HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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『荒野のコトブキ飛行隊』の世界に行きます。
もしかしたらあと1~2話くらい書くかもしれませんが、本編のストーリーには全く絡みません。

2019/05/04追記:無理矢理タグ追加しましたw


HITMAN外伝『荒れた大地を飛ぶ鳥』

『イジツへようこそ。47。』

 

『ここはつい最近発見された世界でね。まだ調査が完璧ではないけれど、この世界で現在見つかっている中で最大の都市「イケスカ」のある有力者からの依頼が入ったから行ってもらうわ。』

 

『今回のターゲットは、アウローラという女性よ。オウニ商会という企業の専属防空軍である“コトブキ飛行隊”に最近加入した新人パイロット。出会うたびに依頼人の計画を色々と妨害しているみたい。それを排除してほしいそうよ。』

 

『本当はコトブキ飛行隊全7人を全員排除してほしかったみたいだけれど、2人目以降の依頼料が払えなかったみたいね。しかも7人の中で一番金額が安い今回のターゲットの分しか払えなかった。だから他の6人は殺しては駄目よ。依頼料が支払われていないのだから。』

 

『彼女らは“羽衣丸”と呼ばれる飛行船を空母に改造して拠点としているみたい。もっとも今の飛行船は二代目らしいけどね。よって彼女らは常に空中にいる。搭乗員は少なく、全員お互いの顔をよく知ってる。飛行船に秘密裏に潜り込むのはかなり難しいと思っていいわ。必然的に空戦で落として殺害するのが無難だけれど1対7はさすがの貴方でも難しいでしょう。ブルーとシルバーとタバサも一緒に派遣するから共同で任務にあたって頂戴。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「兄ちゃん達、なんだか見たことない機体だが・・・?」

「・・・。」

「そんなおかしい?」

「まあ日本軍機ばかりのこの世界では異様なラインナップだと思うよ。」

「こんな機体はイケスカでも見たことがねえ。お前さん何者だ?」

「ただのフリーランスだ。」

「そうそう。フリーランス。」

「フリーランスだね。」

「・・・。」

 

 

私達は今、荒野のど真ん中に建っている道の駅ならぬ空の駅にいる。アウトストラーデのサービスエリアのような位置付けらしく、食事から給油まで一通りこなすことができる。

 

 

「そう言えば姉さん。何でその機体にしたの?」

「この子はね、この4機の中でも一番機動性が良いのよ。大空を自由に飛ぶって素敵じゃない!そういうシルバーは何でそれにしたのよ?」

「47と同じ理論だよ。速度で圧倒すれば優位に立てると思ったからね。」

 

 

私達4人はそれぞれICAが用意できた戦闘機に乗って着ていた。私はアメリカ軍機である“P-51H”。ブルーは、イギリス軍機“スピットファイアMk.ⅨE”。シルバーはドイツ軍機、“Bf109 G-10”そして既に座席に座り本を読んでいるタバサはソ連軍機“Yak-9UT”にそれぞれ乗っている。

 

ターゲットの乗る羽衣丸という飛行船は情報によればこの空の駅の西方150km地点をこの後通過するらしい。作戦としては4機編隊で羽衣丸に接近、迎撃に上がった飛行隊の中からターゲットを見つけ出し、それを撃墜する。パラシュートで脱出した場合は追い打ちも必要だろう。飛行隊の使用機体は一式戦闘機らしいので性能差がかなりあるため撃ち負けることはないはずだ。

 

時刻は午後8時。日は既に暮れており、若干雲が多い天候であるが雷雲というわけではなさそうだ。そろそろ予定の時刻である。

 

 

「予定時刻だ。そろそろ行くぞ。」

「はーい。」

「了解。」

「(コクン)」

 

 

それぞれ給油を済ませた機体に乗り込む。我々4人は今回の任務に先立って訓練施設で一通りの操縦技術を学んだ後、別の世界で何人かの戦闘機乗り相手に模擬戦と演習を行ったため操縦に関しては全員問題はない。模擬戦でも唯一人を除いて4対4でも1対1でも完勝できるまでになった。だがあの尾翼に3本線の男にだけは私も含めて4人だれも最後まで勝てなかったが。

 

エンジンを始動。独特の重低音が響き渡り、空の駅備え付けの滑走路から順番に飛び立つ。野戦滑走路ではあるがよく整備されており、問題なく大空へ飛び立つことができた。迂回上昇しつつ高度を10000mまで上げる。情報によると羽衣丸という飛行船は長距離対空レーダーを装備しているらしいが既に捉えられていたりするのだろうか?ともかく、全員上昇し終えたところで西方へ転進、羽衣丸を目指した。

 

 

 

 

 

~コトブキside~

 

 

 

「3時方向より所属不明機接近。数4。高度・・・え?」

「どうしたの?」

「ええっと、これ計器が壊れてるのかな・・・?」

「ともかく表示は?」

「高度8000クーリル、速度600キロ。」

「高度8000で600?それは見間違いじゃないの?そんな高高度でそんな速度出せる機体なんて無いわよ?」

「この前の噴進機じゃない?」

「でも噴進機はイケスカの戦いで全機喪失したって言ってたし・・・それにあの機体は航続距離がないから滑走路の近くでしか運用できないし・・・。距離は?」

「距離、105キロ。」

「そんなところに滑走路あったかしら?」

「一番近いところでも・・・ここの空の駅だね。でも噴進機じゃ多分航続距離が足りないかも。」

「ともかく、本船到達まであと5分ほどです。どうします?副船長。」

「空賊の可能性もありますが。」

 

「ううん・・・でも4機ってことは空賊にしては数が少ないんじゃない?」

「揺動という可能性も。」

「そっか・・・しゃーない。総員戦闘配置!戦闘機隊の出撃を許可する!」

 

 

 

~47side~

 

 

ブゥゥゥン

「姉さん、はしゃぎ過ぎじゃない?」

「なによ、ちょっとバレルロールしただけじゃない。速度は落ちてないわよ。」

「危ない。」

「ほら、タバサも言ってる。」

「ちぇー。」

「間もなく羽衣丸の視認圏内に入る。気を引き締めろ。」

「了解。」

「はーい。」

「いよいよだね。」

 

 

見えた。見た目は昔の硬式飛行船“グラーフ・ツェッペリン”だが、細部が微妙に違っている。知識の一つとしてみた日本のアニメーション映画に似たようなのが出てきたかもしれない。

 

高性能のレーダーを持っているということだがこの距離まで近づいて認識できていないという事はないはず。迎撃機や対空砲火がないということは敵として見られていないのだろうか?念の為無線傍受を行う。

 

この世界の無線技術は大戦期よりは発展してると言っても、良くて60年代の技術レベルであり、端末だけでも容易に傍受が可能だ。情報部が入手した周波数を入力し、傍受を開始する。

 

 

「所属不明機郡は既に本船の近くまで着ています。かなり早いので注意してください。」

「了解。コトブキ飛行隊。全機発艦!」

「アウローラ!急いで!遅れてるよ!」

「わ、分かってますよぉ!」

 

 

そろそろ迎撃機が上がってくるらしい。っと、飛行船上部の対空銃座も起動した。後方にのみ設置されており、連装銃座が2つのものが1箇所、単装砲銃座1つのものが2箇所ある。

 

 

「わたしがやる。」

「わかった、任せたぞ。タバサ。」

 

 

一言いうとタバサのYak9UTが急降下で羽衣丸へ接近していく。武装はオリジナルの20mm機関砲2門に加えて特殊改造として37mm機関砲を1門搭載している。タバサは弾を無駄にしないよう37mmの単発射撃で銃座を潰しにかかる。

 

ドン

ボォーン!

ドン

ボォーン!

ドンドン

ボォーン!

 

 

元々旧日本軍の爆撃機などに付けられていた銃座だ。37mm機関砲弾1発で容易に大破し、射撃できなくなったようだ。

 

 

「後部遠隔銃座沈黙!相手の航空機は大口径機関砲を装備しているようです!」

「やばいやばいやばい!コトブキ飛行隊早く上がってぇ!」

「分かってますから落ち着いてください副船長。コトブキ飛行隊発艦準備完了!全機、一機入魂!」

「「はい!」」

 

 

「あら?やっと発艦してくるのね。ちょっとビビらせてやりましょ。」

「姉さん?」

 

 

やっと迎撃機が上がってくる。何を思いついたのかブルーのスピットファイアが発艦してくる出口とは反対側から滑走路に近づいていく。

 

 

「やあああああ!」

ブゥゥゥゥン

「姉さん!」

「!」

「中に入った。」

「姉さん!大丈夫かい!?姉さん!」

 

 

あろうことか敵機が出てくる方とは別のもう一つの、おそらく着艦用と思われる反対側の入口から中に侵入したのだ。正気の沙汰とは思えないが、ブルーは前も別の世界での飛行訓練中一度F-15でトンネルくぐりをやらかしている。まあその時は3本線に追随した結果ではあったのだが、その時の経験が彼女になにか悪影響を及ぼしてしまったのだろうか。

 

発艦作業中のコトブキ飛行隊の頭をかすめる形でもう一方の出口からブルーの機体が出てきた。なんとかどこもぶつけずに通り抜けたようだ。無論、傍受している向こうの無線もパニック状態だ。

 

 

「何何何!?!?」

「何今の?!」

「私達の飛行甲板内に戦闘機が侵入。上をギリギリですり抜けていった。」

「被害を報告しろ!」

「なし!」

「こっちも大丈夫!」

「というか機銃も撃ってなかったよね?」

「通り過ぎただけ?なめた真似を!」

 

 

「姉さん!なんて危ないことを!」

「無謀。」

「えへっ♪」

「ブルー。あれは流石に危険すぎる。今回は奇跡的に無傷で済んだから良かったものの、今回の任務はターゲット以外の人間には被害を出さないようにと言われたのを忘れたのか?」

「あ、そう言えばそうだったわね。ごめんなさーい。」

「無茶はこれっきりにすることだな。敵機が上がってくる。各自ターゲットを確認しろ。」

「「了解。」」

 

 

気を取り直して上がってくる迎撃機の機体マークを確認していく。余談ではあるが、我々4人の機体にもそれぞれ思い思いのマークが描かれている。私は特に思い入れがないため単純に尾翼に白文字で「47」と書いてある。シルバーは尾翼には何も書かれていないが機体全体を這うように黒地の機体に白の流線型のラインが引かれている。ブルーは故郷の友人に書いてもらったらしいデフォルメされたブルー自身の絵が尾翼に描かれている。タバサは真っ白の機体に直線的な青いラインが引かれている。

 

羽衣丸から迎撃機が続々と発艦している。1機目は尾翼に緑色の稲妻のマーク。レオナという女性が操縦する隊長機だ。2機目は機体全体に黄色のライン。ザラ副隊長機だろう。3機目は紫の矢印。4機目は青い鎌がそれぞれ尾翼に描かれている。それぞれケイト機、エンマ機だ。5機目は尾翼から胴体にかけてピンクのラインのチカ機。6機目は赤い鳥のマーク、キリエ機。そして7機目、最後に出てきたのが機体全体に緩やかなオレンジ色の曲線を描いている機体。ブリーフィングでの情報通り、これがアウローラ機、ターゲットだ。

 

 

「よし、全員、ターゲットは確認できたな。攻撃開始。」

「了解!ダーイブ!」

「姉さん!全く・・・。攻撃開始!」

「ロッテ戦術。」

「わかった。シルバー、きついかもしれないがブルーにつけ。タバサは私について来い。」

「「了解!」」

 

 

ケイト機にブルーとシルバーが襲いかかる。隼特有の高機動によって綺麗に避けられてしまう。シルバーはそのまま通過したが、ブルーは背後についた。しかしスピットファイアの後期型と隼では速度差があり、機動力を駆使しても若干追い越しそうになってしまい、一旦ブルーも離れた。

 

 

「はやい。そして見たことのない機体。機動性も良い。」

「だな。何だあの機体は。」

「イケスカの新型かな?」

「あの街は今議会が大混乱で新しい機体なんか作ってる暇はないと思いますわ。しかも4機も。」

「じゃあアレは一体何だってのさ。」

「わからん・・・っ!チカ!来るぞ!」

「え?うわわ!!」

 

 

こちらもチカ機に向かって攻撃を敢行したがこちらも既の所で避けられてしまった。流石にこの世界で名を馳せているエース飛行隊なだけはある。しかし数的にはこちらが2機足りないので手早く数を同数に持っていき、ターゲット機を狙うチャンスを早めに作りたいところである。

 

相手の集団の中を高速で通過しつつ、射線が合った敵機に揺動も兼ねて手当たり次第に攻撃を仕掛けていく。

 

 

バラララララ

「うわ!」

「新人ちゃん!大丈夫!?」

「な、なんとかー!」

「今の攻撃何?やたらいっぱい弾が出てたような。」

「あの機体ナンバー47。今の銃撃から推察して、機銃は4。もしくは6。」

「ずいぶんと重武装じゃありませんの。」

「攻撃を受けた身から報告しますと、あれは絶対7.7じゃないです。12.7ですよ!」

「口径も大きい。厄介だな。」

 

 

冷静に各機状況とこちらの情報を収集している。が、まだ他にも機体は居るのだがな。

 

 

「捉えた。」

ドンドン

バキィ!

 

 

「きゃあ!!」

「チカ!」

「どういうこと!?あの白い機体、2発しか撃ってないし、そのうちの一発があたっただけで翼が簡単に根元から折れたわよ!?」

「かなり大口径の機関砲を装備しているようだ。羽衣丸の銃座もこいつにやられたんだな。」

「チカ!大丈夫!?」

「脱出は成功してる。パラシュートが見えた。」

「よかった・・・。」

 

「コトブキ飛行隊。聞こえますか?こちら羽衣丸。格納した機銃塔を確認した所、かなり損害が大きいことがわかりました。検分によると35mm以上の砲弾を被弾したものと思われるそうです。」

「35mm?!戦闘機に乗っける大きさじゃないよ!?」

「イサオが乗っていた震電がちょうど30mm機銃だが、それ以上ということか・・・。注意しろ!」

 

 

被弾したチカ機は右主翼の大半を喪失していた。パイロットは風防を開けて脱出したのを確認した。やはりターゲットを撃墜する前に他の機体をあらかた戦闘不能にしておいたほうが良いかもしれないな。

 

撃墜したタバサの後ろにケイト機が張り付く。タバサは左右に大きく旋回しつつケイト機の銃撃を避けながら逃げ回る。私はそれに呼応するようにサッチウィーブを敢行する。

 

 

バラララララ

ガチンバァン

「くっ・・・。」

「ケイト!」

「47番の機体。おそらく隊長機。脱出する。」

「2機も落とされたよ?!どうなってんの!?」

「くっ、これは不味い・・・。」

 

 

かなり焦り始めている。あと1機落とせば数で互角になる。別方向からブルーとシルバーが参戦してきた。

 

 

「私達のことも忘れないでほしいわね!」

「姉さん。あのオレンジの機体がターゲットだ!」

「わかってるわよ!でもまずは・・・。貴方よ!」

 

 

ダダダダダダ

バキ!

「うわわ!」

「キリエ!」

「大丈夫!まだ飛べる!けどあの青い機体、すごい機動して追ってきてる!」

「くっ!」

バラララ

「ちっ!かわされた!」

「空賊の分際で!」

 

 

「あぶないあぶない・・・。」

「姉さん大丈夫かい?」

「大丈夫よ。掠りかけたけど見た所損傷もないし穴も開いてないわ。」

「姉さんは・・・俺が守る!」

 

 

不味い。シルバーはブルーが攻撃されたことで頭に血が上っている。Bf109は旋回性能は隼に遠く及ばない。にもかかわらず速度を落としてレオナ機と格闘戦に突入してしまった。

 

レオナ機はそれを右へ左へと躱しながら逃げている。相手の旋回性能を知らないため基本的な回避軌道をとっているようだ。

 

 

バラララ

ガガガガキン!

「うわ!」

「シルバー!」

「不味い!尾翼の操作がやられた。制御できない!」

「シルバー、ココまでだ。脱出しろ。」

「でも姉さんが・・・。」

「ブルーは無茶はするが少なくとも頭に血が上って周囲が見えなくなることはない。」

「くっ・・・わかった。脱出する。」

 

 

「一機撃墜!」

「よくやったザラ。残りも叩くぞ!」

「了解!」

 

 

あの隊長機と副隊長機は小賢しい手は通じなさそうだ。ともすればもう少し落としやすそうなところから削るべきか。私はタバサを引き連れ、キリエ機に攻撃を行った。私が弾幕を張り、キリエ機の進路を制限する。そこを、

 

 

ドンドンドン

ガギン!

「うわああ!」

「キリエ!」

「機体後部に大穴あいてるわよ!大丈夫なの?!」

「私は大丈夫だけど機体が・・・脱出します!」

 

 

あと4機。こちらが1機減っているため互角とはいい難いが、いい感じに空が空いてきた。ここらで仕掛けるか・・・。そう考えていると想定外の事態が発生した。

 

 

「風防が開かない!」

「なんですって!?」

「っ!!!」

「貫通した弾が風防のレールに被弾してへしゃげたみたい!脱出できない!」

「機体を不時着させられるか?!」

「うぐぐ・・・結構ヤバイかも・・・!」

 

 

不味い。タバサの銃撃で脱出が不可能になったらしい。見ると、キリエ機の風防の端に37mm徹甲弾が突き刺さっているのが見えた。尾翼の操作系統も喪失しており、このままではキリエは地面に叩きつけられて命を落とす可能性が高い。それはなんとしても避けなければならない。

 

 

「私に任せなさい!」

「ブルー?」

 

 

ブルーはその機動力でキリエ機の横にピッタリとついた。そのまま慎重に機体を寄せていく。

 

 

「よっ・・・もうちょっと・・・。」

「うげ!・・・え?」

 

ガガガ

「うわわ!何すんのさ!」

「動かないでよ!頼むから・・・ね!」

ガキン!

 

「うわ!・・・へ?!」

 

 

ブルーはキリエ機の外側にはみ出ていた機関砲弾に、あろうことか自分の機体の主翼の左端を下から押し当てて、ローリングで一気に弾き飛ばした。砲弾は吹っ飛び、風防も一緒に外れた。弾みで機体が大きくバランスを崩すが、エンジンパワーに物を言わせ急上昇して無理やり立て直す。キリエはそのまま外れた風防から脱出してパラシュートを開いた。

 

 

「・・・?助けた・・・?」

「どういう事?なぜ助けるような真似を?」

「わからんがチャンスだ。急上昇したせいであいつの機速が落ちている。」

「私が行きますわ!」

 

 

すぐさま水平飛行に戻したが、元々墜落寸前の機体についたこともあって機速はだいぶ落ちてしまっている。すかさずエンマ機が後方につけて銃撃を行う。私は銃撃するエンマ機の前を遮るように弾幕を張った。

 

 

「ちぃ!空賊のくせに無駄に連携が取れてますこと!もう怒りましたわよ!」

「エンマ!早まるな!」

 

 

エンマ機はそれから逃れるように旋回をする。旋回した先にはタバサ機があった。そのままタバサを追い始める。

 

 

「タバサ。後方敵機。」

「わかっている。」

 

 

タバサはほぼ垂直に急上昇し、エンジンパワーに物を言わせて一気に高度を上げる。エンマ機もそれに追いすがろうとしてくるが、タバサが失速する数秒前にエンマ機の方が先に失速して反転した。タバサはラダーを駆使して失速しながらも空中で180度反転する。ハンマーヘッドターンというやつだ。反転後、エンマ機をすぐさま銃撃する。今度は先程のようなことが起きないように主翼に向かって銃撃を行う。

 

 

ドンドンドン

ガボォン!

「やられましたわ!」

「くっ、エンマまで・・・。ザラ、アウローラ!私達でやらなければならなくなったぞ!」

「わかってるわ。行くわよ新人ちゃん。」

「あ、あいあい!」

 

 

残り3機。このくらいで十分だろう。私は一旦レオナ機に狙いを定める。レオナ機を追うように背後につく。わざと大回りしたりなどして追いつけない風を装う。そして“予定通り”ターゲット機が背後をとってきた。

 

 

「今だ!アウローラ!」

「落ちろ!」

ダダダダ!

 

 

私はその銃撃を回避するように近くの雲の中へ入った。もちろんターゲット機が追って雲の中に入ってくる。私はその瞬間、雲の内部でフラップやエルロン、エレベーターなどをフル活用して急減速する。少し避けて急減速したため視界のない雲の中でもぶつからずにターゲット機は私を追い越していった。すぐさま体制を立て直し、確実に落ちるように12.7mm×6門を叩き込む。

 

 

バララララララララ

ガガガガガガバキン!

「うわあああ!」

「っ!アウローラ!」

「やられました!脱出します!」

「ちっ!雲が厚くて何も見えない!」

 

 

雲の中でターゲットはパラシュートを展開して脱出したようだ。

 

 

「見つけたわよ!パラシュート!」

「やれ、ブルー。」

「了解!死体撃ちみたいでちょっと気がひけるけど悪く思わないでよね!」

 

 

雲の上から観察していたブルーは急降下し、パラシュートの傘部分をめがけて銃撃を加える。12.7mm機関砲弾によりパラシュートの傘部分は穴だらけになって破れた。高度2000mを超える上空で、空気を受け止める部分がなくなったパラシュート。どうなるかは火を見るより明らかだ。

ターゲットはそのまま自由落下で地上へ向かっていった。大戦期の航空機用パラシュートが予備のパラシュートなど搭載しているはずもなく、そのままパラシュートが見えないまま、ターゲットは地上に落ちて行く。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『成層圏にいるステルス無人偵察機から確認したわ。ターゲットの死亡を確認。思いっきり硬い地面に叩きつけられたみたいね。任務は完了よ。帰還して頂戴。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「レオナ隊長機、こちら羽衣丸。」

「?どうした、何があった?」

「新人ちゃん落とされたんですよね?」

「あ、ああそうだが雲の中だから確認はしていない。どうしたんだ?」

「それが・・・パラシュートが確認できません。」

「何!?」

「落とされた機体が墜落するのは確認しましたが、パラシュートが開いてるのがどこにも・・・。」

「まさか・・・!」

「くっ!捜索隊を派遣してくれ!たのむ・・・無事であってくれ!」

 

 

私はその無線を聞きつつ。更に高度を上げ、速度も上げていく。ターゲットが落ちた今、彼女たちの相手をする意味も、羽衣丸という飛行船を襲撃する意味もない。三十六計逃げるに如かずだ。

 

 

「目標は達成した。撤退するぞ。」

「シルバーはどうするのよ?」

「今ICAのインフォーマントが現場へ向かっているそうだ。偵察機から無事なのも確認できている。」

「そう・・・よかった。じゃあ帰りましょうか。」

「了解。撤退する。」

 

 

 

「逃げていく?・・・せっかく同数になって火力でも圧倒しているのに・・・?」

「燃料切れ?じゃないわよね・・・。」

「・・・まさか!最初から狙いはアウローラだったのか!?」

「そんな!ということは・・・!」

「ザラ!迎撃は中止だ!捜索するぞ!」

「わかったわ!」

 

 

こちらの意図を読み取ったようで追撃を中止して反転して高度を下げていった。傍受していた無線を切り、我々はそのままアタザキ方面へ進路を変えて空域を離脱した。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

~6時間後~

 

 

「喪失機1。コトブキ飛行隊初の殉職者ね。」

「・・・。」

「レオナ。貴方の戦闘指揮に不備がなかったことはザラからも副船長からも聞いているわ。」

「・・・。」

「だから・・・そんなこの世の終わりみたいな顔しないで頂戴。飛行機乗りならある程度覚悟はできているものでしょう?」

「・・・それは・・・そうですが・・・。しかし・・・。」

「・・・はぁ・・・レオナ。1週間ほど休暇を与えます。今は休みなさい。」

「それは・・・、・・・わかりました。」

「よろしい。下がっていいわ。」

 

 

「今回遭遇したのは4機。どれも見たことのない機体だったわ。」

「回収した弾薬もあたし達が使ってるのとは違うものだったよ。」

「速度、上昇力、機動力、火力、最高速。どれをとっても相手のほうが数段上だった。」

「イケスカにもラハマにもそんな機体はおろか記述さえも見つかりませんでしたわ。」

「一体どこのどいつだよ、うちの新人ちゃんを亡き者にした連中は!」

「今のところわからないということが分かったくらいね・・・。」

「それ何の進展もないってことじゃん!」

「それぞれの機体の特徴を洗い出して研究するしか無い。」

「尾翼に47って書いてあったのが隊長機だよね。武装は12.7mm機銃6門。速度重視で旋回性能は微妙っと。」

「同じく尾翼に人物アート絵が描かれてた機体は、かなり無茶していた。相当機動性がいい。私達の滑走路に入ってきたのもこの機体。」

「それの武装は被弾したキリエ機の損傷痕からしておそらく20mm機銃。12.7mmも混じってるかも。こっちも重武装ね。」

「白い機体は冷静に戦況を見て35mm以上の大口径の機関砲持ち。性能は隊長機に似てる。」

「私達が唯一手がかりにできそうなのが黒い線が引かれてたザラが落とした機体だけど・・・。」

バァン!

「みんな!」

「キリエ?」

「あの黒い機体、見つかったって!今ナツオ班長たちが回収に向かってる!」

「なんですって!?搭乗員は!?」

「居なかったみたい。」

「・・・ともかくこれで相手のことが少しわかるかもしれないわね。」

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「裸の鯨」        +2000 『羽衣丸の後部銃座をすべて破壊する。』

・「エースにのみ許される」 +5000 『羽衣丸内部を飛行した状態で通過する。』

・「ラムアタック」     +3000 『機体を相手に接触させる。』

・「荒野のアサシン飛行隊」 +5000 『コトブキ飛行隊を4機以上撃墜する。』

 




書きたかったから書いた(爆)
コトブキ飛行隊はいいアニメなんですけど、水島監督の技術と趣味がふんだんに詰まってるので内容が一般受けしないものに・・・w
音響とか隼の描写とかすごいんですよ?リアル志向が強い方は是非。

次回もイジツに居座ります(笑)

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