Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第25話 Catch Me If You Can 7月26日(火)・27日(水)

 

 

今日は生憎の雨…とテレビでは言う。

雨は気持ちまでどんよりさせるという。

 

(俺には関係ない話だがな)とシンは鼻で笑い、 人のいない教室の窓から外を眺める。

 

心の持ちようだと、言うがそれを実行するのは難しい。退屈であることに変わりはない。

 

しかし、今日は夜まで雨が続く…

マヨナカテレビのチェックが必要だ。

今日の終業式が終われば、夏休み…

どこか遠くへ行こう…退屈しない、たまには都会の場所も悪くないかもしれない…

 

しかし、目的無き旅は嫌いじゃないが、どうせなら決めていこう。

そう思い、シンは携帯を取り出し調べ始めた。

 

それは不思議な事件、噂のある場所、或いは不気味な場所。

調べれば無数に出てくる。その中で一つ気になる言葉を見つけた。

 

『無気力症』

 

『辰巳ポートアイランド』という学園都市で流行った、病だそうだ。

病状自体は10年以上前から報告があったが、それが急速に増減を繰り返したのは、2009年。そして、終結したのは、2010年。恐らく、この一年に何かが起きた…

10年前に起きた何かがこの裏で解決した…

 

…実に面白そうだ。

 

考えてみると、これほど非現実的な現象このド田舎で起きている。

それに似た現象が違う場所で、起こってもおかしな話ではないと考える。

 

しかし、こっちの事件もまだ途中だが…

夏休みに何かあるかと言われれば…起こるのかもしれないが…

今のところは何もない。それに鳴上達も居る。

なら、行っても大丈夫だろう。

 

俺は変なことには弱い。こういった奇妙なことや、幽霊なんかは特に。

そして、悪魔は見たことはあるが、幽霊は…いや、あるか。

思念体を幽霊とするなら、見たことはある。

それに子供の頃はよく見ていた。

だが、こっちに来て見たかと言われれば、無い。

 

思えばそうか。俺は奇妙なことにばかり首を突っ込んでは喜び、苦しむ。

結果的に、悪魔になり、友人を殺し、世界を壊した。

 

 

 

『チガウ』

 

 

 

「!?」とシンは驚き、思わず椅子から立ち上がり、後ろを振り向いた。

だが、無論誰もいない。

しかし、シンはまるで耳元で囁かれたような、それほどの声だったことを感じ、そして、その様な状況は、ボルテクス界では死に直結する。

 

つまり、シンは常に神経を張り巡らせ、自分を防衛する。

それが『心眼』というスキルの強化をしている

 

だが、今、耳元で囁かれた瞬間までは全く気付かない。

尚且つ、すぐに消えた。

 

つまり、どういうことか。

 

 

(…幻聴か)とシンは大きくため息を吐いた。

 

 

 

 

『永遠の哀しみを 悠久の痛みを

 無窮の苦しみを 無限の時を 全て抱いて』

 

 

 

「…長いね…」と千枝は花村に小声で言った。

 

学生時代の式というものは決まって、めんどくさくそして、ひどく長く感じるものだ。

 

「見ろよ…シンなんか目開けたまま寝てるぜ」

「…すごいな…」と鳴上は隣のシンに感心したように言った。

 

 

「…うるさい…」とシンは小さく寝言を呟いた。

 

 

『盲目の世界に 僕は一人 降り立つ

 蝕まれる躰が 笑みを浮かべる』

 

 

 

 

『フラッシュバック』

 

 

 

 

 

 

 

シンは突然、腕を動かした。

あまりにも突然の事で、皆が目を合わせる。

そして、天城はそれを見てツボに入ってしまい、笑いをこらえていた。

「…寝てるよね?」と千枝は面白そうにシンを見る

「寝てるな…なんか戦ってんのか?」と花村も少し笑っている。

 

そう一見、戦っているように見えた。

腕を振り、弾くように。事実、花村達は相手の魔法を弾く動きを知っているため、それだと思った。

 

だが、鳴上には何かを追い出そうとしてるように見えた。

あるいは、誰かに助けを求めているような、そんな風にも鳴上は感じた。

 

 

 

終わっても起きないシンを鳴上が起こし、寝ぼけた姿は何とも珍しく、それが天城は更にツボに入ったらしい。

 

 

放課後、皆バイクの免許を取るということになり、りせは誕生日の関係でとれるらしく、完二は自転車、それ以外はバイクでということで海に行くことなった。

シンはその日以外に学園都市に行くこととした。

 

 

 

夜・・・

 

その日は深夜まで雨が降っていた。

シンはテレビの前で恒例の如く、寝っころがりマヨナカテレビを待っていた。

 

「…終わったと聞きましたが?」

「可能性がある限り、それは真実にはならない」

「…胸にとどめておきます」とメリーは目をつぶりうなずいた。

 

0時になった瞬間、テレビにノイズが走り徐々に鮮明に映像が映る。

 

相手の顔が映った瞬間、シンの瞳がとんでもなく早く、動く。

さながら、精密機械を作るアームの様に。

 

『みんな、僕のこと見てるつもりなんだろ?

 みんな、僕のこと知ってるつもりなんだろ?

それなら、捕まえてごらんよ。』

 

外見から相手を探ろうとする。

(黒目がちで肌は薄白、髪はぼさぼさ。身長は並。髪ぼさぼさから身なりにあまり気を使わない。内向的。目線はこちらを見ているが、これはアテにならない…)

 

 

その画面が消えてから、数秒後。

 

シンはつぶやく。

 

 

 

 

「…違う」

 

 

 

 

 

そこでスマートフォンが鳴る。

「はい」

『シンか?見たか!マヨナカテレビ』

「見た。明日、ジュネス」とまるで単語だけ言うとシンは電話を切った。

 

シンは椅子に深く座ると、肘置きに肘を置き、両手の指をくっつけ目を閉じた。

メリーはそれを察すると、空になったコップを片付け、

さっと頭を下げて自分の部屋へと戻って行った。

 

そのままシンは思考迷路に入ったまま、朝を迎える。

珍しい事ではない。映画を深夜まで見ている理由はそこにもある。映画を見ながら、考え事をする。

何とも器用なことをする。

 

 

 

「間薙様」と午前8時になり、メリーは熱いコーヒーが入ったコップを机に置く。

「…すまんな」とシンは目を開け、それを飲み干した。

「分かりましたか?」

 

 

 

 

 

「…わからん。だが、真犯人ではないという疑念が増幅したのは間違いない。

これまでの犯人の行動と今回の犯人の行動。やり方が不自然。

 

これまでは、"テレビに入れる"ことに重点を置き、犯人は相手に気付かれることなく、相手をテレビに入れていた。

だが、今回の犯人はやけに挑発的だ。"捕まえてごらん"というあまりにもこれまでの犯人と行動の仕方が違う。

今回のはまさに模倣犯的行動にあたる。目立ちたいという欲が前面に出ている。

そして、"見ているつもり"という言葉でわかるように、注目してほしいのだろう。

ただ、"つもり"ということは、本当の自分を知らないということを表している。

知らない自分を知ってほしい。そんな感じに受け取れる。

尚更、模倣犯的な行動だ.

 

一方。これまでの犯人は実に頭の良いやり方だ。

誘拐からテレビに入れるまでの時間が短い。

事実。俺たちがりせが居ることを確認してから、あの盗撮野郎を見つけ、あいつを捕まえ、連行する、30分未満で誘拐し誰にも見つからずに、大きなテレビに入れているんだ。

見事に計画された犯行。そして、証拠も残さない。

 

一方、今回は指紋は残すし、足跡も残している。

この腑抜けっぷりは明らかに不自然だ。

何より見た目からして高校生だ。モロキンは恨みを買いやすい性格をしていた。となると、恐らく、あの無能は怨恨でモロキンを殺したのかもしれないな。

もし、こいつが真犯人なら、俺はとんでもなく失望するし、退屈だ。

こんなやつがこの静かな町を乱しているんだとしたら、俺はこいつをぶち殺したいし、この町のIQが下がるから、とっとと捕まえたい」

 

「で、でも真犯人だったら、それで事件解決だし…それに越したことはないでしょ?」

と千枝は少し焦った表情でシンに言う。

(…それはそれで、退屈になる…)

シンは内心そう思いながら「…まぁ、な」とシンは少し興味なさそうに返事をした。

 

「今言ったのはあくまでも推測だがな…」とシンは再び考えるように腕を組んだ。

 

「zzzZZZ…」

「おい!完二寝るな!」と花村は寝た完二を叩き起こした。

 

「間薙君って事件のことになると、すごいよね」と天城はシンに言う。

「…興味があるからだ。饒舌になるのはそのせい」

 

「そもそも、彼は誰なんだ?」と鳴上はシンに尋ねる。

「恐らく、犯人。容疑者は"高校生の少年"…諸岡先生の件で、足がついて指名手配。

そんなタイミングで、昨日のテレビだ。」

「じゃあさ、仮にだ、シンの考えじゃなくて、アイツがこれまでの事件とモロキンの事件の犯人だとしたら、アイツは態々、テレビの中に逃げたってことだよな?」

「そうなるな」

「?…えーっと…つまり、どういう事っすか?」と完二はまったく理解できていないみたいだ。

 

 

花村が完二に説明する。

「例えば、だ。男子高校生のA君がいます。

A君は、何かの拍子で“あの世界”に入れるようになりました。」

 

「A君は何かの動機から、命を奪う目的で人を次々とテレビに放り込みました。

別の世界なんて警察には証明できない…それは絶対足のつかない最高の手口でした。」

 

「ところがある時から、テレビに入れても人が死ななくなってしまいました。

仕方ないのでモロキンの時だけはテレビを使わず自分で殺しましたが、足がつきました。

指名手配されたA君には、逃げ場がありません…」

 

「あ…もしかして、逃げ込むために自分から"あっち"へ行ったって事スか?

あー…それで"捕まえてごらん"ってか…

あーあー、先輩、意外と頭いっスね!」と納得したように完二がぽんと手を叩いた。

 

「ムカつくなお前。」

 

「ただ、それだとあいつは相当慌ててたってことだな」

「…そうだな」と鳴上は納得する。

「え?どういうことっすか?だって、テレビに入っちまえば、警察につかまらねーっスよ?」

 

「バカだろ。お前」

「あぁ!?」

花村の言葉に完二は椅子から立ち上がって怒った。

 

「つまり、どうやって出るんだって話でしょ?」と千枝は呆れた顔で完二に言った。

「あ…」と完二は理解し、冷静になる。

 

「そう。つまり、態々死ぬってわかってるテレビに自ら入った。

もし、理解してないでテレビの中に入ったんだとするなら、相当な阿呆か、サイコ野郎だ。」

 

シンがそういうと、りせがテレビの中から戻ってきた。

 

「お!どうだった?」と千枝はりせに尋ねる。

「ダメ。情報少なすぎて足取り掴めない。

中に誰か居るのは間違いないんだけど…」

「そうか…って、クマは?」とりせと一緒にテレビの中に行ったクマが見当たらない。

「まだ張り切って捜してる。」

 

「なら、俺たちはアイツが誰なのかを確かめよう。

アイツが何処の誰なのか…警察に追われてる容疑者ってのとホントに同一人物なのか…

それさえ分かれば、後はいつも通りやるだけってこった。」

「そうだね!

もし、あの子が本当に犯人で、あっちの世界に行ってたら、警察もう手出しできないし。」

 

千枝の言葉に皆が気合を入れて、情報を集めに行った。

 

 

これまで通り、あの少年の情報が必要。

だが、これまでと違い、あまりにも情報がない。

どこの誰で、いくつなのか、どこに住んでいるのか。

一切情報がない。

 

 

「さて、どうしたものかな。」とシンは暑い空の下、どうするか考えあぐねていた。

そこに鳴上が来る。

「なんかあったか?」とシンは鳴上に尋ねる。

「まだ、なにも。」

「…とりあえず…いや、危険な賭けだが堂島さんに聞いてみたらどうだ?」

「…見つけたら、聞いてみる」

「俺は足立さんを探す。頭脳派の刑事だからな」とシンは商店街の北側へと向かった。

「…そうか?」とシンの言葉に鳴上は首をかしげた。

 

 

 

(…おい、ライホー)とシンは念通する。

(なんだホー?今、シンの家で"ソウルハッカーズ"やってるホ)

(人を探してる。名前は足立透。ぼさぼさの髪形でスーツを着ている)

(ヒホー!!任せるホ!!)

(…私も探しましょうか?)とティターニアが会話に入ってきた。

(…いや、いい。お前の場合は…いや、とにかくいい)

 

恐らく、血まみれになった足立さんを見ることとなるだろう。

だから、こいつはいい。

 

(そうですか)とティターニアは首をかしげながら念通を切った。

 

「わーい!シン!」と突然、シンの膝後ろにタックルしてくる。

「アリスか…どうした?」

「散歩しよ!」

「…いいぞ」とシンはアリスの手を握り歩き始めた。

 

 

「…指名手配犯の手がかり?

お前…首を突っ込むなと言ったろうが!教えられるわけ無いだろ!

ったく…足立のヤツはどこに行きやがった…」

と鳴上が尋ねるが取り付く島がない。

(やっぱりそうか…)と鳴上は歩きながら携帯を出し、シンに電話した。

 

 

 

「…ん。そうか。…ん。わかった。足立さんを探してみる」とシンは電話を切った。

「だれ?」とアリスはニコニコしながらシンに尋ねる。

「んー…友人だな」と少し迷った様にシンは答えた。

 

シンはジュネスへと向かっていた。

ライホーに頼んでからすぐに連絡が来た。流石はライドウの襲名を狙っているだけはある。

ジュネスでサボっているらしい。

 

シンはアリスを連れ、ジュネスへと向かっていた。

 

 

「何をしてるんですか?」

「君か」とシンは声の主に言った。

 

白鐘直斗であった。いつも通り、ではないが、濃い目の青いワイシャツにネクタイにズボンという夏の恰好だ。

 

直斗は視線を落とし、アリスに目を向けた。

「彼女は?」

「預かってる」

「…そうですか。それで何をしてるんですか?」

「…散歩」

「うん!散歩!」とアリスは無邪気に笑う。

 

 

 

直斗はシン、そして、アリスをみた瞬間、違和感を感じた。

この暑さで、汗ひとつかいていない。少女も尚更おかしい。

シンは制服を崩したような感じで、長袖のワイシャツ。ズボンは制服だろう。

 

だが、直斗と似ている。だが、決定的に違うのは、長袖ということ。

それは些細だが、少女はおかしい。

明らかに暑い。見ているこちらが暑く感じるくらいだろう。

 

 

だが、汗一つかいていない。

減量中のボクサーはそうなる。だが、彼の顔は健康的。

少女は少し、体調が悪そうなほど白い顔である。

 

 

 

「…そうですか。」と直斗が考えていると、アリスがシンの袖をつんつんと引っ張る。

シンはそれに気づくと、アリスの身長まで腰を落とす。

そして、アリスは耳打ちする。

シンはそれを聞くとゆっくりと立ち上がった。

 

「それはね、アリス。知られたくないことなんだよ。だから、隠してるんだ」

「…ふーん、そうなんだ」とアリスは首をかしげた。

 

「じゃあな」

「ええ、また」と直斗は歩き出そうとしたが、アリスの言葉に足が止まった。

 

「…じゃあねー」とアリスの目はどこか不思議そうな目で直斗を見ていた。

 

直斗はそれに違和感を覚えたが、すでに二人は歩き始めており、止めるのも悪いかと思い、直斗は諦め歩き始めた。

 

 

「人間のせかいってタイヘンなの?」

「…ああ、そうなんだ。変なしきたり、風土、習慣、人種、決まり事、そんな柵っていうのがあるからな。悪魔が種族間や立場が真逆なやつら…それと同じさ。」

「うーん…よくわかんない。」とアリスは首を傾げた。

 

 

「だって、シンはみんなとナカヨシ。おじさんともランダとバロンとも、みんな楽しそうだった。

人間はそれ、出来ないのかな?」

「…だから、俺は神が嫌いなんだ」とシンはぽつりと呟いた

「?」

「何でもないよ…何でも」

 

 

 

直斗と別れ、ジュネスに居る足立を脅すと、足立は"独り言"だ。と言い、商店街で働いていたということを言った。

それを皆に伝え、情報を集めた。

 

 

日が落ちてきた頃、

「わかったのか?」と鳴上に電話で尋ねる。

『働いていた所は分かった。

その同級生が今、卒業アルバムを見せて回っているらしい。

だが、今日は見つからなかった』

「…明日か。分かった」とシンは電話を切った。

 

「アイス、おいしい」とアリスは嬉しそうにアイスを食べて歩いていた。

「今日はどうだった?」

「うん、楽しかった!」

「明日はもっと楽しくなるぞ」

「やった!!!うれしい」

 

 

そういうシンとアリスの笑みはどこか不気味であったことは言うまでもない。

 

 

 

 




はい、知ってます。中二病こじらせてます。
でも、言い訳をさせていただければ、どこか抽象的にシンの人間部分を描きたかったので、あんな文章になりました。
中二病患者なのは否定しません。

あと、前に書いていた、「IQが下がる」という言葉使えてよかったです。
そして、少しシンの過激な部分が出せたかな?

題名ですが、この題名の映画がありましたね。
OPが印象的でした。

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