台湾から帰って参りました、影鴉です。
今回、話の中になんちゃって方言を話すキャラが出てきます。
読み難いでしょうが勘弁してください。
前回の約6千字に対して1万字超えだと…?
それでは、『2回目転生者達が切り開くIS世界 第2話』始まります。
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とある惑星近くの宇宙空間
星をも渡る船がその船体から火を噴き出しながら沈んでいく。赤い光線が流星群のように
その光景はまさに宇宙戦争と言えた。しかし、一方的な蹂躙的なものと付け加えられるが。星のように巨大な要塞がハリネズミのように武装した砲塔を、向かい合っている戦艦へ向けて雨霰とビームやミサイルを放っている。戦艦も撃ち返して反撃をするが一隻、また一隻と轟沈していく。
「ああ、○○。何故こんなことに・・・?」
殆どが白髪となり所々にかつての髪の色であったのであろう、紫色がかった男は悲しそうにモニター前で呟く。近くの護衛艦にミサイルが直撃して木っ端微塵になる。目の前の惨状を生み出している要塞にいる犯人はたった独り、かつての家族、愛しく、血の繋がった弟。その弟であった存在がこの戦場を生み出した。
「わたしはお前を本当に理解することが出来ていなかったのだな・・・お前の倍以上は生きている というのに」
男が乗っている船に光線が被弾する。エンジン部分を貫いたらしく大爆発が起きる。船全体が誘爆していき、この船と乗っている者の最後が来る。爆風に巻き込まれその身を焼かれながら、男の意識は途切れた。
意識が途切れる一瞬、男は思った。
(叶うならば、弟を救いたかった……)
燃え行く船と共に男は散って逝った。
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「ああ、また観たか・・・」
綴じていた瞼をゆっくりと開き、源之丞はベッドから起きあがる。
光浦 源之丞は転生者である。始世、前世と経ており、この世界は3回目の人生となる。まさかまた転生してしまうとは夢にも思わなかったが、前世で知り合った同じ境遇の者達と話をした際に、原因と思われることは仮定出来ていたので納得した。
「死に際の後悔が転生の鍵ねぇ…」
転生する条件、それは死に際に激しい後悔を抱いているかどうかである。源之丞は前世においても
もしそうなら恐ろしいことである。もしも、満足するために必要なモノが、満たされるためのモノが手に入らなくて、代わりとなるモノも無いとしたら……未来永劫、転生し続けるのだろうか?
ヒトの魂は永遠を生きれるようにはできていない。永い時間の中で次第に削れていく。そして削れ切った時、魂は、心は死んでしまう。心が死んだ空っぽな器の体だけの存在となったヒトだったモノはどうなるのだろうか?
「考えていても仕方ないか」
頭を降り気分を変える。研究者であり続けている故に疑問を持つとつい深く考えてしまう。
「しっかし、何度見ても悔しいなぁ・・・」
かつての自分を振り返り、源之丞は拳を握りしめる。弟の心の思いに気付くことが出来なかったこと、心が壊れて堕ちて行く弟を止めることが出来なかったこと、自分が死ぬ原因となった弟であったが、最愛の家族であった。過ぎたことはもう変えられない、前世という異なる世界なら尚更である。
このまま考えてばかりではしょうがないとベッドから降りて着替える。今日は大学で大会の反省会がある。両親は畑仕事で既に家にはいないだろう。
~♪
携帯からメール着信の音楽が鳴る。送り主は束だった。
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From
束ちゃん
Subject
束さんだよ~♪
Sentence
いよいよ明日だね♪ 束さんの家まで
の地図を添付しておくから、
着いたらいっぱいお話しようね♪
待ってるよ~♪
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添付された地図を確認した後、源之丞は返信ボタンを押してメールを打ち込む。
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From
源之丞
Subject
束ちゃんへ
Sentence
地図有難う。
約束通り2時頃に来るよ。お土産も
持って来るから楽しみにしていて
欲しい。
わたしも楽しみにしているよ。
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送信ボタンを押しメールを送る。明日は土曜日、大会も終わり時間が取れるようになったので1月振りに彼女と会う約束をしていたのだ。
「さてと、時間が押しているな。急がなければ」
そんなことを言いながら源之丞は明日、束とどんな話をしようかと思考を巡らすのであった。
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「うふふ~、明日が楽しみだな~♪」
源之丞からの返信メールを受け取り束はうきうき顔で登校準備をする。
彼と出会って4ヶ月程となる。この1ヶ月は大会に参加するために会うことが出来ず、メールのみでやりとりしていたが、それまでは1月に2,3度会いに来てくれた。彼は天才だ、彼との会話は毎回尽きることがまったく無い。束が得意としている工学はもちろんのこと、今後手を出そうとしていた分野も網羅しており、話を聞くだけで新たな発見が出来る。そんな彼との会話から束は知識をスポンジの如く吸収していく。そして得た知識から発展した考えを話すと源之丞は嬉しそうに微笑んでくれる。そんな彼の仕草を見ると自分も嬉しくなる。源之丞との会話は束にとって大事なものとなっていた。自分を本当に理解してくれた初めてのヒト…
「いってきま~す♪」
玄関で大きく叫ぶと束は外へ駆けていった。そんな彼女の姿を両親は驚いた表情で見送るのであった。
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「ちーちゃん、おっはよ~!」
「束か、今日も元気だな?」
「当然だよ! 明日のことを思うと束さんは『元気百倍! ドクター束!』になっちゃいそうだよ♪」
「何だそれは・・・」
待ち合わせにしている篠ノ之神社の下へハイテンションで走ってきた束に呆れながら千冬はふと数ヶ月前を思い返す。束は変わった、彼女が話した『源さん』という人物に出会ってから。悪い意味で変わった訳ではない。彼女は良い方向へ変わっていると思う。
「みんなおっはよ~♪」
教室に到着し、束は元気よく挨拶する。その声に最初は驚いていたクラスメイト達ももう慣れたようで、挨拶を返す。
束が変わったことの1つがまずこれだ。他人に対して全くと言ってよい程無関心だったのにこれである。かつては自分と以外に挨拶などすることなくそそくさと自分の席へ行き、本を読むかパソコンを弄っていた。そして……
「篠ノ之ちゃん、ちょっといいかな?」
「ん、何?」
「昨日の宿題で分からない所があるの」
「どこ? 見せてよ」
「ここなんだけど」
「ここはね、これをこうして…」
他人に対して面倒見が良くなった、というか他人と接するようになったのだ。質問に対して何を言っているのかという顔をして理解不能な難しい言葉で説明をしていたのに、解りやすく教えるようになった。私も算数の問題で分からない所があった時、教えてくれたがとても解りやすく教えてくれた。しかも先生より解りやすかった………このことを尋ねたら束は…
「源さんがね、話をしたり説明をする時は相手の状況をよく理解してしなさいって言ったの」
と言った。変な言い方になってしまうが、束は私達にも解るようにレベルを下げて説明してくれているのだ。これは正直有難い、私は勉強より運動が得意な方だし…
ちなみにこのことで面白いことが起こるようになった。それは授業が終わった際、束に会いに彼女のクラスへ行った時、
「せんせ~い、はいこれ」
「ああ、篠ノ之さん。今回の授業はどうだったかな?」
束から纏められたメモを受け取った先生が尋ねる。去年赴任してきた先生だ。
「えっとね~、文字は離れた席でも見やすかったし大事な語句を色でしっかり分けていたけど、例 え方が実感持てなかったと思うな~」
「そうか、有難う」
そう言って先生は職員室へ戻って行った。授業中に束はなんと先生の授業の教え方を評価するようになったのだ!しかも先生は束が評価したメモを受け取りその後、「役に立ったよ、有難う」などと言っているので束のチェックは相当のものなのだろう。唯、メモを渡しているのはその先生だけで、他の先生はメモを書いてはいるが渡していない。何故かというと最初に渡したのはあの先生で、その際先生に、
「先生の中にはこういうことをされるのを嫌がる先生がいるから僕だけにしてね」
と言われたからだ。束は「は~い」と答えて他の先生に渡すことは無かった。そのことが気になってある日束に尋ねたら、
「先生はみんな大人で年上でしょ? 束さんみたいなまだ子供に指摘されると相手の方が頭が良かっ たりしても不愉快になったりするんだよ。束さんは探求への浪漫が無いな~と思うけどね~」
そんなことを言われた。それは先生が大人気無いのではないのか? と言うと、
「世の中は思い通りにはいかないものなんだって源さんが言ったの、思い通りにさせるには時間と 労力が必要だし、通すことに意味や価値があるか前もって考えないと損をするって」
卒業までに他の先生を納得させるのは無理だし自分が納得させたところで得をしないとのことらしい。私も人付き合いが良い方ではないが、他人に対してまったくの無関心で私としか話をしなかった束がこんな風に変わったのは私としても嬉しい。そんな束に影響を与えた『源さん』という人に私も興味を持ち、ちょっと羨ましいと思いながら私は自分のクラスへ向かった。
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電車の中、土曜日ながらもそれなりに空いている席に男と少年が座っている。男は紫色のボサボサ髪で肌は日に焼けていなくて白っぽく、ヒョロリとしたいかにもデスクワーク向けである見た目、少年の方は黒っぽい紺色の髪の毛を短めに切り揃えており、幼さが抜け切らない顔ながらも逞しい体付きで、肌は健康的に焼けている。
「ドクター」
「なんだい、真助?」
ドクターと呼ばれた紫髪の男、光浦 源之丞は真助と呼んだ少年に返事をした。
「何故今回俺を連れ出したんだ? しかもこんな早い時間に連れ出して…」
「理由は護衛と言った筈だよ?」
「今回の相手はドクターだけで事足りているはずだ、護衛という理由は嘘だろう?」
「まぁ、嘘だねぇ」
「即答か・・・」
呆れた目をしながら源之丞を見つめる真助。
「まぁ、4分の1ぐらいは護衛という理由になると思うけどね」
「4分の1って…」
「今日の目的は新しく発見した
やれやれと言いながらも源之丞は嬉しそうに笑っている。
「嬉しそうだな、ドクター」
「そうだね、嬉しいよ」
「そんなにすごいのか? 篠ノ之 束は?」
「彼女は研究者に成るべくして生まれたような存在だよ。この数か月、彼女と会話してよく分かった。」
「転生者ではないんだな?」
「何度も言うが彼女は転生者では無い。分かっているだろうが、転生者かどうか
「そうなんだが…はっきり言ってドクターと同レベルで語り合えるような人外が転生者で無いなんて…」
「君は本当に失礼だな、知識を積めていけば誰でもわたしの様になれるさ。それに、彼女は機械工学専門だ。まぁ、開発・研究に当たって必要な知識・学問は教えてあげている途中なのだがね」
「ドクターの様にって…何回転生すればいいんだ?」
「少なくとも私と同じ年数過ごせばいいだろう」
「無理だろう…ところで、彼女を連盟に引き入れるのか?」
「いや、彼女に連盟について教えるのはまだ早過ぎる。連盟の手の係った企業か組織には誘うつもりだがね」
「そうか…」
「何か不満かね?」
「いや、ドクターがいいなら問題は無いだろう」
「信用してくれて嬉しいよ。
「変態の素質があるわけか…」
「だから君はわたしを何だと思っているんだね? 実用性ある浪漫溢れるモノのどこに変態要素が?」
「この前の走脚戦車にサーモグラフィーどころか追尾性のミサイル擬きなんかを付けていた癖にか?」
「何を言う? 絶対的勝利を勝ち取るために造り出された浪漫溢れる戦車ではないか!」
「変態クラスにやり過ぎなんだよ! あれが出ただけで相手チームは負け確定じゃねぇか!」
「勝利を渇望する貪欲さは浪漫じゃないと?」
「一方的な蹂躙に浪漫も糞もあるか!」
「…まあ、まずは仕事を済ませようじゃないかね」
「逃げたな」
間もなく電車は目的の駅に着く。到着のアナウンスを聞き、源之丞たちは席から乗降ドアへ向かった。
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駅を出て、源之丞達は待ち合わせの喫茶店へと入る。予定していた時間の15分ほど前であったが目的の人物はすでに来ていた。
「源さん、こっちこっち」
「おや、早いね」
「わっちの都合で変えて貰っちゃん、先ん来とくんが礼儀ばい」
声の方にいたのは、妙な方言を使う胡散臭い感じがする男であった。さらりとした純白の髪を肩まで垂らし、4人用の席に座り、コーヒーを飲んでいる。源之丞達もその席に座った。
「そん隣の
「彼は
「宜しく頼む」
「わっちは
「初対面で何だが、そのよく分からない方言は何なんだ?」
「
「随分長生きなのだな?」
「
「成程な」
互いに自己紹介を済ませ、源之丞は書類を辰巳の前に差し出す。そしてポケットから何か装置のようなものを出し、起動した。
「これからの会話は周りに聞こえることは無い、それでは問答を始めよう」
「お手柔らかに頼むっちゃん」
源之丞の確認に辰巳は返事をする。彼らの周りの空気が変わる。
「さて、葛葉 辰巳。君は我々連盟に入るかね? 入れば連盟の要請が来次第協力してもらうことになるが状況次第では拒否することが可能だ。今後の行動に制約は基本付かないし、連盟から補助 も来る。ただし裏切りは許されない。 誰にも干渉されずに静かに暮らしたいというならばそれでも構わないがギフトの制限はさせてもらうことになる。」
「わっちは連盟に入れさせて貰いっすん、宜しゅう頼んます」
「即答だね? いいのかい?」
「わっちは
「そうか、ではサインを頼む」
「
「『ギフト』とは今世で使える前世に持っていた能力や体質のことだよ、君も妖怪なら持っているだろう?」
「
辰巳は書類にサインをする。この書類には他の転生者の手によって契約を破れないように呪いが掛けられている。サインを書き終え、辰巳は源之丞に書類を渡す。
「こいで良かとね?」
「うむ、契約は完了した。歓迎するよ、ようこそ連盟へ」
そう言って2人は握手を交える。
「今日はこれでいい、用があったら後日連絡するよ」
「了解じゃっち」
最後に軽く言葉を交え喫茶店を出た。真助はジロリと源之丞を睨む。
「俺が来る必要はまったく無かったな」
「いや、君の出番はこの後だよ」
「何? 篠ノ之 束と話をしろとでも?」
「束ちゃんとはわたしが話すさ。束ちゃんの実家は剣道場をやっていてね、元は古武術の流派だったらしい」
「ほう…」
「君は始世、前世共に傭兵だろう?
「別に戦闘狂では無いのだが…」
「行って損をするものでもないだろう?」
「それはそうだが…」
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篠ノ之道場
「源さ~ん、待ってたよ~♪」
どうやら待っていたようだ。待ち合わせ場所である篠ノ之道場の前で束が手を振りながら跳ねている。
「こんにちは。久しぶりだね、束ちゃん」
「うん! 束さんも源さんに会いたかったんだからね♪」
「そうか」
源之丞は束の頭を優しく撫でる。束は「ふにゅ~」と言いながら心地よさそうにしていた。
「傍から見たら年の離れた兄妹だな、悪く言えばロリコン…」
「ロリコンは勘弁してくれないかね?」
「源さん、この人は?」
呆れる真助に気付いた束は尋ねる。
「今日は友人を連れてきてね、宜しく頼むよ」
「神宮寺 真助だ、初めましてだな」
「初めまして、篠ノ之 束だよ~ん♪ それじゃ、行こうか」
軽く挨拶を交わし、束は源之丞の手を引く。付けているウサ耳カチューシャが生きているようにピコピコ動いていた。このカチューシャは源之丞が会う前から着けているらしい。何故だろうか、もうこの時点で束という人物は源之丞と同じ存在であると真助は思った。
「今年度の大会はどうだったかな?」
「文句無しだよ! さすが源さん謹製のロボットだね♪」
「そう言って貰えて嬉しいが、わたしとしてはアームの素材をもっと重いものにしてよかったと思ったが…」
「でも運ぶブロックの重さ的に運搬時に動きが遅くならない?」
「だが全体のバランスは安定する筈だ、もし運搬ルートに段差があったら倒れたかもしれなかったからねぇ」
「う~ん、難しいな」
何やら難しい話をし合っている。話の中に大会とあったからドクターのチームが優勝した大学生ロボットコンテストのことであろう。彼は工業専門学校、大学の工学部と入り、参加したロボットコンテスト、略してロボコンにおいてすべて優勝を飾ってきた。ロボコンは毎年様々なテーマ、ルールを出され、そのテーマに沿ったロボットを製作し、学校毎に競い合うものである。彼は試合内容の記録を束に見て貰い、批評してもらっているようだ。
「何事も浪漫が無いとねぇ」
「だよね~♪」
「「
二人で何か叫んでいる。どうやら既に手遅れのようだ。真助は2人に増えた変態級の天才に頭を抱えたくなった。
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束が道場から居なくなっていた。最近、道場によく現れては練習する門下生や私の様子をじっと観察してはノートに何か書いている。何をしているのか尋ねると、
「人間観察の一環だよん♪」
と言われた。他人の行動を観察して仕草や癖から性格等を予想するものらしく、なんでも他人を理解する際に役に立つとのこと。これも『源さん』に言われて始めたらしい。
今日は土曜日なので午前中に練習はあったが、私は師範である束の父、柳韻先生に昼食を誘われたので一夏を伴って残っていた。食後の腹ごなしに先生と軽く打ち込みの練習をさせて貰っていた。因みに一夏は神社で束の妹である箒と遊んでいる。
束が帰ってきた。が、人数が増えていた。束に手を引かれている男性は紫色の髪をしており、ひょろりとしている。多分彼が『源さん』なのだろう。二人の後を着いて来た男性は紺色っぽい髪で体は逞しく、私達と歳が近い気がする。
「源さん、ここだよ♪」
「そんなに引っ張らなくても逃げないよ、束ちゃん」
源さんと呼ばれた男性は若干困り顔で道場に入ってきた。その後をもう一人の男性が礼をして入ってきた。
「束、其方の方達は?」
柳韻さんが束に尋ねる。
「初めまして、光浦 源之丞と申します。束ちゃんから話は聞いてはいると思いますが、宜しくお願 いします」
「貴方が束の話していた源さんですか、私は束の父の
「こっちは連れです、彼は武道の経験があるので連れてきました」
「初めまして、神宮寺 真助です」
「そうですか、此処はしがない剣道場ですがゆっくりしていってください」
柳韻さん達が挨拶を交わした後、束に連れられて源さんは束の家へ行った。道場に残っているのは柳韻さんと真助さん、そして私だ。しばらく静寂が続いて真助さんが口を開いた。
「此方は元々、古武術をやっていたと聞きました。」
「それは誰から?」
「ドク、源さんからです。たぶん束ちゃんから聞いたのだと思います」
「ふむ、私の流派に興味が?」
「彼に言われた通り武道を嗜んでいる身としては…」
「嗜んでいると言ってはいますが、大分鍛錬を積まれていますね?」
「判りますか?」
「身のこなしに無駄がありませんからね、大人でも相当鍛錬を積まないと出来ませんよ。ところで、真助君は剣道の心得は?」
「段位等は持っていませんが、普通には…」
「彼女、千冬さんと打ち合ってみませんか?」
「先生!?」
私に行き成り話が振られて驚いてしまい、つい声が高くなってしまいました。
「いいのですか?」
「同年代の中では彼女は一番熱心に励んでいて強いですよ。それに、彼女に私では無い強者と対峙した時の空気を体験する丁度いい機会です。千冬さんは宜しいですか?」
「先生が仰るのなら構いません」
「分かりました。それでは真助君、準備してもらえますか? 1本試合でいきましょう。防具等はあ そこにあります」
「有難う御座います」
柳韻さんの言葉に従って真助さんは防具置き場へ向かう。私も自分の防具を装着する。装備が整い、互いに試合場の中央に向かい合った。
「準備は宜しいですか?」
「「はい」」
柳韻さんの確認に私達は揃って答え、竹刀を構える。
「それでは、始め!」
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空気が重い。真助と対峙した千冬はそう感じた。目の前の視界には真助が普通に構えているだけのように見えるのだが隙がまるで無いのだ。
(相手の範囲に入ってしまったら確実に打たれてしまう)
そう千冬は感じた。
真助が1歩近づく。千冬は思わず下がる。
また1歩近づく、下がる、近づく、下がる…この行為が続くかと思われたが、不意に真助は下がった。それに釣られて千冬は1歩進んでしまった。
(しまった…!?)
間髪入れずに真助は竹刀を振り上げながら飛び込んでくる。面で来ると予想した千冬は竹刀を上に構えて防ごうとするが…
(へ?)
真助は振り上げかけた竹刀を横に素早く構え直し千冬の胴を打ち抜いた。
「どおぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!!」
逆胴を打ち込んだ伸介が声高らかに叫ぶ。綺麗に決まった。
「胴有り1本!」
柳韻が宣言する。互いに元の位置に戻り礼をした。
「参りました」
「フェイントにはまだ慣れていないようだな?」
「初めてでしたので…」
「ふむ、小学生ではまだ早かったか…、練習すれば誰でもできるがな」
「あの、教えて貰えますか?」
「ああ、構わない」
「お願いします」
「やり方は簡単だ。まず…」
試合を通して打ち解けた2人だった。
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「おや、結局指導しているのかい、真助は?」
道場に源之丞が帰ってきた。束の姿は無い。
「束はどうしましたか?」
「彼女は自分の部屋で書類を纏めています。先に戻らせて頂きました」
「そうですか…」
源之丞の返事を聞き、柳韻は微笑むが少し表情が暗い。
「束の話し相手になってくれて有難うございます」
「いえ、別に感謝されるほどの事ではないですよ」
「謙遜しなくていいですよ。私では話し相手にすらなれなかったのですから…」
柳韻は寂しそうに言う。彼女が天才であることは分かっていた。しかしその天才故に普通と違うということまでは解ってあげられなかった。
「私は武道を担ってきた者であり、1つの流派を受け継いできた者です。心・技・体の3つを極めてこそ真の武道を貫けます。しかし…」
「束ちゃんの思いを理解してあげられなかった…?」
「はい、私は決して少なくない門下生を持っている癖に自分の娘を理解してあげられなかった駄目な親です。しかも解決しようと努力もせずに唯怯えて何もしなかった。自分の娘だというのに…」
ああ、予想はしていたが彼も苦しんでいたのだと源之丞は理解した。当然である、自分の血肉を分けた存在を、愛する子供を理解してあげられなかったのだ。1番理解してあげなければならなかったのに……
源之丞は柳韻の肩に手を置いた。
「大丈夫ですよ、まだ間に合います」
「間に合う?」
「確かに束ちゃんは、彼女は危ないところでした。誰にも理解されずにいて心が潰れかけていた」
「………」
「それでも、彼女の親は、父親は貴方でしょう?」
「そうですが…」
「だから、これから彼女にたくさん構ってあげてください」
「これから…ですか?」
「今迄彼女に構ってあげられなかった分はこれから返していけばいいんですよ。彼女は潰れなかった、彼女に心の拠り所ができた。でも彼女の親はあなた達だけなんですから、これからもっと愛 してあげてください。彼女を愛していないわけではないのでしょう?」
「それはもちろんで「源さ~ん、お待たせ~!」…」
柳韻の言葉が終わる前に束が帰ってきた。少し驚いていたが、彼の顔は穏やかになっていた。それを見て源之丞も微笑む。
「これからもっと親子の絆を深めていってください」
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:::
「今日は失礼しました」
「いえ、気にせずにまた来てくださいね」
「源さん、またね♪」
「レポートありがとね、束ちゃん」
「真助さん、今日は有難うございました。その、また来てくれますか?」
「時間があったら来させて貰おう」
帰る時間となり、道場を出て別れの挨拶を交わす。
「源之丞さん、今日は有難う御座いました。改めて向き合って行こうと思います」
「気にしないでください、わたしはたまたま彼女と話が合って仲良くなっただけですから…」
去り際に柳韻から感謝の言葉が贈られる。それに返事して源之丞達は道場を後にした。
「どうだったかい、真助?」
「悪くなかったな。まあ、指導のみで古武術については聞くことも見ることも出来なかったが…」
「また来ればいいさ、1人ででもね」
「うむ、しかし才能がある子だったな」
「千冬ちゃんのことかい?」
「ああ、鍛えれば将来化けるな」
「
「ここでその呼び名は止めてくれ。ところで篠ノ之 束に連れられて何をしていたんだ?」
「大会を見た感想と考察についてのレポートを書いてもらったからそれをね」
「だから来た時に大会の話をしていた訳か」
「どんなことが書かれているか、楽しみだねぇ♪」
そんな会話をしながら2人は帰路に付いた。
今回出てきた用語集(公開可能な用語のみ抜粋)
転生者
後悔の念を抱いたまま死亡した者がそれまでの記憶を所持したまま別の世界で生まれ変わった存在。転生先の世界観や肉体はランダムであるが前世が人間の場合、ヒトガタであるケースがほとんどである。転生した際に前世にて所持していた能力等(ギフト)を引き継ぐことがある。
転生者が他者を転生者であるか判別する感覚。相手が転生者かどうか、なんとなく分かるらしい。
始世
転生者が初めて転生する際の転生前の
ギフト
転生者が前世から引き継いだ能力のこと。前世において身に付けた能力や体質が引き継がれる。必ずしも転生者の誰もが引き継ぐわけではない。
連盟
転生者達が立ちあげた組織。詳しい概要は次回の話にて。
如何でしたか?
前述した用語は設定資料集の回で纏める予定です。
次回は源之丞達転生者やオリキャラ中心の話になる予定です。
それでは次回『ヤマト重工と連盟』お楽しみに。