###注意###
原作に登場するキャラが死亡する描写があります。作品に思い入れが有る方はご注意ください。
『トリステイン魔法学院へようこそ。47。』
『今回のターゲットは前回のクライアントであり、この学院トップクラスの成績を誇る、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。この学院ではタバサと名乗っているようね。』
『今回のクライアントはガリア王国現政府国家元首であるイザベラ女王とその部下であるシェフィールド執政官。ICAは常に中立であり、依頼があればこなすだけ。元クライアントがターゲットになるのは今までも何度かあったでしょう?』
『準備は一任するわ』
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私は今、学院のすぐ外周部の森にいる。ここまではICAの用意した車両で移動したためさしたる苦もなく近づくことに成功している。現在時刻は23時20分。もうすぐ日付が変わる。今夜は新月であり薄曇りなのも相まって松明の明かりがなければほとんど真っ暗で何も見えない。
今回ICA情報部は私にターゲットの戦闘能力についていくつか情報をもたらした。それによると彼女は元ガリア王国の特殊部隊のエージェントであり、気配を殺して寝込みを襲うのは至難の業になるとのことだ。だからといって情報部は何処から入手したのかわからないがとんでもないものをもたせてくれたと思う。ロシア語が描かれている香水の瓶よりも小さな瓶だ。側面には小さく一言だけ「
まずは城壁を突破し無くてはならない。外周グルっと回ったがどうやら入口は正面の大門一つだけのようだ。戦略的観点から見てこの構造は正しいだろうが攻める側からすれば面倒なことこの上ないのは確かだ。大門には松明と槍を持った警備兵が二人立っている。私は小さい石を1つ、大きい石を2つ集めた。小さい石を左の兵の更に左の壁に向かって投げる。
カン! ン?ナンダ?
警備兵が二人共左へ向いた。すかさず大きい石を右の兵の頭部に向かって投げつける。
ゴッ! グワッ! エ?オイドウシ ゴッ! グワ!
右の兵の悲鳴に反応し振り向いた左の兵にもすかさずもう一個大きな石を投げつける。あとに残ったのは地面の草に燃え移りそうな落ちた松明と二人の気絶した警備兵だけだ。私は火事にならないよう松明に土をかけて消した。再び辺りは暗闇に包まれる。気絶した警備兵を草むらに隠し、内部へ侵入する。
常駐警備は門でしかやっていないらしく中庭部分には人影はまったくなかった。城壁の上もそもそも人が通れる仕組みになっていないため誰も居ない。私はひとまず近場の塔へ向かった。
たどり着いた塔は生徒の寮のようだ。入り口の管理人室と思わしき部屋を覗く。中では教師と思わしき男性が椅子に座ってうつらうつらと船を漕いでいた。少しだけドアを開け、中を見回してみると壁際に寮内の見取り図と思わしき地図があった。慎重にドアを開け地図を見てターゲットの部屋を探す。文字は完璧に覚えたわけではないが、ターゲットの名前くらいは暗記している。しかしどの階のどの部屋にもターゲットの名前はなかった。男子トイレが広めにとってあり、寮の管理人も男性なことを踏まえるとおそらくここは男子寮のようだ。ともすればここに長居は無用。私は音を立てないようにそそくさと管理人室からも寮塔からも出た。
男子寮塔から周囲を見渡すと両隣に似たような塔が立っている。中央の塔が食堂や教職員室や教室と考えると外周の五つの塔のどれかにターゲットはいるはずだ。あてがあるわけでもないので1つずつ管理人室を調べて回ることにした。右隣の塔は入り口の造形が他に比べ簡素であることや、塔の根元に資材らしきものが山積みされているところから生徒の寮ではなく使用人の寮、もしくは倉庫だと仮定し、左隣の塔から確認していくことにした。
当たりは意外にもすぐに引けた。隣の塔の管理人室ではふくよかな女性が扉をあけっぱなしで何かを読んでいた。夢中になっているようで扉が開いていることにも背後に私が立っていることにも気がついていない。私はそのまま先ほどと同じ様に見取り図を見た。3階の東側から2つ目の部屋にターゲットの名前を確認した。
私は一旦寮塔から出て外からその部屋を確認する。部屋に明かりは灯っていないが窓が開いている。しかし寮の外壁には登れそうなところはなく、外から侵入するのは羽でもない限り無理だろう。窓の直下には少し大きめの植え込みと木があった。木は葉が生い茂っており、うまくすればクッションとして利用して飛び降りることもできるかも知れない。
ともかく外からの侵入が出来ないのであれば正面から行くしか無い。私は再び管理人室に戻った。寮の鍵を管理しているのは地図のあった壁とは別の壁際の箱の中に見える。が、あの位置では流石に本に夢中になっている管理人の女性の視界に入ってしまう。私は静かに管理人室の窓の外へ移動した。そして窓を中から見られないように開けた。
カチャ
「あら?何故開いたのかしら・・・ああ!風で蝋燭が消えてしまう…」
中から疑問の声と席を立つ音が聞こえる。私は早歩きで管理人室に入り、彼女がドアが勝手に開いた原因を探りつつ閉めようとしている間にすばやく壁際の鍵束を取り出し、管理人室を出た。幸い何故あいたかを確認するのにそれなりに時間を使っていたため比較的余裕を持って部屋を出ることが出来、閉めた後は鍵束が無くなっていることに気が付かないまま、また本を読みふけり始めた。私は生徒に見つからないように目的の部屋へ向かった。
目的の3階東側から2つ目の部屋に来た。音を立てないように慎重に鍵を開ける。周囲を確認しつつ、中にはいる。扉を締め、鍵をかける。部屋はきれいに整頓されており、やたら大きめの本棚に本がびっしりと詰まっている。寝息は聞こえてこないが部屋奥のベッドの窓側に寝ているのが確認できた。
私はベッドに眠るターゲットの足の先、ベッドの端に毒の小瓶を置いてから窓際に立ち、ターゲットの顔を確認するためにベッドに近づいた。
「・・・」
バサッ!
私は勢いよくシーツを剥がした。そこには紐で縛られた毛布があった。
「何者」
「・・・」
見ると扉の前に寝巻き姿のターゲットが杖を構えてこちらを凝視していた。明らかに戦闘モードである。
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『アレがシャルロット・エレーヌ・オルレアン公。通称“雪風のタバサ”ね。かなりの戦闘力らしいけどどうしましょうか?』
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「答えて」
「答えてどうする。」
「その声は・・・なるほど。私を殺しに来たのでしょう?」
「だとしたら。」
「だとしたら・・・倒す!」
“ウィンディアイシクル”
私は飛んでくる氷の刃を躱しつつ窓際に移動する。攻撃が激しくこちらが攻撃する暇がない“かのように振る舞いつつ”。
“エアハンマー”
「ぐおっ!」
私は予想以上の衝撃に吹き飛ばされつつ窓の外へ放り出される。植え込みと木をクッションに受け身を取りつつ着地する。そのまま少しの間木に隠れるようにして身を潜める。木の葉の間からこちらを見下ろすようにしているターゲットが見える。周囲をキョロキョロしているところを見ると見失ったのだろう。やがて諦めたのか窓を締めて部屋に戻っていった。私は一旦寮塔から距離を取り、中を観察できる位置を探した。
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~タバサside~
「帰った…?何故…?」
私は寝込みを襲う刺客に疑問を抱いていた。元北花壇警護騎士団の私がこうも簡単に部屋に侵入されたことは反省しなければならないが、それよりも気がかりなのが私を暗殺しに来たその刺客が部屋から放り出された程度であっさりと諦めたことだ。何か裏があるのかも知れないが現状何者かわからないため対処のしようもなかった。
“アンロック”カチャ
「ちょっとなんかすごい音したけど大丈夫?」
「大丈夫」
キュルケがまた校則違反のアンロックを唱えて部屋に入ってきた。が、今回は緊急事態なので仕方ないだろう。夜も更けたというのにウィンディアイシクルとエアハンマーを唱えれば大きな音で騒ぎにもなるというもの。しかし思ったほど騒ぎになっていないのはルイズの爆発魔法のせいで皆大きな衝撃音に慣れてしまったからなのだろうかあるいはその爆発魔法の音だと勘違いされたのか。
「ほんとに大丈夫?見たとこ確かに部屋も大して荒れてはいないようだけど・・・」
「少し、嫌な夢を見た。」
「嫌な夢?それで寝ぼけて魔法ぶっ放したってこと?」
「そう」
「プッ・・・アハハハ!そう、あなたもそういうのがあるのね!少し安心しちゃったわ!でももう夜遅いんだから気をつけてよね。あ、何なら私が添い寝してあげましょうか?」
「いらない」
「あらそう残念。まあいいわ。じゃあお休みタバサ。今度は良い夢を。」
「おやすみ。」
バタン
刺客は退却したようだし、さしたる驚異でもなかったため心配をかけまいと嘘をついてしまった。しかしいらぬ心配を掛ける必要もないだろう。
私も再び眠ろうとベッドに向かっ…とベッドになにか落ちている。とても小さな小瓶だ。先程の刺客が落としていったのだろうか。魔法薬の類かも知れない。私は蓋を開けて匂いを嗅いでみた。
匂いはない……!?体が…!それに息も…?!これは…もしや神経毒…!ぐっしまっt意識が…
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『ターゲットの死亡を確認。お見事だったわ47。そこから脱出して。』
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~47side~
隣の塔からターゲットが小瓶を開けて中の液体をかぐのを確認した。途中誰かが部屋に入ってきていたようだがすぐに出ていっていた。この世界の魔法治療の技術ならばその場ですぐさま治療すれば助かる確率が高いとも情報部が報告していたが、深夜にしかも一度来た来客が再び来ることはまず無い。発見する時も被曝する可能性はあるがそのときはすぐに治療がなされるであろう。ともあれ目的は達成された。先ほどの小規模な戦闘で目を覚ました人が何人かいるようで寮には明かりが灯ったとこもあったが、音がしなくなったのもあり、大きな騒ぎにはなっていない。
私は塔から出て見回りの教師や巡回兵に見つからないように正面の門から脱出した。
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~1週間後~
「大丈夫?キュルケ。」
「ああ、ルイズ・・・。ええ、今のところは。」
「さっきコルベール先生が言ってたわ。やっと回収できたそうよ。タバサの遺体。」
「そう。良かったわ・・・。いつまでもあんなところに放置じゃ可愛そうだもの・・・。」
「大変だったみたいよ。タバサの遺体に近付こうとすると原因不明の呼吸困難になるし、毒の霧でもあるのかと思って窓を開けて換気したら外を歩いていた人も呼吸困難になりかけたとかで。」
「そう・・・第一発見者の私もそれでやられて1週間寝たきりだったものね・・・。」
「タバサは床に落ちていた小瓶の中に入っていた神経毒で呼吸困難になり死亡したようだと言ってたわ。傷も争った跡もないし目撃者も居ないから自殺なのか他殺なのかすら判断しかねてるようよ。」
「タバサが自殺なんてするわけ無いわ!せっかくお母様を助け出せたし、父君の敵も取れてこれからってときなのに!」
「落ち着いてキュルケ。私だって思いたくないわよ。でも誰かが侵入した痕跡もないし・・・衛兵は気絶してたけど記憶が曖昧で寝てただけかも知れないって言ってたし・・・」
「いいえ、痕跡ならあるわ。」
「え?」
「私あの日の夜、タバサの部屋に行ってるのよ。あの日、タバサの部屋で大きな物音がして飛び起きたんだから。タバサは悪夢にうなされて寝ぼけただけって言ってたけど多分ウソ。たぶん暗殺者が来てたんだわ。」
「暗殺者!?なんで!?」
「多分ガリアからじゃないかしら。ジョゼフ諜殺の報復として・・・」
「そんな・・・」
「ありえない話じゃないわ。実際あの子も似たようなことやったわけだし、標的になるのも…。」
「ゆるせない・・・。なんてことなの!こっちも」
「待ちなさい。“こっちも”何?こっちも報復でガリア女王を暗殺するわけ?同じことを繰り返すだけじゃない!」
「でも!」
「落ち着きなさい。ルイズ。復讐の連鎖は決して止まることはない。でも誰かが止めなくちゃこの世はすぐに地獄になるのよ。」
「・・・」
「あんたにはまだわかんないでしょうけどね。タバサも、多分覚悟はできてたんじゃないかしら。自分は殺されるかも知れないって。そしてその時が来て、それを受け入れたのよ。」
「でも・・・あんまりじゃない・・・私達仲間じゃない・・・。」
「私前にタバサから言われたことがあるの。“私が殺されても私の復讐をしないでほしい”って。“血で血を洗う争いはもうたくさんだから”って。だから私達はその意志をちゃんと守らないと。」
「・・・」
「納得はしなくていいわ。でもこれだけは。タバサが復讐を望んでいないことだけは、あなたにも知っておいてほしいのよ。」
「わかったわ・・・サイトにも・・・そう伝えてくる。」
「お願いね。」
ミッションコンプリート
・「北の大地からの贈り物」+3000 『毒物を使って暗殺する。誰にも見られてはいけない。』
・「こわーい幽霊さん」 +1000 『誰にも見つからずターゲットの部屋に侵入する』
・「影対影」 +3000 『ターゲットと戦闘する』
・「47の手は長い」 +2000 『ターゲット暗殺時、ターゲットから300m以上離れていること。銃火器は使用できない。』
『もっともよい復讐の方法は、自分まで同じような行為をしないことだ。』― マルクス・アウレリウス
2019/06/13追記
当初、タバサを殺すことはかなり躊躇いましたが、代替案が浮かばなかったのもありそのまま投稿したと記憶しています。
次回は妖怪の楽園へ向かいます。