HITMAN『世界線を超えて』   作:ふもふも早苗

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HITMAN外伝『ICAの結論』

『ルイジアナへようこそ。47。』

 

『ここはルイジアナ州のオストリカ。ミシシッピ川の河口付近よ。道の両側は川と海になっているところでね。川にも海にも近いからボート好きの人が多く住んでるわ。もっともターゲットはボート好きというわけではないでしょうけどね。』

 

『いよいよ一連のICAの内乱に終止符を打つ時が来たわ。ターゲットはすべての元凶であるドナルド・カーキンスとその手下数十名。彼はこの地区の一角に自宅を持っていてね、衛星で確認したところ、子飼いの武装組織によって防衛が固められているようよ。この武装組織は元ICAの末端のエージェントが多く在籍していて、上級委員会はこれらのエージェントも反乱者とみなして全員に抹殺命令が出ているわ。ちょっと数が多いでしょうから助っ人も呼んでおいたから協力して任務にあたって頂戴。』

 

『プロヴィデンスに対しても別働隊による監査が入ることになったわ。そっちはそっちでやるからあなたはドナルド・カーキンス一味の抹殺に注力して。』

 

『一応静かにことを済ませて頂戴。あんまり騒ぎ立てると州警察がやってきて面倒なことになるからね。おそらく自宅にはセーフルームが備え付けられているはず。あんまり騒ぐとかえって面倒になるわよ。』

 

『準備は一任するわ。』

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「この世界に来るのも久々ね。」

「ICAに入った時以来かな。」

「ふむ。見た目は俺のいたアメリカと変わらんな。」

 

 

私達は今、オストリカのルイジアナハイウェイを車で南下中だ。両側にはいくつものバンガローが建っているが、あまり人気は感じられない。

 

今回、助っ人としてスネークが。匿われていたブルーとシルバーも同時に参加している。今回は相手が大人数のため、4人でも足りないくらいだと思われる。皆それぞれに大人数を相手にするための武器を持参している。私はいつものシルバーボーラーとTAC-4を持参している。他の者達の装備は確認していないが、シルバーはJaeger7を持参してきているようだ。

 

 

「今回は建物の周囲にいる警備兵は全員抹殺しろとの命令が出ている。」

「私がシルバーと一緒にいるわ。」

「いや、僕一人で良い。姉さんにはバックアップを頼みたいんだ。」

「あらそう?じゃあ私はバックアップに回るわ。電話回線でも切断してみましょうか。」

「俺は単独で十分だ。」

「では個人個人で動く。私とスネークが建物内に侵入を試みる。シルバーは屋外から狙撃援護。ブルーはいざというときの陽動と警察が来た場合の対処だ。」

「「了解。」」

 

 

ターゲットの自宅手前500mの路上に車を止めた。時刻は23時を回ったところ。今日は新月なので辺りは暗闇に包まれている。車から降り、各々別々の方向からターゲットの家に近づいていく。

 

正面玄関からは私。正面とは反対側になる北側からはスネークが。道路を挟んで南東の木の上からシルバーがそれぞれ作戦を開始する。ブルーは車の近くの茂みで待機だ。

 

正面玄関は固く閉ざされており、監視カメラももちろん取り付けられている。家の塀の外周はM4カービン装備の警備兵が巡回している。私は手始めに道路の近くの茂み、監視カメラからは死角になる位置に石を投げ入れた。

 

ガサッ

「ん、何だ今の音は・・・。」

 

 

おそらく動物と思ったのか内部と通信することもなく、そのまま茂みを確認しに来た。茂みの手前で立ち止まり、あたりを見回している。

 

 

バシュン

ドサッ

 

 

シルバーの狙撃によって脳幹部分を撃ち抜かれた警備兵はそのまま茂みの中へ倒れた。まず一人目だ。少しだけ足が出ているので茂みの中に完全に隠しておく。その後も外周を回ってやってきた警備兵を茂みに誘導してはシルバーが狙撃するを繰り返し、合計で4人ほどをあの世に送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~スネークside~

 

 

「スネーク。その扉は警報装置がついている。むやみに開ければ警報が鳴り響くよ。」

「おっと、あぶないあぶない。」

 

 

凄まじく厳重な家だ。扉という扉はすべて警報装置付き、監視カメラはいたるところにあり、窓も衝撃感知センサーまで付いている。せめて窓の一つでも開いていてほしかったが、1階も2階もすべてはめ殺しのようだ。

 

周囲を探っていると地下へ降りる階段を見つけた。階段を上り下りする際には監視カメラに見つかるだろうが・・・降りた先のドアまでは監視カメラの範囲が届いてないようだ。静かに扉の上側に回ると近くにあった枝で扉を叩いた。

 

 

カンカン

 

ガチャ

「なんだ今の音は?」

 

ゴキャッ

 

不用心にも程があるな。扉が叩かれたからといって扉を開けるのは。俺は扉の上から通路に誰も居ないことを手鏡ですばやく確認し、上から出てきたやつの首を掴んでそのままへし折った。そのまま扉へ降り、中へ死体を引きずっていく。

 

直ぐ側の扉が空いており、ひとまずその中へ隠すことにする。開いていた部屋は・・・警備室だ。監視カメラの制御を行っている部屋のようで、中にはまだ2名ほど人が居た。俺は一旦死体を廊下に放置してUSPを取り出し、片方の警備兵へ近づいた。後ろから口を一気に塞ぎ、混乱している間に背中からUSPを3発お見舞いする。

 

パシュパシュパシュ

ムグー!

「ん?な、なんだ!?」

パシュン

 

 

サプレッサーがついているとは言え、流石にこの距離では音が聞こえてしまったようだ。しかしこちらに振り向き、驚愕の表情をしている一瞬の隙に、俺はもうひとりの額に風穴を開けた。警備室の制圧が完了したので廊下に放置していたやつを室内に引きずり込んだ。

 

 

「お見事。流石だね。スネーク、その警備システムに僕が渡した端末を挿してみてくれるかい?」

「ん。これか。」

 

 

今回の作戦に同行するに当たってオタコンから小型のメモリースティックを渡されていた。そういえば以前、似たようなのをあいつも持っていた気がするな。

 

 

「よし、入れた・・・。うん。警備システムのハッキングには時間がかかるけど、とりあえず監視カメラは全部無効化できたよ。」

「わかった他のやつにも伝えてくれ。」

「了解。」

 

 

監視カメラが無効化されたならば動きやすい。ひとまず警備室は制圧したので廊下に戻り、部屋を一つ一つ調べては中を制圧していくことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~シルバーside~

 

 

「ふう・・・これで5人目・・・。」

 

 

未知の反対側の木の上からの狙撃は足場が不安定な分、いろいろ気を使う。先程スネークが警備室を制圧したとのことで、とりあえず外で単独行動している警備兵は片っ端から撃ち抜いていた。それにしても数が多い。

 

リロードして弾を補充する。その間に47が侵入できそうなところを探っている。ココからは見えないがスネークは既に屋内に入っているようだ。どうやって援護するか考えていると姉さんから通信が入った。

 

 

「こちらブルー。北から車両が来るわ。」

「車種は。」

「えっと・・・黒のセダン。運転席と助手席に一人ずつ。・・・今通過した。後部座席には誰も乗ってなかったわ。」

「シルバー、狙えるか。ターゲットの家の前で止まったなら、止まって降りてきたところを撃て。」

「了解。」

「すばやくやらねばもう一方に叫ばれるぞ。」

 

 

スコープを覗いて準備する。車は・・・ターゲットの家の前で止まった。助手席のドアが空いて一人が降りてくるが、運転席側の男が降りてこない。そのまま再び車は走り出した。どうやら家のガレージに入れるつもりのようだ。車がガレージに入っていったのを確認して、先に降りたほうを狙撃する。

 

バシュン

 

弾は正確に頭部を直撃。そのまま道端に倒れ込んだ。すぐに脇から47が出てきて死体を茂みに隠した。そうしているうちにガレージの明かりが消え、脇の扉から男が一人出てきた。すぐさま狙いを定め、そのまま撃つ。

 

バシュン

 

こちらも側頭部に命中。そのまま扉横の茂みに隠れるように倒れ込んだ。

 

 

「ふむ。シルバーも狙撃の腕を上げたな。」

「そうね。ハナダシティのときは当たるかどうか不安とか言ってたのにねえ。」

「言ったっけ?そんなこと。」

「言ってなかったっけ?WA2000のマガジン8つも消費してたからてっきり・・・。」

「オイオイ、狙撃に弾60発以上使ったのか?」

「違う!練習してたんだ!ターゲットは一発で仕留めた!」

「落ち着けシルバー。今は目の前の任務に集中しろ。」

「うっ・・・すまない。」

 

 

気を取り直して改めて索敵を再開する。狙撃の腕が未熟だったあの時、殺すことをためらっていたあの時、今の自分は・・・もう違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~47side~

 

 

「よし、警備システムのハッキングに成功したよ。これで扉を開けても窓を割っても大丈夫だ。」

「ナイスだオタコン。」

「よし。シルバー、ドナルド・カーキンスを発見したら最優先で狙え。窓の向こうでも射殺して構わない。」

「了解。」

 

 

私は手近な扉に張り付いて中の様子をうかがう。扉は大部分がガラス張りであり、レースカーテンが掛かっていたが隙間から中を覗くことは十分に可能だった。中に誰も居ないことを確認し、慎重に鍵をロックピックでこじ開ける。扉を少しだけ開けて中の様子を探り、誰も居ないことを確認するとすばやく内部に侵入した。

 

まずは室内の索敵だ。隣の部屋に人の気配を感じ、まずはそこから調べる。隣の部屋では警備兵のひとりが休憩中なのかテレビをつけっぱなしにしてうたた寝をしていた。私は背後からゆっくりと近づき、首を折った。腕組みをさせ、そのまま寝かせておく。あと何人兵が居るのかわからないが、この調子で静かに仕事を終わらせていこう。私は次の部屋に向かった。

 

 

「よう。」

「スネークか。下はどうだ。」

「地下室の制圧は終わった。隠し扉とかがなければだけどな。」

「そうか。では2階を頼む。おそらくドナルド・カーキンスも居るだろう。」

「わかった。」

 

 

途中、下から上がってきたスネークと会い、そのまま2階へ上がっていった。私は引き続き1階部分を探索する。1階はそれなりに広く。会議室のような部屋もあった。私は何気なく会議室のテーブルの上に広げっぱなしにあった書類を確認する。

 

 

「これは・・・。」

『47。その資料をもっとよく見せて頂戴。』

「ああ。これはどうやらカテゴリ計画の一部のようだな。」

『これは・・・、この世界に配備してあるオーディンの発射手順書じゃないの。』

「うん?そのオーディンってのはこの間硫黄島で使ってたやつか?」

「そうだ。もっともあっちは同型のトールだったがな。」

『この手順書と適切な通信機さえあればこの家からでもオーディンを自由に発射できるわ。回収しておいて頂戴。』

「わかった。」

「通信機の方も壊しておいたほうがいいだろうな。」

『そうね。通信機の破壊も頼むわ。』

「だが俺が地下を見た限りそんなような装置は無かったな。」

「おそらくドナルド・カーキンスの私室かセーフルームだろう。ことを急いだほうがいい。この手順書が複製されてないとも限らない。」

『そうね。引き続き制圧を続行して頂戴。』

「了解。」

「わかった・・・うぉ!?」

ドタン!

「今の音は何だ。スネーク。・・・スネーク?応答しろ。」

 

 

スネークからの応答が突如として途絶えた。私は急いで2階へ向かった。途切れた直後の物音は2階の道路側の部屋だったはず・・・。廊下にはスネークが片付けたと思われる死体が転がっていた。奥に開けっ放しになっている扉を発見。先程の物音はその部屋からのようだ。

 

 

「シルバー、聞こえるか。」

「聞こえてる。」

「スネークとの通信が途絶えた。私の位置は把握できているか。」

「大丈夫。こちらからもよく見えるけど、スネークはその部屋に入った直後に見失ってしまったよ。」

「そうか。用心していくが万が一のときはブルーと二人でココへ来い。」

「了解。」

 

 

私は慎重に部屋の中を覗く。そのままゆっくりと中へ入った。部屋はそれなりの大きさがあり、一階のリビングの真上に当たる部分だ。中ほどまで進んだ後、奥の窓際に人が立っているのを見つけた。私はTAC-4をそいつに向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「また会いましたね。47。」

「!!お前は・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

そこに居たのはメイド服姿の女性。その顔は覚えている。あの時、紅魔館に居たメイド。エージェント50だ。

 

 

「お久しぶりです。何故ココにという顔をしていますね。」

「・・・。」

「私はあなたと同じクローンです。いくらでも量産が効くのですよ。ちなみに私は50番ではなく51番です。」

「何故この家にいる。」

「何故?当たり前です。あの時、紅魔館に最初に派遣されたときの指令責任者はドナルド・カーキンス殿ですから。」

「子飼いの兵ということか・・・。」

「そういうことです。ああ。ちなみにスネークさんには少々眠っていただいています。なに、30分もすれば起きますよ。」

 

 

彼女の足元にはスネークが横たわっていた。目立った外傷もなさそうなのでおそらく気絶させられているのだろう。彼女はゆっくりとこちらへ歩みだした。

 

 

「今日ココに来た理由は唯一つ。あなたにお礼がしたかったのです。」

「お礼?」

「ええ・・・。私を・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなふうにしてくれたお礼をね!」

 

“エアハンマー”

ドォン!

 

「くっ!」

 

 

私は既の所で避けた。背後にあった木箱が吹き飛び大きな音がしたが、特に警報も増援の気配もなかった。どうやら建物内の警備兵は全て片付けられていたようだ。

 

 

『47。その生産ロット、エージェント50の情報を今本部に問い合わせているわ。詳細がわかるまで耐えていて頂戴。』

「そんなに長くは持たないかもしれない。なるべく早めに頼む。シルバー。」

「わかってるよ。援護位置を変える。ココでは狙えなさすぎる。」

「ブルーもだ。こっちへ来い。」

「わかったわ!電話回線の切断はニドちゃんがやってくれたから警察は来ないわよ!」

「上出来だ。」

 

 

何回かハルケギニアの魔法を放ってきたが、それらを避けて壁に隠れた。壁からTAC-4だけを出して制圧射撃を行う。彼女もそれをみて近くの物陰に隠れ、AKSで応戦してくる。魔法戦は一瞬のうちに銃撃戦に変わった。

 

途中スリープクラウドなどを放ってきたが、窓ガラスを銃撃して外気を入れることで対処した。いくつかマガジンを消費し、弾薬も残りわずかとなったその時、彼女が一気に間合いを詰めてきた。どうやらあっちも弾薬が心もとないようだ。お互いに最後のマガジンを撃ち切るとそのまま格闘戦になった。

 

 

「あなたが集めてきた異世界の技術が私に適応されてからというもの、私はずっと訓練続きだった!初めはそれもいいかと思えたけど、段々あなたの活躍が妬ましく思えてきた!」

「・・・。」

「あなたはあんなに活躍しているのに、私はいつまでこうしていれば良いのか。自問自答の日々が続いた。そんな時声をかけてくださったのはカーキンス殿だった。」

『47。彼女に関する情報が手に入ったわ。彼女は元々情報収集用。戦闘用じゃないわ。つまり・・・。』

「カーキンス殿は私に任務をくれた!訓練しか能のなかった私に!情報を送ればカーキンス殿は喜んでくださった!私はそんな生活が好きだった!だが、そんな時そのささやかとも思える生活をぶち壊しに来たのがお前だった!お前が私の生活を、やりがいを、生きがいを奪ったんだ!」

 

 

前のロットの記憶まで受け継いでいるのか。なんとも身勝手な理論ではある気がするし、彼女の生活や生きがいなど知ったことではないが、彼女が何故訓練ばかりだったのかは何となく分かる。彼女の攻撃には決定打が足りていない。やはり戦闘用ではないのが目に見えてわかる。

 

 

「だから私はここでお前を倒し、ICAのメインエージェントになる!お前より優れていることを証明してみせる!」

「証明するのは構わないが自分の位置くらい把握するべきだと思うがな。」ドガッ

「くっ!何っ!?」

 

 

 

「カメちゃん!ハイドロカノン!」

ガメー!

ボォォン!

「ぶあっ!」

「今だ。シルバー。」

「了解!」

 

ダァーン!

 

 

自分語りに専念した結果、彼女は私との立ち位置が完全に入れ替わっていたことに気が付いていなかった。私は蹴りで壁際に押し込む。同時に通りに面した道路からブルーのカメックスの水の大砲、“ハイドロカノン”を食らった。彼女は外壁ごと吹き飛ばされ、何とか体制を立て直し立ち上がった瞬間、家の正面に陣地転換したシルバーの放った弾丸が脳天を貫いた。あの状況下で正確にヘッドショットを狙えるのは成長の証だろう。撃たれた彼女はそのままゆっくりと膝を付き、前に倒れて動かなくなった。

 

 

「・・・いっててて。何が・・・。何だこりゃ?」

「スネーク。気が付いたか。」

「そりゃああんだけ近くでドンパチやってりゃな。朦朧とした意識の中でお前らの会話が聞こえてきたさ。何言ってるのかはわからんかったがな。」

「そうか。ともかくコレで家の中も制圧した。後はこの騒ぎで慌てて逃げ込んだであろうセーフルームの中のターゲットのみだ。」

「ふむ。じゃあさっさと片付けてしまおう。」

 

 

セーフルームは今までの大部屋の奥の部屋にあった。頑丈な金庫のような扉が本棚の裏に隠されていたようだ。

 

 

「待っていろ。今オタコンが開ける。」

「ふむ、どれどれ・・・ああ。そんなに難しい鍵じゃない。すぐに開けられるよ。」

 

 

スネークが持ってきた端末を扉の電子錠に接続し、そのままハッキングを試みる。数分後、電子錠は解除され、扉が開き始めた。ブルーとシルバーも合流している。ゆっくりと開かれた扉の向こうにはターゲットが居た。奇怪なスーツに身を包みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、エージェント47とその後一行。はじめまして、だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずいよスネーク!アレは特殊耐爆スーツ、通称“ジャガーノート”だ!」

「ちっ!」パァンパァンパァン!

キンキンキンッ

「くっそ!M9じゃ歯がたたないぞ!」

「カメちゃん!メガトンパンチ!」

ガメー!ドシーン!

グググ

「嘘でしょ!?カメちゃんのメガトンパンチを片手で受け止めた!?」

「ならこれならどうだ!いけ!ドサイドン!メガホーンだ!」

ガー!ガガガガッ!

ガキン!

「おいおい!?メガホーンも受け止めるのか!?」

「総員、一旦引け。体制を立て直すぞ。」

「「りょ、了解!」」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『ドナルド・カーキンスは最後の切り札を出してきたわね。あの耐爆スーツはICA技術部が作った特別製よ。あなた達の装備では太刀打ち出来ないわね。今応援を送るから持ちこたえて頂戴。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

セーフルームから出てきたドナルド・カーキンスは全身を耐爆スーツで覆い、手にはPKPを持って完全武装状態で出てきた。今手持ちの武器だとこのアーマーを貫くのは至難の業だろう。

 

 

「フハハハ!さあおとなしくするんだ!お前らに妻と娘を殺された私にはもう何も残っていない!貴様らを殺して私も死ぬのだ!」

 

 

結果的に死んでくれるのならそれはそれで暗殺成功となるので一安心(?)だが、一方的にやられるのは癪だ。私達は各々牽制しつつ外へ出た。

 

 

「はっはっは!どこへ行こうとゆうのかね!」

「あいつ、どこぞの大佐みたいなセリフ言ってるわよ?!」

「幸い動きは鈍いから逃げようと思えば逃げられるけど・・・。」

「任務は失敗になるなそれだと。」

「バーンウッドによれば増援が来るらしい。それまで牽制しつつ足止めだ。」

「どうするのよ?」

「お前たち二人のポケモンとやらで何とかならないのか?」

「やっては見るけど・・・。」

 

 

ブルーはカメックスとニドクインを、シルバーはオーダイルとドサイドンで家の前の空き地で応戦する。私とスネークもTAC-4とシルバーのJaeger7を使って応戦する。しかしそれらのどの攻撃も足止め以外には役に立っておらず、家の前に留めるのが精一杯の状況である。

 

 

「どうなってんのよあのアーマー!ハイドロカノンもはかいこうせんすら効かないじゃないの!」

「こっちも駄目だ!つのドリルを受け止めさせて足止めするくらいしかできてない!」

「この狙撃銃では威力が足りんな。M82でもあればわからんが。」

「むむむ・・・。」

「はーははは!無駄な足掻きは止めておとなしく私に殺されるがいい!!」

 

 

足止めされている側が勝ち誇っているのはなんとも不思議な光景ではあるが、現状何も打つ手が無いのは事実だ。こんなことなら爆発物も持ってくればよかった。もっとも元々耐爆発物用のアーマーなので効かない確率のほうが高いが。

 

打開策を模索しているとどこからか特徴的な金属音が聞こえてきた。

 

キュラキュラキュラ…

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『おまたせ。本部のデータを解析した結果。これなら、あの装甲を貫くことができるわ。あとはこちらでやるからあなた達は下がって頂戴。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

現れたのはどこから持ってきたのか、M1A2エイブラムスだ。それを見つけたターゲットも驚愕を隠せず、見るからに動揺している。

 

 

「全員下がれ。巻き込まれるぞ。」

「カメちゃん、ニドちゃん、戻って!」バシューン

「オーダイル、ドサイドン、戻れ!」バシューン

「あんなもんまで持ち出すのかICAは・・・。」

 

 

私は全員に攻撃を中止させ、即座に後方に退避させた。全員が退避し終えるとエイブラムスは何の前触れもなく、その巨砲を轟かせた。

 

 

ドォォン!

ドゴシャァ

 

 

いくら大質量の大型生物の攻撃を防ぎきったとは言え、流石に120mmAPFSDS弾は防ぎきれなかったようだ。ターゲットの体は弾の反動でその重そうな巨体が宙を舞い、数m先へ落下した。砲弾は貫通こそしているものの爆散などはせず、きれいにターゲットの胸の辺りに穴が空いていた。おそらく中身はぐちゃぐちゃだろうが、その耐爆スーツは原型を保っているから驚きだ。

 

 

「ターゲットは死んだか。エイブラムスの搭乗員、聞こえてるな。ついでだ。眼の前の家の2階部分も吹き飛ばしておいてくれ。」

 

 

エイブラムスは榴弾を装填し、そのまま砲塔を家に向け2階部分へ向けて再度発砲。2階の大部分は吹き飛んだ。戻って通信機器を破壊する手間も省けたな。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『ターゲットとその周辺の警備兵、及びエージェント50の死亡を確認。それと2階にあった通信機の破壊も確認。お疲れ様。裏切り者の始末が完了したわ。撤退して頂戴。』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「こんなのを使うならはじめから使えばよかったんじゃないの?」

「結局ターゲットにとどめを刺したのも戦車砲だし・・・。」

「俺らは必要だったのか?」

「私に聞くな。バーンウッドに聞け。」

『エイブラムスは最終手段よ。本当はあなた達に秘密裏に事を済ませてほしかったの。でもあんなものまで用意しているとは流石に想定外よ。』

 

ファンファンファン…

 

「なるほど。だから遠くからサイレンの音が聞こえてくるわけか。」

「げっ!流石に警察とドンパチするのは勘弁して頂戴!」

「同感だね。逃げようか。」

「それが良いだろうな。この戦車はどうするんだ?」

『それはそのまま放置でいいわ。搭乗員もすぐに放棄して脱出させる。元々、フォードフッドから盗んできたものだからね。』

「サラッととんでもないことしてるわね・・・。」

「っと、姉さん。サイレンの明かりが見え始めた。そろそろ行こう。」

「では総員。撤退だ。」

 

 

私達はターゲットの家の裏手にあるミシシッピ川に係留されていたモーターボートに乗って脱出した。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

~3日後~

 

 

「結局の所、プロヴィデンスの居場所はわかったのかい?」

『いいえ。最後に若干騒がしくなったのが原因なのか、居場所に関しての情報は全てなくなっていたわ。別働隊もプロヴィデンスの下部組織を壊滅させることしかできなかったしね。』

「それは残念だな。まあこっちも似たようなもんさ。愛国者達のブローカーの一部が判明したからそこを潰しにかかろうと思うよ。」

『あなた達には感謝しているわ。おかげで我々の組織の膿を出すことに成功した。報酬はいつもの口座に送金しておくわね。』

「ありがたい。助かるよ。最近じゃ反メタルギアで募金を集めることもままならなくなってきてるからね。」

『エメリッヒ博士。今後も良い協力関係を気づいていきたいですわね。』

「あはは・・・。それはどうも。」

『では私はこれにて。またお会いしましょう。』

「ああ。じゃあ。」

 

 

「ふう・・・。」

「オタコン。例の女性は帰ったのか?」

「ああ。彼女はどうもやりづらいね。まあしばらくは顔を合わせないとは思うけど。」

「で、お前は今何を?」

「ん?ああ、この前デンバーの秘密基地で取得した情報の一部をもらったんだ。我々に関係がありそうな部分だけを抜粋してね。」

「ほほう。で、なにかわかったのか?」

「まだなんとも。今色々調べて・・・おや?」

「どうした?」

「これは僕たち向けじゃない情報が混じってるね。えっと・・・“実験体の再生産について”・・・ってこれ!」

「・・・あの組織もこれから大変だな。」

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

・「石器時代に戻せ」 +1000 『セキュリティをハッキングする。』

・「仲間たち」    +3000 『警備兵を全員制圧する。47の殺害数:3人以下。』

・「ラストダンス」  +3000 『エージェント50と交戦する。』

・「終幕の鐘」    +1000 『戦車の主砲でターゲットを殺害する。』

 

 

 

 

 




これでほぼ回収し終えたかな・・・?

外伝もおそらくこれで終了です。次回を書くとしたら別の小説扱いになりそう。
別アプローチの方は今後時間のあるときにこちらに統合する予定です。

なんか物語が集結してからもグダグダと長くなってしまいましたが、コレにて完結でございます。今までご愛読ありがとうございました。

感想や誤字報告はいつでも受け付けておりますwサラッと読み返しただけでも結構誤字ってるのが発見できたのでw


それではまた会いましょう。(BGM:We'll Meet Again)皆様良い暗殺ライフを!

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