きっと、私は夢を見ている。
不思議なことですね…機械が夢を見るなんて…でも…でも、
これは…電気羊ではないのですね。
なら…これは…夢ではないのですね…
アイギスはポートアイランドを歩き回っていた。
それはやはり、彼が居ると思うと、落ち着かなかった。
あの日から時の狭間事件以降は眠れるが、頭からは消えなかった。
彼の最後の微笑みがどうしても、時々思い出される。
それを払拭する為に、今日は久々に訪れた巌戸台駅へと来ていた。
駅に降り立つと、学生町独特の喧騒がそこにはあった。
(…あなたはまだこの町に居るんでしょうか…)
そう思うと、パピヨンハートが震える。
そんなことを考えながら、階段を降りていた。
「ありがとうございました」とシンは花屋から出てきた。
「今日は何の花?」
「『サルビア』」
「意味は?」と結城が話しながら階段を登ろうと上を見た。
「「あ」」と結城とシンはやってしまったと言った顔で少女を見た。
少女は茫然と、二人を見ていた。
「…」
「この人工島は狭いから…予想はしていたが…どうするかは君に任せる」
シンは結城に言うと、結城はうなずいた。
「…おかえりなさい…であります…」
金髪の少女は目に涙を浮かべながら、笑っていた。
「…ただいま」
青髪の少年は少し微笑むと少女は階段を走って降りてきて、そのまま結城に抱き着いた。
「それと…ごめん」
結城はシンを見る。シンは察したのかアイギスの前に手を翳し
『ドルミナー』を唱えた。
すると、アイギスは力が抜けすーっと目を閉じた。
「…ア…ス…アイギス!」
「!?」とアイギスは声に驚き、飛び起きた。
そして、気が付くと懐かしい巌戸台分寮のソファに寝ていた。
「大丈夫なの?アイギス」
「どうして…私はここに?」とアイギスは目の前に居た風花に尋ねた。
「実はね…その、ここでシャドウの反応があったの。それで、アイギスの携帯に連絡したんだけど、出ないからとりあえずみんなで来たら、アイギスがここに寝ていたの」
「そうだぜ?アイちゃん…俺たちもびっくりしたぜ?」
「だって、朝にシャドウだもんね…」
「朝からシャドウって…どういうことなんですかね?」と伊織や岳羽、天田が首をかしげる。
アイギスは何が起きたのか思い出し、立ち上がろうとしたがふらっとめまいがした。
「あ、危ないよ!」
「どうやら、睡眠の魔法を掛けられたようだな」と美鶴は冷静に解説する。
「か、彼が居たんです!巌戸台駅に」
「ああ、知っている。カメラに映っていた」と真田は言った。
「お前が隣の少年に魔法を掛けられた。それ以降はカメラの映像が映っていなかった…」
と、話していると美鶴の携帯がなり、人の少ない方へと向かった。
「それでね、アイギス。この花の花言葉ってわかるかな?」
風花は赤い花をアイギスの前に出した。
「…サルビア…『良い家庭』『家族愛』『家庭の徳』『燃ゆる想い』『知恵』『エネルギー』『全て良し』…などです」
「家庭?…なんか、前回のとは違うっちゃ違うよな。」と伊織は首をかしげた。
「しかし、燃ゆる想い…熱いな…結城」と真田はぐっと嬉しそうな顔をした。
「…あれ?でも、確か、赤はもう一つ意味がありせんでしたっけ?」と天田は思い出したように言う。
「『あなたの事ばかりを想う』だ」と桐条が電話を終え、ソファに合流した。
「…それが9本…それぞれに…なんだか…嬉しいですね…」と風花は泪を流す。
「あいつってこんなロマンチストだったけか?」
「さあ?実際、あいつは部屋は生活感がなかったからな」と真田は答えた。
「それで、隣のやつの正体がやっとつかめた。」と桐条は桐条グループの作った小型プロジェクターで壁に移す。
「間薙シン。数か月前まで都立の高校に通っており、今は八十神高校に通っている。」
「やそ…がみ?どこだそれは」と真田は首をかしげた。
「いわゆる、田舎だ。」
「?でも、なんでそんなに特定に時間がかかったんですか?」と天田は美鶴に尋ねる。
「ここからが電子情報に無い話だ。先ほど、連絡があった。
その彼の戸籍情報を取得したが…親の名前が存在しなかった。」
「ど、どういうことなんすか?」と伊織はごくりと唾をのみこんだ。
「つまり、彼の親が存在しないということだ。」
「…」と皆、意味が分からず黙ってしまった。
「そして…間薙という名前は珍しい。そして、彼の通っていた辺りを考えると、東京に絞り、間薙という名前をあたったが、皆、間薙シンという子供はいないということだ。」
「あまりにも謎が多いですね」とゆかりはため息を吐いた。
「…ここからは憶測の域だ。恐らく、シャドウというのは彼だ」
「美鶴にしては大胆な推測だな」と真田は美鶴を見た。
「事実、結城と共に行動をし、そして、魔法を使った辺りシャドウであることは間違いないだろう。ペルソナの召喚も見受けられなかった。殆ど、確定だと私は思う」
「そんで、どうしますか?これから」と伊織は美鶴に尋ねる。
「…次は恐らく、あそこだろう。」
「あそこ?」と風花が首をかしげた。
「月光館学園だ」
夕方…
「次は恐らく、彼らは月光館学園に来ると思うだろう」
「うん、僕と彼らのゆかりの地だからね」と結城はUFOキャッチャーをしながらシンに言う。
「その期待に応えてあげようか。」とシンは腕を組んだ。
「…それでさ…僕の体っていつまでもつのかな」
「…」シンは答えずに結城の隣にある台でUFOキャッチャーを始めた。
「実は君も名残惜しかったりするのかな?」
「…」
シンは首を傾げると、アームを降ろした。
「懐かしいですね、月光館学園」と風花の言葉に皆が頷いた。
「そうだなー俺は、初等部の校庭とか借りて野球しに来てたからそうでもないっつーか」
「…あんたって、ホント空気読めないのね」とゆかりは相変わらず、順平に突っ込んだ。
「そろそろ、0時ですね」と天田の言葉に皆が構えた。
そして、0時を迎えた。
その瞬間に電撃の音が鳴り響き、思わず皆が目をつぶった。
「どうも、こんにちは」
そこには目が金色に光る少年が居た。
「お前が…間薙シンか」と真田は構えた。
「ええ、そうです。そして、彼が皆が知っている」
「…」と結城は黙ったまま、剣を構えた。
その行動に皆が驚いた。
「な、なんで、なんででありますか?」とアイギスが一番取り乱す。
だが、結城は答えることなく、召喚をする。
それは皆が久しぶりに見た、『オルフェウス』であった。
オルフェウスは琴を柄を持つと、皆に殴りかかった。
「あぶね!」と皆は散らばり避ける。
「…本気のようだな」と美鶴は召喚器を構えた。
「こい!『アルテミシア』!」
桐条がブフダインを唱え、結城ではなくシンの方を攻撃する。
だが、
「!?」と皆が驚いた。
それはブフダインがそのまま皆の方へと飛んできたのである。
再び皆は回避する。
『うそ…あのシャドウ…弱点がありません!』
「な、なんだよそれ!」と順平はシンを見た。
「嘗て、とある学生がこう言った。『大なる悲觀は大なる樂觀に一致する』と」
「楽観せよ。死を。恐怖を」シンは手を天田に翳す。
『うそぶき』
『!?相手の攻撃来ます!』と風花が皆に言うと、怪しいせん光が天田を包み込んだ。
「天田!」と真田が天田に声を掛ける。
「くっ。大丈夫です」
『どうやら、相手は回復したようです』
「クソッ!来い!カエサル」と真田はカエサルを召喚しジオダインを放つが、そのまま返ってくる。
「クソ…どうすればいい」
「何故の生、何故の死。摂理と理解せど、我々は胸が締め付けられる」
『マグマ・アクシス』
「炎か!俺とコロマルだ!」と伊織とコロマルが前に出て、皆を守る体制に入った。
シンは両手の掌に炎を出現させた後に、前方に向けて腕を突き出し巨大な火炎を迸らせた。
「うぉ!!!」「ワンッ!」と伊織とコロマルは吹き飛ばされた。
「うっそ!物理もあったの!?」とゆかりは慌てて回復をする。
「す、すまねぇなゆかりっち…」と伊織は立ち上がろうとするが、ふらつく。
コロマルは気絶してしまったようだ。
「ペルソナ、レイズアップ!」とアイギスはアテナを召喚し、ゴットハンドを唱えるが。
『鬼神楽』
それと同時にシンは身を後ろに反らしながら深く息を吸い、顔の前に紫色の光芒で構成された繭状の塊を相手に吐き出した。
それにより相殺された。
「召喚シークエンス!」と再びアイギスは技を出そうとするが、シンは先に動いていた。
『シナイの神火』
シンの手からまるでレーザーの如く出た赤い光は火柱を上げ、皆を襲った。
「つ、強いであります…」とアイギスはその一撃で煙を上げる。
「グハッ!」
「くそっ!」と皆は倒れた。
「色即是空、空即是色。全ては闇から…」
『初めは闇ありき』
シンは手を前にかざすと、辺りが一気に暗くなった。
風花は思わず目をつぶった。
そして、目を開いた時にはすでに皆が倒れていた。
「…空なり」
結城は構えを解く。
シンはパーカーのポケットから、黒く光るものを取り出した。
そして、美鶴の前に来る。
その黒光りするほど、綺麗に磨き上げられられ、セフティーも付いていた。
見間違えることはない。銃だ。
「享受せよ。死を」と美鶴の頭に向ける。
引き金に指を掛ける。
「くっ…こんなところで…」
「先輩!」とゆかりは手を伸ばすが届かない。
「眠れ。安らかに」
そういうと、シンは引き金を引いた。
「ひやっ!」
美鶴の情けない声が校門前に響いた。
皆、茫然とシンを見ていた。
「…ぶっ…ハハハハ」と結城は笑い始めた。
「…」シンはニヤァとドSな顔で美鶴を見ていた。
「え?なに?…それ…」とゆかりは驚いた表情で、美鶴を見ると、髪が水を掛けられたように濡れていた。
「…そ、それは…水鉄砲だよ。キンキンに冷えた冷水だけど…」と結城はお腹を抱えながら、笑う。
「結城がどっきりとしたいと言っていた。」と再び、麻痺状態の美鶴に何度も引き金を引き、水鉄砲を掛ける。
「…ゆうきぃいいいいいいいいいい!!!」と美鶴は顔を赤くし、結城を睨み付けた。
その後、痺れが解けた美鶴は結城とシンにブフダインを連発する。
結城は慌てて逃げ回る。シンには効くはずもなく、すべて、他の皆にブフダインが飛んでいくので、辺りはひっちゃかめちゃかになった。
やっと、美鶴のSPが切れ落ち着いたところでシンは口を開いた。
「初めまして」とシンは挨拶をする。
「…シャドウではないのか?リョージの一件があるからな…」と伊織はジロジロとシンを見る。
「…おいで、ヒーホー」と手を上にかざすと、先ほどと同じ雷撃音がする。
「ヒホー!およびだホ?」とヒーホーが現れた。
「これはなんだ。」と真田はヒーホーを見て、言った。
「『悪魔』」
「悪魔ァ!?」とゆかりは少し怯えた表情でヒーホーを見た。
「少し、説明しますよ。ここに何故、彼がいるのか。俺が何者か…」
シンは何故、結城を連れてきたのかを話した。
「だが、どうやって結城の魂を封印から引きはがしたんだ?」と美鶴はシンに尋ねる。
「考えればすぐにわかります。彼が封じる以前に誰が、あの門を閉じていたのか。」
「…我々の、生きたいという意志か?」
「そう。だが、様々な要因で門が開きかけた、だから僕が魂を掛けて門を封じた。
結果的に、僕の体は抜け殻となり、卒業式に死を迎えた。」と結城が自ら話す。
「…しかし、君はなんだ?」と美鶴はシンを見た。
その顔には青く発光する刺青と金色に光る瞳である。
「さぁ?」と言うと、シンは結城を見た。
「…どうでもいい」
「まったく…お前は…」
「…結城さん!」と黙っていたアイギスが結城の前に来た。
「アイギス…」と結城がアイギスの方を見た瞬間、パシンとビンタをされた。
「いつまで…またせるでありますか?」
「…ごめん」と結城はアイギスに頭を下げる。
「もう会えないと思っていました…もう話せないと思ってました…」とアイギスは再び涙を流し始めた。
「…ごめん」
「…おかえりなさい」とアイギスは再び泣きながら笑みを浮かべた。
「…ただいま」
それを見た全員が笑顔で結城に駆け寄った。
シンはただそれを茫然と眺めていた。
限りある時間だと分かりながら、結城は笑っている。
終わることのない戦いが待っているシンにとって、今いち理解できずに空を見上げた。
そして、帰るべき場所がないことがシンの何かにグサリと突き刺さった。
(…これが悲しい…だったか?寂しい?…どれだったか)
「それにしても、あのセリフはなに?」
「なんか、それっぽい方がいいと思った。」
「…そうなんだ」とシンの言葉に結城は少し微笑んだ。
「それで…間薙シン」と美鶴はシンの方を向き言った。
「お前はシャドウか?」
「俺は…混沌王と名乗っている。先ほども言ったけど、俺は半身悪魔。でも、きっともう悪魔だ」
未だに怪しく光る眼光は鋭く、歴戦の彼らでなければ飲み込まれてしまうほどの闇。
「…なかなか、良い目をしてるな」
「手抜いてたよね?シン君」と結城はシンに向かって言った。
「…当たり前。1割も出してない。」
「な、!?本当か!」と真田は驚いた表情で風花を見る。
「た、たぶんそうです。彼の体から、もっと大きな力を感じました…」
「…積もる話もあるけど、とりあえず、ホテルへ行きましょう。」と結城が言う。
それに同意するように皆が頷いた。
「…ってか、この地面…どうするんだ?」と抉れた地面を順平が見て言った。
「直しておくさ」とシンは適当に言い、レンタルバイクに跨った。
美鶴のよこした車の中で皆は話していた。
「…なんか、彼。悲しそうな眼をしてたね」と風花はバイクで並走するシンを見て言った。
「そうか?鋭い眼光で、いい顔つきだった…本気の素手の戦いをしてみたいものだな」
「…そうだね…なんていうかさ、昔のキミに似てた」
「僕?」と結城は自分を指差した。
「お前より、もっと雰囲気は刺々しいけどな」
結城は腕を組んで考える。そして、口を開く。
「たぶん、似てる。僕と彼は…たぶん、絶望してるんだ。天田にはわかるだろ?」
「…そうですね…昔の僕もそうでしたから」
「でもよ、あいつ…いいやつだぜ?きっと」と順平は頭の後ろで手を組んで椅子に寄り掛かった。
「なんでわかんのよ」とゆかりは順平に言う。
「勘だよ。勘。おれっちの勘は意外と当たるんだぜ?」
「そうだな。500円落としたやつが言ってるんだ。当たるかもしれんぞ?」と真田は伊織に言った。
「ちょ!ちょっとしたトラウマ思い出させないでくださいよ!」
順平のツッコミにみんなが笑った。
ちょっとネタ不足でこの先は書けてないです。
基本、次のが半分くらいかけたら、投稿するようにしてるんですが、今回はあまり何も考えずに投稿しました。
でも、そのうち掛けると思うのでまったり待っていただいてください。