ありふれた職業で異世界最強―聖印と邪紋と転生者 作:袴紋太郎
剣、と書くと両刃のロングソードを思い浮かべる人が多いだろう。
小説やゲームなどにおいてポピュラーな武器であり、見た目や良さや権威の象徴であることも含めて人気は高い。
だが史実における戦場の主武装といえば槍か弓、時は流れて銃に至るまで、剣はあくまで副武装でしかないのだ。
それで必要ない、と言い切るには惜しい実用性と対応力。
まぁ何が言いたいかといえば、異世界というものに来てしまったという実感が出てきたということだ。
◆◆◆
光に包まれ、気が付けば豪奢な神殿。
周囲にはローブを纏った変人ども、奥には威厳漂う煌びやかな格好の老人。
何のジョークだ、眉間にシワが寄っていく。
この集団のリーダー格であろう老人は、老いによる衰えを感じさせない覇気を纏いつつ生徒達を歓迎した。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様、歓迎致しますぞ」
「私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者―――以後、宜しくお願い致しますぞ」
集団誘拐で起訴してやろうか。
奥へと案内されイシュタルト名乗る老人は恭しく事の経緯を語り始める。
端的に纏めるとこうだ。
この世界は【トータス】と呼ばれる異世界であり、
人間族は北一帯で威張りちらし、魔人族は南一帯でオラついて、亜人族は東の巨大な樹海の中でビクついている。
人間族と魔人族が何百年も無駄な戦争を続けており、人間族は数で勝り、魔人族は個の強さで勝るため決着がつかない。
最近になって魔人族側が【魔獣】と呼ばれる怪物を使役し、パワーバランスは崩壊。
結果、この世界の【神】と呼ばれる【エヒト】という存在が、人間族を救うため異世界から勇者を召喚した
つまるとこ俺らが呼んだわけじゃねぇから、お前ら返すとか無理だから!
頑張って使命果たせば帰れるんじゃね、頑張ってねー
…ふざけてんのかこいつら、さっさと滅びろ。
一緒に飛ばされた社会科教師の畑山愛子も、保護責任者という立場から反論するも暖簾に腕押し。
それも仕方がない、こちらには何もないのだ。
金、住居、食料、此処の常識も、文化もなにもかも。
声を荒らげて反対するのは簡単だ、したとしても何も生まれない。
口惜しい限りだが、今はこいつらに従う他になし。
まったく、どうしてこうなったのだ。
◆◆◆
渡された剣をひと振り。
ヒュンッと風切り音が耳に響き、まっすぐに天へと掲げてみる。
今生どころか前世でも使ったことなどないが、不思議と手に馴染む物があった。
鍛錬場では己以外にも各々適性の高い武器を構え、おっかなびっくり振り回すクラスメイト。
日常的に武器を使用する機会の存在しない、現代日本の高校生。
彼ら彼女らがいきなり戦場に立ったところで結果は見えている。
そのためあのご老人は教会の総本山である【神山】の麓。
そこにある【ハイリヒ王国】にて生徒たちの訓練と施すつもりらしい。
国王陛下のありがたーいお話を聞き流し、翌日には座学と訓練開始。
縦に長い長方形のプレート、銀色の艶が煌くそれが生徒たちに配られる。
訓練を担当する王国騎士団長メルド・ロギンスが、これは【ステータスプレート】と呼ばれる代物だと?を浮かべる生徒たちに説明した。
神代の技術で作られた、現在では再現不可能の道具―――アーティファクト。
ステータスプレートはその名の通り持ち主の能力などを数値化できる道具。
トータスでの身分証明書ともいうべきそれは、【通常】のステータスを表示する。
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高円寺清正 17歳 男 レベル:1
天職:紋章剣士
筋力:150
体力:80
耐性:60
敏捷:60
魔力:70
魔耐:80
技能
・剣術[+二刀流]
・火属性適正
・言語理解
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僅かな思案、中央で周りの生徒や騎士たちから流石は勇者だと讃えられているリーダー格――ー天之河光輝に目をやる。
「―――存在感を示すべきか」
刃引きされた剣をもうひと振り引っさげ、中央へと足を向ける。
その途中ハジメの横を通り過ぎたとき、偶然彼のステータスを見てしまった。
全ステータスall10、技能もほぼなし。
大変だなと内心で手を合わせる、どうにかする義理はない。
人だかりに向かって歩く、自信に満ちた表情だ。
周囲の表情も見る、そこには確かな信頼の色が浮かんでいる。
責任を取る立場になるのは御免だが…
「天之川くん、一つ手合わせ願えるかな?」
いいように使い捨てられる立ち位置になるのも、お断りだ。
◆◆◆
鍛錬場の中央、二人の青年が武器を構え対峙している。
一人は天之河光輝、クラスのリーダー的存在であり、容姿、性格、実力共に勇者と呼ぶに相応しい青年。
対峙するのは、この春から転校してきた高円寺清正。
どちらかといえば線の細い光輝と比べて逞しい体躯、どちらが戦士かと問われれば一目瞭然。
光輝は正眼の剣を構え、対する清正は二本の剣を逆手に持ち腰だめで構えている。
剣士というよりも西部劇に登場するガンマン。
立会人を請け負ったメルドの手が下ろされ、二人の剣士は同時に地面を蹴り上げる。
上段からの唐竹割りを半歩下がることで空振りにさせ、右の剣を横薙ぎに振り抜いた。
鼻先を掠めるも直撃せず、大ぶりから引き戻した剣を縦のように構える光輝。
そこへすかさず追撃で左を逆袈裟で斬り上げ―――るかと見せかけて距離を取る。
周囲は初撃で終わると踏んでいたのかざわめきが広がり、光輝の顔には困惑と驚きの色が見えた。
一刀流と二刀流、どちらが優れているというのは議論するに値しない。
どちらにも利点があり、同時に欠点が存在する。
一刀流は威力と速度、二刀流は手数と間合い。
勝敗を分けるのは―――使い手の技量と、戦いの流れ。
ヒュン、ヒュン、ふた振りの剣が空を切り、いまかいまかと踊っている。
攻撃するのか?
しないのか?
右からか?
左からか?
それとも同時?
正面?
側面?
これはフェイントか、本命か。
既に光輝の間合いは掴んでいる、悩みを抱えたまま剣を振れば―――
「しまっ!?」
途端に懐への侵入を許し、右のフェイントで釣り上げられてしまう。
横跳びで回避しようとするも、そこへ待ってましたと左から追い打ちが飛んだ。
しかしやられたままではいられんと、光輝は追い打ちを剣で受け止め大きく振り払う。
ビリビリと左手に衝撃が走る、掴んでいたはずの武器は跳ね飛ばされた。
慌てることはない、大勢を崩したのはあちらだ。
右の剣を両手で構え直し―――最後の一撃が。
ガキィン!!!
互いの剣が手から離れ、無機質な音を立てながら転がっていく。
「そこまで!」
相討ち、というべきか。
最後の最後で気が緩んだのか、両者の剣を跳ね飛ばすという結果に終わったのだ。
まぁ、そう仕向けたのだが。
「やはり強いな、いけると思ったんだが」
「ああいや、危なかったよ。君も強いんだな高円寺くん」
互いに賞賛を送り、痺れたように震わせる右手で握手を行う。
こちらも危なかったという演技だが、こういうのも馬鹿にできないものだ。
生徒たちがざわめく。
「やるじゃん」と。
「お前すごいな」と。
引き分けになるだけの実力を持つが、圧倒できるほどでもなく、みんなのヒーローを称える人物。
転校してきたばかりの自分は、”そういう人物”であると刷り込めただろう。
評価というものは厳しいものだ、追い詰められれば尚更。
こんな世界に居着くつもりはない。
こいつらのために傷つく義理もない。
しかし働かず、怯え隠れるものを人は侮蔑する。
侮蔑は差別を生む、差別は健康に極めて有害だ。
ならば勇敢であろう。
ならば慈悲深くなろう。
彼らにとって望む仮面を着けてやろう。
極めて不本意であるが、高円寺清正という偶像に演じる方が都合がいいのだ。
静かに、剣に輝やいていた【紋章】が消えていく
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高円寺清正 17歳 男 レベル:1
天職:紋章剣士/君主
筋力:1500
体力:800
耐性:600
敏捷:600
魔力:700
魔耐:800
技能
・聖印/セイバー 第一階梯解除
・剣術[+二刀流] 第二階梯解除
・統率 第一階梯解除
・タフネス 第一階梯解除
・強運[+天運上昇Ⅳ] 第二階梯解除
・装備熟練[+武器の印] 第二階梯解除
・■■■■/経験点不足により未解除
・■■/経験点不足により未解除
・■剣/経験点不足により未解除
・■属性適正/経験点不足により未解除
・金■力/経験点不足により未解除
・■地/経験点不足により未解除
・■■/経験点不足により未解除
・技■熟練/経験点不足により未解除
・言語理解
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○○階梯というのはアレです、技能が何段階まで使えるか0といった感じです