HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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『インバウンド』の別働隊です。


HITMAN『インバウンド』(別働隊)

『人里に着いたな!今日はいつもとは違う仕事をしてもらうぞ!』

 

『紅魔館ってとこでタバサと47がなんかよく知らんが頑張ってるらしい。そこから出てきた超やばい殺人メイド、十六夜咲夜をこの人里に足止めしておくのがお前たちの今日の任務ってわけだ!』

 

『止め方は何でも良いらしいな。・・・そうだ!俺にいい考えがある!俺の指定した装備を持っていけよ!』

 

『準備は一任・・・いや、俺が用意してやる!大船に乗ったつもりで頑張れよ!』

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「それで・・・。」

「・・・。」

 

 

 

「何なのよこの格好は!!!」

 

 

俺と姉さんはものの見事にカラフルな店員の格好をしている。それも少し前、昭和のアイスクリーム屋のような派手さだ。俺は白と水色の縞模様。ねえさんは白地にピンクの水玉模様だ。色合いがグラデーションなどあったものではなく、純粋なピンクや水色なので遠目からでもよく分かるほどに目立っていた。

 

 

「あんのバカAI!こんな格好じゃ隠密もなにもないじゃないの!」

「それで姉さん。これ・・・。」

「あん?えーっと・・・ああ。なんとなく理解したわ・・・。」

 

 

姉さんの方は何をするのかがだいたい予想できたようだ。通信が入る。

 

 

『装備品が全部届いたな!じゃあ説明を開始するぜ!』

「何となく分かるけどどうすればいいの。」 

『見ての通りそれは俺が特注した“アイスクリーム屋の制服”だ!そしてお前らの目の前にある台車は“アイスクリーム移動販売台車”だ!』

「アイスクリーム・・・。」

『お前らはそれを使ってアイスクリームを売るんだ!そしてターゲットのおっかないメイドがきたらそのアイスクリームでメロメロにして足止めするんだ!』

「メロメロって・・・。」

『大丈夫だ!アイスクリームは一番いいやつを持ってきたぞ!なんとハーゲンダッツだ!味もちゃんと用意してるさ!バニラだろ、クッキーアンドクリームにチョコレート・・・。』

 

「そういうことじゃないわよ!!」

『うお!?』

「アイスクリーム売るのは良いわよ?でも目の前で“いかがですか~?”って売って“あら美味しそうね。一つ貰おうかしら?”で終わっちゃうじゃないの!」

『・・・ああ!』

「ああ!じゃないわよ!時間稼ぎにもなりゃしない!相手に消費させるのはたかだかアイス一個分のお金と時間にして5分程度よ!」

「ね、ねえさん。落ち着いて・・・。」

「あーもうどうするのよ!あなたのことだから他に何も用意してないんでしょ!?」

『あー・・・。テヘッ♪』

「・・・アンインストール具申しようかしら・・・。」

 

 

姉さんは不甲斐ないオペレーターAIに完全にブチ切れてる。ここは自分がしっかりしなくては。

 

 

「姉さん。姉さん。」

「・・・なによ。」

「こんな事もあろうかと持ってきたものがあるよ。」

「!!さっすがね!愛すべき弟はどっかのポンコツAIと違ってとっても優秀!大好き!」

「あはは・・・。」

『なんだかめっちゃ苛ついてきたぞ・・・。』

「それで何を持ってきたの?」

「眠らせるパターンも有るかと思って新開発の麻酔薬“バサラブ”を持ってきたよ。もちろん人間用にちゃんと薄めてある。」

「なるほどね。たしかにアレを使って寝てもらえば無力化できそうね!」

「でも問題があって、バサラブを打ち出す発射機を持ってくるのを忘れてしまったんだ。」

「あー・・・まあでも何も手段が無いよりはマシよ。」

「あと重火器も持ち出しが許可されなかったんだ。オペレーターの承認が必要な規則になっているらしくて。」

「まあ最悪戦闘はこの子達でどうにかなるわ。この世界には銃はあんまりないみたいだし。」

『ああそうだ!銃火器なら届けられるぜ!』

「え?」

「本当?」

『ああ!空中投下になっちまうけどな!』

「市街地のど真ん中で輸送機を低空で飛ばせられるわけ無いでしょ!」

「でもいざというときは頼むかもしれない。そのときはよろしく頼む。」

『おう!まかせとけ!ブルーじゃなくシルバーになら届けてやっても良いぜ!』

「なんでよ!」

「姉さんが叱責しすぎるから拗ねちゃったんじゃないかな・・・。」

 

 

結局、最初のアプローチとしてアイスクリーム屋をやることは確定していた。逃亡生活時代にはパーティ用のアイスを腹いっぱい食べたいと願ってたりもしたが、まさかアイスを売る側になるとは思わなかった。

 

ポケモンたちにも協力してもらうことにした。基本的に楽しいことは率先してやる子が多いので、アイスクリーム屋の客引きをやると言ったら、みんな我先に自分から志願していた。マニューラなんかやると言った瞬間に、支援物資の中から自分用の売り子コスチュームを引っ張り出して着替えていた。というかポケモンたち用のコスチュームもちゃんと用意しているあたり、あのAIは意外にマメかもしれない。

 

オーダイルにカートを引っ張ってもらう。こちらも専用のコスチュームに身を包みながら台車を引っ張っている。こころなしか顔が嬉しそうな気がするのは気のせいだろうか。姉さんはというと、最初はかなり渋っていたが今は観念したようにカートに随伴していた。

 

元々人里近くだったのもあって、出発してすぐに市街地になった。カートの屋根の上では姉さんのプクリンが周りに笑顔を振りまきながらアピールしている。街ゆく人々も日本の田舎の風景に突如として現れた極彩色の見慣れない行商人に興味津々といったところだ。

 

そうこうしている間に広場に到着した。広場の動線近くにカートを止め、開店準備を始める。姉さんはやるからにはきちんとしたい性分らしく、アイスクリームの取り扱い方が書かれたマニュアルを読んでいた。俺はオーダイルやマニューラと一緒に幟や簡易カフェテラスを設置した。気温的には少し肌寒い20℃に届くかどうかな気温ではあった。そろそろ春から夏へ移行し始める時期なのでおそらくそこまで問題ではないだろう。

 

開店準備もほぼ完了し、アイスの準備も完了した。しかしここで思わぬ試練が襲いかかってきた。

 

 

「準備完了ね!じゃあシルバー、お願い!」

「・・・え?」

「え?じゃないわよ。呼・び・込・み♪」

「ええ!?俺がやるの?」

「当たり前じゃない。私は売り子。綺麗なお姉さんがアイス売ってるほうが子どもたちとか近寄りやすいでしょ?」

「いや、売る相手はターゲットなんだけど・・・。」

「まだ着てないじゃない。今のうちから慣れておくのよ。ほら早く!」

「うう・・・。」

 

 

正直目立つのは苦手だし、大勢の人間の前で話すのだってどちらかといえば嫌いだ。でも他ならぬ姉さんの頼みだし、第一やらなければターゲットも寄り付かず、本来の目的が達成できない。俺は意を決して叫ぶ。

 

 

「いらっしゃいませ!おいしいアイスクリームはいかがですかー!」

「そうそう!いい調子よ!シルバー!」

「とっても甘いですよー!」

 

 

あとから聞いた話だと、その時の自分は遠目からでもわかるくらいには顔が真っ赤だったらしい。ちらっと横目で見た姉さんは、ニコニコしながらも若干吹き出しそうになってるのが確認できた。

 

掛け声のおかげで街ゆく人の何人かが興味深そうに近寄ってきた。姉さんは手慣れた様子で接客し、アイスを次々と売りさばいていく。値段も良心的に原価ギリギリといったところ。もっとも用意したのは自分たちではないので原価ピッタリで売ったところで問題はないのだけれど。

 

街をゆく子どもたちも集まってきた。物珍しさでどんどん人集りができていく。

 

 

「何だ?この騒ぎは。なんだか楽しそうだな?」

「なにか売ってるみたいだよ。」

「あ、けーね先生!もこうお姉ちゃん!」

「あいすくりーむだって!美味しいよ!」

「ほう?じゃあ私も一つ貰おうかな。」

「じゃあ私も貰おう。」

 

 

やってきたのはターゲットではなく、上白沢慧音と藤原妹紅だった。ターゲットのことを聞き出すチャンスかも知れない。

 

 

「いらっしゃいませ。どうぞご賞味ください。」

「うむ。・・・このクッキーなんとかっていうのにしようかな。」

「じゃあ私はその隣のやつを。」

「ありがとうございます。つかぬ事お伺いしますが、お二人はこの幻想郷のことに詳しいとお伺いしたのですが。」

「うん?まあ詳しいってほどでもないけど色々知ってるよ。」

「でしたら紅魔館という屋敷にいらっしゃる十六夜咲夜という人物に心当たりはないでしょうか?」

「咲夜?彼女なら友人の一人だけど彼女に何かようなのかい?」

「いえ、用というほどではないのですが、私の友人がお世話になったのでその御礼をと。」

「そうか。そういえばさっき里の雑貨屋で見かけたな。そのうちこっちにも来るんじゃないかな。」

「そうですか。ありがとうございます。」

 

 

既に里には入っており、いずれこちらにやってくるようだ。計画を実行に移すときだ。俺は姉さんにそれとなく目配せをした。姉さんもそれだけで把握したようで、カートの裏でいそいそと準備を始めた。

 

 

2人が帰った後も客足はそれなりにあった。しかしやはり少し肌寒いのもあって段々と鈍化してきた。そんな時、広場の端の方からこのまちの雰囲気に似つかわしくない白と青のミニスカメイドがやってきた。まあ似つかわしくないのはこちらもそうだが。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『アレが十六夜咲夜ってやつだな。なんでも時間を止めたりナイフをいっぱい投げてくるらしいぜ。おっかねえおっかねえ。いつの間にやら串刺しってことにならないように気をつけるんだぜ。』

 

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来た。そろそろこの極彩色の格好にも慣れてきたので、自然な雰囲気を出すこともできているだろう。俺は思い切って話しかける。

 

 

「あの、すみません。十六夜咲夜さんですか?」

「え?ええ、そうですが。何か?」

「良かった見つけた。私の友人が以前あなたに助けられたらしいのですが覚えていらっしゃいますか?」

「えーっと・・・ごめんなさい、記憶にありませんわ。」

「いえ、大丈夫です。ですがその友人からも頼まれまして。貴方に是非お礼がしたいと。」

「あら、そんな気を使わなくても。」

「そうおっしゃられると思い、あまり重いお返しは失礼だと言うことで。どうでしょう、我々は見て分かる通りアイスクリームを売り歩いているのです。ベンチやテーブルもあるのでここで食べることもできますよ。お代は結構ですのでぜひご賞味ください。」

「そう?ならいただこうかしら。お嬢様にもいくつか買っていって差し上げましょうか。」

「是非。お嬢様もきっとお喜びになると思います。どれになさいますか?」

「いらっしゃいませー!話は聞いてますよ!おすすめはこれですね!」

「ふむ・・・、じゃあ私はバニラを。あとストロベリーとクリスプチップというのと・・・」

 

 

彼女はその後色々な種類を合計6種ほど選んだ。紅魔館に在籍している主要人数分だろう。持ち帰り用とすぐ食べるようを準備するので座って待っていてほしい旨を伝え、準備に入る。

 

彼女が選んだのはバニラアイス。それ以外のアイスを箱に詰めると、取り分けたすぐ食べる用のバニラアイスに気が付かれないように細工を施す。出来上がったものを姉さんはピクシーに席まで運ばせる。かわいいポケモンが席まで運んでくれるのを特徴の一つにしておいたおかげで、いらぬ警戒をされないで済んでいる。

 

俺は引き続き客を呼び込みつつ、横目でターゲットを見る。ベンチの一つに腰掛けていたターゲットはその一つを可愛らしくペロペロなめ始めた。スプーンでもつけたほうが良かっただろうか。

 

アイスが半分ほど無くなったところで彼女の目がとろんとしてきた。眠気が来ているようだ。姉さんがすかさず近寄っていく。

 

 

「どうしました?」

「え・・・ええ、なんだかちょっと眠くなっちゃってね。」

「お疲れですか?何ならちょっとここで休憩されてはいかがです?荷物は見張っておきますよ。」

「うーん・・・まあもう買い物はあらかた済んでるし、最近寝不足気味なのは否定出来ないわね。」

「でしたら是非。私達は大丈夫ですよ。どのくらいで起こしましょうか?」

「じゃあ10分位したら起こしてくれるかしら・・・。」

「了解しました。あ、これをどうぞ。」

「あら毛布・・・用意が・・・いいわ・・・ね・・・。」

「ふふふ、おやすみなさい。」

 

 

彼女はベンチで寝てしまった。10分したら起こしてほしいと言われたが、おそらくそんな短時間では起きないだろう。

 

彼女が食べたアイスクリームには、バサラブを通常使用より更に何倍かに薄めたものが混ぜられている。このくらいの薄さだと即効性が失われ、徐々に眠気を誘うタイプになる。殺さずかつ不自然じゃないように対象を無力化することが可能だ。

 

ひとまず足止め作としては有効だ。その後の客の話からも、彼女は普段紅魔館でだいぶこき使われているらしく、眠っていても疲れているのだろうという認識で一致していた。

 

そのまま彼女は眠り続け、既に3時間ほど経っていた。予定ではそろそろ起きるはずである。アイスクリームもほとんど完売したので片付けを始める。彼女の座るベンチ以外を静かに収納し、まるで広場に元々あったベンチで眠っているかのような状態にする。

 

我々は広場の人の流れが途切れた頃を見計らって、不自然じゃないようにその場を離れた。先程入った通信によると、47の方は目的を達成したようだ。現在は脱出するためにタバサと共にこちらに向かっているらしい。

 

 

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『よーし任務完了だ。あのメイドはお前たちが広場を離れた後すぐに起きたみたいだぜ?危なかったな!』

 

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「任務完了ね。さあ、さっさとずらかるわよ!」

「OK。セーフハウスに向かおう。」

 

 

俺たちはカートを引きながらセーフハウスへ帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

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「遅いわね。47。」

「さっき確認したら、どうやら脱出時に不自然な点が合ったらしい。それで警戒しながら進んでるみたい。」

「不自然なこと?」

「妖怪たちの気配がこつ然と消えたんだって。」

「気配がないのなら逆に楽じゃない?」

「姉さん。こういうときは罠の可能性のほうがでかいよ。47もタバサもそう考えてるみたい。」

「ふうん・・・。こっちから迎えに行ったほうが良いかしら?」

「下手に動くのは得策じゃないけど・・・一応本部に打診して・・・。」

 

ピピピ

 

「噂をすれば通信だ。」ピッ

「こちらシルバー。」

『シルバー!ブルー!やべえぞ!47が戦闘に巻き込まれそうだ!』

「ちょ、ちょっとどういうことよ?!こっちに向かってるんじゃなかったの?!」

『そうなんだが人里に入る直前に接敵したらしい。なんか相手はやべー連中らしいぞ!』

「やべー連中って具体的に誰よ?」

『とにかく応援に向かってくれ。流石に5対2じゃ分が悪い。こっちからも援護するからよ!』

「わかった。姉さん。行こう!」

「まったく、47も偶にはミスするのね!」

「武器は持った、ポケモンたちも全快。よし出撃だ!」

ガラッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと。残念だけどここは通さないよ。」

「はい!通しません!」

「早苗。あまり前に出過ぎないでね。」

「アリス、お前もだ。ここは私に任せて後衛に回ってくれ。」

「神奈子様・・・わかりました。」

「おや?昼間の。幻想郷に危険を持ち込む輩と聞いていたんだが、アイスクリーム屋さんのことだったとは。」

「どうも、アイスクリーム美味しかったよ。でも私にはちょっと冷たかったな。」

「慧音、妹紅。会ったことがあるのか?」

「ああ、昼間にちょっとな。さて、どうする?侵入者達さんよ。」

 

 

 

「八坂神奈子、東風谷早苗、アリス・マーガトロイド、上白沢慧音、藤原妹紅・・・。」

「こっちにも追手が着てたってわけね・・・。」

 

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「ちびっこの味方」 +1000 『アイスクリーム屋に変装する。』

・「苦手克服」    +1000 『シルバーが呼び込みを担当する。』

・「甘い微睡み」   +3000 『アイスクリームを使ってターゲットを眠らせる。』

・「三ツ星の名店」  +3000 『アイスクリームを売り切る。』

 

 

 




2019/06/17追記
会話メインの回は総じて個人個人の特徴を出して特に注釈なく判別できるように心がけています。ですが原作慧音と妹紅は書き分けられてるかどうか微妙ですね・・・w



次回、対処開始。
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