Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第26話 Game Start 7月27日(火) 天気:曇

人生というのがゲームだとするなら、主人公は自分で、周りの人は所謂MOBキャラ。

だが、気付いてしまう。

 

自分は"勇者"ではないと。

自分は"ヒーロー"ではないと。

 

何か特別な才能があるわけでもない、特別な世界でもない。

変哲もない歯車の一部だと気が付いたとき、人は絶望する。

 

夢を持てと、先人は語る。だが、それが叶うのはごく一部なのは明らか。

努力はして当然。しかし、それが報われる確率はあまりにも低い。

それで運が良ければ、成功。運が悪ければ…それは人それぞれか。

 

しかし、それが"良い人生"か"悪い人生"か…

 

そんなものは自分で決めるものだ。

そこに万人の良し悪しはない。

 

 

 

俺はどうだ?

 

ルイは言っていた。

『お前は神に愛されていた。私のように忠実なモノだった。』

と言っている。

 

俺はそんなつもりはない。と言ったが、要は運らしい。

運が良かった。とルイは言って笑った。

それは、ルイにとって良かったのか、それとも俺にとって良かったのか、分からない。

 

人はいつかは終わる。永遠に生き続ける事はない。

俺は終わらない。

これまでも、これからも終わらない。

それは人間にとって絶望か?

それとも…希望か?

 

 

「何コレ…ゲーム?」

 

 

 

あの男は久保美津雄という高校生だった。

今回の事件で追い込まれて、ということで皆は結論付けた。

しかし、シンは少し疑念を持っている。

それは、やはりこのテレビという世界を知っていたのかという疑問。

シンの真犯人別の説が正しければ…それもまた、うまく話が通ってしまうのだ。

 

りせにそれを話し、この場所へと来た。

 

この場所はまさにファミコンのような世界であった。

 

「捕まえてみろ…ってくらいだから、いわゆる“ゲーム感覚”って事か?」

「ムッカつく!顔面クツ跡の刑にしてやる!行こ!」

 

「目指せエンディング!」と鳴上が少しテンション高めに片手を天に上げた。

「男はみんな、ゲーム好き。」と花村も少し楽しそうに言った。

「女はみんな、クマが好き。」

 

 

 

 

『死んでくれる?』

 

 

 

アリスが不気味に笑みを浮かべると敵が内側から爆発するように吹き飛んだ。

黒い液が飛び散り、アリスとシンにかかるが、そんなのどこ吹く風。

 

「わーい!しんだ、しんだ!」とアリスはピョンピョン跳ねながら勝利を喜んだ。

「アリス偉い?偉い?」

「ああ」とシンはアリスの頭を撫でる。

そして、アリスの顔をタオルで拭き取った。

 

「クマも偉い?偉い?」とピョコピョコ足音を立てるクマ。

「…知らん」

「シン君…しどい!」とクマはショックそうにした。

そんなクマを励ますようにアリスはクマと話す。

 

「やっぱ、間薙先輩の仲間は強いっスね」と完二は感心したように言った。

 

人数が増えてきたので別々に行動している。

鳴上チームには、花村、千枝、天城。シンのチームには完二、クマ。

鳴上達が先行し、こちらはゆっくりとアイテム回収をしている。

 

やはり、シンが先行のほうがいいのではないかと皆が思ったが、

シン自体のやる気があまりなく、適当に理由を付けて、アイテム回収班に入った。

 

「しかし、舐めた野郎っス」

「自分を捕まえてみろというやつか…

挑発的ではあるが、あれがシャドウだと言うなら納得だ。

内向的な性格とは違い、それの裏が表に出てきた。」

「まあ、確かにそうっスね。でも、あれが本性ってことになるんスよね?」と完二は言う。

「暴走…ともいえるが。あれが、人間の本性。見たくないものなのかもしれん。」

「オレのもそうです」と完二は思い出して苦い顔をした。

 

「間薙先輩だったら、どんなの出るんスかね?」

「…さあ?たぶん、善人が出てくるかもな」

 

「シン君のはきっと王様クマ!」とクマは自分の事のように偉そうにする。

「なんだそりゃ」と完二は笑った。

 

皆、再び歩き始めた。

 

「そういえば、先輩はなんで、悪魔になったんスか?」

「クマも知りたいクマ!」

 

「完二と同じかもしれん。話したくはないものだ…」とシンは少しため息を吐いた。

「そ、そういうことならいいんスよ」

「いや…俺の事を知っていても、損はないだろうし、そんなやつを信用しろという方が難しいだろう」

 

「俺は先生の見舞いでとある病院に行った。

そこで、俺は巻き込まれたのさ。」

「つまり、なりたくてなったってことじゃないんスか?」

「まあ、そうだな。端的に言えば」とシンは言った。

「でも、それでどうして、そんなに強くなれるんスか?」と完二は珍しく鋭いところを突いてきた。

 

 

「それはな」とシンが言いかけた時、シャドウが角から襲いかかってきた。

相手の手がシンの頭に届きかけた時、その手は自分の方向に折れた。

まるで、壁でもなぐるような感覚である。

相手は自爆し、そして、次にどうするかを思う前に、シンに折れた腕を掴まれ、体を軽く壁に叩きつけられた。

 

「それはな、世界が崩壊してしまったからだよ」とシンは何事もなかったように完二に言った。

 

 

 

 

 

「ねぇ、りせちゃん」

『はい?千枝センパイ』

「間薙君をアナライズって出来るの?」

『…たぶん、出来ると思いますけど…』とりせは何故といった雰囲気だろう。

 

「ばっか。して、どうすんだよ」と花村が突っ込んだ。

「いやぁ、だってどのくらい強いのかなって思って」と千枝は言った。

「だって、この前のそうだけど、シャドウを素手で殴ってたし…」

「そう言われれば気になる」と鳴上も言う。

『センパイがいうならー…やってみます』とりせはシンをアナライズする。

情報が鳴上達に告げられる。

 

 

混沌王 間薙シン

MAX HP ? MAX MP ?

 

物 火氷風雷光闇

反 反反反反反反

力魔耐速運 表示エラー

 

備考 万能属性以外の全ての攻撃を反射

 

通常攻撃 万能属性

マガタマ 八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)

スキル 表示オーバーフロー

 

 

『…』

「…」

「…」

 

「なんつーか…あれだな」

「…見なきゃよかった」と花村の言葉に皆が頷いた。

それと同時に、敵に回さないことを皆が思った。

 

 

 

 

 

「…俺はな、友人を殺したんだ。あの世界で唯一の人間たちを。

恐怖や苦痛、絶望に襲われ、変わっていく友人たちを俺は止めることは出来なかった。

 

「一度、壊れてしまった心は戻ることはなかった。孤独の世界を選択した」

そういいながら、勇を思い出していた。

 

「弱さを悲観し、腕を失い、弱肉強食の世界を選択した。」

千晶のことを思い出す。

 

そう言い終わるとシンは目を閉じた。

「そんな友人を殺して。俺は混沌を選んだ。

長い間、戦い続けて、あの世界の偽神を倒し、俺が王となった。あそこは神に見放された世界。」

 

「そして、真の神をたおすため、俺はその屍の上で永遠に終わらない戦いを続けている。

終わった世界。始まることの無い世界。

永遠の停滞と同時に淘汰と再生が行われる世界。

 

それが、俺の居る世界。

 

東京というのはあっている。

だが、お前たちにウソをついたのは…

いや、これは申し訳ないと思う」

 

完二は少し呆気に取られていたようだが、すぐに口を開いた。

 

「…別にいーんすよ。命救ってくれたァ人のウソなんて軽いもんス。

それより、一ついいスか?」と完二はシンに尋ねる。

「?」

「なんだ?」

「どうして俺にそんなことを話す気になったんスか?」と完二は少し恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

 

「…深い意味はない。お前は信頼のおける人間だ。これでも、勘はさえる方だ。

鳴上達も恐らく、信頼のおける人物だ

だが…そうだな…強いて言えば…」

 

「お前に言っても、お前が理解出来ないだろうから、誰かに話す心配もない

ただ、それだけだ。」

 

「ひどいっス…」と完二はどこか納得できない雰囲気だが、

「でも、オレ嬉しいっス。」と完二は笑った。

「でも、カンジ調子に乗っちゃいけないぜよ!クマの方が、シン君に信頼されてるクマ!」とクマは胸を張る。

「お前はマスコットだ」

シンに言われるとクマはがびーんとショックを受けた。

 

 

階を上がるたびにゲームのバグのように言葉が崩れていく。

それが美津男の本心なのか、それは鳴上たちには分からない。

 

いや、分かりたくもないし、理解する必要もない。

 

ヤバイ。正気の沙汰ではない。

それが、率直な感想である。

 

「鳴上先輩たちはどこら辺までいったんスかね?」

完二は宝箱を蹴飛ばし開け、アイテムを回収する。

 

「さあ?…そもそも、何階まであるのか、それが分からないからなんとも言えない。

しかし、そのうち会えるだろう」

「…そうっスね。」

 

そんな話をしていると、りせから連絡が来る。

『先輩たちはもう7Fまで行ってるよ』

「そうか、まだ俺たちは4Fだ。」

『わかった。センパイたちに伝えとく』

 

「案外、早い」とシンはぽつりと言った。

「ねえ、シン。つまんない」とアリスはつまらなそうに、シンに言った。

「どうしたい?」とシンはアリスに尋ねる。

 

 

「うーん…いっぱいサツリクしたい!」

「…なら、とっておきだ」と不気味な笑みを浮かべる。

 

 

シンは『リベラマ』を唱えた。

 

 

 

 

 

『?』

「どうしたの?りせちゃん」

『シャドウたちが、4Fに集まってる…それも、物凄い勢い…』とりせは驚いた表情で鳴上達に伝えた。

 

「…だから、さっきから、シャドウと遭遇しないのか?」

「そんなことすんのは…まあ、決まってんだろ」と花村は納得したような顔で腕を組んだ。

『大丈夫かな?センパイ?』とりせは鳴上に尋ねる。

 

「…大丈夫だろう。」

「そうだよ。シン君もいるし」と鳴上の言葉に同意する天城。

 

 

 

 

「せ、先輩!聞いてないっスよ!」と完二とクマは慌てて、階段の方へと走っていった。

 

「わーい!!サツリク!サツリク!」とアリスは少女とは思えない身のこなしで相手の攻撃を避け、アギダインを唱える。

「…舌、噛むよ」

 

そういうとシンは抜刀の構えをする。

 

 

 

 

『死亡遊戯』

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

今までにも増して、建物が揺れた為、鳴上達は慌てる。

 

「ほ、本当に大丈夫なのかな!?」と千枝は少し怯えた様子で、鳴上に尋ねる。

「たぶん」

 

「大丈夫だよ、千枝。崩れても、間薙君の居る階だけだよ。」

「どんな、ピンポイントな崩れ方だよ…」と天城の言葉に花村がつっこむ。

 

 

そこに、物凄い勢いで走ってくる完二達が来た。

 

「せ、先輩達!後ろ、後ろ!!」と完二に言われ、鳴上は自分の後ろを見る。

「センセー!そんな、ボケをかましてるヨユーは無いクマぁあぁああああ!!」

 

ドサドサと完二達の後ろにシャドウが群れている。

 

 

『…せ、センパイ!敵、30は居るよ!』

 

「力を合わせれば、なんていうことはない!」

鳴上はそういうと、武器を構えた。

「へっ…それでこそ、相棒だ!」

花村はヘッドホンを装着し臨戦態勢に入った。

 

 

 

 

「ふく、よごれちゃった。」とアリスはトボトボと静かなファミコン世界を歩いていた。

その格好はシャドウの血と思われる、黒いドロドロとした液体で染め上げられていた。

 

「メリーにおこられるかな?」

「大丈夫。俺も同じ。」

その言葉にアリスの表情は嬉しそうになった。

 

「あのね、シンといっしょにサツリクした。…楽しかった!」

 

そうアリスが何もない空間に言うと、そこに電撃が走った。

「それは良かった」といつの間にか現れたベリアルはアリスの汚れを綺麗に拭き始めた。

 

ベリアルは頭を下げた。

 

「やはり、あなたにアリスを預けたのは正解かもしれません。

『可愛い子には旅をさせろ』

彼女は自らを守るほどの力を手に入れました。」

「素養があった。それだけの話だ。」

 

 

ベリアルはアリスをつれて、帰って行った。

その代わりにライホーが登場した。

 

「ヒホー!なんで、オイラをつれていかないホ!!作者が忘れてるなんて酷いんだホ!!」と地団駄を踏む。

「作者…?そういう名前のやつか?」

「違うホ。ちょっとばかし、頭のおかしいやつなんだホ!!」

「頭のおかしい…?…会ってみたいモノだな。」とシンは嘲笑した。

 

 

 

 

結局、ゲームと人生は違う。

仮想世界にはこの現実では味わえない緊張感と興奮、 感動…

ありとあらゆる感情がある。

 

だが、ふと現実に帰ってきてしまったとき

俺達は言い難い虚脱感と空虚な現実が襲ってくる。

 

ヒーローでもない、勇者でもない、紛れもない、”自分”に戻される。

 

しかし、もう"俺"は何処にもいない。

俺を迎え入れる人もいない。

 

 

 

もう朝なんか来ない。

 

 

 

 

シンは出てきた『盲愛のクビド』の頭を掴み、無理やり捻り、引っ張り千切る。

その目は金色に怪しく光り、その後ろに居るシャドウを見据える。

 

 

「何を期待したんだ?…笑えるね」

 

 

シャドウたちは相手との力量の差に怯え、逃げ始めた。

 

 

「ライホー。第二ラウンドだ」

「任せるんだホー!!」

 

 

 

 




いろんな用事の移動時間を利用して、ちょびちょびと書きました。

オリジナルのマガタマ出してすみません。
けど、マガタマって言ったら、三種の神器の一つの『八尺瓊勾玉』を出したいなと思っただけです。まあ、普通に『マサカドゥス』でも良いですけどね。

ペルソナQのせいで軽く寝不足です。

話は相変わらず面白いので、『ペルソナ』だなって実感します。
ただ、ちょっと、キャラがおかしなことになっているような気がしないでもない。
真田先輩のアホキャラっぷりが加速してた。でも、この人って一応頭が良いって設定じゃなかったっけか?とかなんとか疑問を思いながらやってます。

言っちゃ悪いけど、ここら辺はあまり内容として面白くないので、とっとと夏休み編に入って、P3キャラを出したいという欲が出てきてます。


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