茂みに隠れつつそのまま進むと、数人の兵士が横目に見えた。やはり侵入検知装置が張ってあったようだ。しかし身代わりは置いてきたので問題はないだろう。

 

 

「ま、待ってくれ!俺は怪しいもんじゃない!インターポール・・・って言ってもわかんねえか。・・・いやほんと!怪しくなんか無いっ・・・あだだだ!引っ張るな!わかったわかったって!」

 

 

兵士たちは何故自分がここにいるのかわかっておらず辺りをキョロキョロ見回していたスミスを発見すると槍で威嚇しながら捕縛していった。彼はそれなりに抵抗していたようだが多勢に無勢であえなく連行されていった。何故あいつがここに居るのかはわからないが少なくとも役には立ってくれた。先に進むとしよう。

 

 

 

 

森の中を暫く歩くと開けた場所に出た。テントがいくつか張られており、そこから少し離れたところに地面に何かを書きながら何かを話し合っている集団が居た。私はすばやくテントの裏に回り込み、いくつか並んでいるテントの間から聞き耳を立てた。

 

 

「・・・しかし・・・硫黄と硝石を・・・」

「だが・・・万一にでも・・・」

「・・・相談する・・・」

 

 

流石に遠すぎて断片的にしか聞き取れない。しかし硫黄と硝石を使用しようとしているところを見てなにか爆発系の実験を行っているようだ。そのうち集団の中のひとりがこちらの方へ歩きはじめた。私は急いで近くにあった樽の中に隠れた。歩いてきた男はそのまま樽の隣にあったテントに入っていった。テントの中から話し声が聞こ言える。

 

 

「エスペランサ卿。」

「ああ、アルゴーニ殿、今論文を読み終えたところだ。実験の方はうまく行っているかね?」

「それなんですが。どうも詠唱に時間がかかる割に威力が芳しく無く、理論上はもう少し火力が出るはずなのですが。」

「つまりはうまく行っていないということか。」

「端的に言えば。」

「そうか・・・。わかった。少し心あたりがあるのでそのまま待たれよ。私が少し調合してみよう。」

「助かります。」

 

 

男はテントを出ていったようだ。今の話し声の感じからするとテントの中にいるのはターゲットと見て間違いないだろう。私は樽から出るとテントを調べた。すると、テントの裏に親指ほどの穴が空いており、私は周囲を警戒しつつそこから中を覗き込んだ。

 

中では一人の男性が机に向かって何か作業していた。先程の話からすると調合作業だろうか。しばらくすると後ろにあった棚から白い固形物が入った瓶と黄色い固形物の入った瓶を取り出し、3分の1程度割って取り出すとそれを器に入れた。それを持って男はテントを出ていった。

 

 

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『アレがエスペランサ・レイモンド・ド・ジュリアネス上級役員。彼の汚職人生に終止符を打ってあげるのも私達の役目よ。』

 

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私は覗くのを止めてテントの脇に移動した。そこから木箱に隠れつつ、ターゲットが歩いていった広場の方を見る。広場では地面に魔法陣を書き記し、中心部に先程の薬品を置いていた。ターゲットは薬品を置くと魔法陣の直ぐ外側に移動し、周りの他の研究員に何かを命じた。研究員は魔法陣から離れ、距離にして10mは離れた。

 

ターゲットはなにか詠唱を開始すると魔法陣の中心部に光が集まりだし、そして薬品が燃え上がり爆ぜた。数分に渡る詠唱の後に起きた爆発と考えるとかなり小規模なものだ。直径3mほどの魔法陣の半分も爆発範囲は無さそうだ。ターゲットは首を傾げると研究員たちと何かを話し合い始めた。魔法陣の奥100mほど先にカカシのようなものが数本建っている。おそらくあの爆発をもっと遠くにあるあのカカシの付近で起こしたいのだろう。

 

私はすばやくテントの内部に侵入した。先程ターゲットが触っていた白い固形物の入った瓶を手に取る。表面はザラザラしているが粉っぽい感じは受けない。どちらかというと白い石のようだ。おそらくこれは硝石だろう。私は硝石をすべて瓶から出すと、持参したプラスチック爆薬を変わりに中に詰めた。形をそれっぽくして持ってきた100gのうちほぼすべてを瓶の中に入れた。瓶を元あった場所に戻すと、私はテントを出て再び樽の中に隠れた。

 

 

 

少しして多少苛立った顔のターゲットが帰ってきた。私は再びテントの裏に回り穴から覗く。

 

 

「クソッ!何故あの程度の爆発しか起きないのだ!原因がわからん!」

「・・・。仕方ない。こうなればありったけの秘薬を投入するしかあるまい。」

 

 

ターゲットはブツブツ呟いた後、先程の黄色の固形物、おそらく硫黄だろう。と、元は硝石の入っていた中身のすり替わった瓶、を手に取ると器に移さずそのまま瓶ごと持っていってしまった。私は再び木箱の裏に隠れつつ広場を見る。広場では相変わらず魔法陣を囲んで何かを話し合っていたが、ターゲットがそれをかき分けて持っていた2本の瓶を多少乱暴に魔法陣の中心においた。そのまま詠唱始めててしまったので周りの研究員たちが慌てて魔法陣から離れた。

 

詠唱が続き、瓶から固形物が浮き上がる。それらが空中でくっつき、そして空中に現れたきりのようなものから電撃がそれらの固形物に向かって放たれる。

 

 

ドォオオン!

 

 

硝石と硫黄に雷撃が命中した程度では大した爆発は起こらない。黒色火薬の生成には炭が足りてないためだ。しかし硝石に成り代わってその爆発する任を受けたプラスチック爆薬は、今まで魔法陣の半分ほどにしか広がらなかった爆発を魔法陣のあった地面ごと半径7~8mは吹き飛ばすという威力に変わった。周りに居た研究員は何人か爆風に押され爆ぜた瓶の破片が当たって負傷する程度ですんだが、魔法陣のすぐ外側に居たターゲットはものの見事にばらばらになってしまっていた。

 

 

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『ターゲットの死亡を確認。これでクリーンな政治ができると良いのだけれどね。じゃあそこから脱出して頂戴。』

 

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私は隠れていた木箱から離れ、テントの裏を伝って森のなかに入ろうとした。

 

 

「・・・ちょっと、そこのあなた!」

「・・・!」

 

 

仮面装束をつけた女性に呼び止められた。バレてしまっては仕方がない。少しの間眠っていてもらう他ないだろう。私はすばやく呼び止めた女性に近づく。突然近寄ってきた不審者に驚いて身動きが取れていなかった女性のみぞおちに一撃を食らわせて女性を気絶させた。

 

気絶した女性を茂みの中に隠そうと引きずっている最中に、私は第二目標のことを思い出した。見たところこの女性も研究員の一人のようだ。優秀かどうかはわからないが少なくとも国立の研究機関に所属している研究員なのでそれなりに知識はあるはずである。私は予定を変更し、彼女を抱えるとそのまま森の中へ入っていった。

 

侵入検知装置は侵入者に対しては有効だが脱出者に対してはあまり効果を発揮しないようだ。ラインを足早に通り抜け、周囲を伺いつつ女性を肩に担ぎながら走っていると、遥か後方の領域内に警備兵の姿が見えた。気が付かれないように中腰になりつつ、森を抜ける。

 

森を抜けると、先程転倒させた馬が自力で立ち上がり、突然居なくなった操縦者をキョロキョロと時折探しつつ道端の草を喰んでいた。私は女性を馬に載せ、そのまま一緒に馬にまたがり、その地域を脱出した。

 

 

 

 

 

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~同時刻~

 

 

「あなたに私を止められるのカ?」

「・・・。」

「あなたに私の望むものを用意できるのカ?」

「・・・。」

「・・・何とか言ったらどうなのネ・・・。」

「あなたのことは知っている。」

「そりゃ知らないでこんなところまで来るやつは相当な物好きアルネ。」

「あなたは今はフリーランスのはず。私達の組織に協力してほしい。」

「嫌ネ。」

「・・・。」

「私はある目的があって行動している。脇道にそれてる時間はないネ。」

「・・・。」

「じゃあ話はこれで終わりネ。とっとと帰るヨロシ。」

「火星。」

「!」

「戦争。」

「!!」

「私達は兵器を持っている。あなたの元いた世界の技術も把握している。」

「・・・お前達、何者ネ。」

「あなたの境遇も知っている。私達の情報部は優秀。」

「・・・。」

「あなたの計画に協力できる。だから私達の計画にも協力してほしい。」

「・・・何処まで知ってるネ。」

「あなたが火星人だということ。あなたが戦争孤児だということ。あなたが・・・。」

「もうイイヨ。わかった。協力しよう。」

「・・・助かる。」

「そのかわり、そっちの技術も少し分けてもらうヨ。その辺りの交渉は加入してからでいいネ。」

「わかった。では本部と連絡を取る。」

 

 

 

「まあ私の世界はネギ坊主が救ってくれそうだし。大丈夫だと思うネ・・・。」

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「腐れ縁の飛脚」  +1000 『エージェント・スミスに会う。』

・「検知するだけ装置」+1000 『検問を通らずに実験場内へ入る。』

・「双月ロケット」  +3000 『ターゲットを実験中に爆弾で殺害する。』

・「愉快な誘拐」   +3000 『エレオノールをICAにつれていく。』

 




遅れて申し訳ありません。それもこれもぜんぶスクエニのせいです(責任転嫁)
ドラクエビルダーズ2やってました。というかやってます。(開き直り)


2019/06/17追記
DQB2熱は落ち着きましたがWT熱が再燃中・・・w


次回は千葉県に行きます。

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