Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第17話 Scenery on the stage 6月22日(水) 天気:曇

本当の自分か…存外、ないのかもしれん。

所詮、自己なんてものは外界によって形成されたものでしかない。

 

俺は誰によって形成されたんだろうな。

 

親?そうだな、親は確かに好奇心旺盛なほうだった。

知らない食事の店に入り、後悔している親の顔と喜んでいる顔。

どちらも知っている。数少ない両親との記憶だ。

 

で、それで何が変わる?

 

新しい自分に気づかされるか?

そんなものに何の意味がある?

生きやすくなるのか?あの忌まわしいやつに勝てるか?

 

何にもない。

何一つ、無い。

 

何より、理解なんてものは概ね願望に基づくものでしかない。

 

『人は見たいように見て、聞きたいように聞く』

 

 

俺には関係ない話だが…

人ではない俺にはな。

 

 

 

 

「我々はここで、彼らのようなペルソナ使いを見てきました。その誰もが、己について悩んでおられましたな…」

「へぇ…どのくらいだい?」とシンは青いリムジンの中、腕を組み、話を聞いていた。

 

「我々にとって時間は無意味です。」

マーガレットは淡々と答えた。

 

時間の経過は無意味か。

俺にとってもそうだろうな。

永遠の闘争。

 

「…似てるね、俺とあんたたちも」

「私もそう思いますよ。フフフッ」とイゴールは不気味な笑い声をあげた。

 

「ヒホ?これはなんだホー」とライホーは探偵らしく机の下から紙きれを取り出した。

 

ライホー。実は俺もこんな悪魔を見たのは初めてだ。

 

先日、ケヴォーキアンに呼び出され、まさに山奥にあった自宅のような城に呼び出された。

マリーも連れて行った。寧ろ、それが目的だ。

マリーの健康診断らしい。

 

「そしてこれだ」

とヘッドギアのようなものを付けられた。

「なんだ?これ」

「お前のまだ見ぬ、悪魔を作り出そうと考えてな。」

「…原理は?」

「ああ?聞きたいか?」とケヴォーキアンはニヤァと笑みを浮かべる。

 

「…いや、いい」

 

そして、ヘッドギアをつけ目をつぶった。

歯医者の椅子のような席に座らされた。

 

そしたら、こいつが召喚された。

簡単に言えばそうだ。

 

ケヴォーキアンの話では、何かのモノによばれたと考えるべきだというと、そのまま、黙ってしまった。

 

…ライドウの帽子か?

…まあ、いい。

 

そして、今に至る。学校は休んだ…いや、休んではいない。

とある方法で俺が二人いる。

 

「オイラが召喚された経緯がカンケツすぎるホー!!そんなんじゃ、読者さんに伝わらないんだホー!」

「…読者?あの"忌まわしいやつ"のことか?」とシンは首をかしげた。

「Y.H.V.Hじゃないし、大いなる意志でもないホ。…でも、オイラにはどうでもいいことだホ!」と拾った紙に目線を戻した。シンもそれを見るために椅子から立ち、ライホーの紙きれを見た。

 

「なんだホ。『明けないミッドナイ「…だぁああああっ!」」とドアを開けて入ってきたマリーがその紙切れを取り上げた。

 

「なななな、なんで読んでんのよ!?」

「落ちてたんだホ。」とシュンとするライホーを見て、一気に怒りが覚めたようだ。

「…かわいい」

 

「かわいいではないホ!クールなボディにホットなハートを兼ね備えたライホーだホ!」

と地団駄を踏む。

 

それから、ライホーは再び物色を始めマリーは恥ずかしいポエムを読まれることとなった…

 

「さて、そろそろかな」とシンはドアに手を掛ける。

「じゃ、また。行くぞ、ライホー」

「バイバイだホー!!」

 

このライホー。実は、人から見えないのだ。

実体化する悪魔は見えてしまうものである。

実際にケヴォーキアンには普通に見えていたし、死ぬ間際の患者にも連れて行ったヒーホーが見られたことがあった。

だか、こいつは見えないらしい。

実際、こうして連れていても、誰も気が付かない。

 

ライホー曰わく、「ライドウでは、当たり前だ。」と言っていた。

…よくわからない話だ。

 

「ヒホー!帽子がお揃いホー。」とライホーはシンが被った帽子にテンションを上げた。

「とりあえず、あのお店の監視だよ。」

 

神社で腰を降ろし、気配を消す。

ライホーは居合わせた「きつね」と戯れ始めた。きつねには見えているらしい…

どうなっているんだか…

 

時間は午前11時。

 

豆腐屋”マル久”の前にはぞろぞろと記者や、野次馬らしき人物がいる。

 

 

「…」

不審な人間はいない。店の扉は開いていない。

 

シンは表情を変えずにじっと、その店を見ていた。神社の階段に座り微動だにせずに。

ライホーはシンの膝の上で眠りについていた。

 

 

 

「ね、聞いた?久慈川りせ、ホントに来てるらしいよ!」

放課後の教室で女子生徒と男子生徒がたわいもない話をしていた。

「ほら、豆腐屋の"マル久"ってあるじゃん?あれ"久慈川"の"久"なんだって。」

「マジで!?え!?俺、家超近いんだけど!」

 

そんな会話をしながら、教室を出て行った。

 

「マル久さん、すごい人だかりだって。」

「ぽいね」

 

天城の話に同意するように、千枝は答えた。

「けど、昨日のマヨナカテレビ、本当に彼女だった?…なんか雰囲気違くなかった?」

「間違いねえって!

あの胸…あの腰つき…そしてあの無駄のない脚線美!」と花村言い終わると、千枝を見た。

 

「とにかく間違いねんだって!…な!」と完二に同意を求めるように完二を叩いた。

「あー、行くんスか?

オレぁ、芸能人とか興味ねえけど、ヒマだし…ま、付き合いますよ。」

花村とは真逆でまったくテンションの上がらない完二。

 

「間薙先輩とかも興味なさそうっすね」

 

「?」と首をかしげる。

 

「…」「…」と皆が黙ったまま、天城と千枝は行かないということで、教室で別れた。

 

 

帰り道、シン以外が近い距離で小さな声で話をする。

「…なんか、おかしくないっすか?間薙先輩」

「ああ、なんつーかさ、こうバカにしたような雰囲気っつーかさ」と花村は少し怒っているようにも見える。

「…わからない」と鳴上はいう。

 

鳴上はシンが教室に来てから、違和感を感じていた。

いや、形姿はもう完全に間薙シンである。

だが、雰囲気が明らかに違う。

万が一の為に人気の少ない神社へと三人はシンを連れていった。

 

「…」とシンは何も言わずに立ち止まった三人を見る。

 

鳴上は勇気を出して尋ねた。

 

「誰だ?お前は」

 

そう鳴上が言った瞬間、全員が背筋がゾクッとした。

それまでには感じた事の無い、まるで自分が引きはがされるような、ドッペルゲンガーが出されるような、いや、この感覚を完二以外は知っている。

 

ペルソナの召喚と同じ感覚であった。

 

『皮肉に満ちた嘲笑を浮かべている』シンは腕を組んだ。

 

「勘が良いなやはり…」

 

「何もんだァ?てめぇ」と完二はメンチを切る。

 

「そう構えるな、間薙シンに頼まれてこうして姿形を似せているのだからな」

そういう表情は相変わらずである。

 

「…理由は?」

「理由?知らんな。病院に行くと言っていた、それだけだ。」

「そういうことだ」

 

「「「!?」」」

「うそ・・・だろ?間薙が二人??」と花村は開いた口がふさがらない。

 

「すまんな。」

「気にするな、王よ。それに自己の確立が出来ていない連中は見ていて面白いものだ」

「そうか。」

 

そういうと、皮肉に満ちた嘲笑を浮かべていた"間薙シン"は学生帽を被ったシンの影に溶けていった。

 

「…身代わりか」と鳴上は納得したような顔でシンを見た。

「まぁ、簡単に言えばそうだな。用事があった。」

 

「あーえーつまり、あれも悪魔ってことっスか?」と完二は力の抜けた表情で尋ねる。

「そうだな」

「なーんだよ、俺はてっきりシンになんかあったのかと思って心配しちまったぜ」と花村も力が抜けた表情でシンの肩を叩いた。

 

「…変わっているな君たちは」

 

「…?どういういみだ?」と花村は何となく尋ねる。

シンは沈黙し「さあ?」と首をかしげた。

 

 

 

 

 

そして、ちゃんとしたシンを連れて皆で豆腐屋へと向かった。

 

そこでは足立刑事が交通整理をし、その前を運送屋の軽トラックやカメラ機材を積んで帰っていくテレビ局の車などを足立刑事が交通整理をしていた。

 

なんてことはない、すこしばかり騒がしいそんな平和な日である。

 

「足立さん。何かあったんですか?」とシンが足立に尋ねた。

先ほどまで足立はいなかった。それが疑問でシンは尋ねた。

 

「ああ、君らか…」と疲れ気味に足立は言葉を吐いた。

「いやぁ…野次馬が次々車で押しかけて商店街の真ん中で止まろうとするからさぁ。

それに、通報があってね、止まってる車同士でもめ事なんか起きちゃって、それでさっき僕も来たところなんだ」

 

「でも、交通課じゃないですよね?足立さん」とシンは話を進める。

「そうだよな」と完二はドスのきいた声で足立を脅す。

 

「え…あ、いや、えっと…ほら、稻葉署小さいし、人手が足りなくてさ。」と動揺したように足立はいう。

「…じゃ、また仕事あるし、またね。」と慌てるように去って行った。

 

花村は呆れたように「お前…高1で現職の刑事ビビらすとかねーだろ…」

「別に思ったこと言っただけっすよ…ねぇシン先輩」

「…いや、俺は少し気になることがあっただけさ」

 

「にしても、ただ事じゃねーな、これ。警察出てくるって…」

そういうと、花村はあたりを見渡した。

 

そして、気が付いた。

「あ…まさか、警察もリセが狙われるって踏んでんのか?

 

そんなことを言っていると、堂島の声が店内から聞こえてきた。

「はい、失礼、ちょっと道開けて。…おーい足立!」

そして、こちらに気が付いた。

 

「お前たち、こんな所で…」

堂島は店から出てくると、近づいてきた。

 

「ん…?巽完二!…お前ら…仲いいのか?」

「るせぇな、いいだろ…」と嫌そうに完二は言った。

 

「…まあいい。それより何している、こんなとこで。」

「まあ、芸能人がこの町にいるっていうんで、見物に来たんですよ」

 

シンは淡々と答える。だが、その言葉にはどこか違和感を感じさせた。

それは不審という意味ではなく、どこか脅迫染みている様に鳴上には感じ取れた。

まるで、今は関わるなと言っているような、そんな風に鳴上は感じた。

 

「…そうだな。これだけ騒ぎになってんだ、嫌でも気になるか…」と堂島は答えた。

だが、やはり疑っているようなため息を吐き、頭を掻くと

「はぁ…まあいい。いくら芸能人だろうが、ここは自宅だ。迷惑にならないようにしろよ。」

そういうと、堂島は去って行った。

 

「先輩の叔父貴がデカたぁね…てか、今の空気なんスか?…先輩ら、疑われてんスか?」

「ま、俺たち一回引っ張られてるからな…」と花村は苦い顔をした。

 

「…それに、事件の前後に俺たちが毎回毎回現れているしな。」

「確かに」と鳴上はうなずく。「完二の時は特に、俺たちが現れているし、毎度毎度鉢合わせている」

 

「そうっスね…」

「けど、全部話すって訳にもいかないだろ。」と花村が言う。

「"あの世界"の事言ったら、信じないどころか、ますます疑われて、動けなくなっちまう。」

 

「ちげぇねぇ…」

 

そんな会話をしていると、一人の学生がため息を吐き隣の女子生徒に言った。

「"りせちー"居ないみたい…」

「なんだ、いつものおばあさんがいるだだね」

「この町に居るって聞いたけど、ガセネタだったのかな?」

 

それを聞いてどんどん人が減っていった。

「ガセネタ!?え、いねーの!?結局ぅ!?」

「ぷッ、なんだ今のダセー声。」

完二は思わず噴き出した。

 

「う、うるさいよ!」

花村は恥ずかしそうに怒った。

 

「…とりあえず、入ろう…」とシンはズシズシと中に入って行った。

 

 

 

 

中に入ると、店の少し奥で慣れた手つきで豆腐を作っている人がいた。

その恰好は明らかにアイドルといった雰囲気ではなく、寧ろ風景に溶け込んでいた。

 

「えーっと…」

「すまんが、豆腐くれ。"久慈川りせ"さん」とそのおばあさんにシンは声を掛けた

 

「「「え?」」」と思わず三人は間抜けな声を出した。

 

三角頭巾をかぶった女性が振り向くとそこにはテレビに出ている、まさに久慈川りせであった。

 

「はい。どれがいいの?」

「…そうだな。普通に絹ごしと…」とシンが普通に会話をしていると、花村がシンの耳を引っ張った。

 

そして、コソコソと話し始めた

「ちょ!なんで、普通に会話してんだよ」

「いや、相手は人間だから、普通に話して何が悪い?」

「いや、それもそうなんだけどよ…」

 

「…それで、どうするの?」とりせは淡々とシンに尋ねた。

 

「俺は豆腐で良い。花村はどうするんだ?」

「お、おれは…が、がんもでいい」

「俺はいらねっス。」「俺は絹ごしで」と鳴上が言い終わると、それぞれを取りに行った。

 

「なんか…テレビで見んのと全っ然キャラ違うな…たまたま疲れてんのかな…?」

「…OnかOffかの違いだろ?」

「いやーでも本物の"りせちー"だよ…来て良かった…本日のミッション達せ…

じゃなかった、本題がまだじゃん!」と思い出したように花村は声を上げた。

 

「あーえーっと…」と花村が言おうとしたが、緊張してうまく口が回らない。

「何照れてるんっスか。」と完二は笑う。

 

シンがさっと言い始めた。

「最近、変なことなかったか?」とシンがストレートに聞いた。

「変なこと?…ストーカーとかって話?…キミたち、私のファンってこと?」

と少しうつろな目でりせは言った。

 

「いや、オレらってか、ファンっていうか、この人がな」と完二は花村を指察した。

「ばっ…お前、しれっとばらすなよ!」

「あの胸、あの腰つき、ムダの無い脚線美…だかを確かめるんでしたっけ?」

「わーわーわー!!完二てめ、わざと言ってんだろ!!」と花村は大きな声をだし、完二の邪魔をした。

 

「あいつは置いといてだ。この町は物騒だからな。気を付けた方がいいということだ。」

「ふうん?」と訳のわからないといった感じでりせは答えた。

 

「それで、えーっと…"マヨナカに映るテレビ"って知ってる?」と花村が話し始めた。

「つっても深夜番組とかじゃなくて…んーなんて説明したらいいか…」

 

「噂になっているものだ。"マヨナカテレビ"と言って」とシンが言うと

 

「昨日の夜のやつ?」

「君も見たか…」

「噂、知り合いから聞くことあったし。」と少し生気が戻ってきた。

「でも、昨日映ってたの、私じゃないから。あの髪形で水着撮った事ない。」

「それに、胸が。」と言葉を詰まらせる。

 

「は?」と花村が間抜けな声を再びだした。

 

「胸、あんな無いし。」

 

「あー、言われてみれば…」

「…って、あー、何言ってんの俺!あ、その、ごめん…」と一人でツッコミを始めた。

 

「…謝りすぎ。変なの。」

 

そういうと、りせは少し笑った。

 

「あ、笑った。」と花村は嬉しそうに言った。

 

 

「…でだ、スタイルだとか、撮った事ないは置いておいて、君に酷似していることには違いない」

「あれって、何が映ってるの?」

「ハッキリした事はわからない。ただ、君は今は時の人だ。気を付けた方がいいという話だ。」

「あれに映った人…次に誘拐されるかも知れないんだ。」と花村が言った時にシンはため息を吐いた。

 

 

「やぶからぼうじゃ、しんじらんねよな。けど、嘘じゃねえ。」

「だから、知らせなきゃと思って」と花村は軽快に口を動かす。

 

りせが話している間、シンは鳴上に小声で話す。

「…花村がテンションあがってて、口が軽くなってる」

「みたいだ」

「…恐らく、警察もりせが狙われてると考えた場合、恐らくりせに俺たちと同じ質問をぶつけるだろう。」

「…つまり?」

「…お前の叔父さんからの疑いは更に強くなるかもしれないというはなしだ」

 

鳴上はうなずいた。

「なるほど。俺たちがこんな質問をしてるんだ。"何故、俺たちがそんなことを知ってるのか"と疑問に思う」

「そう。つまり、そこから俺たちは更に警戒されるかもしれん。だから、鳴上。お前は特に気を付けろ。」

「わかった」

「それと、嘘は禁物だ。お前の叔父さん良い目をしてるしな。…ここにはりせを見に来たのと豆腐を買いに来たということを叔父さんに言うといい」

「…なるほど。俺は料理しているから、不審ではないな」と鳴上は納得する。

と話していると、りせが鳴上に豆腐を渡した。

 

 

「はい。あなたは絹ごしね」とシンに渡す。

「ああ…」とシンは絹ごし豆腐を受け取る。

 

おまけを貰った花村は「もらったもんは食うと」宣言し、それぞれ帰って行った。

シンは家には帰らずに豆腐を家に置くと、再び神社へと向かい気配を消して、豆腐屋を見ていた。

 

そして、シンの読み通り、堂島と足立は豆腐屋に現れた。

シンはそれを見ると、立ち上がり、豆腐屋に近づいた。

 

 

「えっ…さっきも言われた?」と足立の声が聞こえてきた。

「四人連れで…制服着てたから、たぶん高校生だと思うけど…」

「もしかして、三人のうち一人はこう…何て言うんだ、若干"ヤンキー風"の?」と堂島が身振りを加えて尋ねる。

りせはそれにうなずいて答えた。

「それって…堂島さんちの彼と、あと友達の?」

そういわれると堂島は先ほどと同じように頭を掻いた。

 

足立がお礼を言うとりせは奥にはけていった。

 

「どうも、おかしいな。」

シンは息をひそめて堂島たちの会話を聞いていた。

「このところの失踪事件…2件の殺しと合わせて、俺達でもつかめてない謎ばかりだ。

ここへ来て彼女に警告したのも、言っちまえば俺の刑事としての勘からだ。

それを、事情も知らない高校生が先回りってのはどういうことだ…?

ただ有名人の顔見に来るための口実か…?」

そういうと、堂島は考え込んでいた。

 

「…堂島さん?」

と足立が言うと、堂島は自分の頭に浮かんだ一つの可能性を消した。

「八十神高校、な…2件目のガイシャの小西早紀に、一時行方をくらました学生二名か…」

「学校関係者の捜査の方も、何も出てこないんですよねえ…

このままだと、ウチらマズくないですか?県警もそろそろ…」と足立が心配そうに言うと「要らん心配してるな!捜査続けろ。」

そういうと、堂島たちが出口に向かって歩いてきたので、気配を消した。

まるで暗闇に溶け込む様に、シンの姿が消えている。

 

それに気が付くはずもなく、二人は車で去って行った。

 

シンはそれを確認すると、鳴上に電話を入れた。

「はい、もしもし」

「予想通りだ。」

「…まさか堂島さんもわかってた?」

「いや、堂島さんは勘らしい…」

「…わかった。注意するよ」と鳴上は電話を切った。

 

シンはそのまま家へと帰って行った。

 

 

 

深夜…

 

ニャルラトホテプは神取の姿で居た。

「変わればよいのではないか?我と、そのりせという女が」とニャルラトホテプは陽気にバアルたちと飲んでいた。

「…相手はおそらく人間だ。お前が出しゃばってどうする。」とシンは寝っころがりながら、言った。

「そういうがな…まあ、よい。我としてもこの先が興味深いからな」

「…というと?」

 

「…神を気取った、我と似たモノがいるのだ」

「まさに神取か…」とバアルは笑った。

「だが、やつはうまく隠れていてな。我も見つけられないのだ。」

 

「それはおそらく、そもそも、何故"マヨナカテレビ"があるのか、になるだろう。

だが、それは…あとでいい。可能性が多すぎる。」とシンは言った。

 

「…ほう、つまり。可能性はすでに見つけたと?」とニャルラトホテプは不敵に笑みを浮かべる。

「そうだな…この町のどこかだろうな。」

 

それを聞いたニャルラトホテプは笑い始め、シンに顔を近づけた。

 

「クックククッ…傑作ですよ。片っ端から殺していけばわかりますかね?」

「…それは得策ではないな。でも、まあ、待っていれば…いずれな。」

そういわれると、ニャルラトホテプは椅子に座った。

 

「まあ、いいですよ…私にとって時間は無意味(・・・)ですから」

そういうと、ワインを飲んだ。

 

「…うまい」

「おお!わかるか!流石だ!」と再び騒ぎ始めた。

 

 

 

しかし、こうもテレビに出た人物がこの町に来るとなると、それこそ何かしらの因果を感じる。

仮に、というか、あいつが言っているのだから、恐らくどこかにいるのだろうが。

神気取りな奴がそれを仕組めるとしたら…それは強大な相手だと言えるだろう。

 

 

ふと、開いていた窓から風が入ってくる。

そこに含まれているのは湿気。だが、蒸し暑くは感じなかった。

寧ろ、べっとりとまとわり付くような、嫌な空気が入ってきた。

 

「不快だ…」

 

俺の知らないところで何かをされていると思うと、殺したくなる。

何より、神を気取る…見つけたら八つ裂きだ。

あの忌々しいやつを気取ったことを後悔させてやる…

 

 

月光に伸びた、影はシンの『マガツヒ』を表すが如く、真っ赤に染まっていた。

 

 

 

「…わかったでしょう?あれが"人修羅"です。」

「…魅かれる理由が分かりましたよ」とニャルラトホテプは笑みを浮かべる。

 

「…なんだ?黙って」

 

「いえ、なんでもないですよ。」と二人は再び騒ぎ始めた。

 

 

 

 

その日の夜、マヨナカテレビでは相変わらず"久慈川りせ"が映っていた。

それを決定付けたのは、顔のアップが映った事であった。

 

 

 




彼此、前の投稿から一か月が経っていますね。
随分と時間が経つのが早くて、もう困ったものです。

りせちーがやっと登場してきました。
派手な展開もなく、ただライホーが出てきた位ですね。
ニャルラトホテプは『無貌の神』という面もありますので、それを生かしてみました。

補足といいますか、設定は
普通の人間には本物と偽物の違いが殆どわかりません。
しかし、笑い方に特徴があるため、それを見抜くと見抜ける。
あるいはペルソナ能力を持っている者には違和感として、伝わります。






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