Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第13話 Clash of The "Okina" 6月15日(水) 天気:曇

人の営みが顕著に出るのは、やはり都会である。

『便利』が人を蝕み、魅せて放さない。

それゆえに、人はこの都会に住みたいと考える人もいるだろう。

 

 

シンはどうだろうか。

間違いなくこういうだろう。

 

「田舎がいい」

 

というだろう。

 

隔離されたというのは大袈裟だが、確かに人が人らしく生活をしている場所というのが、自分には向いているとここ最近感じる。

都会のようにどこに行き着く訳でもない、空虚な事象に興味も失せている。

何より、それを理解しない人が都会には沢山いた。

・・・いつもこうだと思う。人は何も理解しない。

そもそも、人は何も理解しないまま、そのために死んでしまう。

 

人修羅になり、長い間居るが分かったことがある。人生には現在しかない。過去に生きた人も未来に生きる人もいない。

今、あるか、ないか。

 

俺はそれを認識していればいい。

 

 

(・・・って俺は何を考えているんだ)

そう思うと、信号が青になり俺はスロットルを回した。

 

 

 

 

 

 

「遅いな」と沖奈駅前でシンは二人を待っていた。

何でも、作戦があると花村に言われ何をするのか、知らずにシンはこの沖奈市へとバイクで来ていた。

周りを見渡し、ため息をはく。千枝が言っていた、沖奈駅前。

確かに賑わい、本当に都会のイメージに相応しい。

 

だが、東京とは決定的に違うものがある。

 

人の数である。

シンはこの程度なら嫌悪しない程度のものである。

何より、人の数が増えれば増えるほど、自分の選んだ選択は正しかったのか。

それを問いたくなってしまう。

だが、結局は変わらぬ現在。

無意味で何て、無価値なんだ。

そう思うと、シンは少し表情を歪めるが、直ぐに平常の淡々とした顔に戻った。

 

 

そこへ原動付バイクが二台、シンの元へときた。

二人はヘルメットを取り、シンのバイクを見る。

「おお!かっけぇ!」と花村は少し興奮気味にシンのバイクを見た。

 

その後、すぐに遅れてキコキコとこの都会には似つかわしくない音を掻きたてながら、自転車が到着した。

 

「マジでここまで付いてきやがった・・・」と全員がその音のほうを向いた。

 

息を切らしながらヘルメットを被り、すごい形相で完二が自転車で到着する。

「…ら、楽勝っすよ。慣らし中の原チャリなんざ、あいてになんねっス」

「途中でガス欠になんなかったら、完全に振り切ってたっつーの!」

そういうと花村はため息を吐いた。

「…遊び代欲しさに、ガソリンケチるんじゃなかったぜ。」

 

完二は自転車を降り、シンのバイクを見る。

そして、鳴上たちのバイクを見る。

 

「…そのなんっていうんすかね。」

「う、うるせぇ!原チャリだっていいだろ!」

 

「中型というやつか」

「まぁ、そうなる」

「あれ?でも、お前って やそいなばまで電車で来たって言ってなかったっけ」と花村が尋ねる。

 

「買ったんだ。それを店員に届けてもらった。」

 

それを聞いた鳴上と花村は、(ああ、なるほどね)と察した顔をし、完二一人が首をかしげていた。

 

「それにしても」と完二は周りを見渡しいう。

「来るたびに思うっすけど…やっぱり人多いっスね。」

 

「ああ、この辺で張ってりゃそのうち声掛けてくるかもだぜ!?」

 

声をかけてくる(・・・・・・)?なんだ、芸能人にでもなりたいのか?」

シンはため息ともにその言葉を吐き出す。

 

「あ」

「え?」と花村とシンの意志の疎通が図れていない。

 

「ああ!そうだった!シンに言い忘れてた!!」

「そうだぞ。俺はなぜこんなところに呼び出されたのかわかっていないんだからな」

「それは、花村が…」と鳴上が言おうとした瞬間、花村が口をふさいだ。

 

(な、なんだ)と小声で鳴上は花村に尋ねる。

(普通に言ったら、どう考えたってシンはやらねーだろ!!)

「なるほど…」と鳴上が納得した声を上げる。

 

 

 

「どうせ、ナンパだろ?」

 

「「「!?」」」

「な、なんでわかったんだ!?」と花村は驚きシンの方を見る。

 

「いや、お前がさっき声を掛けられる(・・・)かもと言っていた。

受動的な言葉だ。だが、どう考えてもお前は芸能人になりたいって感じでもなさそうだしな。

なにより、普段からの花村の生活を見ていれば、容易に想像はつく」

「ああ~、なるほど。間薙先輩頭いいっスね」と完二は納得したように花村を見る。

 

「俺ってそんな風に見えてるのか・・・」

「とにかく、始めよう」と鳴上は話を進める。

 

「ああ、えーっと、始める前にちょっといいっスか?

せっかく沖奈来たんで、その…し、手芸の…」

 

朱鯉(しゅごい)?…緋鯉(ひごい)のことか?」とシンは首を傾げる。

 

「…な、何でもねーよ!買い物があるっつってんだろ!」

大きな声で完二は叫ぶ。

「とにかくちっとはずすんで、先やっちゃってて下さい!」

そういうとダッシュでどこかに去って行った

 

「何しに来たんだよ、アイツ…」

「渋い趣味だな。それに、緋鯉なんて売ってるのか?」とシンは鳴上に尋ねる。

「たぶん、違うな」

 

 

「よっしゃ!作戦決行だぜ!」

それを聞いた鳴上はうなずく。シンもわからないがとりあえずうなずいた。

 

初夏の日差しが心地良い…

その中、シンはバイクをいじり始める。

 

 

…3時間が経過した!

初夏の日差しが暑苦しい…

 

未だにシンはバイクをいじっている。

 

そこへ、完二が走ってきた。

「遅れました!どれ買うか迷っちまって…」

 

「…」

「…」

「…」

 

カチャカチャというシンがバイクをいじる音だけがその場を支配していた。

 

 

「収穫ゼロっすか。」

 

そういわれると焦る二人。

「おっかしーなあ。どっかから視線は感じるんだけどなあ。」

「まったく感じない」と鳴上は暑そうに制服をはためかせる。

 

「や、待てって!もうちょい粘ればきっと…」

「や、日ぃ暮れちまうだろそれ…やっぱ、どっか問題あんじゃないスか?」

「完二に問題があるのかもな」と鳴上は完二を見る。

 

「オレっスか!?」

「当たり前だろ!お前顔怖えーんだよ!つかチャリだし!」

「顔は関係ねーだろ!つーかオレ、さっきまでいなかったっスよ!?

バイク持ってりゃ女寄ってくるっつったの、あんただろーが!」

 

「大体、バイクは男のアイテムっつー話っスけど、間薙先輩の以外原付っスよ?

マジでバイクなら何でもいーんスか。」

完二の正論に花村はたじろぐ。

 

「まあ・・・確かに雑誌で見たヤツは、でけーバイクだったけどさ。

しょうがねーだろ?夢と現実には開きがあんの!

高いのは買えないのッ!原付で精一杯だっつーの!」

花村の悲痛な叫びがこの暑苦しい空のもとに響く。

 

「先輩、オレに10分くんねーか。」

?とシンも手を止めて、完二の話を聞き始めた。

 

「やられたまんま黙ってらんねっしょ。先輩らの仇、オレがとってやんぜ!」

「ケンカじゃねーっての。仇とるってどーすんだよ。お前、ナンパでもするつもりか?」

 

「ったり前っスよ!この状況で、他に何すんスか。」

とそれに続くようにシンが久しぶりに口を開いた。

「ここでこうしていても仕方ないだろうしな」

 

結局、四人でナンパ勝負をすることになる。

花村は嫌がっていたが、完二に押される形で開き直り参加することとなる。

完二は「負けたら、パンイチで町内マラソン、ついでに鼻メガネかけてやらあ!」と意気込んでいた。

 

「さて、どうするか」とシンは考える。

 

とりあえず、やるだけやってみることにした。

何せ会話スキルを人間に試せるのかそれが気になったからだ。

 

 

 

さて、詳しい内容は多くは明かす必要もないだろう。

 

 

「(^q^)くおえうえーーーるえうおおお!」

 

そういうと、ギャルたちは笑い始めた。

 

「…(何を言っているんだ。『アナライズ』で確かめて、人間だとわかっている。だが、どうだ。何を言っているのかわからない。『ジャイヴトーク』も通用しない…どうしたらいい…どうしたら…。)」

 

といった具合にギャル系女子高生に『ジャイヴトーク』が適用されないことに驚いたり

あまりにも上から目線の女性だったので『死の契約』しようとして、不穏な空気を察した鳴上に止められた。

 

その他

ポケットに入れっぱなしにしていた、『小さなルビー』を財布を探している最中に落とすと、

「おやおや、綺麗な宝石ですね」と老婆が声を掛けてきて、そのまま宝石と何故か老婆が大事に持っていた、『死兆石』と交換した。いわゆる、『物々交換』をしたり、『洗脳』で無理やり携帯番号を聞き出したり、など実験としてありとありとあらゆる会話スキルを試した。

 

だが、やはり効果的だったのは『口説き落とし』であった。

 

シンのダークな雰囲気とその目力に射止められる女性が多かったらしい。

だが、いざ携帯番号となると立ち止まり、その場を去っていく女性が大半であった。

結果的に収穫は3人。

 

だが、本人はスキルの汎用性に納得していたためにどこか顔は嬉しそうである。

そして、映画のDVDをついでに買っていると、すでに皆集まっていると、メールが入っていたため、慌ててシンは戻ることにした。

 

 

シンがバイクを止めていた場所へと戻ると

『二度とかけてくんじゃねー!わかったな!』と大きな怒声が携帯電話から聞こえていた。

慌てる三人。

 

「声の大きな女だな」とシンは三人と合流する。

「いや!女じゃねーだろ!どう聞いても!」と花村は思わず突っ込む。

「マジすか…」と完二は唖然としていた

 

「それでそれで!シンはどうだったんだ!」と花村はテンションを上げてシンに尋ねる。

「3人だ」

 

それでいざかけてみると、洗脳された女性はでた瞬間叫ぶのですぐに切り、残りの二つは偽物であった。

 

「はぁ、まぁそうだよな」と花村がため息を吐く。

「でも、間薙先輩三人もゲットしたんすか」

「そうだな」と間薙が言うと、

 

 

 

「間薙様。」

 

 

 

「「「!?」」」とシン以外はその声の主を見て驚いた。

何せメイド服である。明らかにおかしい。

 

「メリーか。何をしているんだ?」

「買い物でございます。」と背負ったリュックサックを見せる。そして、手には冷凍ものを入れたバックを持っていた。

 

「リュックで買い…」

とシンが言おうとすると、花村と鳴上はガシッとシンの肩を掴みヒソヒソ声で話す。

「ど、どちらさんだよ!超綺麗な人じゃねーか!」

 

 

 

「メイドさんだが」

「メイドさんってそんな…え?やっぱりおまえんちって金持ちジャン!」

「いや、そういうわけでもないんだが」

 

「何をしていらっしゃるのですか?」

 

メリーが言うと、慌てて花村は取り繕う。

 

「…な、な名前はなんて言うんスか?」と完二はすこしテンパりながら名前を尋ねる。

「メリーでございます」と頭を下げる。

 

「それで、メリーはどうやって帰るんだ?」

「電車で帰るつもりです」

 

「乗っていくといい」という座席を開け、白いヘルメットを渡す。

「…そうですか。ではお言葉に甘えて」

 

そういうと、シンもバイクに乗り、ヘルメットをかぶった。

メリーは後ろに座り、シンに抱き着く。

 

それを見た花村はもうここに心非ずであった。

 

 

「冷凍ものがあるから、悪いな。先に帰る」

「ああ、また明日」と鳴上は颯爽と走り去った友人を見送っていった。

 

「ど、どういうことなんだ!!!」と花村は大声を上げた。

 

「ってか、花村先輩が想像してたのってあれっすよね?原チャリじゃできねっすよ」

 

 

 

「ちくしょーぉおおおおおおおお!!!」

 

 

叫んだ花村とは違い、鳴上は冷静に話を戻した。

「それで、花村はどうだったんだ?」

「そ、そうだった。次はラスト!俺の番だな」

「花村先輩も、行けたんスか!?」と完二は驚きを隠せない。

 

「へへっ、ったり前だろ。番号一個ゲットしましたー!

いっや、苦労したわー。すっげーイカした、お姉さんでさ。

ちょっと背伸びしちゃったかな」

そういうと花村は登録した電話に掛けようとした、それがまさか地獄への電話になるとは

このとき誰も思わなかっただろう・・・

 

 

 

「…」夜中。

シンは寝静まった中、ソファーに座ってテレビを見ていた。

 

「やっほー」とその隣にピクシーが現れる。

「…ピクシーか」

「そうよ。私以外誰がいるのよ。」

「それで、なんか用か」

 

「いや、べつになんでもないわよ」とプイッとそっぽを向く。

 

「…そっちはどうだ。」

「そうね。相変わらずって感じ。混沌としてるけど、あなたが作り出した規律の範囲内のことだしね。好き勝手にやってるわ。」

「それで『あいつ』は?」

 

「今の所、動きはないみたい。ただ、やっぱりあなたが居なくなってからは復活の兆しはあるみたい。」

 

「…そしたら、これで何回目だったか」

 

「えーっと…数え切れないね」というと笑みを浮かべる。

 

ピクシーはシンの食べかけのお菓子を小さな体で持ち上げ、かぶりつく。

 

「まあ、おまえに任せる。」

「えー。めんどくさいなあ。私もシンと居たいのに。」

「…一番信頼出来るから、お前を補佐にしてるんだ。頼むよ」

その言葉を聞いたピクシーはシンを見つめたまま、チョコを落とした。

 

 

「…」

「…なんだ。」

「なんというか、丸くなったわ」

そういうと、ピクシーは落としたチョコを拾い再び食べ始めた。

 

「…太ったのか…」とシンは自分の腹を突くが、固く、鋼の如くで相変わらずである。

 

「いやべつにそういう意味じゃないんだけどさ。

…まあ、いいわ。どーせ、あの私はメイレイするだけだし。」

 

 

もっさもっさとピクシーはチョコのお菓子を食べ、シンはテレビを見ている。

 

 

「でも、おかしな話だわ。混沌を選んだあなたが、あの世界で、"秩序"を作ったのだから、それってものすごくおかしな話だと思うの。」

 

「…王だからな。それに、一つの条件以外俺は何も求めない」

 

 

 

「『大いなる意志以外、殺生は避けるように』だったかしら、ずいぶんと曖昧で稚拙だわ…あ、これおいしいかも」とマガデミアンナッツをもう一度持ち、齧る。

 

 

「そうでもない。それに避けるよう(・・・・・)にでしかない。」

「それって、生きるためだったら、最悪殺してもいいってことだよね」

「そうなるな」

 

そう。これは避けるように。

つまり、絶対的規律ではない。

 

だが、事実、相当の因縁がある連中でない限り、あの世界は至って平和である。

それは"明けの明星"と言われたルシファーを倒した、"混沌王"が魅力的であり、カリスマ性があったのは事実である。

 

そっと触れただけで、悪魔でさえもその闇に引きづりこまれてしまうほどの闇。

何よりも圧倒的な力。それがあの混沌とした世界では何よりも悪魔たちを引き付けた。

 

 

だが、すべての悪魔が従属しているわけでもない。

 

一部はやはり、大いなる意志の復活の為、どこかに隠れている。

何れにせよ、それも何度も繰り返している。

 

「…まあ、いいや。とりあえず、なんかあったらまた来るわ」

そういうと、ピクシーは消えた。

 

 

(…そういえば、明後日から林間学校だったな…)

そう思うと、シンはテレビの画面を見ながら準備を始めるのであった。

 

 

 

あるか。ないか。二元論ではないところに、やつはいる。

今はまだ小さな火でも、やがては大きくなる。

それが、意志を持ち、大いなる意志になる。

 

つまり、意識ある所に奴は現れる。

 

 

 

実に憎たらしい。

 

 

 

 

考えたくもないが、可能性を話そう。

おそらく神なんてものは存在しない。だが、存在している。

最強であり、最弱である。

 

そんなやつだ。あのクソッタレは。

 




稚拙な文章で申し訳ないです。
あと、シンの性格がブレッブレなのも勘弁してください。

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