Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第30話 Salvia Splendens

きっと、私は夢を見ている。

不思議なことですね…機械が夢を見るなんて…でも…でも、

これは…電気羊ではないのですね。

 

 

なら…これは…夢ではないのですね…

 

 

アイギスはポートアイランドを歩き回っていた。

それはやはり、彼が居ると思うと、落ち着かなかった。

あの日から時の狭間事件以降は眠れるが、頭からは消えなかった。

 

彼の最後の微笑みがどうしても、時々思い出される。

 

それを払拭する為に、今日は久々に訪れた巌戸台駅へと来ていた。

 

駅に降り立つと、学生町独特の喧騒がそこにはあった。

 

(…あなたはまだこの町に居るんでしょうか…)

そう思うと、パピヨンハートが震える。

そんなことを考えながら、階段を降りていた。

 

 

 

「ありがとうございました」とシンは花屋から出てきた。

「今日は何の花?」

「『サルビア』」

「意味は?」と結城が話しながら階段を登ろうと上を見た。

 

「「あ」」と結城とシンはやってしまったと言った顔で少女を見た。

少女は茫然と、二人を見ていた。

 

「…」

「この人工島は狭いから…予想はしていたが…どうするかは君に任せる」

シンは結城に言うと、結城はうなずいた。

 

「…おかえりなさい…であります…」

金髪の少女は目に涙を浮かべながら、笑っていた。

 

「…ただいま」

青髪の少年は少し微笑むと少女は階段を走って降りてきて、そのまま結城に抱き着いた。

 

「それと…ごめん」

 

結城はシンを見る。シンは察したのかアイギスの前に手を翳し

『ドルミナー』を唱えた。

すると、アイギスは力が抜けすーっと目を閉じた。

 

 

 

 

「…ア…ス…アイギス!」

「!?」とアイギスは声に驚き、飛び起きた。

そして、気が付くと懐かしい巌戸台分寮のソファに寝ていた。

 

「大丈夫なの?アイギス」

「どうして…私はここに?」とアイギスは目の前に居た風花に尋ねた。

「実はね…その、ここでシャドウの反応があったの。それで、アイギスの携帯に連絡したんだけど、出ないからとりあえずみんなで来たら、アイギスがここに寝ていたの」

 

「そうだぜ?アイちゃん…俺たちもびっくりしたぜ?」

「だって、朝にシャドウだもんね…」

「朝からシャドウって…どういうことなんですかね?」と伊織や岳羽、天田が首をかしげる。

 

アイギスは何が起きたのか思い出し、立ち上がろうとしたがふらっとめまいがした。

 

「あ、危ないよ!」

「どうやら、睡眠の魔法を掛けられたようだな」と美鶴は冷静に解説する。

「か、彼が居たんです!巌戸台駅に」

 

「ああ、知っている。カメラに映っていた」と真田は言った。

「お前が隣の少年に魔法を掛けられた。それ以降はカメラの映像が映っていなかった…」

 

と、話していると美鶴の携帯がなり、人の少ない方へと向かった。

 

「それでね、アイギス。この花の花言葉ってわかるかな?」

風花は赤い花をアイギスの前に出した。

 

「…サルビア…『良い家庭』『家族愛』『家庭の徳』『燃ゆる想い』『知恵』『エネルギー』『全て良し』…などです」

「家庭?…なんか、前回のとは違うっちゃ違うよな。」と伊織は首をかしげた。

「しかし、燃ゆる想い…熱いな…結城」と真田はぐっと嬉しそうな顔をした。

 

「…あれ?でも、確か、赤はもう一つ意味がありせんでしたっけ?」と天田は思い出したように言う。

「『あなたの事ばかりを想う』だ」と桐条が電話を終え、ソファに合流した。

 

「…それが9本…それぞれに…なんだか…嬉しいですね…」と風花は泪を流す。

「あいつってこんなロマンチストだったけか?」

「さあ?実際、あいつは部屋は生活感がなかったからな」と真田は答えた。

 

「それで、隣のやつの正体がやっとつかめた。」と桐条は桐条グループの作った小型プロジェクターで壁に移す。

 

「間薙シン。数か月前まで都立の高校に通っており、今は八十神高校に通っている。」

「やそ…がみ?どこだそれは」と真田は首をかしげた。

「いわゆる、田舎だ。」

「?でも、なんでそんなに特定に時間がかかったんですか?」と天田は美鶴に尋ねる。

 

 

「ここからが電子情報に無い話だ。先ほど、連絡があった。

その彼の戸籍情報を取得したが…親の名前が存在しなかった。」

「ど、どういうことなんすか?」と伊織はごくりと唾をのみこんだ。

 

 

「つまり、彼の親が存在しないということだ。」

 

 

 

「…」と皆、意味が分からず黙ってしまった。

「そして…間薙という名前は珍しい。そして、彼の通っていた辺りを考えると、東京に絞り、間薙という名前をあたったが、皆、間薙シンという子供はいないということだ。」

「あまりにも謎が多いですね」とゆかりはため息を吐いた。

 

「…ここからは憶測の域だ。恐らく、シャドウというのは彼だ」

「美鶴にしては大胆な推測だな」と真田は美鶴を見た。

「事実、結城と共に行動をし、そして、魔法を使った辺りシャドウであることは間違いないだろう。ペルソナの召喚も見受けられなかった。殆ど、確定だと私は思う」

「そんで、どうしますか?これから」と伊織は美鶴に尋ねる。

「…次は恐らく、あそこだろう。」

「あそこ?」と風花が首をかしげた。

「月光館学園だ」

 

 

 

 

夕方…

「次は恐らく、彼らは月光館学園に来ると思うだろう」

「うん、僕と彼らのゆかりの地だからね」と結城はUFOキャッチャーをしながらシンに言う。

「その期待に応えてあげようか。」とシンは腕を組んだ。

 

「…それでさ…僕の体っていつまでもつのかな」

「…」シンは答えずに結城の隣にある台でUFOキャッチャーを始めた。

 

「実は君も名残惜しかったりするのかな?」

「…」

シンは首を傾げると、アームを降ろした。

 

 

 

 

 

 

「懐かしいですね、月光館学園」と風花の言葉に皆が頷いた。

「そうだなー俺は、初等部の校庭とか借りて野球しに来てたからそうでもないっつーか」

「…あんたって、ホント空気読めないのね」とゆかりは相変わらず、順平に突っ込んだ。

 

「そろそろ、0時ですね」と天田の言葉に皆が構えた。

 

そして、0時を迎えた。

その瞬間に電撃の音が鳴り響き、思わず皆が目をつぶった。

 

「どうも、こんにちは」

そこには目が金色に光る少年が居た。

 

 

「お前が…間薙シンか」と真田は構えた。

「ええ、そうです。そして、彼が皆が知っている」

「…」と結城は黙ったまま、剣を構えた。

 

その行動に皆が驚いた。

「な、なんで、なんででありますか?」とアイギスが一番取り乱す。

だが、結城は答えることなく、召喚をする。

それは皆が久しぶりに見た、『オルフェウス』であった。

 

オルフェウスは琴を柄を持つと、皆に殴りかかった。

 

「あぶね!」と皆は散らばり避ける。

 

「…本気のようだな」と美鶴は召喚器を構えた。

「こい!『アルテミシア』!」

 

桐条がブフダインを唱え、結城ではなくシンの方を攻撃する。

だが、

「!?」と皆が驚いた。

それはブフダインがそのまま皆の方へと飛んできたのである。

再び皆は回避する。

 

『うそ…あのシャドウ…弱点がありません!』

「な、なんだよそれ!」と順平はシンを見た。

 

「嘗て、とある学生がこう言った。『大なる悲觀は大なる樂觀に一致する』と」

「楽観せよ。死を。恐怖を」シンは手を天田に翳す。

 

 

『うそぶき』

 

 

『!?相手の攻撃来ます!』と風花が皆に言うと、怪しいせん光が天田を包み込んだ。

「天田!」と真田が天田に声を掛ける。

「くっ。大丈夫です」

『どうやら、相手は回復したようです』

 

「クソッ!来い!カエサル」と真田はカエサルを召喚しジオダインを放つが、そのまま返ってくる。

「クソ…どうすればいい」

 

 

「何故の生、何故の死。摂理と理解せど、我々は胸が締め付けられる」

『マグマ・アクシス』

「炎か!俺とコロマルだ!」と伊織とコロマルが前に出て、皆を守る体制に入った。

シンは両手の掌に炎を出現させた後に、前方に向けて腕を突き出し巨大な火炎を迸らせた。

 

「うぉ!!!」「ワンッ!」と伊織とコロマルは吹き飛ばされた。

「うっそ!物理もあったの!?」とゆかりは慌てて回復をする。

「す、すまねぇなゆかりっち…」と伊織は立ち上がろうとするが、ふらつく。

コロマルは気絶してしまったようだ。

 

「ペルソナ、レイズアップ!」とアイギスはアテナを召喚し、ゴットハンドを唱えるが。

『鬼神楽』

それと同時にシンは身を後ろに反らしながら深く息を吸い、顔の前に紫色の光芒で構成された繭状の塊を相手に吐き出した。

 

それにより相殺された。

 

「召喚シークエンス!」と再びアイギスは技を出そうとするが、シンは先に動いていた。

『シナイの神火』

 

シンの手からまるでレーザーの如く出た赤い光は火柱を上げ、皆を襲った。

 

「つ、強いであります…」とアイギスはその一撃で煙を上げる。

「グハッ!」

「くそっ!」と皆は倒れた。

 

 

「色即是空、空即是色。全ては闇から…」

『初めは闇ありき』

 

シンは手を前にかざすと、辺りが一気に暗くなった。

 

風花は思わず目をつぶった。

そして、目を開いた時にはすでに皆が倒れていた。

 

「…空なり」

結城は構えを解く。

シンはパーカーのポケットから、黒く光るものを取り出した。

 

そして、美鶴の前に来る。

その黒光りするほど、綺麗に磨き上げられられ、セフティーも付いていた。

見間違えることはない。銃だ。

 

「享受せよ。死を」と美鶴の頭に向ける。

引き金に指を掛ける。

「くっ…こんなところで…」

 

「先輩!」とゆかりは手を伸ばすが届かない。

 

 

 

「眠れ。安らかに」

そういうと、シンは引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひやっ!」

美鶴の情けない声が校門前に響いた。

皆、茫然とシンを見ていた。

 

「…ぶっ…ハハハハ」と結城は笑い始めた。

「…」シンはニヤァとドSな顔で美鶴を見ていた。

 

「え?なに?…それ…」とゆかりは驚いた表情で、美鶴を見ると、髪が水を掛けられたように濡れていた。

 

 

「…そ、それは…水鉄砲だよ。キンキンに冷えた冷水だけど…」と結城はお腹を抱えながら、笑う。

「結城がどっきりとしたいと言っていた。」と再び、麻痺状態の美鶴に何度も引き金を引き、水鉄砲を掛ける。

 

 

「…ゆうきぃいいいいいいいいいい!!!」と美鶴は顔を赤くし、結城を睨み付けた。

 

 

その後、痺れが解けた美鶴は結城とシンにブフダインを連発する。

結城は慌てて逃げ回る。シンには効くはずもなく、すべて、他の皆にブフダインが飛んでいくので、辺りはひっちゃかめちゃかになった。

 

やっと、美鶴のSPが切れ落ち着いたところでシンは口を開いた。

 

 

「初めまして」とシンは挨拶をする。

「…シャドウではないのか?リョージの一件があるからな…」と伊織はジロジロとシンを見る。

「…おいで、ヒーホー」と手を上にかざすと、先ほどと同じ雷撃音がする。

 

「ヒホー!およびだホ?」とヒーホーが現れた。

「これはなんだ。」と真田はヒーホーを見て、言った。

「『悪魔』」

「悪魔ァ!?」とゆかりは少し怯えた表情でヒーホーを見た。

「少し、説明しますよ。ここに何故、彼がいるのか。俺が何者か…」

 

 

シンは何故、結城を連れてきたのかを話した。

 

 

 

「だが、どうやって結城の魂を封印から引きはがしたんだ?」と美鶴はシンに尋ねる。

「考えればすぐにわかります。彼が封じる以前に誰が、あの門を閉じていたのか。」

「…我々の、生きたいという意志か?」

 

「そう。だが、様々な要因で門が開きかけた、だから僕が魂を掛けて門を封じた。

結果的に、僕の体は抜け殻となり、卒業式に死を迎えた。」と結城が自ら話す。

 

「…しかし、君はなんだ?」と美鶴はシンを見た。

その顔には青く発光する刺青と金色に光る瞳である。

「さぁ?」と言うと、シンは結城を見た。

「…どうでもいい」

 

「まったく…お前は…」

「…結城さん!」と黙っていたアイギスが結城の前に来た。

「アイギス…」と結城がアイギスの方を見た瞬間、パシンとビンタをされた。

 

 

「いつまで…またせるでありますか?」

「…ごめん」と結城はアイギスに頭を下げる。

「もう会えないと思っていました…もう話せないと思ってました…」とアイギスは再び涙を流し始めた。

「…ごめん」

 

 

 

「…おかえりなさい」とアイギスは再び泣きながら笑みを浮かべた。

「…ただいま」

 

それを見た全員が笑顔で結城に駆け寄った。

 

 

 

 

シンはただそれを茫然と眺めていた。

限りある時間だと分かりながら、結城は笑っている。

終わることのない戦いが待っているシンにとって、今いち理解できずに空を見上げた。

 

そして、帰るべき場所がないことがシンの何かにグサリと突き刺さった。

 

(…これが悲しい…だったか?寂しい?…どれだったか)

 

「それにしても、あのセリフはなに?」

「なんか、それっぽい方がいいと思った。」

「…そうなんだ」とシンの言葉に結城は少し微笑んだ。

 

「それで…間薙シン」と美鶴はシンの方を向き言った。

 

「お前はシャドウか?」

 

「俺は…混沌王と名乗っている。先ほども言ったけど、俺は半身悪魔。でも、きっともう悪魔だ」

未だに怪しく光る眼光は鋭く、歴戦の彼らでなければ飲み込まれてしまうほどの闇。

 

「…なかなか、良い目をしてるな」

「手抜いてたよね?シン君」と結城はシンに向かって言った。

「…当たり前。1割も出してない。」

「な、!?本当か!」と真田は驚いた表情で風花を見る。

 

「た、たぶんそうです。彼の体から、もっと大きな力を感じました…」

「…積もる話もあるけど、とりあえず、ホテルへ行きましょう。」と結城が言う。

それに同意するように皆が頷いた。

 

「…ってか、この地面…どうするんだ?」と抉れた地面を順平が見て言った。

「直しておくさ」とシンは適当に言い、レンタルバイクに跨った。

 

美鶴のよこした車の中で皆は話していた。

「…なんか、彼。悲しそうな眼をしてたね」と風花はバイクで並走するシンを見て言った。

「そうか?鋭い眼光で、いい顔つきだった…本気の素手の戦いをしてみたいものだな」

「…そうだね…なんていうかさ、昔のキミに似てた」

 

「僕?」と結城は自分を指差した。

「お前より、もっと雰囲気は刺々しいけどな」

結城は腕を組んで考える。そして、口を開く。

 

 

 

「たぶん、似てる。僕と彼は…たぶん、絶望してるんだ。天田にはわかるだろ?」

「…そうですね…昔の僕もそうでしたから」

「でもよ、あいつ…いいやつだぜ?きっと」と順平は頭の後ろで手を組んで椅子に寄り掛かった。

 

「なんでわかんのよ」とゆかりは順平に言う。

「勘だよ。勘。おれっちの勘は意外と当たるんだぜ?」

「そうだな。500円落としたやつが言ってるんだ。当たるかもしれんぞ?」と真田は伊織に言った。

「ちょ!ちょっとしたトラウマ思い出させないでくださいよ!」

 

順平のツッコミにみんなが笑った。

 

 

 

 




ちょっとネタ不足でこの先は書けてないです。
基本、次のが半分くらいかけたら、投稿するようにしてるんですが、今回はあまり何も考えずに投稿しました。
でも、そのうち掛けると思うのでまったり待っていただいてください。

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