Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第20話 To What Extent Am I “Me”? ( The Final Volume) 6月25日(土) 天気:雷

霧に包まれたストリップ劇場。

それは普通ならあり得ない光景。

しかし、ここはそれが至極当然。

 

そう。何故なら、霧に包まれた世界なのだから。

 

全員でカーテンを開け、中に入ると、水着を着た久慈川りせがいた。

 

「知ってると思うが、あれは偽物」とシンは相変わらず淡々と興味なさそうに言った。

 

「ファンのみんな~!来てくれて、ありがと~ぉ!」

 

「瞳孔開いていますね」

「うむ。目を見開いている」とクーフーリンとシンは会話を始めた。

 

「今日は、りせの全て見せちゃうよ~!

…えぇ?どうせウソだろって?アハハ、おーけーおーけ!」とりせの影は言う。

 

「自意識過剰だな」「ええ、誰もそんなこと言っていません」

とシンたちが話していると、後ろから千枝のチョップが入った。

「うるさいっつーの」

「これは失礼しました」

「怒られたな」

 

「ならここで…あ、でもここじゃスモーク焚きすぎで見えないカナ?

じゃぁもう少し奥で、ウソじゃないって、ちゃーんと証明してあげるネ!!」

 

そしてりせの頭上にテロップが出現した。

 

『マルキュン真夏の夢特番!丸ごと一本、りせちー特出しSP!』

 

沸き起こる歓声。クマが言うにはシャドウが騒いでいるらしい。

(…ということは、存外ルイの言っていることが当たっているのかもしれん。

シャドウ自体が、人の欲望ということ)

 

「お、オレも、あんな風だったんか…?」

「ああ、そうだ。ふんどしでな」

「マジっスか…こらキツいぜ…」とショックそうにクマから貰った霧の中でも見えるメガネを外し、目頭を押さえた。

 

完二がそういった瞬間、再び歓声が上がった。

 

「うあ、ざわざわ声、今回スゴい…なんか気持ち悪くなってきた…」

「誰かが見てるんだとしたら…早くなんとかしないと、これ…」

 

「じゃあ、ファンのみんな!チャンネルはそのまま!

ホントの私…よ~く見て!マルキュン!」

 

そういうと奥へと消えていった。

 

「い、急ごうぜ!イタい話聞かれるだけとは訳が違うって!」

「そうだな」と鳴上が答える。

 

すると、またざわざわと騒ぐ。

 

「シャドウがめっさ騒いでるクマ!」とクマは眉間にしわを寄せ厳しい顔をした。

「さっきのは、リセって子が抑圧してる思念クマ!

このままじゃ、リセチャン危ないクマよ!?」

「今度は、オレが助ける側ってか。よし…なら急ぐぜ!」

完二の声と共にシン以外は走り出した。

 

「主。皆進んでいますよ。」

「…ああ、そうだな」とシンは考えるのを止め、ゆっくりと歩き始めた。

 

 

階段を上がるたびに聞こえる、りせの苦悩。

りせちーというキャラ、演じる様々なキャラクター達、そして、彼女は見失っていった。

本当の自分。そして、久慈川りせという人物を。

 

「…キミたちはどうだ?…本当の自分とはなんだと思う?」とシンは鳴上達と歩きながら言った。

「たぶんだけど、そんな自分も受け入れるっていうのが自分なのかもしれないね」と天城はすぐに答えた。

「でも、受け入れるだけじゃだめで、そこからどうしたいっつーかそういうのが大事だと思うぜ?」と花村も答えた。

 

「…すこしは参考になったかな?」とシンはクマに言った。

『わからんクマよ…』と弱々しくクマは答えた。

 

 

 

「しっかし、すんげぇ戦い方だと思うわ」と花村はシンの戦い方を見て言う。

正直、この瞬間だけ鳴上はシンを人間だとは思わない。

恐らく鳴上だけではない、千枝や天城、花村も完二も。

 

相手に囲まれようとも、天井や壁やらに飛びつき、相手に近づき相手を引きちぎる。

黒い液体を浴びながら、シンはちぎった相手を更に違う相手に叩きつける。

相手がいくらスキルをシンに当てても効いている様子がない。

寧ろ、素手で弾く始末。何より、それが通常攻撃であること。

それが鳴上達にとっては恐ろしかった。

 

「なに突っ立ってんるんスか!オレ達も負けてらんねぇ!」と完二もペルソナ『タケミカヅチ』を召喚し抗戦する。

「だな!」と花村もヘッドフォンをして臨戦態勢に入った。

 

 

「チカチカする場所だな」と歩きながら鳴上は言った。

「そうだな。こういういかがわしい店というのは基本、こんなものだ」

 

「やっぱり、東京とかってこういう繁華街的な?のって多いか?」と花村は尋ねる。

「歌舞伎町なんかはスゴイらしいな」

「あーやっぱりそうなんスか」と完二は納得するようにうなずいた

「オレも行ったことはないけどな(それにオレが行ったときは監獄だったしな…)」

 

「シン君って服装いつもパーカーだよね?」と千枝は尋ねる。

「…ポケットが多くて便利」とパーカーのポケットから飲み物を取り出す。

 

「ふーん。カバンとかでもいい気がするけど」

「カバンだと動きにくい。恐らく里中さんがいつもジャージなのと一緒だと思う」とシンが言った瞬間天城が笑い出した。

「な!し、失礼な!」

「いつも、ジャージのイメージがある」とシンは率直に感想を言った。

 

 

そして、そんな話をしながら七階へと来ていた。

 

 

再び、りせの声が聞こえてくる。

「うれしい!ホントに来てくれたんだ!

でも、やっぱりちょっと恥ずかしいからぁ…

電気、消すね!」と言われた瞬間、電気が消え、真っ暗になった。

 

『ヌオ!本当に電気が消えたクマ!これはキケン!センセイ、慎重に進むクマ!』

「大丈夫。『ライトマ』」とシンが手のひらを天にかざすと、辺りが先ほどまでではないが、明るくなった。

 

『おお!やっぱり、シン君はすごいクマ!』とクマは興奮気味に言った。

 

『ライトマ』で明るいため、鳴上達は難なくダンジョンを探索した。

そして、カーテンの向こうから声がする。

 

「来てくれたんだね!いいよ。りせ、心の準備はできてるから…」

 

「ゴクリ…センセイ、準備はいいか?」

鳴上は普通にカーテンを開け、中に入って行った。

 

「キャハハハハ!見て!ほら、あたしを見て!」

そこにはりせの影と白い大きな蛇が居た。

 

戦闘が始まる。

 

相手は突然、『淀んだ空気』を放ってきた。鳴上達は戦闘を始めた。

 

危なくなりながらも鳴上達は回復や弱点を突く戦いをし、相手を倒した。

 

『おぉ、さっすがセンセイクマ!』

そして、辺りが明るくなった。

 

「ふぅ…流石に疲れてきたね…」と千枝は息を切らし座り込む。

「そうだな…」と花村も疲れているようだった。

「一旦戻ろう。」と鳴上は『カエレール』を使って一旦帰還した。

 

一階の入り口には丁度、ソファなどがあり、皆はそこに座り休む。

そこへピクシーが現れた。

 

「ティファニアの言うとおり、居たわね。」

「突然だな。どうした?」

 

そういうと、ピクシーはシンの肩に止まりひそひそと話し始めた。

 

「実は、動きがあったの。黙示録の四騎士に警戒させていた『アサクサ』でマネカタが何人か殺されたの。」

「…目星はついているのか?」

「いいえ…言えるのは、私たちの勢力ではないってことくらい。

私たちは基本的に『アマラ深界』だし、シジマ、ムスビも動きはない。」

 

「…フトミミは?」

「そうね。あなたに任せるそうよ。あなたに生まれ変わらせてもらった命だからとか言ってたわ。サカハギはアマラで暴れてから、出てきてないし…」とピクシーは興味なさそうに言った。

 

「…となると、メタトロン勢力か…居場所は分かるか?」

「それが、これって言えるほどの本拠地がないのよ。メタトロンは隠れて出てこないし、有象無象も『ギンザ』とか、シジマだとか、ムスビに隠れて復活の機会を待ってたりするから、攻めるに攻めれないの」

 

「…仕方ない。四騎士に一任させる。」

「そうね。あいつらは意外と役に立つからね。そうしましょうか。…寧ろ、バアルとかより全然役に立つわ」

「頼んだ」とシンに言われるとピクシーは微笑み、帰って行った。

 

「シン君はカッコいいクマ…それに比べて…クマは…クマは役に立たないクマ…」

クマの中の闇を深くした。

 

少し休憩をして再び、皆で登って行った。

道なりはそれほど、難しいことではなかった。シンは手を出さずに傍観し、鳴上達の戦いを見ていた。

 

常に彼らは考え、次の手を考えている。

だからこそ、被害を少なくして、戦えている。

この先の事まで考えてな。

 

(…それは鳴上の指示のおかげか?)

 

「完二!追撃だ!」

「了解っス!」とパイプ椅子で相手を盛大になぐりつけた。

 

(…それも含めての、『チーム』ということか)

 

 

 

「…最上階だな」とシンが階段を一番初めに登りきり、まず目の前に大きな扉があった。

 

「案外、近くて助かったぜ」と花村は笑みを浮かべた。

全員で扉を開け、入る。

 

 

そこには、水着を着て中央にポールに寄り掛かる"りせ"と、豆腐屋の地味な服を着た"りせ"

がいた。

 

「いた!」と千枝は大きな声を上げた。

「見ろ、本物もいるぞ!」

 

全員で近づくと、こちらに気が付いたのか、高笑いをした。

「キャーハハハハハ!!見られてるぅ!見られてるのね、いま、アタシィィ!」

「やめて」と苦痛の表情を浮かべながらりせはいった。

「んっもー!ホントは見て欲しいくせに、ぷんぷん!

こぉんな感じで、どぉ!?」

 

そういうと、ポールを片手でつかみくるりと回った。

 

「もう…やめてぇ…」

「ふふ、おっかしー。やめてだって。」

 

 

「ざぁっけんじゃないわよ!!」と先ほどの表情とは違い怒りに満ちた表情で言い放った。

「アンタはあたし!あたしは、アンタでしょうが!!」

「違う…違うってば…」

 

「キャハハハ!!ほら見なさい、もっと見なさいよ!

これがあたし!これがホントのあたしなのよぉぉ!

ゲーノージンのりせなんかじゃない!ここにいる、このあたしを見るのよ!!

ベッタベタなキャラ作りして、ヘド飲み込んで作り笑顔なんて、まっぴら!

"りせちー"?誰それ!?そんなヤツ、この世に居ない!!

あたしは、あたしよぉぉぉ!ほらぁ、あたしを見なさいよぉぉぉぉ!」

「わ、たし…そんなこと…」

 

「さーて、お待ちかね。今から脱ぐわよぉぉ!

丸裸の私を焼き付けな!」

「やめ、て…やめてぇぇ!」と頭を抱えりせは叫ぶ。

 

「あなたなんて…」

 

鳴上達は慌て始める。

「だめ、言っちゃダメ!!」と千枝が叫ぶが届かなかった。

 

 

 

「あなたなんて…私じゃない!!」

 

 

 

そうりせが言い放った瞬間、りせの影から禍々しい空気が出てくる。

それと同時に本物のりせは気絶する。

 

そして、正体を現す。

そこにはカラフルな姿で、顔には衛星のミラー版のようなものが付いたりせの影が現れた。

 

「チッ…来るぞ!」と完二の声と鳴上達は構える。

 

シンはクマと共にそれを見ていた。

 

 

順調に攻撃を仕掛けていく鳴上達。

疲れもなく、彼らはりせの影を攻撃していた。

 

「なによ…こんんだけぶたれて、まだ不満なワケ?ゼータクなお客…

じゃ…いっそ死になさい!!」

 

『マハアナライズ』

 

緑色のレーダーの様なものが全員を包んだ。

戦っている全員の能力が分析された。

 

「…」

シンは無言でそれを見る。

 

だが、特に状態異常になるわけでもなく、何も変化はない。

「なんだ?」と花村がなんだと言った表情で言葉を吐いた。

 

「わっかんねーけど、ぶん殴ってやるぜ!」と完二が殴りに行くが、当たらない。

「なにやってんだ!下手くそ!」と花村はペルソナを召喚し、『ガルーラ』を唱えるが当たらない。

 

「アンタたちの事はすべてお見通し…キャハハッ!」

 

「何なの、アイツ!?全然、こっちのが当たんないじゃん…」と千枝は厳しい表情で言葉を吐いた。

 

「…俺がやってみる」とシンは前に出てくる。

 

「キャハハハ!あんたもやるの!?」

「ま、そうだな」とシンは構える。

 

 

『悪しき輝き』

 

 

それと同時に、りせの影を霧のように何かが包むが効かない。

 

(だろうな…)とシンは構える。

 

「何をやっても同じよ!」

『マハアナライズ』と同じようにシンをアナライズした。

 

「!?…あんた…何者よ!?」とりせの影が動揺している。

「…さあ?ね」とシンは口をニヤァと釣り上げた。

 

 

そこから、シンは魔法を連発する。

『ラグナロク』、『ニブルヘイム』、『真理の雷』、『万物流転』

だが、どれも当たらない。

 

「キャハハハ!」と高笑いをすると、謎の波動を飛ばすと鳴上達にあたる。

鳴上達は弱点を突かれ倒れこむ。

 

シンはそれを防ぐ。

「なんで!?なんで効かないの!?」

「…面白いね。面白い!」とシンは両手を前に翳した。

 

 

『初めに闇ありき』

 

 

シンがそう唱えた瞬間、轟音と共にシンの体が黒く発光し、何かが砕ける音が部屋に響いた。

鳴上達は思わず、目をつぶった。

 

>シンは闇を呼び、時をゆがめた!

 

「ぐっ」と鳴上達も当たるがそれほど、喰らわない。

 

「!?な、なんで!?わからなくなったの!?」

「…」とシンは何も言わず、追撃をするように、ジャンプしなぐりつける。

 

りせの影はアナライズの効果が消え、避けられることなく、シンの拳はクリティカルで顔にあたる。

りせの影は吹き飛び、ポールから落ちた。

「な、なんで…避けれないの」とりせの影は倒れこんだ。

 

「お前の中のデータを元に戻したに過ぎない。」とシンはそれだけいうとふらっときたため、目頭を抑えた。

 

「だ、大丈夫!?」

「ん。すこしSPを使いすぎた」

 

りせの影は先ほどの姿に戻る。

本物のりせが起き上がるとみな、そちらに向かった。

 

「ん…ここ…って…?」

「ごめん…なさい…私のせいで…」とりせは謝る。

 

「もう無理しなくていい」と鳴上は笑みを浮かべた。

「…え? …うん。」とりせは驚いた表情で鳴上を見た。

「いつ以来だろ…そんな事言ってもらったの…」

 

そういうとりせは立ち上がり、自分の影に声を掛ける。

「起きて…」

 

その声に促されるようにりせの影は起き上がった。

「ごめん・・今まで、ツラかったね。私の一部なのに、ずっと私に否定されて…

私…どの顔が"本当の自分"か、考えてた。

けど…それは違うね。そんな風に探してちゃ…"本当の自分"なんて…どこにも無い。」

 

「本当の自分なんて…無い…?」とクマはその言葉で更に闇に引きずりこまれた。

 

「あなたも…私も…テレビの中の"りせちー"だって…私から生まれた。全部、私」

 

自分自身と向き合える強い心が、"力"へと変わる…

りせは困難に立ち向かうための人格の鎧、ペルソナ"ヒミコ"を手に入れた!

 

するとすぐにりせは膝をついた。

「おわっと、りせちゃん!」と花村は慌ててりせを支える。

「りせ、でいいから…確か、お店に来てくれた人だよね…」とりせは少し微笑む。

 

「あ、うん、こいつらも…」と花村は説明する。それにこたえるように皆、自己紹介をした。

「そっか…先輩になるんだ…みんな…ありがとう。」

「後で全部ゆっくり説明するから、今は…」と千枝が後ろを向くと驚いた表情をする。

 

 

「本当の自分なんて…いない…?」とクマは頭を抱える。

「お、おい、クマ…」と完二は驚いた表情でクマを見た。

 

「ダメ、下がって!」とりせが声を大にして言った。

 

「あの子の中から、何か…!」

 

「"本当"?"自分"?」とクマの声とは思えないほどの低い声が響く。

「ククク…実に愚かだ…」

 

すると、クマの後ろにクマよりも大きな影が現れた。

 

 

 

 




一応、補足といいますか、勝手な設定追加。(というか、言い訳)

『初めに闇ありき』はルシファーの技ですね。
効果としましては、『残りHPをランダムで 1/2 1/4 1/10にする。』というものですが、シンの追加効果で、相手のあらゆる補助効果を消す。というものが追加されています。
ですが、その場に居る全員に喰らうため、鳴上達も喰らったということになる。

そして、なんでクマが影が出てきてんの?という疑問があるかもしれませんが、この技のせいということです。
闇を呼び寄せた為に、クマの中にある闇が増幅された。
ですが、クマ以外の人間は自分と向き合っているために、そんなことはなかったということ。


あと、今更感なんですが、確かバイクの二人乗りって1年経たないといけないんじゃなかったかな…

…でも、免許証の時点で矛盾が発生してるので、そこは目を瞑って下さい。

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