今回は原作主人公である一夏と転生者である辰巳がメインとなる話になります。
辰巳と関わることによって一夏も変わっていきます。
それでは、『2回目転生者達が切り開くIS世界 第6話』始まります。
俺は
本当は後、おばあちゃんがいたんだけど最近死んでしまった。老衰だったらしい。充分生きたってことなのかな? 千冬姉と一緒にわんわん泣いたっけ、千冬姉と2人だけじゃ大変だから柳韻先生達の家族が俺達の面倒を見てくれるようになった。柳韻先生の家には俺と同い年の箒とその姉である束さんがいるし、それに毎日じゃ無いけどドクターや真助さん、辰巳さんも会いに来てくれるから寂しくは無かった。
箒とはこの町に引っ越して来た2歳の時からの幼馴染だ。男の子っぽい話し方で、時代劇の侍っぽい性格だ。だから小さい頃から男子に『男女』や『侍娘』とからかわれている。からかわれる度に箒は顔を真っ赤にして追い掛け回していた。箒に大丈夫かと聞くと、
「こんなもの、どうってことは無い…」
気にしていないといつも答える。でも俺は知っている。男子にからかわれた後、箒は誰もいない所へ行っては独りで泣いていることを。気になって後を追いかけて行った時に知ってしまったのだけど、いつもは強がっているからちょっと意外だと思ってしまった。その時はどうすればいいのか分からなかった。誰かに相談したかったが、千冬姉や柳韻さん達に心配を掛けたくなかった。そんな時、
「どうしたっちゃ、一の字?」
辰巳さんに尋ねられたんだ。辰巳さんは道場に時々来ては、柳韻さんと剣道について色々話をしたり試合をしている。何でも学生の頃は剣道の大会で何度も優勝していたらしい。だからとっても強く、俺や箒、千冬姉も時々辰巳さんが道場に来た時は教わっている。いろんな地方の方言が混ざったような不思議な話し方をするので最初は何を言っているのか解らなかったけど、最近は何となくだけど解るようになった。
最初は辰巳さんにも迷惑を掛けたくなかったから何でも無い振りをしていたんだけれども辰巳さんは勘が鋭く、考えていることを良く当てる。
「顔が悩んどっと言っちょっとよ」
だからその時も当てられてしまった。仕方ないので俺は辰巳さんに相談した。
「箒ちゃんは意地っ張いじゃっちねぇ…」
困った顔をしながら辰巳さんは笑っていた。
「どうしたらいいかな?」
「傍に居てやっちい、そして遊んであげるっちゃん。そいで友達をずんばい作ってあげんしゃい」
一緒に傍に居て友達を沢山作ってあげろと言われた。それから俺は箒の傍に居てあげるようになった。幼稚園へ行く時や遊ぶ時等、箒を誘って一緒に居た。箒も最初は戸惑っていたけど、皆と打ち解けて遊ぶようになった。からかう子も次第にいなくなった。辰巳さんは凄いよな。
俺の周りにいる人は皆凄い人ばかりだ。俺を育ててくれた千冬姉は勿論、ドクターや束さんは天才だし、龍韻先生や真助さん、辰巳さんは武術の達人だ。俺も何時かそんな凄い人になりたいと思ってる。因みに、今の目標は辰巳さんだ。剣の腕もだけど辰巳さんは人の気持ちを良く考えている。箒が虐められていた時の箒や俺の気持ちを読んで助言をしてくれた。人の気持ちを考えてあげるのは大事な事だって教わったから、俺も人の気持ちを分かるようになりたい。だから目標は辰巳さんだ。
ある日の事、箒の誕生日に何をプレゼントしようか悩んでいた時にも辰巳さんが助けてくれた。何でも体に付けるアクセサリーとかが良いらしい。
「何時んども使えっちもんが良かばい、そいを毎年色とか違ってんもんをあげっとよ」
何時でも使えて無くならないものが良く、毎年色とか違うものをプレゼントしろ、そういえば箒は髪が長いからリボンで髪を結んでいた。リボンとかどうかと尋ねてみたんだけど、
「最後に
と言われてしまった。結局、他に思いつかなかったからリボンをプレゼントしたんだけど箒は嬉しそうに受け取ってくれた。それ以降、箒の誕生日には色違いのリボンとか髪留めをプレゼントするようになった。箒は毎日違うリボンや髪留めを着けてくれるから俺も嬉しかった。
他にも、俺と箒が小学校に入学した時も辰巳さんが助けてくれた。小学校に入ると違う地区の子達もやってくる。だから箒への虐めがまた起きたんだ。最初は昔みたいにからかっていただけだった。だから俺は昔みたいに箒と一緒にいて、新しい友達を沢山作った。新しい友達は箒とも仲良くなった。だから無くなるだろうと思ってた。でも箒をからかう奴等は中々消えず、次第にエスカレートしていった。
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「こいつ本当に女かよ?」
「女の子はそんな話し方をしないんだぞ?」
「う、五月蠅い! そんなの私の勝手だ!」
「うわ~、やっぱり男女なんだ~!」
空きクラスの教室で箒の周りを囲んで囃し立てる男子、昔より性質が悪くなっていた。
「こいつ花壇の花を見ていたんだぜ?」
「男女が花なんか見てるなよ!」
「そーだ、そーだ!」
「私は女だ! 花を見て何が悪い?」
箒は泣きそうになるのを懸命に堪えながら男子達を睨み付けた。この時、一夏は他の友達と遊んでいた為その場に居なかった。
「男女の癖にそんなリボン着けるなよ」
「!!」
「男女には似合わないよな~」
「ふ、巫山戯るな!!」
箒は怒鳴りつける。今着けているリボンは勿論の事、毎日着けているリボンや髪留めは一夏が自分にプレゼントしてくれた大事な物だ。綺麗な黒髪だから良く似合うよと一夏が毎年誕生日にプレゼントしてくれた大事な物。そんな大事な物を馬鹿にされるのが許せなかった。
「男女には要らないぜ」
「取って捨てちまえ」
「!?」
「取っちゃえ取っちゃえ」
「や、止めてぇぇぇ!!」
箒の髪を結んでいるリボンを解こうと手を伸ばす男子達、箒は一夏がプレゼントを取られまいと頭を押さえて蹲る。男子達は容赦無く、箒が押さえる腕を引き剥がしてリボンを奪おうとする。
「放せよ男女!」
「お前なんかにリボンは似合わないっての」
「嫌ぁぁぁぁ、放して!」
「要らないだろ、さっさと寄越せよ!」
「助けて、一夏! いちかぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず幼馴染みに助けを求め、泣き叫ぶ。今にも腕を解かれそうになった時、教室の扉が大きく開いた。
「箒!?」
「一夏? 一夏ぁ!!」
箒の悲鳴を聞きつけ、駆け付けた一夏。助けに来てくれた幼馴染みの姿に箒は安心と嬉しさでいっぱいになって、とうとう涙が止まらなくなる。涙を零して蹲る幼馴染みと周りを囲んで掴みかかっている男子達に此処で何が起きていたかを一夏は理解した。
「お前らぁぁぁぁぁぁ!!」
激昂した一夏は男子達に飛びかかる。箒に掴みかかっている男子を殴り飛ばして箒を男子達から離れさせた。
「痛ぇえ!!」
「てめぇ、何しやがる!」
「五月蠅い!! 寄って集って箒を虐めやがって!! 恥ずかしく無いのか?」
男子達を睨み付けて一夏は怒鳴る。箒を囲んでいた男子は5人、状況は多勢に無勢。一夏は箒を庇うように立つ。
「何だよ? お前その男女が好きなのかよ?」
「は!?」
「好きだから助けているんだろ?」
「そんな男女が好きなのかよ?」
「男が好きなんだ~!!」
今度は一夏を囃し立てる。箒は悔しさでいっぱいになる。助けに来てくれた一夏が今度はからかわれている。自分は只泣くことしかできないのであろうか?そう思っていると、
「だから何だ!!」
「な!?」
一夏は強い声で男子達を黙らせる。
「箒が男女? 巫山戯るな! 箒は女の子だ!」
「どこがだよ? こいつみたいな話し方女の子はしないんだぞ!」
「そーだ! 男みたいな話し方はしないぞ!」
口の減らない男子達、一夏はそれを睨み付ける。
「辰巳さんは言った、人の気持ちを考えてあげることは生きていく上で大事なことだって」
一夏は言う。
「俺は知っている。箒は剣道が強くて優しい女の子だって、可愛らしい女の子だってことを」
強く、はっきりと言う。
「箒の気持ちも解らない奴が巫山戯た事を言うなぁ!!」
一夏の言葉に男子達は黙り込んでしまう。しかし、
「う、うるせぇ!」
「やっちまえ!!」
「うおおおおおお!!」
男子達は悔しさで殴りかかってくる。一夏は箒を護るように男子達に飛び掛かった。
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その後、先生がやってきて収まった。偶然通りかかった友達が俺達の事を見つけて呼びに行ってくれたらしい。俺一人じゃ5人はきつかったから正直助かった。友達の証言もあって男子達は先生の説教を受けることになった。俺も男子を殴ったから注意を受けたけど、箒が庇ってくれてそこまでは言われなかった。
その日の帰り道、箒と一緒に帰っていると箒が話しかけてきた。
「一夏…」
「何だ?」
「その、今日は助けてくれて有難う…」
「いいって、俺はやるべき事をやっただけ、生きる上で大事なことをな」
今日の事で箒が感謝の言葉を言ってくれた。俺は当然のことをしたんだと言った。辰巳さんが教えてくれた事をやっただけ。
「それでも…、嬉しかった。あの時の一夏は、私のヒーローだった」
箒が呟く。その顔は、どこか赤かった。
「ヒーロー?」
「ああ。一夏は私を助けに来てくれた、私の為に怒ってくれた。それがとっても嬉しかった」
そう言って箒は俺の前に顔を向けて微笑む。
「有難う、一夏」
その時見せてくれた箒の笑顔はとっても可愛かった。
その出来事以降、箒とはもっと仲良くなった気がする。毎日が楽しい。辰巳さんに教えて貰った事で箒を助けることが出来て本当に良かった。本当に凄いな、
あ、そうそう。辰巳さんが凄いのは相談にのったり、大事なことを教えてくれるだけじゃないんだ。辰巳さんは剣道の達人ってのはさっき言ったけど、『居合い抜き』はもっと凄い。前に見せて貰ったんだけど、とっても格好いいんだ!
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道場の中央に居合刀を鞘ごと握った辰巳さんが立ち、その周りに巻藁を縦にした物が囲むように立っている。そしてそこから離れた壁際に俺と箒、千冬姉と龍韻先生が正座して眺めている。
辰巳さんが腰を低くし、居合刀の持ち手を握り構える。刀はまだ鞘から出ていない。辰巳さんは構えた体勢のまま動かない。そのままずっと時間だけが過ぎていく、
その瞬間…
風を切る音と金属が当たる納刀音が聞こえたかと思うと、辰巳さんはゆっくりと体勢を元に戻す。そして数秒後に巻藁は全て横に真っ二つになって倒れた。
その光景に思わず拍手をしてしまう俺、それに続いて眺めていたみんなも拍手をした。
「すっげえ!!」
「あんがとね、一の字」
辰巳さんが笑いかける。何時見ても辰巳さんの『居合い抜き』はその剣閃が見えない。
「いや、お見事です」
「ありがとです、龍韻さん」
「まったく見えませんでした…」
「鍛錬の
龍韻さんが誉め、箒が感動した声で呟く。
「相変わらず凄いですね、」
「わっちの専門は居合いじゃっち、
千冬姉も感嘆の声を出す。
「一の字も頑張るっちゃっち、出来るったい」
「
頑張れば俺でも出来るようになると言ってくれた。冗談でも嬉しかったんだけど…
「
どうやら本当らしい。俺も辰巳さんみたいに出来るんだ…
「あの…、私は出来ますか?」
箒も辰巳さんに尋ねる。箒と俺は剣道でライバル関係だ。俺に才能があるって言ったことが悔しいのかな?
「そうじゃっちねぇ、箒ちゃんには
「そう……ですか…」
悲しそうに箒は呟く。それを見た辰巳さんは慌てたように、
「
そう言って辰巳さんは周囲をキョロキョロと探った後、
「龍韻さん、
「硬い物ですか? そうですね…」
何か鉄みたいな硬い物が無いか龍韻先生に尋ねている。龍韻先生は少し考えて、
「最近、神社の石柱を変えたのですがその古いのであればあるのですが…」
「そいを
「捨てる予定でしたので構いませんよ」
「
そう言って辰巳さんは石柱のある場所を教えて貰い、持ってきた石柱を道場の中央を置いた。鉄で無いにしても石でできた柱だ、そう簡単には斬れない。
「よう見っちゃれ」
そう言って辰巳さんは石柱の前に立ち、俺達も壁近くに下がって辰巳さんを見つめる。辰巳さんは居合刀を抜くと頭上に振り上げてそのまま構える。空気が変わったような気がした。先程の居合い抜きの時は鋭い感じだったが今はなんだろうか? 燃えるような激しい感じがした。
そして…
「ズェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
今迄聞いたことの無い、辰巳さんの怒号の様な大声が道場内に響き渡る。その声に思わず身が竦んでしまう。辰巳さんは叫びながら振り上げていた居合刀を斜めに振り下ろした。
力強く振り下ろしたからか風が吹き上げる。俺や箒、千冬姉の髪が揺れる。振り下ろした居合刀を辰巳さんが納刀すると、石柱は刀を振り下ろした方向へ真っ二つになってずれていく。斬りずれた石柱は音を立てて倒れた。
「凄ええぇぇぇ! そして格好良い!」
思ったことを俺は叫んでいた。漫画の剣豪みたいな一閃、興奮しない訳が無い。
「そんに凄かっち?」
「当たり前だろう! 漫画とか、映画みたいな一振りじゃん!」
「本当に辰巳さんは凄いですね…」
興奮が冷めない俺と俺程じゃ無いけど声が高くなっている千冬姉、辰巳さんは俺たちに笑いかけると箒の前を向いた。
「箒ちゃんには
「どういうことですか?」
少し不思議そうに箒が尋ねる。俺もさっきのやつとの違いが良く解らなかった。刀を納刀しているかしていないかって事かな?
「
「「『動の居合』?」」
声を揃えて俺は箒と尋ねた。『居合抜き』には種類があるって事なのか?
「先程やったのが『動の居合』なら辰巳さんがいつもやられているのは『静の居合』ということですか?」
「大当たりじゃっち、千冬ちゃん」
千冬姉の問いに辰巳さんは正解だと答える。つまり…
「俺は『静の居合』が合っていて、箒には『動の居合』が合っているって事なのか?」
「
そう言って辰巳さんは鞘に入った居合刀をポンポンとたたく。
「静かに精神統一っちしたんば、一閃を放つのが『静の居合』、構えて己の全力を出し切なって一閃を放つのが『動の居合』じゃ」
そう説明して辰巳さんは俺と箒を見る。
「一の字の剣道ば相手を良う見て慎重っちやるっちゃ、箒ちゃんの剣道ば
辰巳さんは俺達2人の剣道のスタイルを言った。俺のは相手の動きを窺って余計な動きをせず、慎重に打ち込むチャンスを狙うスタイル。箒は相手に攻撃を繰り返し、その中で相手の隙や癖等を見付けそこから打ち込むスタイルということだ。
「
「へ~、」
「成程…」
辰巳さんの説明で俺達は納得する。その時ふと思った。
「じゃあ千冬姉は『静の居合』と『動の居合』のどっちが合ってるんだ?」
「む、私か?」
俺に名前を言われて千冬姉は反応する。辰巳さんは顎に手を添えた。
「そうでね、千冬ちゃんは両方ば出来っとよ」
「「え、両方!?」」
思わず大声を出してしまう俺と箒、千冬姉も声は出さずとも驚いた顔をしていた。
「千冬ちゃんは守る
「そうですか」
「凄えな、千冬姉は…」
千冬姉は少し恥ずかしそうだった。会話を終えると龍韻先生が辰巳さんに声を掛けた。
「辰巳さん、この後宜しいですか?」
「
「はい、恥ずかしながら先程のモノを見せられては…」
少し恥ずかしそうに頭の後ろを掻きながら龍韻先生は言う。辰巳さんはニヤッと笑っていた。
「よかばい、やりもっそ!」
「有難う御座います」
辰巳さんが何時も龍韻先生とやっている事、それは二人での実戦型の試合をするということだ。今迄何度か見て来たけど、はっきり言って凄い。凄いとしか言えないのが悔しいけど、唯、凄いとしか言えないのだ。
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「先生、辰巳さん頑張れ!」
「有難う御座います、一夏君」
「おうさ、一の字」
辰巳さんと龍韻先生が道場の中央で対峙する。俺達は勿論、壁際で見学だ。はっきり言って壁際でもその試合を見るのは少し勇気がいる。辰巳さん達が出す覇気? と言うのだろうか、それがビリビリと伝わってくるのだ。初めて見た時は思わず泣きそうになった程だった。
「参ります、」
龍韻先生が刀を抜き、正面に構える辰巳さんを見据える。その表情はいつもの優しい顔では無い、バトルものの漫画でよく見る、強い敵と対峙した
「何時でも良かばい」
対して辰巳さんは刀を抜かぬまま、直立していた。こっちはいつもとほとんど変わらない、お気楽そうで少し真剣な表情だった。
「はぁぁぁぁぁ!」
開始と同時に龍韻先生は辰巳さんへ踏み込んで攻めて行く。早速、先生の覇気が伝わってきた。
「ふっ…!」
龍韻先生の斬撃を辰巳さんは鞘で流す。
「せいっ!」
流された勢いを殺さずに龍韻先生は刀を振り上げるように斬り込むが、辰巳さんは素早く下がって回避する。
「はっ! たぁ!」
下がった辰巳さんに容赦無く連続で斬りかかる。辰巳さんも避け切れない斬撃を鞘で受け止めて防ぐ。
「まだ抜きませんか……、ならば!!」
龍韻先生が素早く辰巳さんに近づく。辰巳さんは離れようと下がるが、先生の方が一気に近づき辰巳さんの和服の袖を掴む。
「むっ!?」
「篠ノ之流は剣だけではありません!」
龍韻先生は剣道を教えているものの、本来は篠ノ之流という古武術を代々引き継いできた。
戦国時代において鎧武者達が入り乱れる戦の中で生き残るために編み出されてきた技術。相手に掴み掛り武器を奪ったり、動けなくさせたりする掴み技もその一つだ。
龍韻先生は辰巳さんをそのまま大きく投げ飛ばした。
「はぁっ!!」
「ぐっ…なんのなんの!」
投げ飛ばされた辰巳さんは受け身をとって着地するがそれを見逃す筈無く、龍韻先生は詰め寄って斬り込み、プレッシャーを与えていく。
「だあぁぁぁぁぁぁ!!」
「くうっ……やばいっちゃ!」
斬撃を体を捻りながら躱していた辰巳さんだったが、受け身をとった状態からであった為、バランスを崩してしまう。そして遂に…
「ふっ!!」
斬撃を防ぐ為に一閃を放ち、龍韻先生の刀を弾く。弾かれた刀が激しい金属音を立てた。
「くっ!!」
「おかわりじゃっち!」
刀を弾かれ軽く仰け反る龍韻先生に辰巳さんは居合刀を鞘に戻した後、もう一閃放つが、先生は流れるように弾かれた刀を振るい受け止める。
「
龍韻先生に向けて何発もの斬撃を飛ばす。一発毎に納刀しているのに遅く感じさせない、風のような素早い抜刀、先生も反撃したい様だけど辰巳さんの居合抜きの威力が大きく、刀を思うように触れない。
刀同士が激しい金属音を鳴らす。2人が今使っているのが模造刀とはいえ、一撃でも綺麗に決まれば骨は簡単に折れてしまうだろう。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
刹那、龍韻先生は素早く刀を振りかぶり、渾身の力で辰巳さんの一閃を迎え撃つ。互いの刀が大きく弾かれるのを見ると先生は辰巳さんから大きく離れる。
本来、『居合抜き』は相手を間合いの中に引き込み、一閃の元、相手を斬り伏せる一撃必殺の技だ。一閃に全力を込めて放つ訳で普通の斬り込みとは破壊力がまるで違う。そんな一撃を辰巳さんは間合いの中で何発も放ち、龍韻先生は押されながらも全て防いで見せた。
「凄いよな…」
思わず感嘆の声を零す。
「まったくだ、あのように成るのに一体、どれ程の鍛錬が必要なのか…」
「父上も辰巳さんもその壁を超えるには高過ぎる…」
千冬姉と箒も感心した声を出す。箒が言った通り高過ぎる壁だ。でも、俺はそんな高い壁を登り詰めたい。だって辰巳さんは俺の目標だから…
「相変わらず速い抜刀ですね」
「『居合』は速さが命じゃっち」
そう言って互いに構える。
「「………」」
沈黙が流れる。互いに相手がどのように出るかを見定めている。龍韻先生は斬り込める隙を、辰巳さんは斬り返す隙を。互いの挙動を見逃さないようにしながら、互いに一気に飛び込んだ。
「「はあぁぁぁぁぁ!!」」
龍韻先生は斜めに大きく斬り下ろし、辰巳さんは抜刀で斬り上げる。ぶつかりそうになる刀同士、先生は刀で辰巳さんの斬り上げの軌道を逸らす。辰巳さんは大きく振り被ってしまう形になる。そこへ先生は斬りかかるが辰巳さんはくるりと体を回しながら鞘で受け止め納刀する。
「ずぇあぁぁぁ!!」
「まだまだぁ!!」
回転に合わせて再び抜刀する辰巳さんに迎え撃とうと斬り込む龍韻先生。互いに相手の防御出来ないところへ斬り込む。そして、
「引き分けじゃっち」
「そのようですね…」
辰巳さんの居合刀は龍韻先生の首の根本に、龍韻先生の刀は辰巳さんの首筋にそれぞれ当たっていた。
「有難う御座いました」
「うい、またやりもっそ」
辰巳さん達はそう言って互いに会釈した。
「どうですか、今夜我が家で食事でも?」
「良かでっちゃ?」
「ええ、箒や一夏君も喜びますし」
「そいではお言葉に甘えますばい」
俺達は今夜、箒の家で晩ご飯を食べる予定だった。辰巳さんが加わるなら楽しくなるだろうなぁ。
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「御馳走様でった」
「また来て下さいね」
「うい、奥さんにも有難うと言っとうて下さい」
夕食を終え、辰巳は自宅へ帰ることになる。龍韻に礼を言い、玄関前に出ていた。
「辰巳さん!」
いざ帰ろうとしたところで一夏から声を掛けられる。
「どしたっちゃ、一の字?」
「俺、もっと強くなる! そして俺、辰巳さんみたいに人を守れる剣の達人に絶対になる!」
決心したように声を高める一夏、その真剣な顔を見て辰巳は……
【〇〇みたいに人を守れる剣士に絶対になる!】
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妖怪だった自分
「人間を超える力が欲しい」
その願いは叶ったが
人間を超える力を持つ妖怪達に
人間であった自分は馴染める筈も無く
一人寂しく暮らしていた
しかし寂しさには耐えきれず
正体を隠し、流れの剣士として人間の里を転々とする日々
そんな人間の里で暮らしていた日々は
人間であった自分にとって嬉しいもので
自分を尊敬の眼差しで見ていた人間の子供達
共に酒を交わし笑いあった人間の大人達
いづれも楽しい時間であった
共に生きていた平和な時間
しかし突如に平和は崩れ去る
里を襲う流れ者の妖怪達
人間を護る為に力を振るった
血の海に沈む妖怪達
死にかけの妖怪が叫んだ
「同じ妖怪が何故に人間を助けるのか!!」と
妖怪という存在の
妖怪は人間を餌としか見ない
恐れる里の生き残り
自分が妖怪だと知られる事
恐れていた事が起きてしまった
恐れは、恐怖は暴力へと変わっていく
嘗ての子供達は石を投げ
嘗ての大人達は斬りかかる
人間で無いという葛藤
前世で人間であった自分の思い
どっちつかずの自分は
唯、恐怖の暴力を受けることしか出来無かった
止めとなる一太刀を其の身に受け
命の灯が消えゆく時
一つの思いを願った…
ああ、
叶うならば、
いがみ合う様な種族がいない、
「また人間だけの世界で生きたい」と…
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「大丈夫?」
「へ?」
一夏の声で我に返る。目の前には一夏が心配そうな顔をしていた。
「なんか辛そうだけど?」
「大丈夫っちゃ、一の字」
辰巳は笑顔で一夏の頭を撫でながら言う。
「強うなりゃんせ一の字、
「おう!」
一夏の元気な返事を聞いた辰巳は笑うと、篠ノ之宅を後にした。
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「本当に
帰りの夜道で辰巳はポツリと呟く。
「わっちみたいなヒトん守る剣の達人に
嬉しそうな声で、しかし悲しそうな顔で呟く。
「一の字、
風が吹き、近くの樹木から木の葉がヒラリと落ちてくる。それを見た辰巳は構えをとる。刀を持っていないのに、まるで持っているかのように構える。
木の葉が頭上近くに来た時、
ヒュパッ
持ち手である手を素早く振るう。そして納刀する構えをとった時、木の葉は粉微塵にバラバラになっていた。
「どっちつかずなわっちの剣は血を
バラバラになり散っていく木の葉を眺め、辰巳は寂しそうに帰っていった。
如何でしたか?
転生者は転生条件が死に際に後悔することなので結構ダークな事になってます。
虐められている際の箒はこんなもので良かったでしょうか?
次回は姉である千冬と2話目以降空気であった真助にスポットを当てていきます。
では次回『千冬と真助』お楽しみに。