今回は千冬と空気だった真助についてのお話です。
織斑姉弟の両親については捏造設定となっておりますのでご注意下さい。
それでは『2回目転生者達が切り開くIS世界 第7話』始まります。
私は
その母さんも一夏を生んで間もない内に家を出て行ってしまった。
本来なら私達を捨てた母さんを恨む筈だった。でも出て行った時に見せた、あの顔を思い出すと、どうも恨みきることが出来なかった。
あんな悲しそうな顔をされては……
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いつも母さんは夜遅くまで働いていた。父さんが居ないから1人で私の面倒を見ていたのだ。それでも母さんはいつも笑顔を絶やす事は無かった。
「どうしてお父さんが居ないの?」
ある日私が母さんに尋ねた。母さんは少し困った顔をして答えた。
「お父さんは遠い所にいるのよ」
「何で遠い所にいるの?」
「お父さんはね、大事なお仕事をしているの、その仕事をしないとお母さんや千冬も困っちゃうの、千冬は困ったら嫌でしょう?」
「うん」
「御免なさいね千冬、お父さんに会いたいでしょう?」
「ううん、お父さんがお母さんや私の為にお仕事しているなら我慢する」
「そう、良い子ね」
小さかった私は当時の事を良く解っていなかった。
母さんは時々長くいなくなる事があった。その間、私は近所の友人の家でお世話になっていた。母さんは出張で出ていると言っていたが本当であるかは分からない。
ある時、その出張から帰ってきた後、母さんのお腹が徐々に大きくなっていた。
「もうすぐ千冬がお姉ちゃんになるのよ」
「本当!?」
その時の私は純粋に姉になることが嬉しかった。母さんのお腹を触ったり、音を聞いたりしていたっけ。
そして私が9歳の誕生日を迎える時、一夏が産まれた。
「ほらお姉ちゃん、弟の一夏よ」
「あう~」
「わぁ…」
母さんが抱っこしている赤ちゃん、私にとって弟となる一夏はとても可愛かった。こうして家族が増え、毎日が楽しかった。あの日が来るまでは……
一夏が産まれて数か月後、母さん宛に手紙が来た。出て行く時に一緒に持って行った為に内容は知らない。唯、慌てた様な、ショックを受けた様な顔をしていた事を覚えている。
「千冬、お母さんちょっと出かけてくるわ」
「お母さん?」
「一夏の事、お願いね…」
そして外へ出る時に悲しそうな顔で私達を見て、
「御免なさい……」
そう言って出て行った。
何日経っても母さんは帰って来なかった。おかしいと思った友人の両親は警察に捜索願を出したのだが、母さんは見つかることは無かった。こうして私と一夏は親戚の家に預けられることになる。
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その時の母さんの事を一夏には教えていない。
もし教えたら、一夏も母さんの様に何処かへ行ってしまいそうだから、唯一の家族が消えてしまいそうだから、そう考えが頭に
この後、私達は親戚の家を盥回しにされることになる。どの家でも元々から居なかった父さんは勿論、私達を捨てたと母さんを非難した。私だけが母さんのあの時の顔を忘れることが出来ず、非難できなかった。一時、一夏と引き離されそうになったが私は必死に抵抗したし、一夏は泣き喚いて泣き止むことが無かった為、そのことは白紙になった。一夏は私の唯一の家族なのだ、離れるものか…
そして何回かの引き取りで母さんの母親、私達の祖母になる方の家で暮らすことになった。祖父は2、3年前に病気で亡くなったそうだ。母さんが消えて数ヶ月後、祖母宛に手紙と荷物が来たそうだ。荷物には母さんの貯金通帳やその他財産管理の書類があり、手紙には、
「千冬と一夏を御願いします、不肖な娘で御免なさい」
とだけ書かれていた。
祖母に出会えたことで私は母さんの事について色々と知ることが出来た。今迄、母さんの事を私は知らなかった。アルバムで見せて貰ったのは私が産まれた時、赤ちゃんで母さんが抱き上げている時以降の写真しか見たことが無かった。
祖母に聞いた話では、母さんは悪い事や困った人を見過ごせない、そんな性格であったらしい。いつもニコニコしており、皆から好かれていたそうだ。様々な武道をしており、大会でも優勝候補の常連であった。大人になった母さんは人を護る仕事に就きたいとボディガードとして世界を飛び回るようになった。祖父母は反対したそうだが、母さんは自分の考えを曲げること無く、押し通したという。日本から飛び立った後は毎月、何処で何をしているか写真付きで手紙を送っていたらしい。
そんなある日、母さんがアメリカから送ってきた手紙には「気になる人ができました」と書かれていたそうだ。そして付属の写真には男性と笑顔で写っている母さんの姿。その写真は祖父が死ぬ間際に一緒に持っていきたいと遺言を残していたので祖父の亡骸と共に燃やしてしまったそうだが、祖母曰く以降の手紙や写真にはそれらしい男性について話が無かった事から、その写っていた男性が私達の父親、父さんではないかという話だった。
この街に引っ越してきてからは変わった人達と多く知り合いになっている気がする。別に嫌では無い。むしろ毎日が楽しく感じられるようになり、出会って良かったと思っている。祖母が寿命で亡くなった後も寂しく無かった。
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「やぁっ!」
「踏み込みが足りんぞ」
打ち込んできた千冬の攻撃に真助は軽く一歩下がって避け、腕を掴んで投げ飛ばす。
「わわっ!?」
そのまま背中から床に叩き付けられそうなところを真助は千冬の背に手を当て支え、ゆっくりと降ろす。
「まだ大振り過ぎるな、隙が大きいぞ」
「はい、すみません……」
「謝る必要は無い、言われた事を今後に生かせ」
「はい!」
千冬は剣道以外に辰巳から『居合い』を、真助から『護身格闘術』を習っていた。一夏を護りたいという思いで始めたのであるが、それと同時に龍韻や辰巳、真助の様に強くなりたいと思うようになっていた。そして、
「荒削りだが、腕が上がっているな」
「有難う御座います!」
「千冬の努力の賜だろう?」
嬉しそうに千冬は答える。一夏が辰巳に憧れているように、千冬は真助に憧れを抱いていた。いつぞやの道場にて、龍韻に古武術の話を聞きに来た真助が試しに試合をどうかと龍韻に尋ねられた。模造刀を構える龍韻に対して真助は2本の小太刀を構えた。
その後の試合は圧巻の一言だった。真助は怒濤の連撃で龍韻を攻めていく。龍韻がそれを受けながら投げ飛ばそうとすれば逆に真助が投げ返す。真助も剣術だけで無く、投げ技や徒手空拳も心得ていたのだ。結局試合は引き分けであったがこの後、千冬は真助から剣道に無い戦い方を教わることにしたのであった。
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「千冬、今週の週末は時間があるか?」
練習を終え体を休めていたところ、ふと真助さんは私に尋ねてきた。
「今週末ですか? ええと、特に用事はありませんが」
「その日、付き合って欲しいのだが良いか?」
別に断る理由も無いので私は了承した。
「はい、構いませんが…今日みたいに日曜日では駄目なのですか?」
「生憎と日曜日は仕事が出来てな」
「そうですか…分りました」
「すまないな、それでは週末、昼頃に駅前で落ち合おう」
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その晩、一夏に週末に出かける事を伝えた。すると一夏は、
「真助さんとデート?」
なんてのたまったのでチョップしてやった。
「いてっ」
「馬鹿者、からかうんじゃない。デートしようと言われた訳じゃ無いのだぞ?」
「だって、千冬姉と真助さん仲良いじゃないか」
「それは真助さんには武術について色々と教わっているだけだ、」
本当だぞ?
「む~、お弁当要る?」
「弁当か、そうだな…」
一夏はチョップされた頭を押さえながら聞いてくる。強くチョップした覚えは無いが…
「作ってくれるか?」
「分かった、真助さんの分も作っとくよ」
「頼む」
外食でお金を使うよりも弁当を持って行った方が良いだろう。後は当日着て行く服装をどうするかだが、束に相談しようか?
後で調べたのだが『デート』とは恋人同士でなくとも唯、男女が2人で付き合って何かすることを言うらしい、つまり意味としては合っているということだ。一夏には後で謝っておくかな…?
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転生者は一般人と比較して悪夢を見る機会が多いという。理由は転生するための条件のせいだ。転生者の共通点として、前世の死に際は必ず何か後悔を抱いているのである。その程度はそれぞれであるが、大抵は酷く後悔した状態である為に転生後の生活においてその出来事をフィードバックとして夢で見てしまうのだ。実際、連盟のメンバーで悲惨な殺され方で死んだ前世を持っている転生者が夢でその出来事を見てしまい、狂い掛けた。催眠操作によって事無きを得たのであるが、転生者の殆どがこの事に頭を悩ませている。
そして同じ転生者である『
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とある都心部、周りのビルは尽く破壊されており、原型を保っているものを見付けることは難しい。そこら中が瓦礫と炎に塗れており、爆発音や銃声、悲鳴が響いている。硝煙と濃い血の臭いだけが辺りに漂っていた。
「はぁ、はぁ、くそったれが…」
其処ら中で起こる爆発、銃声、叫び声。生き残っている仲間が後何人いるのかすらも分からない。俺は物陰に隠れ、手持ちの武装の弾薬の残量を確認する。また近くで爆発音がし、悲鳴と共に飛び散る肉片が視界に映った。また1人死んだ。
頭上を無人の武装ヘリが通り過ぎる。先程仲間を木っ端微塵に吹き飛ばした憎いあん畜生だ。低空飛行をしているくせに俺に気づかなかったのが幸いとその機体目掛けてRPGを撃ち込む。エンジン部に被弾したヘリはバラバラになって墜落した。
この世界では俺は傭兵をやっている。まぁ、前世も傭兵業だったんだが…。現在、俺はとある国の依頼で他国に制圧された都心部を奪還する為に、仲間と共に侵攻していた。傭兵は頼まれた依頼を唯淡々とこなすだけの存在なのだが今回は余りに酷過ぎる。
目的地近くに到着するや否や待ってましたとばかりに派手な洗礼を受けてしまった。これで30人はいた仲間の半分近くが死亡、待ち伏せだった為に退路は絶たれ、目的地へ補給無しで行かざるおえない状況、俺達は進撃せざるを得なかった。
「こちら『キャッスルリーダー』、生きてる奴は応答しろ」
俺は通信機を取り出して周りに呼びかける。『キャッスルリーダー』は俺のコードネームだ。
「繰り返す、こちら『キャッスルリーダー』、誰でも良い、頼むから応答してくれ」
【リーダーさんよぉ…】
「『ルーク』か!?」
漸く応答が来た。
「何処にいる?」
【ショッピングモールっぽい所さぁ…、周りに『足付』がウロウロしているせいで動け無ぇ…】
「他は誰も一緒じゃ無いのか?」
【『ポーン』が隣にいるよぉ、足をやられて歩けねぇ】
「場所は…見つけた。そこにいろ、助けてやる」
周りに敵さんがいないか確認し、ルーク達のいる場所へ向かう。今だ聞こえる爆音は仲間が戦っているからだろうか?
2~3分程走ってショッピングモール跡に到着するが、目の前の状況を見て歯噛みする。
「くそっ、最新鋭の足付が5機も!?」
『足付』とは走脚戦車の呼び名で、目の前にいる連中は最近導入された新型だった。連中のおかげで俺達が就いている国軍は劣勢に陥っている。此処にいるのが1機だけならまだ何とかなったかもしれないが、数が多すぎる。
連中の生態センサーに引っ掛からない位置ギリギリで様子を窺う。其処ら中が瓦礫で埋もれているからルーク達と合流するには目の前の入り口跡から侵入するしか無い。だが、足付のクソッタレ共が陣取ってやがるから行くに行けない。他の仲間の合流ポイントなのか、連中が動く様子が全く無い。
「どうしろってんだ…」
そうぼやいた時、俺から見て一番左にいた足付が爆散した。搭乗部位が木っ端微塵になり、脚部だけが残る。他の足付共は展開して攻撃された方向へ砲撃を開始した。砲弾の着弾した場所が吹っ飛ぶ。爆炎が揚がる中、その中から多数のミサイルが飛んで来る。足付共は機関砲で迎撃するが数発が生き残り、そのまま一番近かった足付に襲い掛かる。被弾した足付は今度は脚部含めて爆発した。残り3機…
「やるしかねぇか…」
俺は決心する。誰が攻撃しているかは解らないが、折角のチャンスだ。ウェポンバッグから対装甲兵器用機関砲を取り出して突撃をかまそうとする。その時、
【誰か~、応答してよ~】
「!? 『ビショップ』か?」
【あ~、隊長だ~】
通信機から連絡が入る。おれは慌てて物陰に戻って応答する。
「今何処だ?」
【足付に集中砲火されてるよ~】
「あのミサイルお前が撃ったのか!?」
【あいつ等私の仲間を皆、殺りやがったんだよ~。復讐だよ~】
「最新鋭の足付5機にお前1人ってアホか!?」
通信機から爆音が聞こえた。ついでに【ふみゃ~!?】なんて聞こえた気がしたが無視した。
「今連中のケツにいる、ミサイルはまだあるか?」
【さっきのでランチャー無くなったから、スティンガーぐらいしか無いよ~】
「お前から見て一番右の奴を仕留めろ、他は俺がやる」
【分かった~】
通信機を切り今度こそ飛び出す。ビショップの方に夢中になっているのかこちらに気づかない。一番近い足付に徹甲弾の雨を喰らわせてやり蜂の巣にしてやる。爆発はせずに破片がバラバラと散らばる。
「くそっ」
1機破壊された漸くこちらを振り向いた。次の標的に容赦無く俺は撃ちまくる。砲身が砕け、装甲は穴だらけ、脚部は破壊されて崩れ落ちる。そのタイミングでビショップの放ったスティンガーミサイルが残りの足付に直撃する。
「終わったな…」
【お疲れ隊長~】
足付の連中を葬り俺は安堵した。向こうの瓦礫の山でビショップが手を振っていた。そこへ砲弾が降り注いだ。
「ビショップ!!」
瓦礫の山が吹き飛ぶ。その瓦礫の欠片は赤かった…
「くそ、くそくそくそ……」
砲弾がこちらにも降り注いでくる。新手が来たようだ、俺はショッピングモール跡の内部に駆け込んだ。さっきまで俺がいた所は爆音と共に粉々になっていた。
奥へ進むとルークとポーンがいた。ルークは大丈夫そうだがポーンは片足が無くなっていた。止血はされていたが弱々しかった。
「来てくれたんだねぃ…」
「ビショップが殺られた、外には敵さんがいる」
「状況はやばいねぇ…」
「た、隊長…」
「大丈夫か?」
「どうもこうも、片足が無いから動けませんよ」
「奥へ行くぞ、奴ら入って来るは…」
言い切らない内に銃弾が横を通り過ぎる。ガシャガシャと金属音を立てながら蜘蛛のような無人兵器がやって来る。
「もう来たのか!? ルーク、ポーンを担いで奥へ行け!」
「了解!」
ルークとポーンを先に行かせ、殿を務める。弾の残量が少ない機関砲を撃ちまくり蜘蛛共をバラバラにする。飛んでくる弾が肩を貫いた。
「がぁっ!?」
痛みを堪えながら撃ち続け、ガラクタの山にする。増援が来ない事を確認した俺は空になった機関砲を捨て、ルーク達の後を追いかけた。
「ルーク、ポーン!」
2,3分程走って2人の後ろ姿が見えた。追いつこうとした時、2人の横側の壁が吹き飛んだ。
「また…かよ…!」
俺は爆風で倒れる2人に駆け寄る。崩れた壁から蜘蛛共が入り込んできた。
「くそったれがぁ!」
アサルトライフルを取り出して撃ち抜いていく。
「ほらっ、早く立て!」
「うう…」
爆風で感覚がまだ戻らないのであろう、ルークは立てなかった。飛び交う弾丸の中、俺はルークとポーンを引っ張って行く。
「隊長、私は置いていって下さい。足が無いんじゃこの後も足手まといです…」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ! 見捨てて堪るか!!」
ポーンに怒鳴って俺は2人を引っ張る。別の部屋へ続く扉までまだ数メートル、近くに天井が崩れて出来た瓦礫の壁があったのでそこに避難する。
「ルーク、援護しろ。ポーンもだ」
「了解リーダー」
「はい隊長」
俺が囮となって瓦礫の壁から離れる。援護射撃の中、アサルトライフルで1機ずつ確実に撃ち抜いていき、手榴弾を連中の中心に投げ込んで柱の壁へ隠れる。派手な爆発が起こり連中が吹っ飛ぶ。柱から出た俺は生き残りを仕留めていく。最後の1機を撃ち抜き、辺りは静かになった。
「よし、さっさと奥へ…」
どうやら神様って奴は俺達のことが嫌いなようだ。再び壁が吹き飛ぶと今度は足付が現れた。
「おいおいおい、嘘だろ!?」
蜘蛛の機関砲が可愛い様な巫山戯た砲撃を放ってきた。避ける暇も無い。俺達は爆風に飲まれた。
「がふっ、くそったれが……」
「た、隊長…」
アーマーが砕け、ズタズタになった体を無理矢理起こす。ポーンの声がした方を向くとポーンが倒れている。
「ほら、しっかりしろ。ルークの奴は…」
ルークがいた所には『ルークだったモノ』があった。上半身が吹き飛び下半身のみとなった死体だ。
「ルーク…ぐおっ!?」
足付が次弾を放ってきた。直撃こそ無いが爆風でポーンと共に吹き飛ばされる。体を壁に叩き付けられる全身に走った衝撃で意識が一瞬飛ぶ。
「がはっ!」
蹌踉けながら体を起こす。体中が痛い、千切れてこそ無いが体の至る所から出血している。
爆煙で周囲は良く見えない。サーモグラフィーをいった便利な装備は素手に無い。ウェポンバッグも無くなった。
「ぽ、ポーン。何処だ…?」
「たいちょ…こふっ」
「ポーン!?」
ポーンは近くにいた、だが口から血を大量に吐いている。内臓をやられたようだ。
「しっかりしろ、逃げるぞ」
「隊長だ…だけでも、ゲホッ。に、逃げて…」
「言うな、黙ってろ、お前だけでも死なさん」
ポーンを担いで逃走を図る。勿論、敵が逃がしてくれる筈が無い。砲撃が、銃撃が俺達を襲う。足付の機関砲の弾丸が俺の脇腹を貫き、左足を膝から吹き飛ばす。
「くそ、が…」
支えるモノなど無く、俺達は倒れる。もう動けなかった…
「畜生…」
止めとなる砲弾を喰らい、俺はポーンと共に砕け散った。
(死にたく、無ぇよ…)
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「はぁ、くそっ」
悪夢から覚めた真助は体を起こすと悪態を吐いた。何度見ても気持ち良いモノでは無い。悪夢なのだから当然なのだが、仲間が皆死に、悔しさの中で自分も殺される様な状況を何度も体験するのは勘弁して貰いたい。連盟に行けば治療してくれるのだろうが、始世の頃から俺は医者が大嫌いだ。前世の強化手術すらも嫌だったのだが仲間に無理矢理気絶させれて目が覚めたら手術が終わっていた。上手くいったのは良いが俺は気絶させた仲間を殴ってやった。まぁおかげで今世でギフトとして超人並みの肉体を持っている訳だが……
「シャワーでも浴びるか…」
シャワールームへ行き、寝汗を流す。冷たい水が体に心地良かった。体を拭き、服を着る。時計を見ると6時を少し過ぎたところであった。千冬達のいる街へは新幹線と電車を乗り換えて約3時間、駅はすぐそこであるが余裕は欲しい。朝飯は途中のコンビニで何か買うとしよう。そう考えながら真助は家を出た。
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待ち合わせ時間の5分前に来たが真助さんは既に来ていた。
「すみません、待ちましたか?」
「なに、俺もさっき来たばかりだ」
そう答えた真助さんはダークグリーンのシャツにグレーのズボン、シャツの上に茶色のレザージャケットを着こんでいる。中々格好良かった。
「態々お洒落して来てくれたのか?」
「へ? いや、その…」
私の方は紺色のチェニックに白のロングシフォンスカートだ。私自身が余りお洒落に関心が無かった為、束に相談に乗って貰ったのであるが、
「遂にちーちゃんの春が来たんだね! 束さん感動! これは頑張るっきゃない!!」
と何か勘違いをされながら
「綺麗だ、似合っているぞ」
「そ、そうですか?」
褒めてくれたのが純粋に嬉しい。
「ところで、そのバスケットはなんだ?」
「これですか? 一夏に頼んで弁当を」
「弁当か、どこか店で食べようかと思っていたから有難い」
「近くに公園がありますから、そこででも」
私は真助さんを連れて公園へ向かった。
休日な為か人が多い。広場では子供達が遊んでおり、ベンチではお年寄り達が話をしていたり将棋に興じている。空いているベンチに座り、バスケットを開けた。
「ほう、これは凄いな…」
バスケットの中身は種類多々のサンドウィッチ、串に刺さった鶏の唐揚げ、カップグラタン、カットフルーツが綺麗に盛られていた。流石、一夏だな。
「「いただきます」」
手を合わせて食べる。サンドウィッチはベーコンとレタス、トマトを挟んだBLTとツナにマヨネーズを和えたツナマヨ、刻んだ玉葱とタマゴにマヨネーズを加えたタマゴサラダの3種類。BLTはベーコンのカリカリさと塩気、レタスのシャキシャキした感触、トマトの瑞々しさと酸味が実に合っている。
一口サイズの唐揚げも時間が経って冷めてはいるが揚げ物のサクサクさは無くなっていなく、ニンニク醤油の香りが食欲をそそる。
カップグラタンはマカロニ、海老、マッシュルームが入っている。ホワイトソースと香ばしいチーズが実にマッチしていた。
「どのサンドウィッチも美味いな」
「唐揚げもどうですか?」
「いただく」
デザートであるカットフルーツはリンゴ、オレンジ、メロンの3種類、どれも甘かった。
「そういえば、一夏がコレを作ったのだったな」
「はい、一夏の料理は美味しいですから」
「千冬は料理をしないのか?」
「わ、私ですか!?」
「女だから、と云う訳ではないがいつも一夏が作ったものしか見ていないからな」
「その、私は家事がてんで駄目で」
「そうなのか?」
「料理はしたことはありますが、失敗して焦がしてばかりで…」
「練習は?」
「時々しています。でも中々上手くはいかなくて」
「練習はしているのか、なら…」
カットフルーツを囓りながら真助さんが私を見る。
「今度作ってくれないか?」
「真助さん…にですか?」
「駄目か?」
「い、いえ。唯、美味しくできるかは分らないので…」
「構わない、俺は千冬の料理が食べたい」
「!?」
私の作った料理を食べたい…、それって…どういう意味で言ったのですか?
「頑張ってみます」
「楽しみにしている、御馳走様」
この後、真助さんと様々な店を見て回る。本やであったり、服屋やアクセサリーショップなど巡った。
「少し休憩するか?」
「そうですね」
休憩がてらに喫茶店に入る。真助さんはコーヒーを、私は紅茶を注文する。注文した品が来て口内を潤し、ふと、気になったことを真助さんに尋ねた。
「真助さんは何処に住んでいるんですか?」
「俺か?」
「ええ、源さんと同じく新潟の方ですか?」
「そうだな、今住んでいるのはそこで当っている」
「元々は違った?」
「生まれは沖縄だ」
そう言って真助さんはコーヒーを啜る。沖縄か、意外だな…
「意外そうな顔をしているな」
「へ!? いや、沖縄なら方言は話さないのかなって思ってしまったので」
「沖縄生まれが皆方言を話す訳では無いぞ、実家ももう無いしな」
「そうなんですか?」
「生まれて間もなく両親は、その、死んでしまってな…」
真助さんは申し訳なさそうに語る。悪いのは聞いた私の方なのに…
「すみません、悪い事を聞いてしまって、」
「気にする必要は無い。まあ、それで孤児院でずっと暮らしていたんだがある日な、」
「ある日?」
「中学を卒業する位だったか、ドクターと出会ってな」
「源さんと…」
「彼に付いて行って今に至る訳さ」
「何故付いて行こうと思ったんですか?」
「そうだな、彼の傍にいたら退屈しなさそうだと思ったからだな」
「退屈ですか…」
実際、源さんと一緒なら退屈しないだろうと思った。私も源さんや束と共にいる時はまったく退屈しないし。
「しかし、千冬も大変だな。一夏と2人での生活だろう?」
「はい、でも先生達がいますし、それに…」
「それに?」
「真助さんもいますし…」
我ながら何て事を言っているんだ! 真助さんは少し呆気にとられた様な顔をしていたが直ぐに戻った。
「そうか、それなら良い」
「……」
若干、俯いてしまう。変に思われなかっただろうか?
「今後の進路はどうする気だ?」
「高校を卒業したら就職するつもりです」
「大学へは進学しないのか?」
「母の残した貯金も残り少ないですし、一夏の進学も考えると…」
「そうか…、余計な世話だったな」
真助さんはそう言って、またコーヒーを啜る。そして、
「千冬、就職するならヤマト重工に来ないか?」
「は!?」
突然の言葉に思わず声が出る。ヤマト重工へ私が?
「あの、私は束みたいに成績は良い訳では…」
「あそこは研究・開発だけが仕事という訳では無いぞ、俺だってそうだしな」
「真助さんがヤマト重工に!?」
「ああ、SPみたいな仕事をやっている。警察組織の様なものでな、辰巳も入っている」
「辰巳さんも!?」
まさか辰巳さんがヤマト重工に勤めていたなんて…
「贔屓する訳では無いが、推薦書を千冬に渡すことが出来る。千冬の腕ならば問題無いしな」
「そんな、私はまだまだです…」
「卑屈になる必要は無い、それとも俺の言葉は信用出来ないか?」
「その言い方は、卑怯です…」
「む、すまない」
真助さんの言葉に少しむくれてしまう。真助さんは申し訳なさそうな顔をしている。
「まぁ、一つの道として考えてくれ」
「考えておきます」
「この後行きたい店があるんだがいいか?」
喫茶店を出て真助さんは私に尋ねた。
「構いませんけど?」
「有難うな」
そう言った真助さんの後を追う。着いた先は先程寄ったアクセサリーショップだった。
「どうしたんですか?」
「さっき良さそうなのがあったからな」
「良さそうなの?」
「すまないがコレを頼む」
真助さんは店員に壁に飾っているネックレスを指さす。純銀製で羽がデザインされたネックレスだ。
「包まれますか?」
「ああ、リボンとかで飾ってくれ」
真助さんは料金を払い、ラッピングされたネックレスが入った箱を受け取る。
「誰かのプレゼントですか?」
「何を言っている? 千冬へのだが?」
「わ、私!?」
「明日が誕生日だろう? 一夏から聞いてな、生憎俺は明日は仕事で来れないからな、」
そう言って真助さんは箱を私に渡す。
「一日早いが、誕生日おめでとう千冬」
「あ、有難う御座います!」
「本人がいる前で買ったりしているから風情も無いがな…」
「そんな、嬉しいです…」
正直に思ったことを言った。嬉しい…
「あの、付けて良いですか?」
「それは千冬のだ、断る理由は無いさ」
ラッピングを解き、箱からネックレスを取り出す。そしてそのネックレスを付けた。
「その、どうですか?」
「ああ、似合っているぞ。気に入ってくれたら嬉しいが」
「嬉しいに決まっているじゃないですか」
「そうか、そう言って貰えて俺も嬉しいよ」
その時見せてくれた真助さんの笑顔はとても素敵だった。
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千冬の誕生日である日曜日、いつものように一夏が作った料理を篠ノ之宅へ持って行き、弟と篠ノ之家の方々、わざわざケーキやプレゼントを持って来てくれた辰巳や源之丞に囲まれ、千冬は16歳の誕生日を祝われた。
「「「「「「「お誕生日おめでとう!!」」」」」」」」
「皆、有難う」
真助は仕事でいない。昨日プレゼントしてくれたペンダントを触り、嬉しさを感じながらも、千冬は寂しさを感じた。
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千冬が祝われている時、真助はとある港の倉庫街にいた。『蛇』からの話では行方を眩ましていた、連盟に登録されていない転生者が最近になってようやく見付かったらしい。そしてその連中が集まって何かするとの事だ。朝から張り込み、ようやく動きがあった。
動く影を見付けて真助は物陰からその様子を伺う。数は10人足らず、
「何をしている?」
突然の声に驚いて男達が真助の方を振り向く。そして真助の姿を見た男の内3人が顔を歪める。
「転生者…」
「ほう、分るか? まぁ、当然だな」
そう言って男達が立っている場所を見やる。木箱が数多く積まれ、ご親切にも数箱蓋が開いており、中から銃器が顔を覗かせていた。
「日本で銃器の密輸か? どっちにしろ御用だな?」
「くそっ」
転生者の1人がどことも無く拳銃を取り出し真助に撃つ。真助は素早く避け、懐から『デザートイーグルカスタム』を取り出すと一人一人の足に弾丸を撃ち込んでいく。
「があっ!!」
「ぎゃあ!」
「撃て撃てっ!!」
足を撃たれて倒れる者がいる中、撃ち返すが…当たらない。逆に真助は確実に足を撃ち抜いていく。
「くそがぁ、めんどくせぇ!!」
転生者の1人が手を薙ぐ。すると真助がいた場所から炎が吹きあがる。
(
舌打ちをしながら真助は下がる。しかしそこへロケット弾が飛んでくる。
「さっきの
ロケット弾の信管に当たらないように器用に蹴っ飛ばす。しかしそこへ3人目の転生者が駆け寄ってくる。
「!?」
「ぶっ飛べオラァ!!」
その姿が獣の様に変わり果て、殴り掛かってくる。腕で受け止めるが吹き飛ばされる。
「ったく、キツいなコレは!!」
受け身をとった真助は倉庫の屋根へ駆け上がる。
「逃がさねぇよ!!」
獣の姿となった転生者だけが追い掛けてくる。真助は屋根で獣の転生者を待ち受ける。
「追いつめたぜぇ、俺を見たからには死んで貰う」
「やってみろよ、ケダモノが」
「てめぇ!!」
真助の挑発に獣の転生者は飛び掛かってくる。簡単な奴だと真助は思った。
「本気でいくか」
獣の転生者が爪を真助に振り下ろす。しかしそこには真助の姿は無かった。
「何!?」
「遅い」
驚愕する獣の転生者を後目に真助は両足、両腕にそれぞれ2発ずつ撃ち込む。
「があああぁぁぁぁ!?」
弾丸で骨は砕かれ、筋肉は割かれた転生者は動けなくなって倒れる。痛みで悲鳴を挙げているが、真助は無視して残りを片づけるべく屋根から降りる。
「!?」
「後はおまえ達だけだ」
「ふざけるn…」
銃器を喚び出す召喚者は新たな銃器を出そうとする。しかしその暇を与えるような真助ではなく、一瞬にして召喚者との間合いを詰める。
「なっ!?」
「俺を仕留めたいなら0.01秒で召喚しな」
そう言って真助は獣の転生者と同じく両腕と両足を撃ち抜く。
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!」
「このっ」
火炎操作能力者が炎を繰り出そうとするが、
「遅過ぎる!」
『
「ギィッ」
痛みで怯んだ相手の足をそのまま撃つ。火炎操作能力者は崩れ落ちた。
「終わったな、思ったより弱過ぎだ」
周囲を警戒しながら真助は呟く。全員の腕と足を封じた。回復系ギフトを持った転生者がいない限り問題無いだろう。真助は携帯を取り出して連盟に連絡する。
「仕事は終わった。押さえたのは転生者3名と一般人7名。転生者のギフトは
携帯を切り、真助は溜息を吐く。
「ドクターや『無刀』は今頃楽しんでいるのだろうな、やれやれ」
愚痴を零し、現場を去って行った。
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「真助さん、」
「どうした?」
「その、弁当を…作ってきました」
「作ってくれたのか?」
「はい、でもまだ余り美味しくないです…」
後日のお昼、恥ずかしそうに千冬は弁当箱を真助に差し出す。
「せっかく俺の為に作ってくれたんだろう?」
「そうですが、やっぱり自信が無くて」
「嬉しいよ、有り難く戴くよ」
千冬から受け取り、真助は弁当を食べる。
「ど、どうですか?」
「少し焦げたりしているが、十分美味い」
「本当ですか!?」
「嘘は無いさ」
そう言って真助は弁当を食べ終える。
「御馳走様、美味かった」
手を合わせた真助の姿に千冬はにっこりと微笑んだ。
如何でしたか?
今回、織斑姉弟の両親について少し書きました。
本作では重要な伏線であったりします。
今回で第1章となる『~出会いを切っ掛けに運命は変わる~』は終了です。
次回から新章、『~羽ばたく夢と動き出す闇~』が始まります。
ようやく原作タイトルでもあるISが機体として登場です。
御意見、御感想お待ちしております。
それでは次回『欠陥と例外』お楽しみに。