Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第x2話 You Know…Die For Me?

神話で、『パンドラの箱』という話がある。

え?…壺じゃないかって?

…これは別に、壺か箱かって話じゃないんだ。

 

そこは重要じゃない。

重要なのは、箱に残された方さ。

 

…え?壷の方がいいって?

知ったこっちゃないよ。どっちだって変わりゃしないよ。

大体、箱の方が分かりやすいだろ。

壷?壺なんて最近の若いやつ…まあ、俺もそうだけど、実物なんて見たことはないし、あるとすれば、勇者が勝手に人の家に入って、それを割ってるもの程度にしか知らないんだよ。

 

 

…話が逸れたか。

えんふん。まあ、そのパンドラの箱の話で最後の方に『残されたのは希望』って記されている。

「予兆」とも「期待」とも「希望」と訳されているみたいだな。

兎に角、なんか前向きな意味合いのものさ。

 

でも、考えてみろよ。

箱だかツボだかの中にあった希望はさ、箱の中から出てきたって話はないんだ。

 

子供たちに話す時は、箱のそこにあった。

だから、人々はどんなに辛いときでも、希望を持っているのさ(キリッ

 

みたいな、感じで話されるけど、さっきも言ったとおり。そんなことは書かれてない。

大体、なんで体よく、悪意だとか病気ってやつが外に出てきて、悪影響があるのに

希望だけは箱の外に出ないで影響が出てくるわけ?

そんな理屈はおかしい。

 

まあ、つまりさ俺が言いたいのは、

この世界には希望はないってこと。

だって、希望は外に出なかった。

箱の中にたった一つだけ残ってる。

 

 

 

そうなると、この世界ってやつは絶望に溢れてて、どうしようもないことがあまりにも多すぎるってことになってくる。

まさに絶望。

どう足掻いても絶望

 

 

絶望…絶望…

 

 

そんな事が夢で出てくるんだ、最悪な目覚めって言えると思うんだ。

どうしょうない現実が、限りなく広がってて、俺の気分はもうバンジージャンプで突き落とされたくらいの気分さ。

 

最悪なんだ。とにかく。

 

それに、時計見違えて、一時間くらい早く家を出てしまったんだ。

何を血迷ったんだ、俺の目と体内時計は!

 

イカれてる。

 

朝ご飯は食わずにきた。

 

母親はどうせ、男のところだ。

父親の出張中に男連れ込んでくるくらい相当イカれてる。

こっちが怒・りたいくらいだ。

 

…最悪だ。ギャグも親も。

 

そんで、ま、父親も実は出張先で風俗行ってるのを知ってる。

どっちもどっちだ。

 

息子に興味ないのがバレバレだっつーの。

俺は…そんなやつらに嫌気はさしてる。

寧ろ、離婚しない方がおかしいて思う。

 

でも、俺は出て行かないってことは

俺はどっかで、期待しちまってるのかな?

いつか、変わるって…

 

俺はイヤホンをし、河川敷を歩く。

 

だってよ、事実10年以上前に買って貰ったストラップを未だに未練たらしく携帯に付けてんだ。もう、塗装なんか剥げてて、真っ白な『ジャックフロスト人形』。

 

…俺はなんだ?女か?

 

俺は携帯をポケットに入れた。

 

けど、少しくらい変わらないモノがあったっていい気がしてるんだ。

 

 

いつもと変わらない川辺の通学路。ちょっとばかし時間の早いってことだけで、何の変哲もない。

 

高校入ったのだって、深い意味とかない。

何をしたわけでもない、でも何かしなきゃって意味もなく焦って。周りが行くから、俺も行く。

けど、真剣に考えてたんだ、このまま大学にいって、運良く社会人なって…

でも、何故と問いを浮かべたら絶望した。

 

どこに辿り着くわけでもない。

何を成したいわけでもない。

そんな人生ってやつに、価値があるのか。

 

…考えるだけで、嫌になるね。

それこそ、意味のない問いだ。

 

と後ろから肩を叩かれた。

振り向くと、同じ制服を着た見た事のある生徒だ。

俺はイヤホンをはずす。

 

「…落としたぞ」と携帯を俺に渡してきた。

俺は慌てて、ポケットを探ると見事に何の感触もなかった。おそらく、先程ストラップを見たときに携帯を入れ損ねたか。

そんで、イヤホンしてるから落ちた音も気付かなかったのか。

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

俺に携帯を渡すと、何事もなかったように歩き始めた。

 

最悪…傷ついちった…

でも、ぬすまれなくてよかった。

後で御礼言わないとな。

 

名前は…

確か…

そうだ。間薙シン。

 

正直、ヤツは俺はヤバいって踏んでるんだ。

だって、誰も何も知らない。鳴上とか花村とか天城さん、里中さんとかと話してるのはよく見かける。

けど、それ以外ほとんど見ない。

あとは教員は授業後に質問してたりするが、マジメだなっとか思ったのをよく覚えてる。

 

でも、放課後とか何してるか恐らく誰も知らない。

あまりにも謎が多すぎる。感情の起伏も少ないし、感情あんのか?とかホントに疑いたくなるほど、笑ったりしてないし。

 

兎に角、不思議なやつだよ。

 

だけんども、今日の行いで俺の中のお前の評価は右肩上がりだぜ!

 

 

 

放課後…

 

結局、放課後に間薙に何か御礼をと思ったが、帰りの会の時にウトウトしてたら、いつの間に居なくなってた。

 

 

俺は仕方なく、歩いて帰ることにした

 

「ふぁあああぁ。だりぃ。」

バイトも休みの俺はすることなく、商店街を歩く。

友人は皆、バイトか彼女とデートとかさ

 

俺は…まだ、彼女とか作ったことないなぁ。

修学旅行なんか、淡い思い出みたいのをみんなで話してて、友人に「お前のとっておきを聞かせてやれよ」って振られたけど、俺がないって言ったら、みんな大爆笑してた。

そのせいで、教師に怒られたのは良い思い出だ。

 

…にしても、ここだって、大分廃れてきた。

昔はもっと、活気があったし、今のように常にシャッターが降りてるような店が少なかった。

 

ジュネスのせいだとか言ってるのを時々耳にする。

 

どうでも良いことだ。

それに事実、潰れてない店は潰れないモンだ。

だいだら。然り、愛屋然り…

 

ふと神社の前を通ったとき、泣き声が聞こえた。

 

でも、俺には関係ない。きっと、誰かがやってくれる。

そう思って、通り過ぎようと思った。

 

だが、俺はどういうわけだか、朝のパンドラの箱の話を思い出した。

興味。あけるなと言われると開けたくなる。

行くなと言われると行きたくなる。

…いや、行くなとは言われちゃいないんだけど…

 

どう考えても、この先の面倒を考えると行くべきではない。

だが、俺はこうして迷っている。

 

さながら、パンドラの箱を開けるか開けないかで、格闘するが如く。

 

 

結局、数秒足を止め、考え、俺は神社の敷地に入った。

 

今日は携帯を間薙に拾ってもらった。

だから、誰かに返しても損はしないだろって思っただけ。

 

鳥居を潜るとそこには似つかわしくない、長い金色の髪と水色の服を着た少女が居た。

例えるのなら、不思議の国のアリスのアリス。

まさにその主人公のような格好であった。しかし、少しばかり血色が悪い。

だが、確実に可愛いというやつに入るだろう。

 

俺が近付くと潤んだ瞳で俺を見てきた。

「なに泣いてんの?」と何故だか恥ずかしくて、髪の毛を掻いた。

「…ひとをさがしてるの…」というと一体の人形を見せてきた。

 

 

その顔には刺青が入ってるが、どこかで見たことのあるような雰囲気だった。

 

(うわ、微妙な趣味だなぁ。こんな人形買い与えるなよ…)と俺は思いつつ、子供の情報を引き出そうとした。

 

「…その、何処に住んでるとか分からない?」

「ひっく…わからない」

「うーん。困ったなぁ。」

と俺は携帯電話を取り出すと、少女がそれを見つめ始めた。

 

「ん?どうしたんだ?」

「あのひとのにおいがするよ!」と嬉しそうに言った。

「あの人?探してる人?」

「うん!」と笑顔で頷いた。

 

それがまぁ、眩しすぎるほどの笑顔でさ、高校生やってるこっちはそんなのを見てしまうと、俺はどうかな?って思って、濁ったなとか思う。

 

それが大人になるってやつなのか?

 

 

「…?どうしたの?」

「いや、何でもないよ。」と俺は作り笑顔をする。

俺は真っ先に、間薙シンが出てきた。

 

「えーっと、間薙シンって人かな?」

「うーん。わかんない。」と言うと人形を握り締めた。

でも、恐らくそうだと思われる。

朝に拾われた以外、俺の携帯を触るヤツなんていない。

(あー、でも、家わかんねーや)と俺は肩を落とす。

そして、足りない脳みそをフル回転させて、一つ思い出した。

 

「その人を知ってる人に会いに行こう。」と俺がいうと少女は無垢な笑顔で頷いた。

 

ただ、疑問が沸く。

「あのさ、なんで、その人に用事があるのかな?」と俺はその子供に訪ねた。

「うーとね、遊んでて貰ったの」

 

「ふーん…まぁ、いいか。じゃあ、ついてきて」と俺は少女についてくるように指示すると、ついてきた。

 

神社を出ていき、恐らく家を知っているであろう人物がいるであろう、ところへ俺は行くつもりだ。

ってか、これ通報されないかな。

…大丈夫かな?それもあるし、不確定事項が多すぎだろ…と一人で突っ込んだりして…

 

と、すぐに少女が俺のズボンを引っ張った。

 

「あそこ行きたい」

 

そこは『惣菜大学』

 

「なんか食べたいってことか?」

「うん…」とお腹を摩りながら上目使いで俺を見る。

…うん、仕方ないよな。子供だし。

俺は少女を連れていくと、「何が欲しい?」と尋ねた。

 

『特製コロッケ』を指差した。俺はそれを店主に伝えると、店主はすぐにそれを渡してくれた。

「おや!可愛い子だね!値段安くしてあげるよ!」と店主は少しながらも安くしてくれた。

(羨ましいな。やっぱり社会ってやつは格差があるな…あるいは…運か。そうだな、俺は運が悪かった。そんなもんだろうな。)

 

俺は別に顔が悪いとか良いとかでいわれれは普通だ。

バイトで重い荷物運んでるから、細マッチョだ。

でも、外見で何か秀でるものがあるかと言われたら、恐らく何もない。

…いや、もういい。こんな話は俺が辛くなるだけだ。

 

「はい」と少女に渡すと少女は嬉しそうにすぐ目の前にある、簡易的な椅子に座った。

そして、小さな口で特製コロッケを頬張る。その姿は愛らしさがある。

(…俺は別にロリコンじゃないが、妹とかいたらこんな感じか)と俺は思う。

 

俺も自分の分を食べる。

サクサクとした触感、そして、じゃがいものホクホク感。

出来たてはうまい。俺はいつも電子レンジに突っ込んでチンだ。

こうやって食うのは久しぶりだ。

 

そんなことを考えていると、少女は口の周りに衣とソースをつけていた。

俺はティッシュでそれをふき取ると、少女は「ありがと!」と嬉しそうに笑った。

 

そして、再びジュネスへと向かう。

少女は物珍しそうにキョロキョロと辺りを見渡し、指を刺し、あれはなに?だとか、ガラスに顔をくっつけて、これは何だとかいろいろ尋ねる。

俺は知っている限りのことを教える。

 

まさに子供。好奇心旺盛で、笑顔に溢れている。

でも…自慢じゃないが、俺は結構人の表情っていうか、感情とか空気ってやつに敏感なんだ。それに他の人の違和感みたいな。

原因はおそらく、親のせい。不倫だ浮気だ、してる今だからこそケンカはないが、昔は殴り合いだった。そして、暴言、罵倒し貶める。

…今思えば、よくもまあ、そんなに人を貶せる言葉が出てくるもんだと思う。

 

俺はそんなことを何度も何度も見てるもんだから、ケンカとか不穏な空気ってやつに敏感なんだ。

 

だからこそ、この少女に違和感を覚える。

 

小さな手で俺のズボンを右手でつかみ、もう片方の腕と手で人形を抱いていた。

ただ、なんというか、少女にはない幻妖に思えて仕方ない。

 

「…喉乾いた」と少女は言う。

「そうだな。その服暑そうだ」と俺はすぐ近くにあった、自販機で飲み物を買ってあげた。

少女は嬉しそうに飲み物を飲んだ。俺も飲み物を飲む。

 

「おいしいね!」

「…ああ」

 

…本当に俺は汚れっちまったな。

こんな少女を疑うまで俺は腐ったのか?

 

子供の頃、ドラマなんかに出てくる所謂、敵や政治家ってやつを見ていて、こんな大人にはなりたくない。

そう思ってたけど、気が付けば、高校生でそんなやつらの仲間入りをしてしまいそうなほどな、ところまで来てる。

それが社会ってやつなのか?

だったら、やっぱりこんな世界に希望なんてありゃしない。

 

「大丈夫?」と少女が声を掛けてきた。

「うん?…うん、大丈夫だよ」と俺は少女の頭を撫でてしまった。

だが、少女は嬉しそうに笑った。

 

幸いにして、職質されることなく、ジュネスへ着くと、俺はある人物を探した。

 

「いたいた。」と少女を連れて俺は品物整理をしている人物に声を掛けた。

 

「花村」

「はい、いら…って、お前か!どうした?」

「いや、お前って間薙シンの家、知ってるか?」と俺は尋ねる。

「あー知ってるけど、なんで?」

「いや、この少女がな」と俺はお菓子を見ていた少女を手招きする。

 

花村は口を開けたまま、俺の肩に手を回し、少女に聞こえないように話し始めた。

「おま!ロリコンだったのか!」

「ちげーよ。この少女が間薙シンを探してるんだとさ」

「冗談だっつーの。そしたら、丁度上にいるぜ?たぶん」と花村は安心したように言った。

 

俺はフードコートに行くと、ビフテキを食べる間薙シンを見つけた。

「ヒトシュラ!」

(ヒトシュラ?)

俺は間薙シンの呼び方に違和感を覚えたが、特に気にしなかった。

名称みたいなものだろうなと俺は考えた。

 

少女は走って駆け寄った。

シンはその声に気が付くと、椅子から立ち上がり、腰を下ろし少女を受け止めた。

 

俺はそれに続くように、シンの方へと歩いて行った。

 

 

 

「…えーっと、俺は上峰紘。朝は携帯ありがとう」

「こっちこそ、ありがとう。アリスを連れてきてくれて」と『アリス』という名前の少女はクマの着ぐるみと遊んでいた。

 

「お礼になんか食べるか?」とシンが尋ねる。

「…じゃあ、ちょっともらおうかな」と上峰は笑って答えた。

 

上峰はビフテキを食べながら話を続ける。

「それで?あの子はなんだ?」

「…まあ、俺の親が今いないから偶々預かってるって感じだな」

「ふーん。でも、お前学校行ってんジャン。その間、どうしてんだよ」

 

「ああ、メイドに頼んでる」

「メイド!?」と上峰は思わず吹き出しそうになった。

(完全に金持ちじゃねーか!!)と上峰は内心大慌てであった。

 

すると、クマと遊んでいたアリスがシンたちの方へと戻ってきた。

「ふふ、クマさん、ふさふさしてた」とアリスは嬉しそうにシンに報告した。

「そうか、よかったな」とシンは淡々と頭を撫でる。

アリスは心地良さそうに、目を細めた。

 

すると、6時を知らせる店内放送が流れ始める。

 

「じゃあ、そろそろ、俺は帰るわ」と上峰はビフテキを食べ終え、椅子から立ち上がると、アリスが上峰を見上げていった。

 

「ねえ、最後のお願い聞いて?」

「ん?なに?」と俺は腰を屈めアリスの目線に合わせた。

 

 

 

 

 

「あのねー…しんでくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

エレベータを降りた俺は一息ついた。

 

 

死んでくれるだって…

それを言われた瞬間、俺の心臓が鷲掴みされたような感覚になった。

少女の目が変わったような気がした。そして、呼吸の仕方が分からなくなる。

 

だが、シンがアリスをこつんと叩くと、それはすっと消えた。

「いたいよぉ」とアリスは頭を押さえて蹲る。

「ダメだよ」というと、シンはアリスの耳元で囁くと一転ぱっと表情が明るくなった。

そして、飛び跳ねて、再びクマのところへと行った。

 

「大丈夫か?」

「はぁ…はぁ…ああ、うん」と俺はやっとそこで呼吸ができた。

俺は少し驚き、慌てたがすぐに落ち着きを取り戻した。

 

「…すまないな。」

「いや、もう大丈夫だ。まじでそろそろ帰るわ」と俺は一息ついてエレベーターへと行った。

 

 

俺は家に帰ると、すぐに風呂に入って布団に入った。

 

 

俺は不思議な夢を見た。あのアリスって子が二人のおじさんと食事していた。

俺もそこに居て、一緒に食べていた。

内容は覚えてないが、なんか楽しかった。

 

…いや、ホントにさ親とこういう食事したとか、出掛けたとかね、そういうことをしたことのない人間にとって、ひどく奇妙なことなんだ。

 

でも、確かに楽しかった。

それだけは確かなんだ。

 

目が覚めると、時間は7時だった。

その起き上がって、着替えて、下に降りようとしたら、ドアがノックされた。

 

「…その、紘」それは父親の声だった。

「あ?なんだよ」

「少し話がある降りてきてくれ」というと父親は階段を降りて行った。

 

俺はすぐに察しがついた。

 

離婚だろう。

 

ハハ…笑えねーよ。

 

でも、そのくらいこの家庭はおかしくなっていたのは事実。

俺は覚悟を決めて、階段を降りて行った。

 

そこには母親と父親が机に座って向き合っていた。

 

 

「昨日。二人とも変な夢を見たんだ」と父親が口を開いた。

「その中で、お前が出てきた。なんか、少女とおじさんふたり、そんでお前が楽しそうに食事してた。

…そのあと、起きたらな…お前とそんなことしたことなかったなって思った。」

「…私もそう。」

 

俺はだまって聞いていた。

 

「それで朝早くから話したんだ。なんで俺たちが結婚したのか。

それを思い出して、わかったことがある。」と真剣な表情で俺の目を見て言った。

 

 

「言葉にしにくいが…その、お前のためだったんだって思い出した。

結婚する前から、お前が生まれた。

でも、言い訳じゃないが、二人とも仕事で兎に角、忙しかった。生まれてからすぐくらいに、徐々にすれ違ってきた。

でも、昨日のお前を見ていて、何か違うって思ったんだ。

俺たちが、お前を笑わせてやるべきだって気がついた。」

 

 

「だから、やり直そう。この家族を。」

 

 

 

 

…最悪。ホント、人生は最悪。

朝は最悪だ。…ホント、最悪。

 

こんな、最悪なことはないだろ。

 

 

「…最低だって、知ってるか?あんたら。

俺はずっと、あんたらにもらったストラップつけて、未練たらしくやってるんだぜ?

…気が付く遅すぎだっつーの…」

…俺がそれを言ったら、母親は泣いていた。

 

 

結局、全員ともすれ違ってた。

どこかが掛け違っていた。

それが大きくなりすぎた。

 

だから、"やりなおす”

 

 

でもこの世界、絶望ばかりだ。

どうしようもないほど、どうしようもないことが多い。

 

でも、絶望に溢れていても。

世界は変わっていくんだ。

どれだけの絶望の淵に居ても。

 

知らないところで日は昇る。

知らないところで人が生まれる。

 

 

 

やっぱり、パンドラの箱なんて開けるもんじゃねーな。

ろくな事がない。

 

 

 

 

 

「アリス。昨日はどうだった?」とジャックフロストと戯れるアリスに尋ねる。

「うーんとね…楽しかった!」とアリスは嬉しそうに昨日の事を話し始めた。

 

それを黒いおじさん、赤いおじさんが眺めている。

 

「うむ。オトモダチが増えて私もうれしいです」

「ああ、愛おしいな」とほほ笑むアリスを見て二人は笑みを浮かべた。

 

「また、こうしてアリスと共に平和に居られること…人修羅…いえ、間薙様には、本当に感謝しています。」とアマラへの入り口の前で黒おじさんがあたまをさげる。

 

「特殊な悪魔と契約できたし、こちらにも利益があった。」

「あの情報がお役に立ったようで良かったです。」

 

 

 

 

「ここに初めてきたときの違和感が解消されたからな。」

「違和感…ですか?」と黒おじさんはシンにたずねる。

 

 

「そう。俺の見たことのない、アマラが形成されていた。そこには人の意志よりももっと大きな意志を感じた。」とシンはいうとたとえを自分の思いつく、言葉を言った。

 

「"ユニバース"…そう。宇宙だ。

誰かがよりしろとなり、何かを抑えつけているような。そんな、不思議なアマラだった。

おそらく、最深部にその人物が居た。」

とシンは言った。

 

「成果はありましたかな?」

 

「ああ、"オルフェウス"と契約出来た。条件付だけど…」

とシンの後ろに琴を持った、銀髪の青年が浮いていた。

 

 

 

「幽玄の奏者。オルフェウス也。

コンゴトモヨロシク…」

 

 




一発使用キャラが登場しました。恐らく、今後は出ないでしょう。
それで、察しのいい人はお気づきですしょうか…
まあ、それも後ほどの展開にこうご期待…しないほうがいいかも…

これで、区切りついて、一休みしようかなと。
と、言っても、そんなに休まないので、恐らくすぐになると思います。

この話を含めた22話、23話は若干、変な所があるかもしれませんのでご了承下さい。

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