HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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『名探偵を狙う者』の別アプローチ版です。


HITMAN『名探偵を狙う者』(もう一つの世界線)

『東京へようこそ。47。』

 

『今回は急ぎの用件。ある組織に飲まされた毒薬の効果で体が小さくなった高校生探偵、工藤新一の逃走援護のための暗殺よ。』

 

『ターゲットは3人。バイクで追う木村源五郎、電車で追う萩義昌、戦闘ヘリで追うフォラリス・R・ゲイル。この3名よ。殺す順番は任せるわ。』

 

『クライアントは灰原哀こと宮野志保。彼の協力者よ。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

 

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私は今、都心の真ん中に立つ、聖路加ガーデンタワーの最上階の展望フロアの更に上、屋上に来ている。普段は入れない場所ではあるが、人の目を盗んでドアをピッキングで開けて侵入した。

 

今回のターゲットは救護対象の例の少年を追いかけ回していることもあり、少年がこちらのレンジに入ってくれればターゲットも自動的にレンジに入ってくれるため高所からの狙撃に重点を置いて仕事をすることにした。そのためには援護対象となる少年をこちらに誘導する必要がある。そのためにタバサを彼のもとに派遣した。

 

使用する銃はマクミラン社製TAC-50だ。長距離狙撃の世界記録を持つこの銃ならば広い東京を縦横無尽に駆け回る彼らにも対応できるだろう。

 

 

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『47。情報が入ったわ。少年の乗るスケボーの速度は最高で80km/h。よってそれを追う側もそのくらいの速度で動いていることになるわ。』

 

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子供用のスケボーがなぜ乗用車並の速度を出せるのかは疑問ではあるが、それを乗りこなしている少年もなかなかに常軌を逸している。元の姿でさえただの高校生、プロスケボー選手というわけでもないだろうに。

 

私はスマートフォンで少年の位置を把握する。現在位置は田町から浜松町方面へ向けて動いているようだ。私は屋上の南側に位置を移動した。流石に逃走中の少年の姿は見えないが、その追手なら一人発見することが出来た。かなり高空を1機のヘリが飛んでいる。おそらくアレが、戦闘ヘリで追っているというフォラリス・R・ゲイルという男だろう。

 

流石にまだ距離がありすぎる。私はヘリの動向を双眼鏡で確認する。双眼鏡でもまだ機影を捉える程度にしか見えないが、どちらに向かおうとしてるか程度はわかる。どうやらそのまま北上するつもりのようだ。ということは・・・おそらくあの辺り、ちょうど浜松町の駅の少し南側のビルとビルの間。あの辺りに現れるだろうか。

 

私はスマートフォンの情報とヘリの位置を見比べおおよその検討をつける。まずは相当な速度で逃げまわざるをえない状況を打開してやろう。私はビルとビルの間にわずかに見える道路に向けて照準した。距離を測定、2.1km。風はほぼ無風だがビルの付近はビル風がある可能性がある。自転なども考慮して・・・あとはタイミングだ。

 

そのまま少し待つ。スマートフォンの情報では間もなく照準している場所の手前の交差点を左折してくるはずだ。直進は港湾部に入ってしまうため逃げづらくなるだけだ。

・・・見えた!交差点を曲がるスケボー、そしてそれを追うバイク。私はバイクの方に当たるように偏差射撃を敢行した。

 

バァアン!

 

 

 

 

 

 

 

~コナンside~

 

 

ドゴシャ!

ガシャーン!

「何?!」

 

 

俺を追っていたバイクがいきなり吹っ飛んだ。追っていたのはバイク一人だったので一旦止まる。バイクは盛大にコケて近くの塀にぶち当たって大破したようだ。乗っていたやつはどこに・・・アレか!

ピクリとも動かないので注意深く近寄ってみるとヘルメットのバイザー部分は真っ赤に染まり、頭部に大きな穴が開いていた。狙撃されたんだ!でも誰が?何故?

 

疑問はおいておいて警察へ連絡しようとスマホを取り出し・・・っと!やべ、手が滑って落としちまった・・・。

 

 

バリィン!

「ぐあっ!」

 

 

スマホを拾おうと伸ばした手に衝撃が走った。見ると手の一部が切れて血が流れ出ていた。落ちていたスマホはさらにふっとばされて道に転がっていた。落としたところを狙撃されたようだ。ど真ん中から真っ二つに割れてもう使い物にならない。とりあえずまた狙撃されたらやべえから隠れる一手だ。

 

スケボーに再び乗ろうとしたその時、来た方向とは逆方向から車が一台やってきた。俺の直ぐ側で止まると、中から見知った顔が出てきた。

 

 

「HI!クールキッド!」

「じょ、ジョディ先生!?」

「説明は後よ。とにかく乗って・・・って怪我してるの?」

「あ、ああ、こんなのたいしたことないよ。」

「そうは見えないわよ。とにかく後ろに乗って。治療してもらえると思うわ。」

「治療してもらえる?」

 

「・・・。」

「えっと・・・どちら様?」

「彼女は敵ではないわ。味方でもないかもしれないけど。」

「どういうこと?」

「詳しくは灰原って子に聞いて。彼女が私を含めて全て手配したんだから。」

「怪我。してる。」

「え、ああ、さっきスマホが狙撃されたときの破片で・・・。」

「みせて。」

「え・・・あ・・・。」

「・・・イル・ウォータル・デル」

ポゥ…

「・・・!傷が・・・!」

「・・・これでいい。」

「すごい!傷が殆どなくなってる!」

「不思議でしょう?私もさっき別のを見せてもらったんだけど、魔法?ってやつらしいわよ。」

「魔法?そんな非現実的なことが・・・。」

「わからなくていい。この世界には、合わない。」

「合わない?この世界?」

「っと、クールキッド。おしゃべりしてる場合じゃなくなったみたいよ。」

「っ!」

 

 

走る車の背後に闇夜に紛れる機影が見えた。戦闘ヘリだ!まずい!こっちにはあったとしてもせいぜいジョディ先生の拳銃くらい。拳銃じゃヘリは落とせない!振り切るのも不可能だ!

 

 

「私がやる。」

「え!?ちょ!」

 

 

隣の青髪の少女はそう言うと天窓を開けて身を乗り出した。少しの間観察していたと思ったらおもむろに手に持っていた棒をヘリに向けると何やらつぶやき始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

~タバサside~

 

 

相手は戦闘ヘリ。装甲が厚く、拳銃弾程度では損傷を与えられない。ならばおそらくこの場にいる誰よりも高火力である私が対処しなければならない。私は車の天窓から身を乗り出して相手を見る。

 

車が左に曲がる。ヘリもそれに追随するように曲がる。射線が通ると同時に車が再び曲がる。それの繰り返し。だけど、曲がるときに一瞬だけ見える・・・。

 

 

 

 

“逃走は失敗だな。次はもう少しうまく逃げれるようにな。”

“47・・・恩に着る。”

“ヘリにはいくつか弱点が有る。そこを正確に攻撃できればそれほど驚異ではない。”

 

 

 

 

「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース・・・」

 

そう、ヘリには弱点がある。私は既にそれを学んでいる。

 

 

“ジャベリン”

 

バシュゥ…

ドガァン!

 

 

放たれた氷の槍は気持ち程度の誘導の後、旋回し曲がった直後のヘリのテールローターを直撃した。ヘリはまたたく間に制御を失い、回転しつつそばのビルにメインローターをぶつけ、飛び散らせながら交差点の真ん中に墜落した。派手に壊れたがそもそも旋回直後で速度が落ちており、高度も低かったため爆発炎上というわけには行かなかった。むしろ走り去るこの車からでも視認できるが燃料漏れすら起こしておらず、ただローターが破損し落下しただけという感じだ。

 

私達の車はその場を離れるためにそのまま車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

~47side~

 

 

ほう、今回は逃走成功だな。成長しているということか。

 

築地四丁目交差点に落下したヘリは丁度赤信号から青信号に変わるかというタイミングで、交差点内に車が一台も居なかったため巻き込まれた車は居ないようだ。だが落下したヘリは搭乗員を殺傷するだけの損傷は与えられなかったようだ。墜落したヘリのキャノピーが開き、中から金髪の大男が満身創痍で降りてきた。

 

 

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『フォラリス・R・ゲイル。やっと姿が拝めたわね。翼をもがれた彼がなにかアクションを起こす前にケリをつけちゃいましょう。』

 

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私は再びスコープを覗く。彼は懐から出したスマートフォンで誰かと話し始めた。距離800m弱。先程に比べればそれほど長距離ではない上、視界が先程より開けており、なおかつターゲットも止まっているため先程より大分狙いやすかった。電話の相手に余計なことを喋られる前に私は引き金を引いた。

 

 

バァアン!

 

 

弾は吸い込まれるように交差点の真ん中で立ち尽くしていたターゲットの頭を撃ち抜き霧散させた。あまりの威力に肩から上が無くなってしまった。最も私にはハーグ陸戦条約は関係ないため問題はないが。

 

交差点はかなり騒然としているようだ。周りで見ていた野次馬立ちが騒いでいるのが見える。これは火消しが大変そうだがそれは我々よりもFBIや日本警察の役目だろう。私は気にせず最後のターゲットを探すことにした。

 

 

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『47。悪い情報よ。最後のターゲット、萩義昌は他の二人がやられたことで作戦を中止して撤退を開始したみたい。現在東京臨海新交通臨海線で豊洲方面へ向かっているわ。』

 

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っと。ターゲットを逃しては元も子もない。だが、東京臨海新交通とはたしかゆりかもめと呼ばれるタイヤの鉄道だったはずだ。それならばここからでもギリギリ視認圏内だ。私は再び南東側に場所を移動した。

 

ちなみにこんな場所で狙撃すれば下の階の展望フロアに居る客に気が付かれるだろう。それを想定して出入り口である扉はワイヤーで厳重に固定し開かないように細工をしておいた。

 

おそらくターゲットは途中で降りずに終着駅である豊洲駅まで来るだろう。そこで有楽町線に乗り換え、新木場へ。東京ヘリポートから脱出というプランと予想した。つまりチャンスを逃せばそれはすなわち任務失敗ということになる。機を逃すわけに行かない。

私は機を逃さないためにも双眼鏡で少し手前の駅、市場前駅に侵入する電車を監視することにした。ターゲットの顔と服装や特徴は情報部からの情報が正しいことを祈るばかりだ。

 

 

しばらく待っていると奥から一編成やってきた。私は何度も繰り返した手順、先頭から順番に車内を見て探すのを繰り返す。・・・発見した。前から3両目のドアにもたれかかって何かをいじっている。私は距離や風を正確に計算し、弾丸到達にかかる時間と弾道を割り出した。スコープを覗き構える。距離はざっと2.1キロだ。遮るものはないが海が近いため海風があることが予想される。近くの建物の旗やテント、洗濯物までも利用して風を測る。

 

市場前駅を電車が発車した。豊洲に向かって走る。計算したことがうまくいくことを祈りつつ、私は引き金を引いた。

 

 

バァアン!

 

 

弾は1秒弱をかけて飛んでいき、走行中の電車のドアにもたれかかっているターゲットの背中に命中した。頭部を狙ったつもりだったが海風の影響で少し弾道がぶれたようだ。ドアのガラスは木っ端微塵になり、ドア自体もへしゃげて中に折れ曲がっている。ターゲットはどうやら上半身と下半身が分離したようだ。

 

 

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『すべてのターゲットの死亡を確認。お疲れ様。そこから脱出して頂戴。』

 

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バチバチバチバチ

 

っと、流石に長居しすぎたようだ。ワイヤーで固定していた扉から扉の鍵を溶断する音が聞こえる。私は用意していたパラシュートを背負うとビルから飛び降りた。若干風に流されはしたものの、対岸にある小さな桟橋の近くに降りることが出来た。私はその桟橋にあったボートを借りて脱出した。

 

 

 

 

 

 

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~1週間後~

 

 

「渡界機に異常?」

『はい。報告によりますと、複数の世界が同一につながってしまう事態が発生しているようです。』

「同一につながる・・・とはつまり?」

『例えばAの世界の常識が全く別のBの世界に適応され始めています。他にもAの世界に居ないはずのBの世界の住人がAの世界に現れる等です。我々の時間軸への干渉が原因のようです。』

「ふむ・・・そのことによる予想される被害は?」

『最悪の場合は世界そのものが消失する可能性があると・・・。』

「それは私達の世界もかね?」

『我々の世界は今の所変化はありませんが可能性はゼロではないかと。』

「そうか・・・。計画を急がねばならんな。」

『はい。既に指示は出しています。計画実行を早める必要もあるかと思います。』

「A-DAYも近いか。」

『同時にX-DAYも、ですが。』

「了解した。決行日前倒しを許可する。同時に不測の事態への対処方法も研究を進めるように。」

『承知いたしました。』

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「世界記録達成」  +3000 『2.0km以上の長距離狙撃を達成する。』

・「お静かに願います」+3000 『コナンの携帯を狙撃する。』

・「一世一代の大舞台」+1000 『20人以上の民間人に殺害現場を見られる。』

・「映画は嘘ばかり」 +3000 『47が戦闘ヘリを攻撃せずにターゲットを暗殺する。』

 

 

 




実は舞台になった町は私が昔住んでいた街だったりします。


2019/06/17追記
月島周辺は良いところです。銀座、お台場、浅草、豊洲等の東京の名所に近いですし。もんじゃもおいしいし。私が住んでいた頃より高層マンションが増えまくってて下町感が薄れているのが個人的には残念ですが。


次回はフランスへ向かいます。

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