Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第12話 Devour Your Shadow 6月8日(水) 天気:雨

英語の近藤が相変わらず、赤いジャージで教壇に立っている。

 

「あ、でな。この前ドラマを見たんだが・・・

役者がハムでなぁ! ああいうのが最近増えたよな、ハハハハ!」

と体育会系らしく大きな声で笑う。

 

すると、天城が鳴上にたずねる。

 

「ねえ、鳴上君。 ハムって言ってるけど、どういう意味なのかな・・・?」

「下手な役者という意味だ。」

 

とその声が聞こえたのか、近藤はその話に割り込む。

「お、鳴上よく知っていたな!

でも聞くなら先生にしろよ~、天城!

ハムってのは、日本語で言うと大根役者だな!

へったくそなヤツ、って事だ!」

 

「ハムレットって知ってるだろ?

先生も名前だけ知ってる!

有名だから、下手なヤツほどやりたがる・・・

あのハム野郎め!ってことらしいな。」

 

「へえ・・・英語って面白いね。

そんな言い回しもあるんだ。」と天城は感心したように言う。

 

シンは天城に向かって言う。

「・・・大根役者を英語では『ham actor』と言う。

hamには『加工肉』としてのハムの訳以外に『道化者』まぁ、つまり『ひょうきんモノ』の意味がある。

ham it up,ham upはともに誇張した演技を指すことから自然な演技ができない素養の役者を指す。

故に、ハムといわれるという説もある。」

 

「シン君ってそんなことまで知ってるんだ」と千枝は感心したように言う。

 

「おお!そうだ。シンがいっていた説もあるぞ。都会のヤツは違うな!」と近藤も感心したようにうなずく。

 

そう話していると、チャイムが鳴りそれと同時に一斉に生徒たちは教科書を閉じ、わずかな安らぎの時間を満喫する。

 

 

「よく、そんなことを知っているな」と鳴上はシンに言う。

「まぁ、長いからな。」

「?」と鳴上は不思議に思ったがそれ以上はその話を突っ込まなかった。

 

 

 

放課後・・・

シンは家の前に差し掛かると、ルイがいた。

そして、その横には雨だというのに・・・

 

「・・・バイク?」

「ああ、そうだ。適当に見繕ってきた。」

「・・・適当の割には悪くない。」

 

それはトウキョウで乗っていたものだ。

CB400SFだ。

 

シンがバイクに跨ると、ルイはどこからともなく黒いヘルメットをシンに渡した。

「懐かしいか?」

「ああ」とシンはヘルメットを被り、鍵を回す。

その音と、感触。どれも懐かしい。

 

「お前はバイクがすきなのか?」

「・・・いや、懐かしいだけだ」とシンは否定するも、誰がどう見てもうれしそうだ。

 

「そうか。昔も居てな。名前は周防と言ったか。

ヤツもまた、あの善に似ていた。」

「・・・少し走ってくる」

「雨の中か?」

「・・・それもまた面白いぞ?」

シンはそういい残すと、バイクのスロットルを回し、走り去っていった。

 

「・・・クックッ、悪くないぞ。徐々に戻り始めた」とルイは言うと、近くの塀の曲がり角を見る。

「貴様、出てきたらどうだ?」

「・・・気づいていましたか」とそこはマーガレットが居た。

 

雨の中、マーガレットとルイはお互いの距離を測るように目線をそらさない。

 

「しかし、この世のものにしては見事なり」

ルイはそういうと、雨にぬれた髪を掻き揚げ、オールバックに戻す。

 

「知っていながら、あなたは彼と接触したのかしら?」とマーガレットは手に持っている本を開こうとするが

「・・・フッフフフ」

「!?」とマーガレットの本が開かない。

 

「ではな。意識と無意識の狭間の住民よ。

人の可能性を見ているといい。

・・・我もまたそれを覗いているのだ。」

 

ルイはまるで霧のようにその場から消えた。

 

「どうやら、とんでもないものがこの世界にあらわれました。

・・・でも、そんなモノでも"彼"なら。」

 

 

 

 

体に当たる雨粒が妙に心地よい。

ずいぶんと前のにおいを思い出す。

都会の排気ガスの匂いだ。人の営みの匂い。

バイクに乗っていると、そんなことを思い出す。

 

その中で俺は何をしていたと思い出そうとした。

だが、すぐにその、思いを消した。

それが酷く虚しく思えたから。現実は残酷だ非情だ。

 

ふと、俺は思う。

 

 

今更何を言っているだ俺は。

退屈だと嘆いていた現実を変えたように。

虚しさなど、人間を止めた時点で置いて来たではないか。

 

 

今更何を思ってるんだ・・・

 

 

本当に軽くこのあたりを走ってきて、すぐに自分の家にある駐輪場に止める。

自分の家の鍵を開け、すぐに室内へと入り、制服を干す。

そして、その干した制服の下で「アギ」というと、人差し指から火が出る。

それで、制服を乾かしながら、シンは事件のことを考えるのであった。

 

 

そこで、インターフォンが鳴る。

シンは誰だろうと思い、機械越しに確認する。

すると、まるでそれに気づいているように、カメラ目線で言う。

 

 

 

「お迎えに上がりました。間薙様」

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」と鳴上は一息つき、学校の門から出てきた。

それは、あのモロキンに半ば強制的に保健委員をやらされることとなったからだ。

だが、その見返りは大きなものであった。

 

(また、顔見知りが増えたなぁ)と鳴上は嬉しそうな顔で坂を下る。

 

「・・・よう少年」と鳴上は声を掛けられ、振り返る。

 

そこには銀髪の20代後半の青年が立っていた。

格好は長いコートを着て、その下は医者の白衣とは違うが、白い召し物。

そして、軍隊の帽子を被っている

 

だが、傘を持っておらず、雨宿りをしているようにも見えた。

 

「すみません。どなたですか?」と鳴上は首をかしげる。

「あたりまえだ、貴様は私を知らん。知らなくて当然だ」と偉そうな口調で鳴上に言う。

「『人修羅』を知らんか」

「人・・・修羅?」と鳴上は首をかしげる。

 

「・・・ああ、そうだった。えーっと」とその白衣のポケットから紙を取り出す。

「間薙シン・・・という名か」

鳴上は怪訝な顔をする。理由は簡単だ。

少しばかり浮世離れしすぎているのだ。白い髪の毛に整った顔立ちに白衣の下の格好と帽子。どれもこれも、怪しすぎるのだ。

 

「怪しいと思ったか貴様」

「!?」と鳴上は心を読まれたと思う。

「まあ、良い。それでシンとやらはどこにいる。」

「・・・すみませんが、どういう関係ですか?」と鳴上はたずねる。

 

「どういう関係だと?そんなもの今のところ何の関係もない」

「・・・すみませんが、お答えできません」

鳴上はきっぱりと言い放った。

 

おそらく、シンの『悪魔』の力と関係があるとすぐに理解した。

明らかにそっちの類の格好だ。

 

なら、何かしらの強制的に吐かせるなどの手段を講じてくると考えて思わず鳴上は拳に力が入った。

 

だが、鳴上が考えることをその青年はしてこなかった。

 

 

「そうか。まぁ、言わぬなら別に構わん。」

「・・・」

「貴様、名前は?」

 

「鳴上悠です」

「鳴上か。・・・雷鳴の意を持つに相応しい、いい目をしている。」と青年は腕を組み鳴上の顔を覗き込む。

 

「・・・だが、気をつけることだ」

「?」

 

 

「隠しているようだが、目がうそをついているぞ。」と青年は鼻で笑う。

鳴上は明らかに不機嫌になった。

 

「もし、ヤツらのような類と一般人、あるいは別の類のものであってもだ」と真剣な顔で鳴上に言う。

 

「『怪物と戦う者は常に自らも怪物にならないと知り、戒めるべきだ。

深淵を深く覗き込むとき、深淵もまた貴様をじっと見つめているのだ』」

 

「・・・」

 

「とある偉人のこの言葉。持っていると良い。

そっと、貴様の糧になるだろう」

 

鳴上は計り兼ねていた。

この青年。実のところ、シンの目とは違う。雰囲気も違う。

だが、どこか普通ではない。なんというか、融和的でありながら見定めるようなその視線はこの八十稲羽に来てからは初めてだった。

 

と、そこへでかい白いセダンの外車が止まる。

 

そこから、女性が一人降りてくる。その顔はまるでお面でもつけているように見えるほど、無機質で無表情。メイド服を着ている。

その手には大きな傘を差し、そして、その青年を為に傘を差す。

まるで自分は関係ないように、その女性は濡れていく。

 

 

「お連れいたしました。中にいらっしゃいます」

「おお。そうかよくやったぞ。メリー」

 

そういうと、颯爽と歩き始めた。

鳴上もそれについていった。

 

そして、車に乗ろうとするその青年は不意に振り返る。

 

「ケヴォーキアンだ。」

「はい?」と鳴上は

 

「私の名はケヴォーキアンだ。また会う機会があったらな、少年」

そういうと、ケヴォーキアンは車に乗り込む。

女性は扉をゆっくりと閉め、傘を閉じ、鳴上に一礼する。

鳴上もそれを見て一礼する。

 

その女性はすぐに、運転席に座り車は走り去っていった。

 

 

鳴上はそれを見送ると憂う。

(間薙シン・・・君はどんな人間なのかな)

そんな鳴上の思いは雨の音と共に空に淡く解けていった。

 

 

 

 

 

「失礼したね。」とケヴォーキアンはリムジンの中で雨の水滴を払う。

「話は聞いたかね?」

車に乗った人物にケヴォーキアンはたずねる。

 

「ええ、『邪教の館』の代わりになってくれるという話ですね」

 

その人物は間薙シン。

 

「そういうことだ。ま、私はその『邪教の館』を間接的にしか知らんのだがな。」と腕を組みため息を吐く。

 

「・・・ケヴォーキアン様」と女性は淡々と運転しながら言う。

「ん?なんだい?メリー」

「・・・付けられています」とサイドミラーを目視するメリー。

その先には二人組みの男が乗っている車であった。

 

「まぁ、いいさ。どうせ、中毒者だ」とケヴォーキアンはつまらなそうに言う。

 

「それで、その装置はどこに?」とシンは言う。

 

「ああ、私の屋敷だ。八十稲羽から少し離れている・・・

メリーに送ら(・・)せようか?」

「?いや、バイクがある」とシンは言葉にひっかかったが、気にせずに答えた。

 

「そうか。それはよかった。」

 

シンは素直に疑問に思ったことを口にする。

 

「なぜ、悪魔合体をできる?」

「・・・まずは私の話をしようではないか。ケヴォーキアン・メンゲレという。

一応。医者だ。だが、ある一方ではこういわれる。」

 

 

「私は通称『死の天使』、『死の医師』」

 

 

「・・・ずいぶんと物騒だな」

そういいつつもシンの目は興味を持った目である。

 

「そうかね?それでも、私の病院には沢山患者が来るがね」と苦笑する。

「皆、死に怯え私を頼る。だから、私は最善の道を常に探しているに過ぎない。」

 

 

「だから、私は悪くないのだよ」と両手を広げて高らかに笑う。

 

 

「この世の善悪に興味はないさ」とシンが言うと、一瞬あっけにとられ再び高らかに笑う。

 

「それでこそ、混沌王だ」

と笑みを浮かべると、車が止まる。

 

「到着いたしました。間薙様」とメリーは言う。

 

「ん。」とシンは扉を開け、傘を差そうとすると、すでにメリーが傘を差していた。そして、大きなカバンを手に持っている。

 

 

「じゃあ、メリー言った通りに」

「はい。了解いたしました」というと服についたほこりなどを払い言う。

 

 

 

 

「人造人間 メリーです。コンゴトモヨロシクお願いいたします」

そして、頭を下げた。

 

 

 

 

「?ああ、ん?」とシンは首をかしげる。

「これが、ルイ様との契約でね。」とケヴォーキアンは笑う。

 

「人間があがいて作り出した、人造人間。それと混沌王がどうするか。それを観察したいそうだ」とケヴォーキアンは車から降りると運転席にすわる。

「まぁ、心配するな。家事は無論できる」

 

そういうと、そのまま走り去ってしまった。

 

「・・・まあ、いいか」とシンは気にすることなく家へとメリーを招き入れた。

 

 

 

 

いつ見ても、人間というやつは面白い。

アダムとイヴ。アダムは私が唆しただけで、りんごを食べた。

 

だが、混沌王よ。貴様は違った。

 

貴様は自らその実を毟り取り、神の顔にたたきつけた。

これで私は確信した。

 

この人間は悪魔よりも悪魔らしい。

この世の・・・否。すべてのありとあらゆるものが、竦む様な冷酷な表情でりんごをたたきつけたのだ。

 

まさに『悪』そのものであった。

 

故に私はここにヤツを呼び出した。

 

 

 

 

(・・・本当に、そんな『悪魔』なのか?)とケヴォーキアンはタバコに火を付け外に息を吐き出した。

 

 

 

 

「あれって・・・間薙君じゃないですか?堂島さん」

「一体どういうことだ?」と堂島は頭を掻く。

「・・・しかし、堂島さん。今回の事件はあの医者は何の関係もありませんよ」と足立はため息をはく。

 

「だって、何の関係もありませんし、それにあの医者の車はここ一ヶ月で買ったくr」といいかけると頭を堂島に叩かれる。

 

「・・・いっつ」と足立は頭を抑える。

「・・・ほら、いくぞ!足立ィ!!」と堂島は助手席どーんと座る。

「は、はい!」

足立はあわてて運転席に座った。

 

 

(クソ・・・)と堂島は苛立ちを誰かに吐き出すこともできずに心の中で吐き出していた。

 

 

 

神は言葉ばかりだ。

幾億もの言葉ばかりで、何もしない。

道は諭すばかりだ。

彼の胸の影を誰が知る。

 

我以上に傲慢である。

 

「間薙さ・・・」

メリーは無表情でソファで寝るシンを見つめる。

メリーは、寝室に行き掛け布団を手に取り、それをシンにかけた。

そして、自分もシンの足元に座り、目を閉じた。

 

 

 

 




あけましておめでとうございます。

更新が遅れたことをお詫びします。
一応、生きてます。原因はパソコンの故障です。はい。
それでも感想とか書いてくださってるかも、と期待したりして、一応携帯で返したりしました。はい・・・

それでやっと復帰しました。はい。
それもこれも、バックアップ様様のおかげです。・・・はい。
皆様もバックアップはしっかり取りましょう。・・・はい。

とりあえず、閑話とフラグたての話になっています。

あとは。バイクとか詳しくないんで、とりあえずかっこいいのと思い、CB400SFにしました。

それで、ひとつ。
第一話で、原付免許と書いていましたが、バイク免許にしました。
理由はかっこいいからです。

はい・・・そういうことです。

今後はとある事情により、更新速度は一気に遅くなりますが、コンゴトモシクヨロ・・・

まぁ、あと、オリジナルキャラですが。
ソウルハッカーズの『業魔殿』的な感じのものです。

ヴィクトルを出そうか迷いましたが、オリジナルのキャラを出したいなって欲があったので、出してみました。

あとはそうですね。オリキャラの名前は実際の人物の名前です。
ケヴォーキン。メンゲレ。はそれぞれ違う人物です。

メリーはなんとなくです。
メアリに似てるのでなんとなくです


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