真剣で京に恋しなさい!   作:やさぐれパパ

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第二話 「俺に御裾分けをする事で償え!!」

 

 

 

「くああぁ~~~あ」

 

「ふあぁあ~~~あ」

 

 

何時も通り河原で百代、一子、卓也と合流してキャップ以外の風間ファミリー勢ぞろいしていた。

そして、朝から何度目かの欠伸を漏らす大和と、暇を持て余している百代の欠伸がハモル。

 

 

「まったく大和は朝からだらしないわねぇ」

 

「お前の姉も欠伸してんだろーがっ」

 

 

大和のでこぴんが一子の額を捉える

 

 

「いた~~いっ!お姉様は眠くてしているわけじゃないから良いのよ!」

 

「そうだぞ弟、私は挑戦者がいなくて退屈しているだけだ」

 

「何その理屈…だったら俺にだって欠伸する正当な理由があるぞ」

 

「理由って何よ?」

 

「ありとあらゆる防御策を夜中まで講じたにも拘らず、それをあっさりと突破され部屋に進入されて片方は色気片方は寒気を感じながら毎日毎日安眠を妨害されているんだ。それが正当な理由にならない訳がない」

 

「良くわからないが、それは欠伸をする理由になっていない気がするが?」

 

「マルギッテと言う名の番犬がいるクリスにはわからねぇよ」

 

『お子様なクリ吉はさっさと寝ちまって夜中に行われている愛の攻防戦に気付きもしねぇ』

 

「むぅ…何か凄く馬鹿にされた気がするぞ」

 

「…気のせいだよ」

 

「そうそう気のせいだってクリ吉」

 

気のせいで済まそうとする武と京の肩を百代が掴む。

 

「ま~た京と武か、まったくしょうがないなぁお前達は」

 

 

百代の声に二人はそっぽを向いて誤魔化す。

 

 

「いやぁなんの事かまったく記憶に御座いません」

 

「…そう言えば武が朝、モモ先輩の裸なんて大した事ないって言ってたよ」

 

「おぉいっ京!ここでチクるのかよ!!しかも色々と言葉が足りない上に捏造までして!!」

 

「はっはー朝から武は面白い事を言ってるんだな」

 

 

持っていた鞄を大和に投げ渡して不敵に笑う百代から赤い闘気が立ち上る。

 

 

「いやいやいやいや、誤解どころか六階くらいの誤解ですって!!」

 

「武、それ意味わかんないよ」

 

「人の命が危ない時に漫画読みながら冷静に突っ込み入れてんじゃねぇぞモロッ!」

 

「準備は良いか?最近退屈してたからな…今日はちょっと強めで行くぞっ!」

 

「最早ただの憂さ晴らしじゃないっす―」

 

 

武の言葉を遮って百代の拳が放たれる。

 

 

「どわわっ!?」

 

 

紙一重で頭を捻って百代の拳を回避した武の横を、ゴオォッと言う殺人的な音と風圧が通りすぎて、一気に武の額に冷たい汗が滲み出る。

 

 

「おお~良く避けた良く避けた。それじゃあどんどん強く速くしていくぞ」

 

「いや今の既に致死性をってぬおっ!?ちょっ、ひっぃ!!話をっ聞いてっのわわっ!?」

 

 

容赦の無い百代の連撃が武を襲う。

 

 

「そーらそらそらそらどこまで防げるかなっ!」

 

「いやっ!?ちょっと、本当にっぬがっ!?無理っっすっ!!」

 

 

徐々にその速度と威力が増していく中、百代の拳が武の体を捉え始める。

しかし、武はぎりぎりの所で急所に放たれた拳を防いでいる。

 

 

「こらー武!ちょっとは反撃してみなさいよ!」

 

「うるせぇっっと!ワン子っ!無茶っぐあっ!?ゲホッゲホッ!言うなっひぃ!?」

 

「ワン子の言う通りだぞ、もっと私を楽しませろ!」

 

「おことわりっすっ!ってぬがっ!?十分っ、楽しそうなっと!?笑顔じゃがはっ!!」

 

 

完全に百代のスピードについていけなくなった武は、その拳をすでに十数発も受けている。

しかし、普段百代に挑んでくる挑戦者が受けていればとっくに倒れているであろう連撃を受けてなお、武はダウンせずに居る。

その様子にクリスと由紀江は驚きの声を上げる。

 

 

「打たれ強いとは聞いていたがこれほどとは…」

 

「あのモモ先輩の拳をこれだけ受けて倒れないなんて凄いです」

 

『G並みのしぶとさだぜ』

 

「そこっ!!冷静にぐあっ!?感心してんな!ぬぐあっ!?」

 

 

一瞬気の逸れた武の視界から百代が消えた。

 

 

「ヤバっ!?」

 

 

下からの殺気に気づいた時には既に百代の拳は武の顎を正確に捉えていた。

 

 

「はぎゅらっ!!」

 

 

ふざけた悲鳴をあげながら綺麗な放物線を描いて飛んでいく武。

おお~飛んだ飛んだと皆が見守る中、地面に激突する寸前で体を捻りなんとか着地する。

 

 

「ほぉ…今のを食らって脳震盪すら起こさないとはやるなぁ武。また打たれ強くなったんじゃないのか?さっきの連撃もガクトくらいならとっくに気絶しているところだぞ」

 

 

百代が恐ろしい事を嬉々として語る姿に、当事者でないのに岳人は全身に寒気を感じてぶるりっと体を震わせる。

 

 

「そんな褒め言葉はいりませんごめんなさい!!」

 

「はっはっはっ最初からそうやって素直に謝れば許してやったものを」

 

 

その場に居た全員が謝っても絶対やったと思うが誰も声には出さない。

命は大事だからね。

 

 

「謝っても姉さんはやったでしょ」

 

 

命知らずが一名いた。

 

 

「なんだ弟 武にばかり構っていたからやきもちか?しょうがない奴め」

 

 

百代は大和の首をギチギチと絞めながらその豊満な胸を押し付ける。

それを見た京がすかさず腕をとって自分の胸を押し当てる。

 

 

「絞められてる大和も素敵!付き合って」

 

「いてててて!お友達で!」

 

「お゛~~~の゛~~~~れ゛~~~~」

 

 

武から地の底から響く様な呪詛が大和へと向けられる。

 

 

「ほ、ほら、武に殺されそうだから離れろ京、姉さんもそれ以上やるならもうお金は貸さないよ」

 

「「ちぇっ」」

 

 

舌打ちをして二人が離れた瞬間、武が京が触っていた大和の腕に飛びつく。

 

 

「ぐああっ!?てめぇ武離れろっ!!」

 

「うるせぇ!俺の愛する京の告白を無碍に断りやがって…その罪、京の温もりを俺に御裾分けをする事で償え!!」

 

 

その様子を見ていたクリスが、微かに頬を赤く染めたのに目敏く反応する京。

 

 

「・・・クリスもああいうのが好き?」

 

「いや、好きと言うかなぜだか二人がくっついているのを見るとキャーって感じになるのだが」

 

「クリス、それは正常な反応だよ…ククク」

 

「ああ、ついにクリスが京の影響を受け始めちゃったよ」

 

 

そんなやり取りの中、由紀江は先程からぼーっと武に視線を送っていた。

気付いた百代はすかさず由紀江の背後に回り込んでお尻を撫で回す。

 

 

「どうしたまゆまゆ、武をそんな熱い視線で見つめて」

 

「はわわわっ ち、違うんです…あ、あの武さんは何か武術をおやりになっているのですか?」

 

「そこが気になるとはさすが剣聖の娘だな。そうか、まゆまゆとクリはまだ武の事をよく知らないんだな」

 

 

百代の言葉にクリスも興味を示す。

 

 

「自分もそれは少し気になっていた。あの打たれ強さは普通では無い気がするのだが」

 

「ところがどっこい武は素人なのです」

 

「そうなんですか…」

 

「俄には信じ難いな」

 

 

京の答えに二人は驚きの声をあげる。

 

 

「打たれ強さは隔世遺伝らしいが親に聞いた話だから武も良くは知らないとさ。まぁ動きを見ればクリやまゆまゆなら素人だってわかるだろう?」

 

「確かにそうだが…」

 

「ただ、武はちょっと特殊でな。これも隔世遺伝によるものなのかはわからんが…」

 

「特殊?」

 

 

クリスと由紀江は揃って首をかしげる。

 

 

「そうそうあれは特殊過ぎよね。最初見たときは驚いたわ」

 

「なんだ犬、知っているならもったいぶらずに教えろ」

 

「・・・ワン子」

 

「な、何でもない何でもない…ぶるぶるぶる」

 

 

京の射る様な視線に、一子は慌てて誤魔化しながら小さくなって震える。

 

 

「そっか、クリスとまゆっちはまだ見た事ないよね」

 

「って言っても俺様達も見たのは今までで四回か?最後に見たのは何時だっけか」

 

「二年前の川神院の七夕祭りの時じゃなかったっけ?」

 

「おお~懐かしいな…あの時は初めて見たじじぃも驚いていたな」

 

 

依然じゃれあっている武と大和の方を見ながら懐かしむ風間ファミリーの面々。

当然話についていけないクリスは頬を膨らませて拗ね、松風が毒をはく。

 

 

「むぅ何だか自分達だけ仲間外れで感じ悪いぞ」

 

『そうだそうだ!たけ坊の秘密なんてどうせ大したもんじゃないんだし教えてくれたって良いじゃないかよYO』

 

「言い過ぎですよ松風…で、でも私も気になります」

 

「まぁそのうち見ることもあるだろう。なぁ京」

 

「・・・しょうもない」

 

 

百代の悪戯な笑みと京の呆れた顔に、クリスの由紀江の頭の上には?が浮かんでいた。

 

 

 




どうもやさぐれパパです。
今回と次回でくらいまで、紹介話って事でやっていこうと思ってます。
京分が少なくてすいません。
話が進めばもっと京だらけになるはず!なると良いななるように頑張ろう。

ではまた次回で。

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