Fateのはなし   作:カキツバタ

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とりあえずアルトリア編です。



カルデア小話~セイバーの場合 その1~

そこは、色とりどりの花が咲き乱れるなだらかな平原だった。

 

昼は春の日差しと夏の匂いに満たされ、夜は秋の空気と冬の星空に覆われる。

 

地には花々と虫、森には水と緑と獣、そして水場には見目麗しい妖精達。

 

人足未踏の土地にして、永遠の禁足地たる果ての島。

 

その名を────全て遠き理想郷(アヴァロン)

 

 

 

その地に、一人の少女がいた。

 

 

草原にて一人、静かにその瞳を閉じたまま佇むその姿は、本当に何処にでもいるような少女のように思える。

 

しかし、彼女は今も耐え続けているのだ。

 

いつか、彼女の幻想が消え行く刻を────

 

 

 

 

 

 

────私は()()()を待ち続ける。

 

あれからどれほど経ったのかすら定かではない。

 

そんな悠久の時を一人。

 

あぁ、孤独というものはこれほどまでに心寂しいものだっただろうか。

 

一人でいると、どうしても嘗ての日々を思い出してしまう

 

────それを手にする前に、きちんと考えたほうがいい

それを手にしたが最後、君は人間ではなくなるよ

 

皆が幸せであってほしいと、そう願った。誰もが笑い合える世界に憧れた。何より己の誇りの為に、その剣を抜いた。

 

────王には人の心がわからない

 

理想の王で在ろうとした結果、いつの間にか多くを失ってしまった。己自身を恨み、後悔した。そして、世界と契約を結んだ。

 

────令呪をもって命ずる。

セイバー、聖杯を破壊しろ!

 

互いに理解することが出来なかった。その結果、アイリスフィールを失い、怒りと恨みをもってしてようやく手に入る筈の聖杯を我が聖剣にて斬ったのだ。

 

────いらない。そんな事は、望めない……そうだ。やりなおしなんか、できない。死者は蘇らない。起きた事は戻せない。そんなおかしな望みなんて、持てない

 

まるで、悪い夢から醒めるようだった。忘れもしないあの日々。彼が私に、答えを教えてくれたのだ。

 

シロウ───────貴方を、愛している

 

最後に、そう伝えられた。私のマスター。私の鞘。私を愛してくれた人。私をただのアルトリアにしてくれた人。私が愛する人。

 

彼は今、何処で何をしているのだろうか。いや、知っている。彼は今も私を追い続けている。

 

────ならば、私は彼を何時までも待ち続けよう

 

 

 

ふと、一つの思い出が蘇る。

 

それは遠い遠い昔の話。

 

嘗て剣となることを誓った、もう一人の少年と

 

世界を守る戦いの物語

 

辛く、悲しく、大変な戦いだった。

 

しかし、そこには確かに────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────問おう、貴方が私のマスターか」

 

私は目の前の少年に問う。

 

「────」

 

……しかし、少年は此方を驚いた様子で見詰めたまま動かない。

 

「……マスター?」

 

再び少年に声を掛けると、少年は我に返ったようで

 

「あぁいや、ごめん。ちょっと見とれてた。……よしっ!俺は藤丸立香。宜しく頼む、アーサー王」

 

見とれたというのは気になるが、誠実そうなマスターだ。彼ならば安心して剣を預けられるだろう。しかし、一つ……

 

「────アルトリア」

 

「え?」

 

「サーヴァント・セイバー。真名はアルトリア・ペンドラゴンです」

 

すると、マスターは納得した様子で

 

「そっか、アーサーっていうのは男性名だもんな。アルトリア────うん、こっちの方が君に合ってる」

 

「ありがとうございます。アーサー王という名こそ広まっていますが、私にとってはこちらの名の方が相応しい。名前というものは、とても大切な意味を持ちますから。では私もリツカ、と。えぇ、この響きの方が私には好ましい」

 

ふと、彼の姿が思い浮かぶ

 

「それでは────」

 

私が手をリツカの前に出すと、リツカは呆けた顔をして

 

「?どうしたんだ、アルトリア?」

 

「?こういう時は握手をするものなのではないのですか?」

 

む?まさか、シロウの常識は間違っていたのだろうか?などと少し不安になる。

 

「あぁ、そういうことか。ごめん。これまで出会ったサーヴァントには自分から握手を求めてたし、生前の感覚が抜けないのかサーヴァント達の方も挨拶はしても握手を求めてくることなんて無かったから珍しくて」

 

「そうでしょうね。特に生前も戦士であった英霊などは交わすものなど、握手ではなく拳や剣という感覚でしょうから」

 

ランサーなどは特にそんな感じだ。彼は拳か槍で語り合うタイプだろう

 

「でも、アルトリアも騎士王だろ?騎士とはいえ戦士の一人なのは変わらないじゃないか」

 

「えぇ、騎士としての誇りこそあれど私達の原点は戦士のそれでしょう。ですが私は騎士であり王でもあります。生前、他国との良好な関係を築く際によく交わしていましたから」

 

握手を交わした経験は当然ある。しかし、今の時代と比べると、その回数や必要性が余り無かったというのもまた事実である

 

「へー、意外……って訳ではないけど納得したよ」

 

「……それだけではないですが」

 

「え?」

 

「いえ、なんでもありません。生前のことを少々思い出していただけです」

 

つい、笑みが零れる

 

「じゃあ改めて────これから宜しく、アルトリア」

 

リツカと固い握手を交わす。

 

「えぇ、此処に契約は完了した────これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある」

 

「……カッコいいな、その台詞。俺も言ってみた────いや、無理だな。俺に出来ることなんて後ろで指示出したり、サポートしたりする位だし」

 

と、力なく笑うリツカ。その瞳を真っ直ぐに見つめて口を開く

 

「いえ、それで十分ですよ。それが貴方の役割なのですから。私達サーヴァントにとってマスターは大切な存在ですから。サーヴァントの隣どころか前に立とうとするマスターなど一人で充分です」

 

そうでなくては此方の心臓がもたない。特にカルデアの────人類最後のマスターがそうではサーヴァントとしても辛いものがあるだろう

 

「そんな奴がいるもんなのか……俺には出来ない芸当だな」

 

そんなリツカに私は微笑む

 

「えぇ、ですから先程私のことを戦士だと、一人の剣と認めてくれて嬉しかった。以前のマスターなんて、私をずっと女の子扱いしていましたから」

 

私を女の子扱いしたのは、シロウか私をからかう時のケイ兄さん位のものだった。

 

「いやーそれに関してはな……カルデアには男勝りな女性も少なくないし……アルトリアの場合、特異点Fの時に散々猛威を振るわれたものだから…」

 

男勝りの女性……は置いといて、特異点Fの時?

 

「む、それは一体……?」

 

「やっぱり別側面(オルタナティブ)の方だよな。あのアルトリア。……いや、特異点F───冬木市にレイシフトしてしまった時に、そこでアルトリアと戦ったんだよ。けどその時のアルトリアは、今目の前にいるアルトリアとは雰囲気も見た目も違ったから」

 

思い浮かぶのは嘗ての並行世界にて、シロウを守りきれなかった私が辿った道。聖杯の泥に呑まれた姿。しかしどうにもその時の記録が薄い。「今の私」とは別の「私」にその記録が存在するのだろうか?

 

「……なるほど、黒化した私ですか。どうやら彼女の方もカルデアでは私とは別霊基扱いになるようですね。すみません、リツカ。『今の私』にはその時のことは記録されていませんが、『私』がリツカ達を危険に晒したのも事実。この場で『私』に替わって謝罪します」

 

私が頭を下げると、リツカは慌てた様子で

 

「いや、そんな!あの時のアルトリアには何か理由がありそうだったし、それにマシュが俺達を守ってくれたから」

 

「えぇ、彼女もまた私ですから理由なく襲うなどしない筈ですが……それより、マシュというのは?」

 

「俺の相棒だ。今はメディカルチェックをしてる……っと、噂をすればかな?」

 

すると、近づいていた足音が止まり、ドアが開いた。そこに立っていたのは薄紫の髪が片目を隠す、まだどこかあどけなさの残る少女だった。

 

────その少女を見たとたん、私の中に「懐しさ」が芽生えた

 

「先輩!申し訳ありません、立ち会うことが出来ず……召喚は成功したのですか?」

 

「あぁ。大成功って奴だ!」

 

そういってマシュにピースサインを見せるリツカ

 

「それは良かったです!…そちらの方が?」

 

マシュが此方へ視線を移す

 

「サーヴァント・セイバー。アルトリア・ペンドラゴンです」

 

「アルトリア……って先輩!もしかしてあの『アーサー王物語』のアーサー王ですか!?特異点Fでお会いした時とは雰囲気が違いますが……」

 

「えぇ、その時の私は別側面の存在です。貴女がリツカを守ったと聞いています。ありがとう、マシュ」

 

私が頭を下げると、リツカと同じようにマシュも慌てた様子で

 

「い、いえ!私は先輩のデミ・サーヴァントとして先輩を守っただけですから!……それに、先輩が支えてくれたから私の(こころ)は折れなかったのです」

 

マシュの言葉にはリツカに対する強い信頼が込められていた。しかし、私の聖剣の一撃を耐え抜いた守り、そしてこの感覚────

 

「────リツカ、マシュのデミ・サーヴァントとしての姿を見せて貰っても良いでしょうか?」

 

「ん?いいよ。丁度シミュレーションルームを案内するところだったしマシュも大丈夫?」

 

「はい!メディカルチェックも万全でしたので」

 

「ありがとうございます。では────」

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ!!」

 

眼前の敵を切り伏せる。持ち前の直感と魔力放出を駆使しながら回避、攻撃を繰り返す。

 

「はぁ────!!」

 

僅かに討ちもらした敵はマシュが大きな盾を器用に振り回して撃破する。隙のないコンビネーションだった。

 

 

「────お疲れ様、二人とも調子は良さそうだね」

 

シミュレーションルームでの戦闘を終えてリツカが二人へ労いの言葉を掛ける

 

「はい!何故だか今日はとてもやる気に満ち溢れています!アルトリアさんがいてくれたからでしょうか?」

 

「えぇ、私も腕は鈍っていないようです」

 

「そっか……ところでアルトリア、マシュのデミ・サーヴァントとしての姿を見たいって言ってたけど、実際見てみてどうなの?」

 

リツカの問いに私は頷く。あの盾、デミ・サーヴァント、懐しさ。彼女の力は間違いなく────

 

「えぇ、私の予想が確信に変わりました」

 

「詳しくは聞かないけど、お役に立てて良かったよ」

 

そう微笑むリツカに感謝の言葉を述べ、視線をマシュへ向ける

 

「────マシュ」

 

「は、はい!」

 

技術面でも、精神面でもまだ未熟な少女。しかし、彼女には彼の力がある。きっとリツカを護り、支えてくれる筈だ

 

「貴女は良いサーヴァントになる。私が保証します。────だから、何よりも強いこころを持ちなさい。誰かを守りたいという想いに、きっとその力は応えてくれる筈です」

 

────そうでしょう?■■■■■■卿、世界で最も偉大な騎士よ

 




隣に立ったり、前に立つマスター?そんなの士郎以外………いるなぁ

Fについては謎多すぎて、変にアルトリアが覚えていてもただの自分の特異点F考察になっちゃうかなってことで記録されて無いことにしました
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