先月から今月にかけてプライベートが忙しくなり、更新できませんでした。
眠気を我慢しながら書いてたら、なんかホラー映画がグロ気味に。グロ注意です。耐性無い人は無理せずに読まないで下さい。
空母棲姫が勢いよくあみだくじを引いた結果。
「・・・・・」
空母棲姫は震えながら自身の手を見やる。いや、正確に言えば自身の手に握られている紙をだが。
「・・・・・」
苦虫を百匹も噛み潰したかのような表情で、じっとつい先程自分が付けてしまったあみだの線を憎々しげに見る。これさえ無ければ、トリにホラーが来なかったのに。何故あの時線を付け足してしまったのだろうか。いや、正直に言うと確率は四分の一だと高を括っていた。まさかホラーがトリには来ることはない。まどろっこしくなったが、簡潔に言うと浮かれていた。これに尽きる。この長ったらしい自問自答も何度繰り返したのだろうか。しかし、隣にいる健吾の笑顔が酷く癇に障る。
「まさかこうなるとは、ホラーが最後に来たら面白いのになと思ってたのに。・・・空母棲姫やりますねえ」
健吾がとても嬉しそうに空母棲姫の肩に手を置き、爽やかな笑顔でサムズアップした。
「うるさーい!!」
「どれ、改めて見る順番を確認するぞ」
怒りと恥ずかしさが爆発し、顔を真っ赤にしてわぁわぁと喚く空母棲姫の手から、健吾は素早くお目当ての紙を取りあみだを見る。最初に見るのはアクション、二番目は恋愛もの、三番目はアニメ、最後の締めを飾ることになったのはホラーだ。
「これは、お前さん。完璧に自滅だね」
そう。最後に空母棲姫が浮かれながら付けた線が彼女の運命を決定づけてしまった。それさえなければホラーが最後になる羽目などにならずに済んだのに。
「うぅ、なんでいらない線を付け足しちゃったのよぉ。過去の私のばかー・・・」
そのままおよよ。と空母棲姫はふらつきながらソファーから床に座る。健吾がまた変なことを企んでいるなと、怪訝な表情をしながら彼女の行動を見守る。床に座った空母棲姫は正座の構えを解き、自身の艶めかしい足を横に崩し惜しみなく健吾に晒す。彼女の足の付け根や臀部はもう少し足を崩せば見えてしまう。官能的なポーズをとるに飽き足らず、更に左手は口に当て上目遣いで健吾を見る。
世の男がこれを見ると大体の男は直ぐに堕ちて、彼女の虜になり何でも言うことを聞いてしまうだろう。魔性の女、或いは薄幸の佳人を思わせる雰囲気を空母棲姫は持っている。
「ねぇ、もう一回しよ?」
「却下」
即答で健吾は空母棲姫の力の籠ったお願いを切り捨てる。
「んなっ!なんでよぅ!少しくらい考えてくれたっていいじゃないのよ!?」
余程最後にホラーを見るのが嫌なんだなと、健吾は苦笑しながら涙目になり抗議の声を上げる空母棲姫を宥めつつ説得する。一つは時間が無いこと、二つはそんなに怖くない映画だから、三つはそれでも不安ならずっと手を握ってるから。これらの説得で空母棲姫は大人しくなるどころか、上機嫌になりいつの間に買ってきたのか、ポップコーン、コーラを意気揚々と用意した。
「あ、健吾ー。映画館の雰囲気を出すためにカーテン閉めましょう?」
早く早くーと言うや否や、ソファーに座りポップコーンの袋を開け数個自身の口に放り込み、ポップコーンの触感に舌鼓を打つ。
「あ、待て。俺も食いたいから待ってくれ」
急いで部屋中のカーテンを閉め、光源はテレビのみとなった為部屋全体が一気に暗くなり足元が疎かになる。しかし健吾が長く住み使っている部屋の為、おぼつかずに空母棲姫の隣に座る。
「はい、健吾口開けて。あーん」
「ん。あーん」
健吾が隣に座ったのを見計らい、ポップコーンを数個手に取り慣れた手つきで健吾の口に入れる。
「えへへ、美味しいね」
「うん、美味しいな。それじゃあ映画見ますか」
「お~!」
二人は映画の世界に付け込んだ。アクション映画では、敵が侍らせている煽情的な格好をした女優が現れる度に反応する健吾の脇腹を空母棲姫が抓り。ど派手なカーアクションには空母棲姫は瞳を輝かせ。恋愛映画では主人公とヒロインの甘酸っぱい行動に黄色い声を沸かせ、思いも寄らぬ別離に瞳を濡らし。アニメ映画を見る前に二人は夕食を摂った。その後アニメ映画では、女の子が不思議生物と出会ったことがきっかけで魔法少女になるシーンではしきりに不思議生物を飼いたいと健吾にお願いしたり。戦闘シーンでは様々な色彩を放つ攻撃に目を奪われ、大いに映画を満喫した。ここまでは。
「お、思ったより時間かかったわね」
空母棲姫は満足げな顔をしながらも口元をひくつかせるという、曖昧な表情を浮かべていた。
「そうだな、アニメが時間かかっちゃたなー・・・どうした?もしかして微妙だったか?」
「いえ、全部面白かったわ!どの作品も見ごたえがあったし感動したわ。ただ、時間がね・・・」
空母棲姫は壁に掛けられている時計を指さした。時刻は既に今日の日付を通り越して一時を回っている。
「いつの間にこんな時間になってたんだ」
健吾もこれには驚いた。感覚的にはまだ九時かそこらだろうと踏んでいたからだ。
「どうする?空母棲姫。明日に回すか?」
本当はホラー映画も見たかったが時間も時間だ。これ以上は明日に響くだろう。健吾は空母棲姫から肯定の声が聞こえてくるだろうと思った。しかし意外にも空母棲姫は健吾の提案を受け入れなかった。
「いいえ、このまま見ましょう?」
「どうしてまた?無理しなくてもいいぞ」
「だってホラー映画見てる時はずっと健吾の手を握っていられるんでしょ?貴方が隣に居てくれるだけで十分よ」
空母棲姫は健吾の左腕に寄り掛かる。健吾はそれ以上言えず空母棲姫の思うままにさせた。
「それじゃあ、始めるぞ」
「え、ええ」
そして遂にホラー映画が始まり、空母棲姫が緊張した面持ちで頷く。
他の作品の映画の予告が終わり、本編が始まる。
テレビの画面は黒一色だが、テレビからは登場人物と思わしき男性の声と女性の声が響く。何かに追われているのだろうか、悲鳴や怒号が入り混じる。誰かが追われている者に捕まったのだろうか一際大きな劈くような悲鳴が響いたかと思った刹那——ばきん、ごきんと何かを折る音。捕まったのはどうやら女性らしい。折る音がするたびに女性の裂帛の声が木霊する。女性は気でも触れたかのように、ひたすら何者かに謝り続ける。折る音がする、絶叫しながら謝り続ける。未だにテレビは黒一色しか映さない。——音に変化があった。折る音から次第に啜る音が空母棲姫の耳朶に入った。とうとう本当に気が触れた女性はけたけたと笑う。折る音、笑い声。啜る音、更に強く笑う声。空母棲姫はふと、女性と一緒にいたであろう男性の声が聞こえないことに気付いた。女性を囮にして自身は這う這うの体で安全圏に逃げたのだろう。空母棲姫は男性に強い嫌悪感を抱く。
女性の声が笑い声から、げーーーーーー!と一際大きい叫び声を上げたかと思うと。ばぎん!と今までの折る音の中で一番大きい音が聞こえたのを最後に、女性の笑い声が聞こえなくなった。聞こえてくるのは啜る音だけだ。この時点で空母棲姫は既に涙目であり、健吾に思いっきりしがみ付いていた。
啜る音がしなくなり、耳が痛くなる程の静寂が訪れる。空母棲姫は健吾に話しかけようとすると、健吾はしー。と立てた人差し指を空母棲姫の唇に押し当てた。空母棲姫は納得しないながらもテレビに視線を向けようとした時。どん!!とテレビから大きな音が流れる。その音に驚いた空母棲姫はすぐさまテレビを見やるが、先程の大きな音はまるで無かったかのように静寂を貫いている。
「く・・・・くっくく」
先程の空母棲姫の驚き様が面白かったのか必死に笑いを堪えようとするが、中々堪え切ることが出来ずにわずかな笑い声が漏れる。それに気づいた空母棲姫が健吾に注意しようと、健吾に顔を向けた刹那——どん!!!また大きな音が響き、思わず素っ頓狂な悲鳴を上げてしまう空母棲姫。
「ははははははは!すまん、ちょっとトイレに行ってくる!」
とうとう笑いを堪え切れずに決壊してしまう健吾。このままだと空母棲姫が正しくホラー映画を楽しむのに邪魔になってしまうと判断した健吾はトイレに避難する。空母棲姫は笑われるのは勿論の事嫌だが、それ以上に今はこの真っ暗な空間に一人取り残されることの方が嫌だった。
(お願いだから健吾すぐに戻ってきて、笑われたことには怒ってないから・・・嘘だ。後で怒るから早く戻ってきて健吾!!願わくばずっとテレビに変化が起こりませんように。大きな音とか出さないでよね!)
空母棲姫の願い空しくテレビに動きがあった。しかしそれは大きな音ではなく、小さな明かりだった。空母棲姫はこれから自身に起こる恐怖に抵抗するために、半べそになりながらソファーの上で体育座りをし対ショック姿勢をとった。小さな明かりが近づいてきているのか、或いはこちらが明かりに近づいているのか次第に少しずつ大きくなる。どうやら明かりは火のようだ。徐々に徐々に明かりが大きくなる。明かりは向こうからこちらに近づいているようだ。明かり——松明を持った何者かが、徐に地面に松明を近づけた。そこには何かが横たわっていた。まだ距離が遠くて分からない。こちらは酷く怯えているのか呼吸音が乱れている。空母棲姫は体育座りのままチラチラとテレビを見る。怖さもあるが好奇心もある。ここまできたのだ、あれが一体何なのか気にもなる。まさかあの笑い続けた女性だろうか。やはり殺されたのだろう。声が一切聞こえなくなったのだから。
今度はこちらが松明を持った何者かの所に向かっている。まだ距離があるがこちらはカメラのズームを使った。地面に横たわる何かが分かった。——男性だった。恐らく最初に怒号を飛ばしていたであろう男性だ。空母棲姫は女性だと思っていたばかりにこれには呆然とした。しかも男性の体がおかしい。酷く歪なのだ。仰向けに倒れ死に顔をこちらに向けられているおかげで男性と分かったが、左右非対称なのだ。五体はバラバラにされた挙句、片腕片足が上下逆に配置されている。左腕がある箇所には右足が置かれ。右足の箇所には左腕が配置されている。こちらが叫び声を上げ、脱兎のごとく逃げているのだろう。画面が大きく揺さぶられる。がん!!こちらが何者かに倒されたのだろう。こちらが持っていたカメラは地面に落とされ、幸か不幸かカメラはこちらの様子が映された。
こちらは若い二十代の男だった。空母棲姫は何者かの正体がこれで分かるかもしれないと思ったが、何者かはたまたまだろうかカメラが顔の映る手前で止まり、暴れる男を引きずりながらカメラの映る範囲外に消える。ぐちゃり。音がするや否や突如カメラに変りはてた男の顔のアップが映される。
「ひゃぁぁぁあ!!」
恐怖を堪え切れずに空母棲姫が叫ぶ。すぐさまカメラが反転し再び黒に戻りエンディングロールが流れる。
「お待たせー。待ったー?」
「きゃあぁぁあああぁあ!!」
恐怖が怒涛の様に押し寄せてきて空母棲姫はもう限界だった。怖すぎて音に対する疑心暗鬼がいい例だろう。
「バカ!バカ!健吾!遅いわよー!バカー!」
迷子になった小さな子供の様に泣きわめく空母棲姫。まさかここまで怖がるとは、健吾も空母棲姫を抱きしめ、あやしながら自省する。ホラー映画は大体が最後の最後に観客を怖がらせて終わるが、勿論この映画も例に漏れず最後の締めが残っている。何回も見ている健吾だが、空母棲姫をあやしているせいでその事をすっかり忘れてしまっていた。二人は抱き合っているが健吾は部屋の奥を、空母棲姫はテレビの方を向いている。空母棲姫はエンディングまで見切った安堵感に包まれていた。エンディングロールが終わり、初期画面に戻ると思ったが暗い画面が続くことに疑問に思った空母棲姫はテレビを注視してしまった。ばん!!と大きな音と共に女性の変わり果てた生首が画面に張り付き、何者かの下卑た笑い声で映画は終わった。そして空母棲姫の恐怖のキャパも超えてしまい気絶してしまった。
「なぁ、空母棲姫すまなかった。あそこまでお前が怖がるとは」
「べっつに~、どっかの薄情な誰かさんが中々戻って来ないせいで、私は心細かったな」-!」
「あのままだったら俺の笑い声で怖くなくなっちゃうだろ?」
「私はそれがよかったの!!・・・・ところで最後の最後であれは卑怯よ」
「なにが?」
「なにって、女性の生首投げられた後、下卑た笑い声してたじゃない」
「え?」
「え?じょ、冗談はよしてよ?」
「冗談もなにも、首は投げられるとしても、下卑た笑い声なんて入ってないぞ。あれは顔も声も一切出さない化け物がモチーフだから、声は無い筈だ・・・・」
「・・・・・・・う~ん」
「また空母棲姫が気絶した!?」
漸く筆休め終わった・・・次回から本編です。
アズレンのベルファストと間桐桜が可愛すぎてやばい。改めて可愛すぎて可愛い(語彙力)
閲覧、お気に入り登録ありがとうございます!いまだにハーメルンの機能使いこなせない・・