HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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HITMAN『前段作戦 ~ 萌芽根絶』

『幻想郷へようこそ。47』

 

『あなたはここに来るのは4回目かしら?なかなか来れないのよこの幻想郷という土地は。あなたはこの世界でもなかなか特異な存在ということになるわね。』

 

『今回のターゲットは2人。コンスタンティン・ギルグルフと、アルタリア・キリール。この二人は幻想郷では古本屋の使用人として働いているけれど、その正体はロシア対外情報庁、通称“SVR”の諜報員よ。彼らはSVRの中でも急進派で、レーニン主義の熱狂的信奉者で未だに世界革命を諦めていない一派の構成員なの。』

 

『2人は人里の古書店を根城にして各方面の主要人物や有力妖怪等に共産主義を広める活動をしているの。今回の目的はこれを阻止すると同時に我々の存在を幻想郷の有力者に知らしめることにあるわ。なのである程度は派手目に任務を遂行して頂戴。爆発物、重火器、その他兵器類の使用が許可されているから活用して。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

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幻想郷へはこれで4回目の訪問になる。人里は相変わらず賑わっているが、今回はどことなく緊張感もある。理由はおそらく前回の幻想郷への訪問時に行った試作兵器カテゴリLOG、現在は正式配備になった対地攻撃衛星“ロキ”の砲撃によって幻想郷中の妖怪が警戒態勢になっているのが原因と思われる。あのときの砲撃はかなりの威力だったらしく、紅魔館にほど近い森にはまだクレーターが残っており、その地形変化は人里の子どもたちですら知れ渡っているらしい。

 

さて、この人里の何処かにターゲットがやっているという古書店があるはずだ。まずはそこを見つけよう。私は里の中央通りを見渡し、一軒の本屋に入った。

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

 

店に入るやいなや元気のいい声が奥から聞こえてきた。壁には貸出期限や料金表などが書かれている。ここは本屋かと思ったがどうやらレンタルショップのようだ。私は手始めにやたら元気のいい店主に聞き込みを行うことにした。

 

 

「すまない。探している本があるのだが。」

「はいはい!どんな本でしょう?」

「思想や主義について書かれた本だ。できればこの世界のものでないほうがいい。」

「あー・・・でしたら・・・これなんかどうでしょう!」

 

 

彼女が店の中から探して渡してきたのは、かの有名な「我が闘争」の初版本だった。しかも裏表紙にはかの有名なナチスの空軍大臣の名前が書かれている。なぜこんなものがここ居あるのかはわからないが探しているのはこれではない。

 

 

「それは既に読んでしまった。他にはないか?」

「えーとそれじゃあですねえ・・・。こんなのはどうですか!」

 

 

次に彼女が持ってきたのは「日本資本主義の思想像」という本だった。惜しいがこれでもない。

 

その後も何冊か探しては持ってきてくれた。「孟子」「法の精神」「イデオロギーの終焉」などなど多種多様な思想書が出てくる。だがどれも探しているものではなかった。私は絞り込むためにもう少し具体的に要求してみる。

 

 

「そのあたりは十分に勉強できている。別の思想、例えば共産主義関連の書籍はないか。」

「あ、それでしたらピッタリのものが最近入荷したんですよ!えーと・・・。あった!これです!」

 

 

彼女が持ってきたのは「資本論」。以前妖怪の山の天狗の集落で見せてもらったものだ。そしてまさしく今私が探している書物だった。

 

 

「そう、こういうものだ。これは売ってもらえるのか?」

「いいえ、それは貸出用です。購入されたいのでしたらそれを売ってくれる方をご紹介しましょうか?」

「紹介してもらえるのか?」

「はい。もともとその本は外の世界からやってきた外来人の方から売っていただいたものなんです。」

「外の世界の・・・。それはぜひともお会いしたいものだ。」

「ちょっと待っててください。地図書きますね。」

 

 

彼女はその本を売った人物のところまでの地図を書いてくれた。なかなか詳細にかかれており、わかりやすくまとめられている。

 

 

「はい、できましたよ!」

「感謝する。今日はここへ向かうので失礼するがまた寄らせてもらう。」

「はい!お待ちしてますね!」

 

 

私は店員の少女に別れを告げ、地図を見つつその場所を目指した。どうやらそこは街の外れにある古書店らしい。路地裏の奥にあるのに加え、魔法の森にほど近い位置にあるためあまり客足は良くないらしい。彼女の地図にはその事も書かれており、彼女のメモ曰く、なぜあそこで商売を続けているのかわからないらしい。

 

地図に従って路地を抜けると人通りが殆どない裏路地にその店はあった。少し離れたところから隠れて様子をうかがう。

 

少しすると一人の男が店の前にやってきた。あたりを見回し、誰も居ないことを確認すると足早に店の中に入っていった。ブリーフィングで見たターゲットの顔ではなかったのでおそらく客なのだろう。

 

小一時間過ぎたあたりで男が中から出てきた。その横にはもうひとり男が居た。そちらの顔はブリーフィングで確認した顔だった。

 

 

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『アレがアルタリア・キリール。ロシア対外情報庁第4局所属。階級は少尉。一人目は確認できたわね。』

 

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一人目のターゲットの確認はできた。しかしここで手を出せばもうひとりに感づかれ逃走を許しかねない。もうひとりの居場所も探るべきだろう。

 

私は静かにかつ慎重に家に近づいた。隣の家まで来たときにあるものが目に入った。ターゲットの家の軒先にこの世界では見慣れない黒光りする物が見えた。監視カメラだ。おそらく内部でモニター監視しているかもしくはセンサー連動の防犯装置なのか。いずれにしても映り込むのはまずいだろう。私は路地を迂回し、裏からターゲットの家に近づいた。しかし裏側にも監視カメラがあり、しかもカメラはすべての窓や扉をカバーするよう巧みに設置されていた。

 

仕方がない。ここは一般客を装って正面から行くしかあるまい。私は正面にふたたび戻ると、町人を装って店に入る。ちなみに服装はいつものスーツではなくこの町の住人が来ているような町人の服である。

 

 

「らっしゃい。」

「資本論という本がここで売っていると鈴奈庵という店で聞いたのだが。」

「はい。ございますよ。ご興味がお有りで?」

「外の世界のいろいろな主義主張を研究している。その一環にしたい。」

「なるほど。でしたらこの本はぴったりですね。他の主義主張が霞んでしまうような出来栄えですよ。」

「なるほど。それは楽しみだ。」

 

 

私は店員であるターゲットと会話しつつ店内を見渡す。これと言って特徴のない古本屋だ。先程の店で見たラインナップとそれほど変わっていない。奥には生活スペースが見えているが、外観と内部の広さが一致していない。おそらく隠し部屋が奥にあると予想される。もうひとりのターゲットはおそらくそこだろう。

 

 

「おまたせしました。お客さん運がいいですよ。先日入荷したばかりの新品です。」

「ほう。状態がいい。いくらかな?」

「今回は特別サービスだ。10文でいいですよ。」

「ありがとう。」

「そうだ。お客さん共産主義に興味があるみたいだからこいつもおまけにつけちゃおう。」

「いいのか?」

「いいんですよ。色んな人に見てもらいたいですからね!」

 

 

おまけとして渡してきたのは「共産党宣言」という本だ。マルクスの資本論よりももっと直接的な共産主義の本だろうな。

 

私は本を買って外へ出る。店内の見取り図はだいたい把握できたが奥の部分まではわからなかった。これは多少強引な手段に出るほかないだろうな。もとより“派手に”という注文がついていたので好都合ではある。

 

私は路地を遠回りしながら隣の民家へ向かった。隣の民家は普通の一般住宅であり、監視カメラもなければ隠し部屋もない普通の家だ。扉に鍵もかかっていないので私は家にラクラク侵入する。どうやらこの家は空き家のようで中には調度品が一切置かれては居なかった。私は屋根裏に登り、屋根の一部を破壊した。茅葺きの木造家屋のため破壊はそれほど苦でもなく、あっという間に人一人が通れる程度の穴を開けられた。私はその穴から屋根の上に上がると、隣のターゲットの家を見た。この家もターゲットの家も平屋建てなので屋根の高さもほぼ同じである。

 

私は周囲に人が居ないことを確認すると、先程破壊したときに出た廃材の木材の一つにライターで火をつけた。火がついた木材をターゲットの家の屋根に投げる。冬の乾燥した午後に茅葺屋根に火のついたものを投げ込めばあっという間に燃え移る。燃え移ったのを確認した私はそのまま屋根を滑り落ちて地面に着地する。そして監視カメラに映らないところで様子をうかがう。

 

 

カジダー! カンカンカン!

 

 

遠くで半鐘の音が聞こえる。煙を発見されたようだ。既に火はかなり広がっており、屋根の4分の1を燃やし始めていた。

 

 

「何だこの匂いは!・・・げぇ!火事だ!」

ピピピ

「・・・隊長、火災が発生しています。はい、この家です。我々も消火作業を・・・。」

「機密文章の、了解しました。すぐに戻ります。」

 

 

先程、町人の格好をして監視カメラに写っても警報も何も鳴らなかったのでおそらくただの監視モニターと推測される。であるならば、機密文書の処理に追われている今なら監視の目は無いはずだ。私は急いで燃え盛っている家の中へ侵入した。

 

 

 

家の中は既に煙が充満しつつあり、通常ならば早急に避難しなければならない状態だが、家の中には誰も居なかった。代わりに土壁の一部が回転扉のようになっており、その奥は茅葺屋根の家に似つかわしくないコンクリート製の壁と蛍光灯が見えた。おそらくあそこが隠し部屋だろう。

 

隠し部屋は半地下のような構造になっており、奥にモニターやコンピュータが見えた。その横の机の上の書類や書籍をダンボールに詰めて机の脇の台に乗せている。載せられたダンボールは台のスイッチを押すと光り輝き始め次の瞬間には消えていた。我々ICAが使っている渡界機とよく似ている。おそらく転送装置なのだろう。半地下の部屋には先程のターゲットともう一人の男が居た。

 

 

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『アレがコンスタンティン・ギルグルフ。ロシア対外情報庁第4局所属。階級は大尉。ふたりとも見つけられたわね。』

 

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私は部屋を見渡すと部屋の隅にポリタンクがあるのを発見した。そばには石油ストーブとみられる器具があるのでおそらく入っているのは灯油だろう。

 

彼らは書類を転送するのに躍起になっており、こちらには気がついていない。置かれている箱や機器を隠れ蓑に近づいていく。ある程度近寄った後、近くにおいてあったレンチを取る。

 

私はシルバーボーラーを取り出し、奥にあるモニターに向かって撃った。

 

 

パシュガシャン!

「な、なんだ?」

 

 

二人が一瞬割れたモニターに視線を移したところを逃さず、こちらに近いほうのターゲット、キリールに向かってレンチを投げつけた。

 

ゴッ

「ぎゃ!」

「な!どうした!何があった!しっかりしろ!」

 

 

すかさずもうひとりのギルグルフが駆け寄って容態を確かめる。私は物陰から出て確かめようとしゃがみこんでいるターゲットの後頭部をシルバーボーラーの銃床で殴打し、気絶させた。

 

ターゲット二人共気絶させたところで部屋の隅にあったポリタンクを手に取る。中身はやはり灯油だった。それをターゲット2名とその周囲、電子機器や転送しそこねた書類などにかける。そのまま灯油を導火線のように垂らしながら半地下の部屋から出た。階段の段差は本を立てかける形にした。半地下の部屋から出たところで導火線を止め、ポリタンクは部屋の中に投げ入れた。既に火は部屋の内部にまで燃え広がっている。私は急いで裏口から脱出した。

 

脱出と同時に家屋の一部、店舗部分が崩れ落ちた。周囲には野次馬の集団ができており、私はその中に紛れた。少し離れたところから燃え上がる様子を確認していると、遠くに先程のレンタルショップの店員の少女が見えた。すると向こうもこちらの存在に気がついたようで寄ってきた。

 

 

「さっきのお客さん!これは一体!?」

「わからない。店内でこの本を買い、その話をしていると焦げ臭い匂いがした。店の奥の方から出火したようだ。」

「そうなんですか・・・店の方は?」

「それが、火を消すと言って店の奥に行ってしまった。止めはしたんだが、逆に店の外に追いやられてしまった。」

「そんな・・・!じゃあまだあの中に?!」

「ああ。おそらくは。出てきたのを確認していない。」

 

ボォーン!

 

そんな話をしていると家屋の奥で小規模な爆発があった。おそらく導火線に火が付き、気化して半地下に溜まっていた灯油に引火したのだろう。ということは既にターゲットのところまで燃え広がっているということだ。爆発が引き金になったのか、ただでさえ全体に燃え広がっていた火で脆くなっていた家屋はあっけなく倒壊した。

 

その直後、街の有力者である上白沢慧音が、いつぞやに出会った河童、河城にとりを引き連れてやってきた。さすがは河童と言ったところで懐から何かを出したかと思うと大量の水が現れ、火をまたたく間に消していった。後には焼け焦げた家の残骸だけが残った。幸いにして燃えた古書店の周りの家は、初期消火として住民が井戸水をかけていたため少し焦げただけで済んだ。

 

街の人の立ち会いのもと、実況見分が行われている。ほぼ全てが燃えてからの消火となってしまったため上部構造はほとんど何も残っては居なかった。そのうち半地下部分が発見され、上白沢慧音と呼び出された博麗霊夢の二人で内部へ入っていった。少しして戻ってきた二人の顔は今にも吐きそうと言った風貌である。町長と思わしき男に話しているのを聞く限り、半地下の部屋には焼死体が2体、身元の特定は不可能と聞こえた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『こちらからも地下のスキャンで生体反応なしが確認されたわ。任務は完了ね。なかなかに派手な篝火だったわね。』

 

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周囲の人間はそれほど面識がなかったのだろう、一様に「可愛そうだ」という哀れみの目だった。その中で一人、先程のレンタルショップの少女だけはうずくまって泣いていたようだ。

私は周囲の雑踏に紛れつつ、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

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~同時刻~

 

 

「ねえ、ほんとにこんなとこに病院なんてあるの?」

『なんでえ!俺様の言うことが信じられねえってのか?いいからキリキリ歩けよ!』

「・・・あ、姉さん。あそこ。」

「あら、ほんとにあったわ・・・。」

『ほうれ見ろ!ほうれ見ろ!じゃあ任務と行こう!何かあったら遠慮なく呼ぶんだぜ!』

「はいはい・・・。それにしてもだいぶ古いわねこの病院・・・。」

「情報部の調査では表向きには精神病院だったようだよ。」

「うわぁ・・・そういうとこってヤバイのが出たりするのよねえ・・・。」

「ともかく行こう。」

「はぁ・・・シルバーはそういうの感じなさそうだからいいわよねえ・・・。」

 

 

「・・・これかしら?」

「この書類だね。あと他にもいくつか回収しないと。」

「ちょっとシルバー、これ見て。」

「えっ・・・。これ・・・。」

「この製造番号と顔写真・・・。」

「・・・なるほど。だからエージェント“47”だったんだ。」

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「小さな看板司書」+1000 『本居小鈴に会う。』

・「3つの思想」  +1000 『全体主義・資本主義・共産主義に関する本を手に取る。』

・「文化革命の焚書」+3000 『古書店を全焼させる。』

・「送り火」    +3000 『ターゲットを焼死させる。その際にターゲットから100m以上離れている。』

 

 

 




もーえろよもえろーよー(爆)
別アプローチではもうちょっと派手になる予定です。

次回は別アプローチです。

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