子供の頃から好きだったからくりサーカスのアニメ見て超幸せ
「ええ。次々と占領していた海域や、信頼していた仲間が倒され失ったりするんだもの。司令部も初めは海域を失うのは、私たちに慢心していたからだと言っていたわ。けど、立て続けに撤退することになると司令部も異様なことに気付いたのでしょうね」
「司令部は俺の噂の件について知っていたのか?」
「いいえ、知らなかったみたいよ。ただ、三か所目の海域から撤退せざるを得なくなった時には貴方の事を知ったみたい」
「そうか」
一つ大きなため息をつく健吾。
「何か所目かの海域に司令部のお墨付きの部隊を送り込んでも、歯が立たなかった時の司令部どもの慌てようは見ていて痛快だったらしいわよ!私も見たかったな」
司令部の慌て様を想像して面白かったのか空母棲姫がからからと笑う。
「空母棲姫は司令部の事が気に入らないのか?」
「気に入ってる奴なんていないわよ。前線に出てる現場の声も聞かないもの。あいつらが言うのは机上の理論だけ、その時の最善を尽くしても文句を言ってくるだけよ」
空母棲姫が徳利をぐい吞みに移し勢いよくかきこむ。
「その頃からかしら司令部は貴方の事を鬼神と名付けた。癪だけどあいつ等にしてはいい名付けをしたものだと思ったわ。鬼神にあったら直ぐに司令部に連絡し、応援の要請を行い、応援が来るまで何としてでも海域を死守する事を厳とするなんて各海域に御触れが回ったわ」
「事実、私たちも出撃するたびに鬼神に出会いやしないか気が気でなかったわ。破竹の勢いで新たな海域を奪取する鬼神、鬼神を見た日が命日になるなんて噂も広まって恐慌状態に陥った部隊も多かったわ」
空母棲姫が月を見上げ過去を振り返る。
「そういえば防空棲姫ちゃんや戦艦棲姫ちゃんらも鬼神に会いたいって言ってたわよ?」
思わぬビッグネームが飛び出し咽る健吾。
「防空棲姫や戦艦棲姫らだと!?いや待て・・・戦艦棲姫らだと?」
健吾が空母棲姫を凝視する、先程聞いたのが己の聞き間違い、幻聴であってくれと空母棲姫に視線で懇願する。
「そうよー。他の子も皆貴方に会いたいって言ってたわ」
「バカな・・・何故?」
四肢をブルーシートに落とす。彼から哀愁漂う雰囲気を醸し出され、見かねたおっさんから肩を優しく叩かれる。
「なんでも鬼神と言われる程の手腕を持つ貴方の指揮の下で働きたいって言ってたわ。あの子たち顔を赤くさせて恍惚な表情してたんだけど・・・健吾なんかした?」
じとりと此方を見つめる空母棲姫。彼女の視線からは洗いざらい何をしたか早く吐けと視線が物語る。
健吾は堪ったものではなかった。何故会いもしないボスクラスに追求されなければいかないのか、何故防空棲姫らが恍惚な表情をするのか知りもしない。
「知らんがな!」
「本当に?」
「本当だよ!防空棲姫らなんて会ったこともない!」
必死に身の潔白を訴える健吾。
「それもそうか」
柏手一つポンと叩き納得する空母棲姫。健吾始め、島民皆が思ったこの子はアホな子だと。
「・・・おいそこの馬鹿」
「あ、あははーそう言われればそうよね。健吾会ったことないもんねー・・・あはは」
バツが悪くなり笑いで誤魔化して頬を掻く空母棲姫。
「は、話を戻すわね?捷号作戦で艦娘の子たちの目が変わったと思ったら動きも変化した。その様を見てもしかしたら、この向こうに鬼神がいると思った。結果はさっき話した通りよ、鬼神・・・秋田健吾の姿を見れたのが一番の報酬よ。健吾・・・一つ聞きたいのだけれど私たちが戦った艦娘の子たちは貴方所属の子たちでは無いのよね?」
「ああ、あの子たちは七光りの奴の子たちさ。目が死んでいたんだろ?噂でアイツの鎮守府の艦娘たちの惨い扱いの様子が流れていた。誰であっても俺の艦娘たちには絶対にそんなことはしないしさせない。」
「そうよね、それを聞いて安心したわ」
ホッと胸を一撫でする。
「まあ、いい次の質問だ。単刀直入に聞く、今まで人を殺したか?」
健吾が空母棲姫を凝視する。その視線は空母棲姫を見ながらも暗い目をしていた。
健吾の質問の内容や初めて見る健吾の一面に島民からどよめきが起こる。
空母棲姫は彼の視線を受け、島に来てから初めて見る健吾の憤懣の籠った目に、健吾に恐怖した。
「っ!」
健吾の目が空母棲姫を射抜く。しかし、ここで答えないと健吾の隣に居られない。空母棲姫はその事の方が怖かった。彼をもう一度見る、変わらない視線だ。空母棲姫は彼がそんな表情をさせる何かに怒鳴りつけたかった。もしも深海棲艦ならすぐに殴り倒し、彼を守ってあげたい、そう強く思う。
「私は今までだれ一人として、人間を殺したことはないわ!」
自分の身の潔白を主張する為立ち上がり健吾を見やる。
「艦娘の子たちは撃沈させたのか?」
健吾の声が何時もより冷たい。
「いいえ、精々大破にして追い返したり酷い有様の艦娘を匿ったりしたくらいよ」
「・・・分からないな、何故誰も殺したり沈ませなかった?挙句の果てには匿う?お前は深海棲艦であろうに」
健吾の言葉に空母棲姫の瞳が揺らぐ。
「私は空母棲姫として・・・いいえ、深海棲艦として出来損ないだった」
「・・・どういうことだ」
「深海棲艦は生まれた際に人間や艦娘に対する復讐や憎悪、怨恨を持って生まれ活動するの。だけど私にはそれが無かった。生まれたとき私は無知でそれが当たり前だと思った。だけど周りが憎悪や復讐の感情しか持ちあわせていないと知り、そこで私がイレギュラーだと知った。私はそこしか居場所を知らなかった。私が私で居たいのに周りがそれを許さないの」
初めは毅然とした態度で話していたが言葉尻になるにつれ、空母棲姫の声が震えか細くなる。彼女の双眸が濡れている。
「私は必死に周りに合わせた。そうしないと私の居場所が無いもの。周りからは何故殺さないのか聞かれるたびにその場しのぎで答えてたわ。・・・ふふっ笑っちゃうわね、周りからは空母棲姫として煽てられ、人間からは恐れられた。誰も私を見てくれない、上っ面の私だけを見ていた。ある日鬼神の噂を聞き思った。彼に会えば変わるかもしれない。何故そう思ったのか私でも分からないけど、そう思ったの・・・多分私の限界がきてたからかもしれないわね・・・・あぁ・・私の居場所は辛かった・・・ほん・・とうに辛かった。」
空母棲姫がとうとう立つことも儘ならなくなりブルーシートに座り込み嗚咽する。
おばさんが空母棲姫に駆け寄り彼女にハンカチを渡し、空母棲姫を優しく抱きしめる。
「空母棲姫ちゃん。今まで頑張ったね。ここにはアンタを傷つける酷い奴なんていないからね。ここがアンタの居場所なんだよ」
「お・・・おばさん・・・!おばさーん!!」
空母棲姫がおばさんにしがみ付き、島民は黙って静かに頷いていた。
書いてて思った。空母棲姫いつも泣いてんな。泣かせたいわけではないんですけど、彼女の過去はがっつり暗いんでしょうがないね。もうすこしだけシリアス続きます。それが終われば・・・
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