HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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HITMAN外伝『ICAの救済』

『セキチクシティへようこそ。47。』

 

『今回のターゲットはここ、セキチクシティの名物である“サファリゾーン”の従業員の一人。アンジェラという女性よ。』

 

『彼女はポケモンレンジャーをする傍ら、ヤマブキシティを中心とした大規模なサイバー犯罪を行っているらしいの。なのでこの通信も傍受の可能性があるわ。』

 

『そこでICAはハル・エメリッヒ博士の協力の下、独自の量子通信回線を構築したわ。詳しいことはそっちの回線で話すわね。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「こちらスネーク。現地に到着した。」

「エージェント47。準備完了。」

「うん、通信は良好だ。じゃあ始めようか。」

 

 

私とスネークはセキチクシティ北部に広がるサファリゾーンへやってきた。スネークは第3エリアの草むらの中。私は少し離れた第1エリアの山岳地帯に陣取っている。

 

今回、私はJaeger7を持参した。その他にも通信傍受を避けるための量子通信機を持っている。早速その通信機が通信を受信する。

 

 

『47。聞こえるかしら?』

「感度良好だ。」

『わかってると思うけれど、この通信は表向きは量子通信で通信傍受を避けていることになっているわ。でも実際はただの無線機。周波数が変わってるだけよ。』

「だろうな。この形は以前使ったことのある形だ。」

 

 

そう、この量子通信機もとい、ただの無線機は以前コガネシティでブルーに渡された通信機そのものだった。それにICA技術部も量子無線通信技術を開発したとは聞いた覚えがないので技術自体完全にでっち上げだ。

 

 

『じゃあ改めて“本当の”任務を伝えるわ。ブルーは今シルバーと一緒にこのサファリゾーンにポケモンをゲットしに着ているみたい。それをICAのエージェント12、通称ラーディスと呼ばれている男が狙っているわ。今回のターゲットはそのラーディスよ。』

「ICAがICAを狙う状況とは奇妙なものだな。」

『ラーディスの作戦については詳細は分からない。でも誰に扮しているかは分かってる。彼は今第3エリアのトレジャーハウスのポケモンレンジャーに変装しているわ。』

「判別する方法は無いのか?」

『情報では頭のベレー帽が赤色、服はオリーブドラブ、長袖長ズボンで腰に黒と黄のポシェットバッグを持っているわ。』

「了解した。」

『プランとしてはまずスネークがブルーたちを一般人を装って接触、保護するわ。合流したらおそらくターゲットが何らかの行動を起こすと思われる。そこをあなたが仕留めるのよ。』

「問題ない。基本はブリーフィングでの偽装プランをそのまま流用すれば可能だ。」

 

 

私は第1エリア山岳部からライフルのスコープだけを取り出し、周囲を見渡した。まずはブルーを探しださねばならない・・・。

 

 

 

 

 

 

~ブルーside~

 

 

「さて、そろそろ行きましょうか。」

「そうだね。」

 

 

私は今、シルバーと一緒にすっごく久々にサファリゾーンへ来ている。目的はガルーラのゲット。もうかれこれ1時間は探してるのに見つからないわねえ・・・。

 

ICAの指令が最近あんまりないからこうして2人でバカンス気分でサファリゾーンを楽しめるってわけ。お給料も結構溜まってきたし、そろそろほとぼりも冷めた頃合いでしょうから、ガルーラを捕まえ終えたらヤマブキシティでお買い物と行こうかしら。

 

 

「姉さん。」

「ん?なあにシルバー?」

「何か・・・おかしい。」

「何かって?」

「具体的なものじゃないんだけど、なんというかその・・・仕事中のときみたいな緊張感がある気がする。」

「なあにそれ。今誰かここで暗殺されようとしてるっていうの?」

「わからないけど・・・なにか不安なんだ。」

「心配性ねえ。ココはそこまで治安悪くないから大丈夫よ。」

 

 

シルバーももうちょっと肩の力抜いてくれると嬉しいんだけどねえ・・・。職業病ってやつかしら?やっぱり偶に息抜きしないと駄目ね。今度からもっと積極的に連れ出すことにしましょ。

 

 

「とりあえずトレジャーハウスを目指すわよ。出発!」

 

 

 

 

 

~スネークside~

 

「こちらスネーク。対象を発見した。」

「了解。こっちも衛星映像で確認したよ。47に伝える。」

「まだこちらの位置には気が付かれていないが、あのシルバーって奴、相当に勘が鋭いな。」

「うん?気が付かれかけたのかい?」

「俺がアイツラを発見した直後に辺りを見回していた。おそらく気配を察知するのに長けている。」

「まあ今回は君はタダの一般人なんだから、バレたところで問題はないだろう。それに、接触しないとターゲットを守ることもできないよ?」

「それはまあそうなんだが、なんというか・・・。」

「見つけられるのは負けた気がする。かい?」

「・・・まあそんなところだ。」

「君も相当にひねくれてるね。知ってたけど。」

「お互い様だ。・・・移動を開始した。こちらも尾行を開始する。」

「OK。急な襲撃には十分注意してくれ。」

 

 

この周辺は木々が生い茂っており、尾行するにはそれほど苦労はなかった。しばらくすると水場に出た。彼らは草むらの中から飛び出してくるポケモンたちに餌をやったりしながら進んでいく。どこを目指しているのだろうか?しばらく尾行した後、彼らは1件の小屋の前まで来た。

 

 

「やっとついたわ!」

「結構長かったね。」

「早速入りましょうか!」

 

 

どうやら目的地はこの小屋だったらしい。小屋の中に入っていった後、こちらもドアの側の窓から内部を確認する。室内は大きなテーブルと椅子。そして中にはボーイスカウトのような格好をした男がいた。話している内容までは聞こえないがとても和気あいあいとしている。

 

談笑している最中、3人の注意が奥のショーケースに移った時にすばやくかつ静かに内部に潜入した。今度はシルバーにも気が付かれてはいないようだ。

 

 

「そういえば君たちはガルーラを探しているんだって?」

「はい。できればゲットしたいなって!」

「そうかそうか。なら良いものをあげよう・・・。」

 

 

ボーイスカウト風の男がそう言うと奥から何やら白い箱を取り出してきた。男はその箱を開けて中から白い包みを取り出した・・・むっ!あの形は・・・。

 

 

「何をくれるのかしら?捕まえやすくなる餌とか?」

「もしかしたらボールとかかもしれないよ。それかガルーダが居るところの地図とか。」

「そんなものよりもっと良いものさ・・・。コレはね・・・5.56mm弾って言うのさ!」

チャキッバァン!

 

 

 

 

 

「きゃあ!」

「うわっ!」

「ちっ!何だ?!」

 

 

あの包は案の定アサルトライフルだった。セミオートになっていたようで、とっさに俺が近くにあった瓶を投げつけていなければ確実にブルーに弾が当たっていた。

 

 

「大丈夫か!」

「え?ええ・・・何なのよ!一体!」

「ふん!これから死ぬやつに答える義理はない!」

「くっ!」

ダダダダ

 

あいつ、闇雲にこっちを撃ちまくってきやがる。無関係のやつを巻き込むのはどうでもいいってか?俺らはとっさに近くの展示台の裏に身を隠した。

 

 

「スネーク!こちらも応戦するんだ!」

「だがなオタコン、こっちは拳銃、相手はアサルトライフルだぞ?しかも室内が広いせいで身動きが取りづらい。」

「こちら47聞こえるか。」

「何だこの忙しいときに!」

「その小屋から出るんだ。」

「何?・・・わかった。」

 

「って!あなたスネークじゃないの!?どうしてココに!?」

「俺はおまえさんを助けに来たのさ。お前、アイツに狙われてたんだぞ。」

「うっそぉ?!なんでえ!?」

「やっぱり・・・!あの時感じた空気はそのせいだったのか!」

「ともかく脱出するぞ!準備はいいか!・・・そらっ!」

 

 

カランカラン…バシュン!

 

 

俺はフラッシュバンを相手に向かって投げつけ、相手の丁度目の前で炸裂した。しかし相手も想定済みだったようでとっさに目を手でガードして防いだようだ。だがその一瞬の隙を見逃さない。

 

 

バシュンバシュンバシュン

ダダダダダ

 

ブルーたちを小屋の外へ走らせ、俺はターゲットに向かって銃を乱射して牽制する。ターゲットは近くの展示台に身を隠しながらライフルだけを出して制圧射撃をしてきた。弾が脱出中のブルーたちを掠めたが何とか無事に小屋の外へ脱出したようだ。

俺はもう一度、フラッシュバンを投げる。炸裂する瞬間にダッシュで小屋を出た。

 

 

「くっそお!待ちやがれ!俺から逃げられると思うなよ!」

 

 

相手もしつこく追ってくる。ターゲットが小屋の出口から出たその時、

 

 

ダァーン!

 

 

一発の弾丸がターゲットを貫いた。

 

 

 

 

 

 

~47side~

 

距離にして600m超。狙撃としては中距離の部類だ。頭部を狙うのはそれほど難しくはない。

 

エメリッヒ博士の通報を受け、私は急いで第3エリアの山岳部へ移動していた。小さな湖の対岸にあるトレジャーハウスを見渡せるこの位置に陣取ったのは中で銃声がする直前だった。何とか間に合ったようだ。

 

ターゲットが小屋から出てきた瞬間を狙ってその眉間に風穴を開けてやった。弾丸は正確に命中し、彼は小屋の前で一拍立ち尽くした後、静かに後ろ向きに崩れ落ちた。

 

 

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『戦術AIです。エージェント47。それは作戦行動中のエージェント12です。攻撃の意図を説明してください。』

 

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最近のAIはこういう警告まで発するようになったらしい。とりあえず用意していた文言を答える。

 

 

「こちら47。ターゲットのアンジェラと誤認した。申し訳ない。」

『戦術AIです。誤射事件が発生。上級委員会にて審問が行われますので、エージェント47は作戦を中止し、撤退してください。』

「こちら47.了解した。」

 

『バーンウッドよ。47。作戦は成功ね。審問会はこちらで手を回しておくから安心して。』

「ああ、助かる。」

「こちらスネーク。ブルーを無事保護した。コレより臨時セーフハウスへ向かう。」

「臨時セーフハウスは僕らが利用していたアジトの一つを改造したものなんだ。僕らの仲間が護衛に付いてる。心配しなくていい。」

『了解したわ。借りは必ず返すわね。』

「期待しないで待ってるさ。ああ、それとシルバーってやつも一緒に連れてくが構わないよな?」

『ええ、問題ないわ。彼ら二人は休暇中に行方不明ということにしておくから。』

「では、撤退する。」

「こちらも帰還する。」

「ああ、ふたりとも気をつけて。」

 

 

私はその後、本部に呼び戻され、小一時間質問攻めにあったが、上級委員会No.1とやらの鶴の一声で開放された。

 

 

 

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~2日後~

 

 

『47、スネーク。エメリッヒ博士との共同調査で相手の目的がわかったわ。』

「ほう?」

『ドナルド・カーキンスは最近原理主義派という派閥を立ち上げたみたいね。ICAを自前のクローンエージェントのみによって運営することを目指しているみたい。』

「クローンエージェント、それはつまり47のようなってことかい?」

『ええ。彼の意見に賛同したある大手のクライアントが彼の計画を後押ししているみたい。』

「何者なんだ?その大手クライアントってのは。」

『“プロヴィデンス”。そう呼ばれてる組織よ。元は欧州の貴族のようだけれど、現在は世界的な大企業のトップになっているわ。』

「そして愛国者達とも協力関係にある。彼らの資金の一部が愛国者達のヘッジファンドに流れているのが確認できた。」

「結構でかい相手じゃないか。どうするつもりだ?」

『プロヴィデンスを潰すのはまだ無理ね。最もかれらは資金提供しているだけだから今回は見逃すことにしたわ。でもドナルド・カーキンスはそうは行かない。』

「暗殺するのか?」

『ICAに楯突くことは死を意味するけれど、ICAを混乱させてなおかついいように利用してきた男よ。死だけでは済まされないわ。』

「ならどうするんだ?」

『私に任せて頂戴。すでに上級委員会のNo.1とNo.2には話を通してある。次回からはICAの管轄下でドナルド・カーキンスを追い詰める。』

「じゃあ俺らはお役御免か?」

『あなた達はブルーたちの保護を継続してほしい。少なくとも、ドナルド・カーキンスがこの世から消え去るその時まで。』

「了解した。じゃあちょっとあのセーフハウスの防衛設備も改良しないといけないな・・・。」

「俺もそこに居よう。万が一のときは対処しやすくなるはずだ。」

「すまない。感謝する。」

「礼はいい。強いて言うなら俺らの組織にも少しばかり資金がほしいくらいだな。」

『善処はするわ。今回の一件であなた達にはずいぶん協力してもらったから、上級委員会に掛け合ってみる。』

「ありがたい。頼むよ。」

 

 

 

ミッションコンプリート

・「ステルスの申し子」 +1000 『トレジャーハウスまでブルーたちに気付かれない。』

・「生業は背負わせない」+1000 『ポケモンを使用しない。』

・「同族嫌悪」     +3000 『ターゲットの頭部に銃弾を命中させる。』

・「いたずらっ子」   +3000 『ICAの審問会に出頭する。』

 

 

 




今回は短めです。短い代わりにあと2話を予定しています。

次回は報復攻撃です。

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