『銚子港へようこそ。47。』
『今回のターゲットは幻想郷からある妖怪と一緒に駆け落ちした人間、速水翔。クライアントである八雲紫は、幻想郷の重要人物であるその妖怪を連れ出す原因になったその人間を排除してほしいみたいね。』
『八雲紫曰く、最近はセンサー類やカメラの類が進化してきて外の世界も容易に出歩いて神隠しすることができなくなってしまったみたいなのよね。それでもつい最近までは自分で対処できていたのだけれど、我々ICAの偵察衛星が導入されてからはそれに映り込むことを危惧して、好きな場所にスキマを開くことができなくなってしまったんですって。』
『スキマというのがどういうものかはわからないけれど、原因の一端が我々にあると聞かされたからには断るに断れなくなってしまってね。できる限りスマートにお願いね。』
『準備は一任するわ。』
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「いやー!大漁大漁!銚子のイワシは日本一ってな!」
私は今銚子漁港に向かおうとしている漁船に乗っている。この船自体は隣の茨城県鹿島港の漁船だ。私はこの船に漁師として潜入して銚子に侵入を試みている。イワシ漁を手伝いつつ、情報も収集できればいいと考えていたが、この船に乗っている人間は皆銚子漁港の人間のことは知らないようだ。
「しかし兄ちゃん!外人さんなのに日本語ペラペラだし何よりその鉢巻は似合ってるねえ!そんな感じに鉢巻きしてる日本人、最近あんまり居ないんだけどもよ!」
「そうなのか?」
「ああ。まあ今はヘアバンドや何やらがあるからな。わざわざ外れる可能性のある鉢巻は誰もやりたがらねえのさ。」
「世知辛いものだな。私は伝統文化の一つだと思っている。」
「嬉しいじゃねえの。一日バイトとは思えねえや!さあ、もうすぐ銚子だ!仕事終わったら一杯やろうや!」
「ああ。」
もっとも一杯やるときには私は既にこの国にはいないと思うが。海は穏やかで、12月の寒空は日が照りつけてはいるがやはり寒い。そんな他愛もないことを考えているうちに漁船は銚子港に入港した。
私は乗組員と一緒に入港してすぐにイワシの水揚げを行った。船に積まれた大量のイワシをクレーンで港へと運び入れる。私はそれを手伝いつつ、港の中で働く人員の中にターゲットが居ないか探した。港では様々な人が働いており、かなり活気がある。しかし、その中にブリーフィングで確認したターゲットは居なかった。
そのまま水揚げ作業を終えると出港する時間まで自由時間となった。私は自分の荷物を回収し、乗組員の集団から離れて漁業組合へと向かった。
「少しお尋ねしたいことがあるのですが。」
「はい、何でしょう。」
「速水翔という方がここで働いていると聞いたのですが。」
「速水さん?ああ、彼なら漁港じゃなくて隣の加工場にいると思うよ。」
「ありがとうございます。その加工場というのはどちらに?」
「えっとねえ・・・はいこれ地図。これの・・・ここだね。」
「ありがとうございます。行ってみます。」
首尾よく漁業組合でターゲットの居場所を突き止めることが出来た。私は足早に示された加工場へ向かう。加工場は市場から道を挟んで反対側に位置しており、それなりに大きい工場になっていた。
まずは工場を遠目から観察する。道の反対側から見る限り、シャッターが開いている部分では内部で魚の内臓を処理している手伝いの人が見えた。施設の形状的にトラックなどで一括で運ばれてきた魚をここでおろし、その場で内蔵を処理して奥に持っていくのだろう。
その中に忙しく動き回っているスタッフの中にその人物はいた。
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『アレが速水翔。愛の光なき人生は無意味とは言うけれど、その愛が彼の人生を終わらせるっことになるとはね。』
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私は道を渡り、工場の横に回った。横は他の工場や駐車場が隣接しており、間の隙間は人がひとり通れる程度しか無く、隣が工場の場合は加えて昼間だと言うのに薄暗かった。
私は路地に入り、工場の裏手へ回った。工場の裏手には様々な廃材や資材が置かれていた。裏口と思われるドアもあり、そのドアの前にはタバコを吸っている男性が居た。私は慎重に背後に忍び寄ると一気に首を絞めて気絶させた。気絶させた男性を資材と資材の間に隠すと、いつものように服を借りた。薄い黄緑色のいかにもな作業着である。ターゲットも着ていた服と同じものだ。
作業着を着て裏口から内部へ入る。町工場という雰囲気のこの工場は電子ロックやID認証などはなく、社員証の提示すら無いため侵入はかなり容易である。
裏口からはすぐに現場というわけではなく、裏方の事務作業を行う部屋が多数あった。それらの部屋を通り過ぎ、2階へ上がる。2階には工場全体が見渡せるデッキがあった。金網製なので歩くたびに音がするが、工場内は常に水が出されていたり、蒸気釜のようなものもあるためかなり五月蝿く、足音程度ならかき消してくれる。
「こんにちわー。」
「やあ文ちゃん。旦那ならそっちだよ。」
「文。どうしたんだい?」
「今日お弁当持っていくの忘れてたでしょ?腕によりをかけて作ったんですからちゃんと持っていってくださいよ!」
「ああ、すまんすまん。朝は結構急いでたからな。」
「文ちゃん料理できるのかい?」
「最初の頃はひどいもんでしたけど最近はやっとまともに・・・ね。」
「ハイハイ。御指導御鞭撻の賜物ですよっと。じゃあね。」
「ああ。」
下の階ではターゲットの妻である駆け落ちした妖怪と思われる女性が弁当を届けに来ていた。その顔を見て思い出したが、彼女は確か天狗の集落に居た射命丸とかいう新聞記者だったような気がする。なるほど、天狗が人間と駆け落ちか。彼女の速さは幻想郷随一だと聞いたが管理者である八雲紫にも捕らえきれないほどということか。
仕事場は彼女の登場で少し和み、彼女が帰ると再び全員仕事に戻っていった。私は周囲を観察する。ターゲットは内蔵を取った魚を満載したコンテナをクレーンで移動させていた。手元のスイッチで移動させるタイプで、コンテナに備え付けられている扉を開閉する事もできるようだ。コンテナの大きさはかなり大きく、それが太いワイヤーによって釣り上げられている。あのワイヤーは流石にシルバーボーラーでは切断するのは難しいだろう。
私はクレーンの吊り上げている最上部を見た。大きな金属製の金具でレールに固定されている。そのレールをたどると、2階部分に操作盤のようなものがあった。近寄って見ると、どうやら下のコントローラーが動かなくなったときのための非常用の操作盤のようだ。このような非常用の操作盤は、大抵端末よりも優先して操作を受け付けることが多い。これは使えるだろう。
私は操作盤を開き、クレーンを動かすタイミングを見計らう。ターゲットに近い位置で操作を始めなければ、操作がおかしいことに気がついてこちらの存在と目的を悟られる危険性が高くなるためだ。しばらく操作せずに見守る。忙しくコンテナから魚を降ろしてはまた元の場所に戻して釣り上げてを繰り返している。しかしなかなかターゲットは移動中のクレーンのそばには寄らない。安全管理という点では当然とも言えるが。私は改めて周囲を観察する。
ターゲットの後ろに水槽がある。その水槽はいくらかの魚が入っているがそれ自体はさほど大きなものではない。私はクレーンがターゲットに一番近くなるタイミングを見計らって水槽をシルバーボーラーで撃った。
パシュン
パリン
バシャーン!
「うわ!なんだ!?」
「水槽が割れたぞ!」
「ああ!魚が!」
突如として水槽が割れたことで現場は混乱している。ターゲットは流れ出た水と魚を避けるために更にクレーンに寄る形になった。今がチャンスだ。私は操作盤を動かし、クレーンをターゲットの上に持ってくると、コンテナのドアを開けた。
バシャーン
「うわぁぁぁぁ!!!」
ドシャシャ!
「おい!速水が魚の下敷きになったぞ!」
「なんでコンテナが開いたんだよ!」
私はコンテナの扉を開けた瞬間にすぐさま操作盤から離れ、近くの物陰に隠れた。コンテナの中には大量の氷と大量の魚が満載されており、コンテナを釣り上げていた高さは3mはあった。落下する際の重量は相当なものだろう。あまりの大量の氷によってターゲットの姿は完全に見えなくなっていた。
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『ターゲット死亡。任務完了ね。騒ぎが大きくなる前に離脱して頂戴。』
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「すみませ~ん、さっき渡し忘れた・・・ってどうしたんですか?」
「ああ文ちゃん!大変だ!あんたの旦那さんが!!」
「速水さんが氷の下敷きに!」
「え!?うそっ!?」
下では先程の射命丸が戻ってきていた。私は下の混乱に乗じて通路を抜け、進入時に通ってきた道を通り、裏口へ出た。未だに伸びていた作業員に服を返し、いつものスーツに着替え直すと、入った方向とは反対の方向へ路地を抜けて出た。
反対の通りは全く人気が無く、両側も倉庫が密集して立っており、逃走するにはもってこいの道と言えるだろう。私は道に沿って歩き、少し先に止めてもらったICAが用意した車に向かって歩いた。
ヒュン
「!」サッ
ガャシャーン!
「何処へ行こうというのですか。」
「・・・!」
ICAが用意した車は向こうからやってきた。というか飛んできた。車は背後で大破している。どうやら風に飛ばされて飛んできたようだ。その竜巻レベルの風を起こした張本人が目の前に立ちはだかっている。
「あなたがあの場から離れるのを見ましてね。こうして追ってきたというわけですよ。なんで追ってきたのかおわかりですよね?」
「・・・。」
「今日の私はここ数十年の中で一番頭にきてますので手加減はできません。私の・・・私の大切なものを奪ったあなたを許す訳にはいかない!!」ヒュン
「っ!」サッ
ガシャーン
「避けていられるのも今のうちです!幻想郷で見たあの時、やはり終わらせておくべきだった!」ヒュン
「くっ・・・。」サッ
ガッシャーン
先程から手当たり次第に駐車してある車を投げつけてくる。この狭い路地裏では風の制御も限定的になるらしいが、それでも乗用車を投げつけられる程度には風を起こせるようだ。このままではまずい。私はシルバーボーラーを出し、彼女に応戦した。
パシュン
チッ
「ふん!そんな弾!」ヒュン
「・・・。」サッ
ガシャーンバチバチバチ
周りの被害もお構いなしだ。車は近くの電柱にぶち当たり電柱をへし折った。これだけ派手に騒いでいるのだから人も集まってきてしまう。急がなくては。
「な、なんだあ!?」
「!?あいつは!」
案の定、私の後ろから親子と思われる3人がやってきた。っと、その子供は見覚えがあるな。
「っちい!ちょこまかと!」ヒュンヒュン
「な、何だこの風はあ!」
「おっちゃん!蘭姉ちゃん!こっち!」
「コナンくん!」
彼らは自主的に近くの路地裏に避難したようだ。私もできればそうしたいが、路地裏に入った場合あの風をまともに食らうことになりかねないため、得策とは言えないだろう。
私は彼女の攻撃をよく観察してみる。彼女の突風は攻撃の瞬間に飛ばす対象から前方に向けて吹いているようで、それ以外の場所には突風の被害は見受けられない。ということは背後はがら空きというわけだ。だが彼女は完全にこちらを捉えており、背後に回り込むのは不可能だろう。ならば回り込むのが“私じゃなければいい”わけだ。
私はほぼ決死の覚悟で飛んでくる色々なものの間をすり抜けながら、宙に浮かんでいる彼女に向かって進み、通り過ぎる。
「逃がすか!」ヒュン
バキバキバキ
私に向かって振り向きざまに突風を浴びせかけることで、私の横にあった倉庫のトタン製の外壁が派手にへしゃげる。姿勢を低くすることで突風をかいくぐった私は彼女の反対側に回り込めた。無論、彼女はこちらを向いて依然として手当たり次第に物を投げつけてくるが。しかし彼女が私の方を向いているおかげでフリーになった者たちも居る。
「今だ!」ピシュン
プスッ
「ぐっ!?な、なにが・・・眠く・・・」フラフラフラ
ドサッ
「・・・ナイスワークだな少年。」
私が反対側に回り込んだことで、あの少年たちに背後を見せたことで、少年の持つ時計型麻酔銃を打ち込むチャンスができた。案の定、少年は場を収めるために彼女に向かって麻酔を打ち、彼女を眠らせることに成功した。というか妖怪も眠らせられるあの麻酔針は一体・・・。
射命丸文と呼ばれた幻想郷一の俊足も、眠らせられてはその素早さを活かすことは出来ない。彼女は力なく地面に横たわっていた。
「ど、どうなったんだ?」
「コナンくん。大丈夫?」
「へ、へーきだよ。それよりも・・・。」
「しっかし、こりゃあまたどうして・・・。あっちこっちに車の残骸があるぞ。」
「と、とりあえず警察に電話する?」
「その方がいいだろうな。千葉県警にはあんまり知り合い居ねえけど。」
彼らは周りに転がっている車や建物の残骸を見ている。今のうちに私は退散するとしよう。私が動き始めたあと、倒れていた彼女の周りの空間に裂け目ができると彼女を飲み込んで消えてしまった。
「な、何が・・・って、待て!そこの男!」
「・・・。」
っと、少年に見つかってしまった。私は駆け足で路地裏に入り、逃走を開始する。別の道に止めてあった路上駐車の車を拝借して私はその場を後にした。
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~1ヶ月後~
「じゃあいくわよ。」
「はいネ。ポチッとな。」
ウィーン…
「うん!ちゃんと結合できてるネ!」
「何とか成功したわね。長かったわ。みんなお疲れ様。」
ワー パチパチパチ
「それで、パチュリー。進化の秘法と破壊の遺伝子を繋げることは出来たわけだけど、これをどうするつもりネ?」
「その辺りは彼女に報告してからかしら。本当に欲しているのは彼女の所属しているICAという組織の方らしいから。」
「ICA。私達の世界に来た自衛隊からも聞かなかった単語だ。」
「私の世界にもよ。もっとも、それらしき組織はこの間トリスタニアで暗躍してたみたいだけれど。」
「ワタシはそれなりに裏稼業にも詳しいつもりだたが、そんな組織はここに来て初めて聞いたアルヨ。」
「せいぜい私達の生活を脅かすようなことにはならないでほしいわね。最近は本もロクに読めてないわ。」
「まあワタシはこうして優秀な魔法使いたちと知識を共有できただけでも概ね満足ヨ。」
「私なんかは教えられる方が多かったけどね。ハルケギニアではここまで高度な魔法は虚無以外にはないから。」
「私の世界の魔法とも違う。非常に興味深かった。早く帰って実践してみたいことが多く学べた。」
「一応みんな目的は達せられたということなのかしらね。」
『それはなによりだったわ。』
「ミス・ダイアナ。」
『完成したとの報告が来たから参上したわ。これがそうなの?』
「ええ、進化の秘法に含まれていた制御因子と攻撃因子、それに一定の行動因子を破壊の遺伝子と掛け合わせることで、かつて無いほどにまでパワーと魔力を向上させつつ、思考速度と俊敏性を向上させ、それぞれを損なうこと無く制御することを可能としたもの。」
『完璧ね。いい仕事ぶりだったわ。報酬はどうしましょうか。』
「私達はお金とかは要らないわ。あなた達の技術が学びたいわね。」
『それならうってつけのものがあるわ。詳しくは機密だから教えられないけれど、近々カテゴリ・LOGの最終実地試験が行われるのよ。その試験の模様を見せてあげるわ。』
「ワタシの世界にも似たようなのはあったけどあそこまで高威力なのはなかったネ。」
「私も見てみたい。自衛隊も持っていない兵器。興味がある。」
「私は見てもあまり参考にはならなそうだけれど、面白そうではあるわね。」
『では決まりね。日時は追って知らせるわ。それまで待っていて頂戴。』
ミッションコンプリート
・「大漁だぞぉ!」 +1000 『イワシ漁船に乗って潜入する。』
・「弱食強肉」 +3000 『ターゲットを魚を使って暗殺する。』
・「ウィンドブレイカー」+3000 『射命丸文と戦闘する。』
・「死神が見た理想郷」 +5000 『射命丸をコナンの麻酔銃で眠らせる。』
結局バレてるやん・・・?とりあえず文ちゃんは幻想郷へ帰還しました。ちなみに執筆中にかけていた曲は「最高最速シャッターガール」でした。
今年は意外に初めてなことが多かった年でもありました。本年の更新はこれにて終了です。
みなさま良いお年を。
2019/06/17追記
2018年最終更新の回でした。18年は新しい職についたり小説を書き始めたりといろいろ大小様々な挑戦をした年でした。
次回は例の兵器の完成お披露目会です。