HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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HITMAN『地獄があった場所』

『ノルマンディーへようこそ。47。』

 

『今回は目的が2つあるわ。一つはいつものように暗殺、もう一つは救出任務よ。』

 

『向かってもらうのはフランス・ノルマンディー地方よ。それも1944年の6月中旬。そう、かの有名なD-Dayであるノルマンディー上陸作戦の真っ只中よ。我々の使う渡界機は過去に遡ることも容易なのよ?安心して、過去や未来で歴史を変えたとしてもパラレルワールドが新たに生成されるだけで、我々の世界の歴史にはなんの影響も及ぼさないことが確認されているわ。』

 

『ターゲットはアルベリヒ・G・グロシュタット。ドイツ軍第7軍に所属する陸軍大尉よ。彼は情報斥候として有名で、ポーランド侵攻の際にはアルフレート・ナウヨックスの指揮下のもとグライヴィッツ事件にも参加したようね。その類まれなる情報収集能力はドイツ軍の中でも突出していて、ノルマンディー上陸作戦の兆候も察知していたようよ。』

 

『クライアントは連合軍欧州方面総司令部。今後の作戦展開を阻害する可能性のあるものはどんな手段を使ってでも排除しようということらしいわね。事実、我々に依頼があるまでに連合軍主導の暗殺計画が確認されているだけで4回。未確定も含めれば12回は行われているわ。』

 

『もう一つは救出ミッションよ。最近我々が使う渡界機に不具合が見つかったのは知っているわよね?我々の移動自体には何ら問題は起こさないのだけれど、どうやら異世界の住人が渡界機の余波に巻き込まれて、別の世界に転送されることがあるらしいということがわかったの。今回救出してもらうのはその転送されてしまった女子高生たち。彼女たちは元の世界では世界の根幹となりうる重要人物たちなのよ。だから早急に元の世界に戻さないと世界が崩壊してしまうわ。現に既に世界の一部が抜け落ち始めて曖昧になりつつあることが報告されているわ。』

 

『救出してほしいのは“西住みほ”“秋山優花里”“五十鈴華”“武部沙織”“冷泉麻子”の5名よ。救出は我々のセーフハウスまで連れてきてくれればいいわ。あとできれば彼女たちが乗っているであろう戦車道競技用の四号戦車H型も持ってきて。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

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~あんこうside~

 

ドォーン

ババババ

バァーン

 

「何がどうなってるのよ!」

「どこかの演習区域に迷い込んでしまったのでしょうか!?」

「でもこの匂い、いつもの戦車道大会でも嗅いだことのない匂いです・・・。」

「血と硝煙と肉が焼ける匂いだ。・・・うっぷ。」

「まこさん大丈夫?一旦この場を離れましょう!全速後退!」

 

 

 

 

 

 

 

 

~47side~

 

 

 

ドーン

 

遠くから砲撃音が聞こえている。私は今、上陸地点の一つ、ユタ・ビーチにほど近いヴァローニュという街にいる。今日は6月12日。歴史上ではネプチューン作戦が行われ北部のシェルブールを確保するために連合軍の猛攻が行われている時期だが、このヴァローニュは時折爆撃機が飛来し、砲撃が着弾するものの陸軍部隊が進軍してくる様子はない。どうやら史実よりだいぶ作戦進行は遅れているようだ。

 

私はまず情報を集めることにする。この街は前線に近い街ということもあり、民間人は殆どおらず、街を行き交う人々はほとんどがドイツ軍人だ。私はセーフハウスのあるアパートの前で見回っている警備員を音でおびき出し、家の中で気絶させた。服を借り、適当な部屋のクローゼットに気絶した兵士をしまうと私は外に出てドイツ陸軍前線司令部を目指した。

 

前線司令部は探すまでもなかった。街の中央にあるカトリック教会がそれだ。教会の前には兵士や伝令のバイクやトラックが所狭しと並べられ、せわしなく人が行き交っている。できる限り人の目には触れないのが一番なので私は正面からでなく裏から教会に侵入を試みることにする。教会の裏には地下に通じる階段があった。階段の先の扉はもちろん鍵がかかっていたが、現代の電子錠ならともかくこの時代の錠前などピッキングで簡単に開けることができる。

 

教会の地下が作戦指令所になっていたようだ。扉を開けた瞬間から中から忙しない足音と話し声が聞こえる。私は扉周辺に置かれている樽や木箱に隠れながら慎重に近づく。なんとか話し声が聞こえる位置までたどり着くことに成功した。

 

 

「ロンメルはどうした!」

「今朝旧国境付近に到達したとのことです。何分連合軍の爆撃が激しく、到着に時間がかかっている模様です。」

「こちらから迎えを送ることも検討させろ。21師団はどうした!」

「シュルメールから上陸した敵師団に対応中です。ですが弾薬の欠乏が顕著であり、増援と補給を要請しています。」

「第34歩兵師団から3個大隊を救援に向かわせろ。それ以降は現地指揮官に従わせろ。」

「了解。」

「司令官、ゲルヒンから報告が来ています。」

「おお!来たか!今回はどのような情報だ!」

「2つあります。一つはレストル方面の連合軍が補給物資不足に陥っているとの報告です。ここから進軍すればシェルブール攻略部隊を分断することができると書かれています。」

「なんと!向こうも必死だな。わかった。してもう一つは?」

「もう一つは・・・よくわからない報告です。我々の装甲師団にはない戦車を確認したとのことです。」

「なに?どういうことだ?」

「見た目は四号H型のようですが細部が異なっており、F型にH型のシュルツェンと砲をつけたような改造品に見えると。」

「中央の改造品じゃないのか?」

「更に側面には鉄十字ではなくなんというか・・・可愛らしい魚の絵が書かれているとのことです。」

「なんだそれは?そんな師団マークは聞いたことがないぞ。連合軍の欺瞞工作か?」

「わかりません。調べますか?」

「念の為調べよう。自動車化歩兵師団から部隊を派遣してくれ。」

「了解しました。」

 

 

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『F型を改造したH型で側面に可愛らしい魚の絵のエンブレム。間違いないわ。要救助者の乗る四号戦車よ。ドイツ軍に補足される前に対処して。』

 

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報告を終えると伝令はまた走って奥の部屋に向かっていった。私は急いでその後を追う。奥の部屋には無線室があり、そこから伝令は各地に指示を飛ばしているようだ。私は席についた伝令を後ろから首を絞めて気絶させる。通信用のヘッドホンからは支持を求める声がしている。間一髪だったようだ。

 

 

「おい、どうした!応答しろ!」

「あー・・・すまない。改めて指示を伝える。」

「全く・・・頼むぞ。」

「伝達する。不審な戦車が発見された。第48歩兵大隊から人員を1名こちらによこしてくれ。こちらからも一名派遣し、確認する。」

「不審な戦車?敵ではないのか?」

「ゲルヒンからの伝達では敵の可能性は低いとあった。その真意も含め調査する。」

「ふむ・・・了解。派遣する。」

 

 

なんとか指示を出し終えることができた。私は無線室をあとにして目立たないように外に出る。警備兵も中から出てきた兵にはあまり警戒することはないようだ。そのまましばらく入口付近で待っていると眼の前の道に一台のサイドカー付きバイクが停まった。おそらく派遣されてきた偵察兵だろう。私は静かに近寄った。

 

 

「君が派遣される人員か?」

「ああ。そういう君はどこの所属だい?ここらではあまり見かけないが・・・。」

「最近配属されたばかりだ。だからこの任務に選ばれたとも言える。」

「なるほど。捨て駒ってわけか。お前も大変だな。まあいい、乗れ。」

 

 

私達は司令部の無線兵が持っていた情報を頼りに現場へ向かった。そこは最前線の少し後方にある雑木林だった。僅かな起伏と鬱蒼と茂る雑草、そして大量の広葉樹によって巧みに前線から隠されていた。砲塔側面にはピンク色のあんこうのエンブレムがある。間違いない、要救助者の戦車だ。私達はバイクを降り、近くの茂みから様子をうかがう。

 

 

「見たことのないエンブレムだ。どこの所属だ?」

「わからない。それを調べるのも任務だ。」

「なるほどね・・・こっちの装備はせいぜいMP40だというのになかなか無茶な任務だな。」

「そうだな。」

「敵ではないということだが根拠は?」

「それもわからない。ゲルヒンからの情報にそう書いてあった。」

「うーむ・・・まあゲルヒンからなら・・・こちらにも情報を回してくれればよかったのだが。」

「どういうことだ?」

「ああ。ゲルヒン、もといグロシュタット殿は我々の駐屯地を起点に活動しているからな。」

「そうなのか。」

 

 

やっとターゲットの名前が聞けた。薄々感じてはいたがやはりゲルヒンとはターゲットのコードネームだったようだ。情報斥候らしい名前と言える。

 

状況的にはターゲットよりまずは救助のほうが先が良いだろう。私達は戦車の背後からゆっくりと近づいた。位置的にここは車長の真後ろになるので気が付かれにくいはずだ。

慎重に近づいた結果、全く気が付かれる様子もなく戦車の真横に来ることができた。中から話し声が聞こえる。

 

 

「やっぱり街に行ってみましょう。食べ物くらいはあるでしょうから。」

「でも携帯も通じないし、どこかもわからないのに・・・。それにお金だって持ってないよ?」

「ぐぬぬ・・・こんなとき買い溜めてあったサバイバルキットさえあれば・・・。」

「さっき撃ってたのは明らかに実弾だった。遠目だが打たれた戦車から火達磨になった人が這い出てきてたのを見たぞ。」

「そんな状況の場所で果たして見ず知らずの私達に食べ物を分けてくれるでしょうか・・・。」

 

 

どうやら今後のことを話し合ってるようだ。確かに突然迷い込んだ異世界ではじめに行うのが食料の確保なのは間違ってはいないだろう。私は兵士と目で合図を送りあった。兵士が音を立てないように慎重に戦車によじ登り、そしてキューポラを一気に開けた。

 

 

「Haende hoch!」

「!?」

「な、なに!?」

「・・・まずいな・・・。」

 

 

銃を突きつけられ降伏勧告を受けていることは理解できたようで、5人全員がそろそろと外へ出てきた。

 

 

「Wer seid ihr? Wo ist deine Zugehörigkeit?」

「まずい、何を言っているかさっぱりわからない。」

「みぽりんわかる?」

「うーん、ドイツ語っぽいけど流石になんて言ってるかまでは・・・。」

 

 

私は問い詰めている兵士の後ろに静かに移動すると、持っていたケヴェーアの銃床で首元を殴打した。兵士は一瞬うめき声を上げた後にその場に崩れ落ちて気絶した。突然のことに目を丸くする5人。

 

 

「“西住みほ”以下4名の“あんこうチーム”だな?」

「え?日本語?」

「あ、はい。そうですけど・・・。」

「私は君たちを大洗に帰還させるためにやってきた。」

「えっ!?本当!?やったあ!」

「助けが来てくれました!」

「よかった・・・。ここはどこなんですか?」

「ここは1944年6月のノルマンディーだ。君たちは今ノルマンディー上陸作戦の戦地のど真ん中にいる。」

「1944年?!」

「タイムスリップってやつ?!」

「そうなるな。だが我々が君たちを大洗まで送り届ける。心配しなくていい。」

 

 

彼女たちは安堵した表情と驚いた表情を交互に見せていた。いきなり過去にタイムスリップしたと聞かされて信じるのは難しいが、今の状況と遭遇したであろう戦場の記憶がそれが真実だと証明するには十分なのだろう。

 

私は彼女たちを戦車の中に戻し、戦車ごとセーフハウスへ向かうことにした。

 

 

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『彼女たちと合流できたわね。少し北にペロンという村があるわ。そこに回収用のセーフハウスを設けてるからそこへ向かって頂戴。』

 

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戦車は雑木林からでると北へ走り始めた。帰れるとわかって安堵したのか戦車を操縦する冷泉麻子、側面扉から顔を出して周囲を警戒している秋山優花里、キューポラから上半身を出して双眼鏡で周囲を確認している西住みほなど、皆一様に落ち着いている。

 

暫く走ると地平線まで続く畑の中にポツンとあるいくつかの集落のうちの一つについた。戦略的価値が低いせいか周囲はあまり荒れておらず、戦場がすぐ近くなのを感じさせない。おそらくここが戦場になるのはまだだいぶあとなのだろう。

 

ペロンの村は両手で数えられるほどの家屋しか無い小さな村だ。そのうちの一つの納屋に戦車ごと入る。

 

 

「まってたわ。」

「ブルーか。彼女たちが要救助者だ。よろしく頼む。」

「まかせて!さあみんな!こっちへいらっしゃい!」

「「よろしくおねがいします。」」

 

 

私はブルーに彼女たちを任せ再び街に戻るべく、納屋に置いてあったバイクを拝借して先程の雑木林へ戻った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『要救助者の救助を確認したわ。お疲れ様。さあ私達の本来の仕事に戻りましょうか。』

 

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雑木林ではまだ気絶させた兵士が伸びたままだった。私は彼の服を借り、ポケットに入っていた紙切れから彼の所属を割り出すことにした。紙切れには彼の所属している分隊か小隊の部隊配置が書かれていた。彼の駐屯地はヴァローニュの街から北東に10キロほど行ったトゥールテヴィルという街にあるようだ。まずはそこへ向かうことにした。

 

 

 

 

駐屯地はだいぶ慌ただしかった。つい先程、連合軍の爆撃機が飛来し、周辺を巻き込みつつ駐屯地に爆撃を行ったためだ。いくつかの建物が炎を上げて燃え盛っており、地面にはそこかしこに死体や体の一部が転がっているが誰もそれらを片付ける余裕すらない。あたりには焦げ臭い匂いと血の匂いが立ち込めていた。まさしく戦場の匂いであり、聖書の黙示録も生易しく思える地獄がここにあることを見せつけられている。

 

私は慌ただしく動いているかのように見せかけつつ駐屯地の本部が入る建物に入った。このような状況なため警備も手薄であり、難なく侵入することができた。建物内部は所々崩れており、ある部屋はドアが完全になくなっており、中は見るも無残に瓦礫の山となっていた。おそらく爆弾が直撃したのだろう。さらに奥に進み、隊長クラスが集まる場所を発見した。私はその近くで物資を整理するふりをしながらチャンスを伺うことにした。

 

しばらくそうしていると、更に奥の部屋から伝令と思わしき兵士が走ってきた。

 

 

「報告いたします!シェルブールに向かっていた連合軍の一部が先程の空爆で空いた戦線の穴の突破を試みようとしているようです!ル・ヴァスの部隊から応援要請が届いています!」

「カールの部隊を派遣しろ!後方から援軍が来るまでなんとか持ちこたえさせるんだ!」

「了解!」

「伝令です!ゲルヒンより使いを一人よこしてほしいとのことです!」

「ゲルヒンが?しかし今は派遣できる人材はいない。申し訳ないが他を当たるように言ってくれ。」

 

 

ターゲットから援軍要請が届いたようだ。やっと来たチャンスだ。ものにしなくてはなるまい。

 

 

「私が行きましょうか。」

「なに?お前が?・・・というかお前は誰だったか・・・?」

「今は一刻を争う時、早急に向かいたいのですが。」

「ん?・・・まあいい。じゃあ向かってくれ。ゲルヒンは今コアンボ北東の森にいるはずだ。」

「了解しました。」

 

 

私は早速駐屯地を出て北東へ向かった。駐屯地の司令官は終始私のことを思い出そうとしていたようだが、私がいなくなればすぐに忘れてくれるだろう。

 

駐屯地から数キロ行った北東の森の端で目的の集団を見つけた。4~5人いるが私の目的はその中で将校の服を着て双眼鏡を覗いている男だ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『あれが、アルベリヒ・G・グロシュタット。コードネーム、ゲルヒン。おそらく二次大戦における最高の情報斥候にして連合軍にとって最強の敵の一人になる男。』

 

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私はターゲットのもとへ向かった。ターゲットはこちらに気がつくと寄ってきた。

 

 

「おお、来たか。」

「おまたせしました。第六前線司令部よりまいりました。フィルツィッヒです。」

「変わった名前だな?まあいい。あそこに敵の一団が居るのがわかるか。あの一団はいま左に見える我々の部隊と交戦している。しかし、時折行われる艦砲射撃によって我がドイツ軍は苦境に立たされている。どうすればいいかわかるか?」

「偽の座標を送るのはどうでしょうか。」

「ほう?そういう答えが帰ってくるとは思わなかった。できるのか?」

「艦隊へは無線で座標を送っているようです。偽の座標を送信して連合軍部隊を攻撃させることができれば。」

「なるほど。だが問題はどうやって無線周波数を特定するかだが・・・。」

「それに関してもこちらの方で入手した情報があります。」

「なんと。用意がいいな。わかった、ではその任はお前に任せよう。」

「わかりました。しかし無線機の範囲が狭いため少し敵に近づく必要があります。」

「ううむ・・・下手に近づけばこちらの位置を察知されてしまうな。」

「私が一人で行こうと思うのですが。」

「なんだと?それは・・・意味はわかってるのか?」

「はい。」

「・・・そうか。いいだろう。成功した暁には貴君の勇敢さは総統の耳にも届くことになるだろう。」

「ありがとうございます。死力を尽くします。」

 

 

うまいこと彼らに信じさせることができたようだ。周波数は既に情報部が特定している上に、砲撃要請の手順すら解析済みのためいちいち傍受する必要すらない。この時代の無線通信など我々の時代からすればセキュリティーに穴があるどころかザル以上だ。暗号化も史実と同じものを使っているため難なく解読できる。無線機も私が持っているのはこの時代のどの無線機よりも伝達範囲が広い。

 

私はターゲットの一団から離れ、畑にできている即席塹壕の溝を通って連合軍の集団に近づく。あまり近づきすぎると格好がドイツ軍なのでバレて銃撃を受けてしまうので程々の位置に陣取る。あとは無線で座標を指定すればいいだけだ。私は無線機代わりに特別に改造したスマートフォンを取り出す。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『47。情報よ。眼の前に居る連合軍は第76戦闘歩兵団。さっきスナイパーに無線兵がやられたみたいで艦砲射撃ができないみたいね。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「こちら第76戦闘歩兵団、艦隊。応答してくれ。」

「こちらイギリス海軍所属、HMSアルゴノート。砲撃支援可能。」

「方位4678。地点7-5。効力射を要請する。」

「了解。艦砲射撃を開始する。」

 

 

うまいこと要請できたようだ。私はそのままその場で射撃が行われるのを待った。少ししてから遠方より砲撃音がしたかと思うとヒュルルという独特の飛翔音が響いてきた。そして、

 

 

ドォーン!ドドドドォーン!

 

 

私の後方の森の端、先程までターゲットがいた場所に合計12発の砲弾が着弾した。砲撃の影響で森に火災が発生している。自分たちは位置がバレておらず、打たれることはないと高を括っていたはずのターゲットたちは見事に砲撃地点のど真ん中にいた。周辺にいた数人の兵士も巻き込まれてしまっただろうが、それは所謂コラテラルダメージというやつだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『ターゲットの死亡を確認。彼は前線で敵を攻撃しようとして勇敢に戦死。見事ね。では帰還して頂戴。』

 

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連合軍の方を見ると突然行われた支援砲撃、しかも戦っている敵と全然別方向に行われたそれに、あるものは首を傾げ、あるものは砲撃が下手くそだと罵声を上げていた。無線では艦隊から効果確認の無線が飛んできているが、目的が達せられた今それに答える必要はないだろう。

 

私は塹壕を通って森へ戻った。そのまま森の奥に止めてあったここまで乗ってきたバイクに乗って南へ退避した。連合軍の目をかいくぐりつつ、先程の村、ペロンへ戻ってきた。既にブルーと5人の少女たちは帰還しており、私も同じ納屋から元の世界に帰還した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

~数時間前~

 

 

 

パシュン

「ぷあっ!」

「んあ・・・ここは・・・?」

「あ、あれ艦橋じゃありません?」

「本当だ!私達帰ってこれたんだね!」

「いやー安心しました。どこへ行っていたかが全く思い出せませんがともかく帰ってこれましたね!」

「なんだかとても大変な思いしたような気がしますけど・・・。」

「よく思い出せないんだから大丈夫なんじゃない?」

「うぅ~さおり~腹が減った・・・。」

「もう麻子ったら!じゃあこれからみんなでなにか食べに行こうか!」

「「賛成!」」

 

 

 

『転送と記憶処理は完璧ね。』

「はい。問題ないようです。四号戦車も学園の格納庫に転送完了しました。」

『当面はコレで凌ぐしか無いわね。コレ以上何も起きなければいいのだけれど。』

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「人命優先」   +1000 『ターゲット暗殺前にあんこうチームを救出する。』

・「戦場を駆け回れ」+1000 『50km以上移動する。』

・「情報斥候」   +1000 『ドイツ軍司令部施設2箇所に潜入する。』

・「戦場の女神」  +3000 『ターゲットを砲撃支援で殺害する。』

 

 




遅れて申し訳ありません。調子に乗ってHTC VIVEを買ったら設置と設定に思ったより時間がかかった挙げ句、PCの調子がおかしくなったためそれを直していたら時間がかかってしまいました。

別アプローチではあんこうチームメインになるかもです。

次回は別アプローチです。

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