2回目転生者達が切り開くIS世界   作:影鴉

8 / 9
「艦これ」はプレイせずにキャラを観賞して楽しむ派の影鴉です。
本作を書く内に愛宕がセシリア、大和が箒に見えるようになりました。
Pixivでも愛宕のコスプレをしたセシリアを描いている人がいたので同じ事を思う人がいるのだなぁと思いました。
今回、とうとう完成したIS(一部魔改造)が登場します。
同時に版権作品の機体や用語も登場します。
後、束が若干壊れてます。

それでは、『2回目転生者達が切り開くIS世界 第8話』始まります。


第2章~羽ばたく夢と動き出す闇~
 欠陥と例外


 『ヤマト重工宇宙開発部門』、ある人物がヤマト重工へ入社した時と同時に開局した部門だ。元々、宇宙開拓の為のパワードスーツや宇宙船、作業用メカ等の開発・研究を行うための案は出回っていたのであるが、総合主任である光浦 源之丞の待ったの一言があった為に準備だけ行っていた。

 

 それでは、ヤマト重工宇宙開発部門が開局された日、つまりある人物が入社した日を振り返ってみよう…

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

 ヤマト重工の多目的ホールは約5000人もの社員が全員入ることが出来る程大きい。そして今日、社員全員がホールに集まり、何が始まるか今か今かと待っていた。

 

 

「諸君、お早う」

 

 

 壇上に社長、大和 栄吉が挨拶をする。社員たちが一斉に視線を彼に向けた。

 

 

「今回諸君に集まって貰ったのは他でも無い」

 

 

 そう言って、背後のスクリーンに『ヤマト重工宇宙開発部門』の文字が現れ、周りが騒ぎ出す。

 

 

「我がヤマト重工で開局予定であった宇宙開発部門が遂に開局されることになった」

 

 

 周りの声が更に高まる。

 

 

「しかし諸君は疑問に思っている筈だ。何故、既に開局できた筈なのに今ようやく開局するのか? と、」

 

 

 そして一端、間を置き、

 

 

「理由としては、ある人物を我が社に招き入れてからと総合主任に言われたからだ。それでは総合主任、説明を頼むよ」

 

 

 壇上から栄吉が降り、代わりに総合主任である光浦 源之丞が現れる。

 

 

「やぁ諸君、我々ヤマト重工は宇宙開発部門を開局し、遂に未知の浪漫であり、人類に残された最後の開拓フロンティアである宇宙開発に手を伸ばす事になった。この時をどれだけ待っていたかと思っている者もいるだろう」

 

 

 源之丞は目の前の社員達を見渡す。誰もが彼の話を聞いている。

 

 

「先程社長が言ったように、何故今になって、ようやく開局することになったか疑問に思っている者もいるだろう。理由はある人物をこの部門の主任として招きたかったからだ」

 

 

 社員達がざわめく。

 

 

「聞き耳の早い諸君の事だ、誰であるか解っているだろう。その人物は数年前にわたしが出会い、我がヤマト重工に誘った人物だ」

 

 

 ざわめきが大きくなる。

 

 

「そして今年度の入社試験を最年少で合格した人物でもある。では何故、そのような人物が宇宙開発部門の主任として選ばれたか、本人に話して貰おう。それでは篠ノ之 束博士、こちらへ」

 

 

 源之丞の呼び声に1人の少女が壇上へ上がる。

 

 

「あれが噂のヤングエリートか…」

「まだ15歳と聞く」

「総合主任のお墨付きかぁ…」

「面白くなりそうだな、これから」

「推薦で主任ポスト…羨ましい」

 

 

 群衆から様々な言葉や視線を受け、緊張している様子で源之丞は若干苦笑している。

 

 

「や、ヤマト重工の皆さん、はじ、初めまして。私が総合主任である光浦 源之丞博士に紹介されました、篠ノ之 束です!」

 

 

 最初、言葉を噛んでしまった束に社員達は苦笑い、それに顔を少し赤くしながら束は言葉を続ける。

 

 

「今回、私が宇宙開発部門の主任に推薦されたことを誇らしく思っております。この推薦は光浦 源之丞博士にしていただいたのですが、その理由を説明したいと思います!」

 

 

 そう言って束は用意されていたパソコンを弄る。

 スクリーンには『宇宙開拓用パワードスーツ:IS(インフィニット・ストラトス)』という文字と共にISの設計図、特徴等の細かい図説が表示された。それを見た社員達のざわめきは更に大きくなっていった。

 

 

「これは私が考案した新世代宇宙開拓用パワードスーツ、IS(インフィニット・ストラトス)です。スクリーンに書かれている説明通り……」

 

 

 レーザーポインターを使って束はスクリーンの説明欄を示しながらISの機能について説明していく。社員達は口を開く事無く、束の話を聞いていた。

 

 

「このように、今後改良していくべき点はありますが、既存の宇宙服で決して不可能であった個別での高機動移動を可能にした上に、『拡張領域(バススロット)』による多くの機材・物資の所持を実現化、そして『絶対防御』によって安全性の更なる向上を実現出来ます!」

 

 

 説明を終え、レーザーポインターを降ろすと束は強く社員達に言った。

 

 

「最初、私は風を感じながら空を飛びたいと思って勉強してきました。そして勉強していく内に空から宇宙へと夢は変わりました。誰もが宇宙を、宇宙(そら)を自由に飛び回れる、そんな夢を私は抱き、ISを設計しました。」

 

 

 一束は息つき、横目で源之丞を見た。源之丞は微笑んでいる。

 

 

「この夢を抱けたのは光浦 源之丞博士に会えたからです。私は博士から研究における浪漫を沢山教わりました。そして今、私は自分の掲げた浪漫へ向かって飛び立ちたい! だから皆さん、私はヤマト重工(此処)に来ました。新参者ですがどうか、これから宜しくお願いします!」

 

 

 束が社員達に一礼する。その姿に源之丞は拍手をし、社員達も続いて拍手をする。盛大な拍手がホール内に響き渡る。

 かくして篠ノ之 束はヤマト重工に入社し、彼女の夢の一歩が踏み出されたのであった。

 

 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 

「主任、ISコアのプログラミングデータはこれで大丈夫でしょうか?」

「どれどれ~、えっとね、此処のコマンドはまだ省略できるよ。コア設計図案の7番に書かれているから参考にしてね」

「はい!」

「束主任、現段階での機体のボディ用素材だと摩擦熱に対して若干不安が残る様です」

「む~、その問題をクリアできる素材はある?」

「はい。素材庫において2、3種類あった筈です」

「じゃあ、それぞれで耐久試験御願い」

「分りました!」

 

 

 ヤマト重工宇宙開発部門が開局後、早速束はIS開発へ向けて尽力を注いだ。

 

 

「やっぱり、ヤマト重工様々だなぁ」

 

 

 徐々に完成へ向かっているIS試作機を眺め、束は呟く。

 このISは現段階で希少価値の高い鉱物素材や高度なプログラミングを集結させた至高のパワードスーツである。束自身が考えつく限りの知識と持ち得る限りの技術を結集させて設計した最高傑作となる機体なのである。結果として、自分だけでは素材や作成機材など揃えきれる筈が無く、ヤマト重工以外の企業では例え一流であっても研究・開発で簡単に希少な素材を使う事など出来なかったであろう。

 

 その一例が源之丞が生み出した特殊合金、『メタトロン』である。シリコンをベースとした高分子金属の複合体で、水素吸蔵合金や超伝導素材としての特性を持っている。更に、エネルギーとスピンを加えると周囲の空間を引きこむ様に圧縮する性質が後に発見された。束はこの性質を利用して、格納機能である『拡張領域(バススロット)』、シールド機能や『絶対防御』、耐G緩衝機構といったISの各システムに応用している。ただし、このメタトロン鉱石の精製技術は源之丞本人しか持ち合わせていない為、大量に世間に出回る事など決して無く。お目に掛かる事が非常に難しいモノとなっていた。

 

 だがヤマト重工に所属すれば話は変わる、希少な素材はヤマト重工が、光浦 源之丞が作成・発見したモノが殆どであり、在庫も豊富なので、本社ではほぼ気兼ねなく利用することが出来る。そして源之丞とそれに続く世界トップクラスの研究・技術者達、彼等のサポートもあって問題なく開発は進んでいる。彼等の御蔭で自分のIS開発は順調に事が進むのであった。

 

 

「でも驚いたなぁ、ヤマト重工でも宇宙用のパワードスーツが既に制作されていたなんて、」

 

 

 そう言って束はISの設計図の横に並んでいるもう1つの設計図とその試作機を見詰めた。

 

 

「『ランダー』か、ほんと凄いな源さんは♪」

 

 

 束の入社まで宇宙開発の計画が暖められていた訳であるが、ヤマト重工では既に宇宙活動用のパワードスーツの試作機が存在した。

 『ランダー』と呼ばれるそのパワードスーツは、アメリカの宇宙開発事業部が制作した、船外活動作業時に用いていた外殻式強化服が原形であり、別名、『外殻式搭乗ユニット』と呼ばれている。ISと比較すると1回り程大きいのが特徴である。高機能AIを搭載し、ISの様に高機動での行動が可能であるが、『絶対防御』や『拡張領域(バススロット)』といった機能を持ち合わせていない為、総合的な性能面で、ISに劣っていた。よって源之丞はパワードスーツの開発を束に任せ、開発での参考用としてランダーの試作機を製作し束に託した。そして束はそのランダー試作機からISに無い利点を採用し、更なる改良を加えていたのであった。

 

 

「よ~し、キリが良いから休憩にしよ~」

「「「「分かりました」」」」

 

 

 白衣を靡かせ、束は源之丞がいる部屋へ駆けていく。入社以降、また付けているウサ耳も元気良くピコピコしていた。

 

 

「源さ~ん!」

「おや、束ちゃん、」

「一緒にお茶しに行こ~♪」

「そうだね、行こうか」

 

 

 源之丞をお茶に誘って2人で社員食堂へ向かう。時間は午後3時、休憩やおやつ目的の社員達で賑わっていた。食堂の方も時間帯に合わせてガラスケースに様々なケーキを並べていた。

 

 

「な~ににしようっかな~♪」

「束ちゃんはケーキが好きだねぇ」

「そりゃあね♪ 糖分は頭の燃料だから!」

 

 

 それぞれ食べたいケーキを選んでいく。束はココアミルクレープとキャロットカップケーキにミルクティー、源之丞はガトーショコラにブラックコーヒーを選び、2人席に座った。

 

 

「ISの開発経過はどうだい?」

「問題ナッシングだよ♪」

 

 

 ケーキを突っつきながら束は笑顔で答える。

 

 

「それは良かった」

「源さんの方の研究はどうなの?」

「わたしの方も順調だよ、ISと共に宇宙開発の要になるだろうね」

「宇宙空間作業用ロボット、『LEV』か~、源さんは本当に凄いよ」

 

 

 『LEV』、『Laborious Extra-Orbital Vehicle』の略称であり、宇宙空間においての作業用ロボットだ。束が宇宙開発用のパワードスーツを制作しているのに対して源之丞はそれをサポート及び、サイズ的に不可能な作業を行う為の大型作業ロボットを製作している。他にも、輸送用宇宙船や宇宙ステーションといった宇宙開発に欠かせない様々なモノを開発・研究しており、ヤマト重工はこの新たなジャンルでも大きく業績が伸ばしていた。

 

 

「まぁ、作業用マシンはこれまでも開発されているからね、宇宙開発の花形は束ちゃんのISだよ」

「えへへ~♪」

 

 

 自分のISが宇宙の花形になると言われ、束は純粋に喜ぶ。

 

 

「ISが完成したら最初に宇宙(そら)を飛ぶのは束ちゃんかな?」

「ふぇ!? 私?」

 

 

 源之丞は微笑んで束に尋ね、束は少し驚く。

 

 

「自分が開発したモノは自分で試してみたくならないかな?」

「う~ん、確かに束さんが一番に飛んでみたいけど…」

 

 

 くぴくぴとミルクティーを飲み、束は源之丞を見詰める。

 

 

「皆で飛びたいかな?」

「皆?」

「うん、束さんと源さん、ちーちゃんとか箒ちゃん、いっくん達と皆で、きっと楽しいだろうな♪」

「そうか、皆とか…」

 

 

 笑顔で聞いている源之丞に束は少し顔を赤らめて尋ねる。

 

 

「源さん、私が宇宙(そら)を飛ぶ時は一緒に飛んでくれる?」

「わたしがかい?」

「うん、源さんと一緒に飛びたいな♪」

 

 

 赤らんだ顔で束は微笑む。

 

 

「そうか、喜んで♪」

「本当? 約束だよ!」

「束ちゃんの頼みだ、勿論守るよ」

 

 

 約束の指切りをした。

 

 

「そろそろ時間か、頑張ってね束ちゃん」

「源さんも研究頑張ってね♪」

 

 

 束が研究室へ戻ると部下達は既に戻っていた。

 

 

「よ~しっ! 残りをちゃちゃっと片づけてしまおう!」

「「「「はい、主任!」」」」

 

 

 研究室内にやる気に満ち溢れた声が響き渡った。

 

 

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 

 束がヤマト重工に入社して約半年にして遂に束の夢の結晶であるISの試作機が完成した。凛として立つ全身装甲(フルスキン)のパワードスーツを前にして束は達成感に満ち溢れていた。

 

 

「おめでとう御座います、主任!」

「ここまで来ましたね、束主任!」

「やりましたね!」

 

 

 夢を、浪漫を共にした部下達が祝福してくれる。その様々な言葉が束の胸を更に満たしてくれた。

 

 

「皆、有難う」

「後は、起動試験と性能試験だけですね」

「うん、とうとうISが動く時が来たんだ…」

 

 

 皆が興奮して話す。束が考案し、そして源之丞とヤマト重工の技術者達の手助けによってより最高の機体に仕上げることが出来た。目の前にある機体はその最高傑作なのだ。

 

 

 そのISの新たな性能として、

 

 ISコアをメインに補助として2つのサブコアを搭載。

 

 『絶対防御』を2重展開することでの搭乗者への直接の衝撃緩和率と安全性の向上。 

 

 シールド展用のエネルギーと機体展開・行動用のエネルギーの分別化。

 

 ヤマト重工製のAIプログラム追加による高速処理能力の向上。

 

 といった、設計図段階の時から様々な点を改良してきたのであった。

 

 

「よ~し、早速起動テストだよ!」

「「「「はいっ!!」」」」

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

 モニタールームに集まった束達、IS開発班はテストルームに1人立っている人物を見詰めていた。

 

 

「準備完了、何時でもいけます!」

 

 

 テストパイロットに抜擢された『Y.S.O』所属の女性社員が声を掛ける。

 因みに『Y.S.O』とは『ヤマト重工保安機構(Yamato Security Organisation)』の略称であり、ヤマト重工直属の警察機関である。真助や辰巳といったSPが所属している部署であり、噂ではかなりの手練れが集っており、小国の軍隊に匹敵するという話である。実際、連盟所属で日本在住の転生者の殆どが『Y.S.O』に務めているので強ち間違いでは無い。

 

 

「おっけ~、それじゃあ展開して」

「了解しました」

 

 

 テストパイロットがカードの様なモノを前に翳す。このカード状のモノが試作機の待機状態である。

 

 

「『零式』、起動!」

 

 

 試作機の名前である『零式』の名前と起動命令を告げると試作機がテストパイロットの全身に展開する。全身装甲(フルスキン)のISに包まれてテストパイロットの姿は見えなくなった。

 

 

「展開状態に入りました」

「テストパイロットの状態は?」

「バイタルデータ異常無しです」

「そっちは大丈夫~?」

 

 

 束はマイクでパイロットへ呼び掛ける。

 

 

【こちら現段階では異常無し】

「異常無しか、よし! それじゃあ、まず歩行移動からお願い」

【了解】

 

 

 ISが歩き出した。初めの数歩こそ。全身装甲(フルスキン)のパワードスーツを着こんでいる為、ぎこちないものの、直ぐに慣れて素早く歩いていた。

 

 

「機体内に異常は起きて無い?」

【異常はありません】

「関節部分の負担も問題無しです」

「それじゃあ次は『拡張領域(バススロット)』による道具展開のテストをするよ。中央に戻って~」

【了解】

 

 

 テストパイロットが中央位置に戻った。束はパソコンで試作機のデータを確認する。現在、試作機の拡張領域(バススロット)には宇宙活動用のツールが数個収納されている。

 

 

「それじゃあ、まず右手にワイヤーガンを展開してみて」

【了解、展開します】

 

 

 右腕を前に出してワイヤーガンを展開する。ワイヤーガンは右手に収まっている。

 

 

【指定位置に展開完了しました】

「パイロット、機体、拡張領域(バススロット)いづれにもに異常は起きていません」

「ようし、どんどんいこうか」

 

 

 束は展開の指示を次々と出す。テストパイロットは言われた指示通りに展開していく。

 

 

 両手に削岩ドリル

 

 左手に溶接マニュピレーター

 

 肩部に照明灯

 

 背部にリペアキットボックス

 

 脚部に追加式ロケットブースター

 

 

 出したり消したりを数回繰り返したが、異常は起こらなかった。

 

 

拡張領域(バススロット)にも問題無し、じゃあ今度は飛行テストにいってみよ~」

「了解、PICによる飛行開始します」

 

 

 ふわりと試験機が浮かび上がる。

 

 

「パイロット、機体共に異常無し」

「良し、飛行を開始してみて」

【了解】

 

 

 テストパイロットが飛行移動を開始する。テストルーム内をまるで水槽の中を流れるように泳ぐ魚の様に、自由に飛んで見せた。

 

 

「飛んでみてどう?」

【まるでピーターパンになったみたいです、凄いです!】

 

 

 先程迄、淡々と言われた事を熟していたテストパイロットが興奮気味に答える。それもそうだろう、今迄、この様に人間が自由に飛ぶ事は出来なかったのだから、飛行機といった大きな道具で無く、パワードスーツという人間大の道具で流れるように飛ぶのはこのISが初になるのだ。

 

 

「では、テストルーム内の飛行ルートを表示するからルートに沿って飛んでね~」

【了解です!】

 

 

 試験機内のディスプレイに飛行ルートが表示されテストパイロットがルート通りに飛んでいく。その中でロールや急旋回を指示され、その指示を熟す。

 

 

「急旋回でのGの掛かり具合はどう?」

【想像していたより軽い感じがします】

「そっちは?」

「パイロットへの負担は予想値より低い結果になりました。機体への負担も問題無いです」

「これで搭乗によるテストは終了ですね」

「そうだね、は~い、これで終了だから戻って来て~」

【了解です】

 

 

 テストパイロットは着陸して展開を解除した。

 

 

「お疲れ様でした」

「よ~しっ、問題は特に無し! 幸先がいいね!」

「午後に別のパイロットで再テストすれば完了です」

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

 午後になり、再びテストルーム。テストパイロットは午前の女性社員と同じく『Y.S.O』所属の男性社員だった。

 

 

「それじゃあ、起動からお願いね~」

「了解しました。零式、起動!」

 

 

 テストパイロットが起動命令をしたが何も起こらない。そのままが数分続く。

 

 

「ねえ、どうしたの?」

「こちらテストパイロット、ISが…反応しません」

「へ?」

「起動命令の確認以前に認証反応を行っていません」

「そ、そんな!?」

 

 

 束はモニタールームを出てテストルームにいるテストパイロットの元へ駆けて行く。彼の持っている待機状態の試験機を確認すると確かに反応していなかった。

 

 

「こっちに渡して」

 

 

 テストパイロットから試験機を受け取る。すると、束が持った瞬間に試験機は反応しだした。

 

 

「反応している…」

「どういう事?」

 

 

 もう一度、テストパイロットに試験機を手渡す。

 

 反応しない。

 

 束が受け取る。

 

 反応する。

 

 束を追って来た女性社員に手渡す。

 

 反応する。

 

 別の男性社員に手渡す。

 

 反応しない。

 

 更に別の男性社員に手渡す。

 

 反応しない。

 

 

「男性に反応しない?」

「どういうことだ?」

「一体どういう事なんだ…?」

 

 

 順調に進んでいた筈のテストで突如起きた異常事態、誰もが戸惑いを隠せなかった。

 

 

「と、とにかく他の部署の人も呼んで試してみて!!」

「分かりました!」

 

 

 その後、何人もの社員達が起動実験に参加したが男性社員達には誰1人として試験機は反応しなかった。

 

 

「主任、ISは女性にしか反応しないようです…」

「なんだそりゃあああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 衝撃の事実に束の絶叫が研究室に響き渡った。

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

 ISが女性にしか反応しないという事実が判明した後、束は研究室に籠る様になった。

 

 

「こんな欠陥認められるかぁぁ!!」

 

 

 と叫び、原因の解明と解決策を調べているらしい。しかし、研究室に籠ってもう1週間。体の事を心配して源之丞は束の元へやって来た。

 

 

「束ちゃん? 大丈夫かい?」

「解ら~ん!!!」

 

 

 部屋に入ると束が頭を抱えながら床を転げ回っていた。

 

 

「何なんだよ!? 女性にしか反応しないなんて、雄なの? 束さんの開発したISコアの性別は皆雄なの!? ワケワカラン!!」

「た、束ちゃん?」

「束さんの宇宙への浪漫がこんな意味不明な事実で躓くなんて認めないよ!!」

「束ちゃんが壊れてる…」

 

 

 この光景には流石に源之丞も引き気味であった。

 

 

「ピチピチの女の子しか乗せたくありません! って事なの!? いや、もしかして逆に雌で皆、百合属性!? ドン引きだよ! ISコアが変態だったなんて、ウゾダドンドコドーン!」

「束ちゃん…」

「プログラムには問題は無い筈なのに、もう一度精神交換レベルでやり直しをしな………!?」

 

 

 引き気味ながらも声を掛けてきた源之丞に気付いた束は凍りつく。

 

 

「げ、源さん…?」

「え~と…大丈夫かな?」

「…………にゃあああぁぁぁぁぁ!! は、恥ずかしC~!!」

 

 

 顔を真っ赤にして更に転げ回った。

 

 

「落ち着いて、束ちゃん」

「あうぅ~、恥ずかしい…」

「ISコアの問題が解決出来ないのかい?」

「うん、全然解からないよ。性別の違いで反応しないならDNAデータに原因があると思って調べているのに、原因が全く見つからない」

「ふむ…」

 

 

 顎に手を添えて源之丞は考え込む。ISの命と言っても良いISコア、そのコアのプログラミング内容を源之丞本人も確認していた。その中には性別で反応するか否かといったプログラムデータは含まれていなかった。他のデータからの影響も考え難い。

 

 

(一体、何が原因なのか…)

 

 

 そう考えながら源之丞は試作機に触れる。勿論、ISは反応を……………………して光りだした。

 

 

「………………は?」

 

 

 予想だにしない事態に源之丞は間抜けな声を出してしまう。ISが反応した、女性にしか反応しない筈のISが、男である自分に反応した。

 

 

「た、束ちゃん……」

「もう一度調べなおすべきなのかな?でも…」

「ISがわたしに反応を…」

「いや、でも生物学的な調査は全てしたのに…」

「異常事態が起きているんだけど」

「ぶつぶつぶつ………へ? 源さん…!?」

 

 

 何度かの呼びかけで束は源之丞の方を見る。ISに源之丞が触れており、ISは源之丞に反応している。

 

 

「だ…………!?」

「だ?」

「だ………ダニィ!?」

 

 

 束の驚愕の声が研究室に響き渡る。

 

 

「そ、そ、そんな……、」

「束ちゃん、これってどういう……」

「源さんが…そんな…」

「わたし?」

「源さんは女だったのかあぁぁぁぁ!?」

「はぁ!?」

 

 

 束はガクリと床に手を着く。

 

 

「そんな、束さんの大好きな人が女性だったなんて…」

「束ちゃん、どう見ても男だからねわたしは」

「これから束さんは百合百合な人生を…」

「現実逃避は止めて欲しいな」

 

 

 

数分後…

 

 

 

「落ち着いた?」

「うん、源さん御免ね」

「気にしないで、まぁ束ちゃんが壊れた時は正直引いてしまったけどね…」

「あうう…」

 

 

 恥ずかしさのせいでウサ耳がシュンと垂れる。

 

 

「しかし、何故わたしには反応したのだろうか?」

「そう! そうだよ! 何で?」

 

 

 ウサ耳をシャキンと伸ばし、束は叫ぶ。しかし束も源之丞も原因がさっぱり解らなかった。

 

 

「起動実験で問題は無く、性能面も申し分無し、束さんの夢がようやく羽ばたく筈だったのに…、これじゃあ発表できないよ~!!」

「女性のみが搭乗可能か、欠陥としか言えないだろうねぇ…。まぁ、何故かわたしには反応してしまった訳だけど」

 

 

 源之丞は考える。自分にも反応しなかったならば性別での違いが原因とはっきり言えた。しかし、自分に反応してしまった事から話は変わってしまう。男性の中でも反応するナニかがあるのか、それとも……

 

 

(わたしが転生者であるのが原因なのか……?)

 

 

 束がヤマト重工の社員で反応テストをしたのは聞いている。ヤマト重工には連盟に加わった転生者達が数名いるが、ギフトの関係上、多くが『Y.S.O』に所属しており、研究・技術部門の方には殆どいない。いるにはいるのだが、現在は提携を結ぶ為に各国の企業へと渡っており、留守であった。しかし、もしも転生者が反応するのならば連盟のメンバーか転生者しか原因は解らない上、束にはまだそれらを教えていないので、今回は転生者が起動試験に参加していない事が幸いであったかもしれない。

 

 

(しかし、どうしようかねぇ?)

 

 

 転生者が反応するという事実が判明したところで何も解決しない。コアのプログラム上の問題であるなら何らかの方法で解決出来る筈なのであるが……

 

 

(そういえば、アレの技術を応用すれば何とかなるかな?)

 

 

 自分が開発しているアレを思いだし、源之丞は束に声を掛けた。

 

 

「束ちゃん、ちょっと来てくれるかな?」

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

 ヤマト重工研究棟の地下には制作した重機やマシンを格納する広い格納庫がある。その1つに源之丞は束を連れてやって来た。

 

 

「源さん、ここは?」

「最近開発したマシンを置いている格納庫だよ」

「随分広いけど、LEVを置いているの?」

「いや、LEVでは無いよ。まぁ、見ていてくれ」

 

 

 そう言って源之丞は照明のスイッチを押す。暗かった格納庫が明るくなり、周りが見えるようになると、巨大なロボットが5体並んでいた。

 

 

「おおおおぉぉぉぉ!!」

 

 

 ロボット達を前に、束は思わず感嘆の声を上げてしまう。その眼はキラキラと輝いていた。

 

 

「源さん! 目の前の浪漫溢れるロボット達は何?」

「開発途中の作業用ロボットだよ。とは言っても完成はもうしているけどね」

「どれもロボット浪漫が溢れるデザイン!! ナウいよ!」

「ふふっ♪ 有難う」

 

 

 源之丞はロボットについて説明する。

 

 

「右から『ゲイツ』、『ブロディア』、『ガルディン』、『レプトス』、『フォーディー』という名前でね、LEVと並ぶ次世代の搭乗型作業用ロボットだよ」

 

 

 大量生産を想定して凡庸性を持たせた2脚歩行型の『ゲイツ』

 

 『ゲイツ』の特徴を改良し、万能性を高めた2脚型の『ブロディア』

 

 構造を単純にし、メンテナンス性を良くし、頑丈性に富んだトレッズ(タンク型脚部)型の『ガルディン』

 

 フレームの軽量化によって低燃費のまま機動性を高めた2脚型の『レプトス』

 

 運動性や小回りに特化させた2脚型の『フォーディ』

 

 

 ブロディア以降の機体は更に派生を持たせて、腕部や脚部を変更する事が出来るようにしている。既存の重機を継ぐ次世代作業用マシンとしてだけで無く、様々な用途に利用する事が可能となっている。LEVが宇宙空間での活動をメインとしているならこの機体達は地球内での活動をメインとしている。しかし、あくまでもメインとしているだけであり、どちら共、逆の環境条件でも活動は可能である。

 

 

「更に見せたいモノがあるんだ」

 

 

 そう言って源之丞は懐からキーホルダーの様なモノを取り出した。

 

 

「源さん、それは?」

「まぁ、見ていてくれ」

 

 

 源之丞は掲げたそのキーホルダーのようなモノに呼びかけた。

 

 

「ゲイツ、セットアップだ」

【Get Ready】

 

 

 源之丞を中心に周囲が光り出し、光が源之丞を包む。光が止むと、そこには先程見せて貰った巨大な作業ロボットの1機である『ゲイツ』が人間大のサイズで立っていた。

 

 

「さっきのロボットと同じ…、源さん、これは…?」

「これがわたしの開発した、先程の大型機体の性能をパワードスーツサイズにした新世代パワードアーマースーツ。その名も、」

 

 

 展開状態を解除し、源之丞は束に向かって言った。

 

 

「VA (ヴァリアント・アーマー)」




今回登場した用語集(公開可能な用語のみ抜粋)

メタトロン
 用語元は「Z.O.Eシリーズ」に登場する、21世紀初頭の無人探査計画において、木星の衛星カリストの巨大クレーター「ヴァルハラ」から発見された鉱石。今作では源之丞が精製・発見した金属という扱いであり、彼のギフトを使用しない限り生成することは不可能である。

ランダー
 用語元は「旋光の輪舞曲」に登場する機体の総称。重力の少ない宙域での移動・活動手段として使われる「外殻式搭乗ユニット」の総称であり、船外活動作業時に用いていた外殻式強化服が原形で、機能の強化を繰り返し現在の形となる。今作では、源之丞が考案していた宇宙作業用パワードスーツとなっており、その試作機と設計図が束のIS開発における参考資料として提出された。

LEV(Laborious Extra-Orbital Vehicle)
 用語元は「Z.O.Eシリーズ」に登場する宇宙空間における作業用ロボットの総称。今作でも同じ扱いである。

Y.S.O
ヤマト重工直属の警察組織で、「ヤマト保安機構(Yamato Security Organisation)」の略称。真助や辰巳といったヤマト重工のSPはここの所属となっている。

VA(ヴァリアント・アーマー)
 用語元は「パワードギア」、「サイバーボッツ」に登場する機体の総称で、『ヴァリアブルメタル』という特殊な金属を用いてそれまでの常識では不可能な武装を施した人型兵器に対して用いられる名称となっている。


如何でしたか?
漸く、クロスオーバー的な事が出来てほっとしました。
今後、色々な版権作品の機体が登場します。
次回はVAについてやISの欠陥をどうするかについての話になります。


それでは次回『VA(ヴァリアントアーマー)とランダー』お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。