Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第31話 Da Dove Viene?

死は負のイメージがある。

だが、旅立ちと捉える人もいる。

 

それが良いか悪いか、そんな宗教的なことは置いておこう。

 

彼の死はある意味で旅立ち、或いは、種を蒔いた。

やがて終わる世界の延命をしたに過ぎない。

 

終わることが、終わったとき…

俺は死んでいるのだろうか。

 

 

 

「…死ぬ?終わるのか?何が…全てが?どうやって?…終わる…何が…」

 

 

「俺が…終わる」

 

 

シンはバイクに乗りながらそう口に出す。

だが、答える人物はおらず、ただ、信号が青になっただけであった。

 

 

 

 

 

 

「まさに"灯台もと暗し"か」

「うひょーひれぇ!!!」と伊織はシンと結城が泊まっている部屋に入って驚いた。

そして何より、このホテル自体が緊張に包まれていた。

それは考える必要もない。社長直々に突然来たのだ。

 

それはもう…とんでもなく、従業員は緊張していた。

 

「でも、高校生がこんなとこ泊まるって・・・」

「お金はあるんで大丈夫です」とシンは言った。

「羨ましいぜ、少年」と伊織はため息を吐いた。

 

 

 

「どのくらい、結城は持つのだ?」と美鶴はシンに尋ねた。

「・・・そうだね。俺も詳しくは知らない。けど、それほど長くはないだろう」

それを聞いた皆は少し、残念そうな顔をした。

シンは首は傾げた。

「現実は残酷だ。君たちがそれを理解していないとは思えない」

シンはあの一年間を聞いた。

 

影時間が出来た理由。それぞれの過去。すべてを。

 

「ええ、私たちはもう迷っていません。」

「それに今更だぜ?色々と面倒があるだろうしな」と順平は結城に言った。

「ひどいなぁ」

「そ、そうだよ順平君」

 

「しかし、これで俺もまたのんびりと出来る」とシンはステーキにフォークを刺した。

「…しかし、八十稲羽に何があるんだ?」

「何にもありませんよ。もっとも、あちらも面白い事が起きていますがね」

「そうか」

「では、みなさん、俺は帰ります。」とシンはステーキを一口で頬張り、椅子から立ちあがった。

 

 

「え?もっとゆっくりしていけばいいのに…」と風花はシンに言った。

「此れでも王なんで、忙しいので。」

「間薙君」と結城は椅子から立ち上がった。

「なんだ?」

 

 

 

「…また連れてきて。王様」

「…まだ終わっていないのだから楽しめばいい。後、今日までのホテル代は払っておく。あとは何とかしてもらうなり、何なりするが良い。」

「丸投げかよ!」と順平は突っ込んだ。

 

「ああ、あと、これは貰っていくよ。結城理」

そういうと、シンは手に何かを握りしめ部屋を出て行った。

 

 

「というか、結局の所、結城さんはいつまでいられるのでしょうか」

「さぁ?あの人もわからないと言ってましたから、どうしようも無い気がします」とアイギスの疑問に天田が答えた。

 

「…どうでもいい」

「うわ…でたよ、どうでもいい。お前のジュミョウの事なんだぜ?」

「自分で分かるよそれくらい」

「え?だってさっきは…」とゆかりは驚いた顔で結城を見た。

 

結城は一瞬、ハッと閃いた顔をして、そして微笑んだ。

 

「…彼は口下手だな」と結城は呟いた。

「自分で伝えろって意味だったんだ…」

「ん?どういう意味だ?結城」と美鶴は結城に尋ねた。

 

 

 

「僕はね、たぶん、夏の終わりくらいまでだと思う」

 

 

 

 

その後、夏の間様々な場所で彼が見かけられた。

野球の試合で応援する彼、ヒーローショウに現れる彼、大学のボクシング部で戦う彼、ゲームセンターで中学生と格ゲーをする彼、浴衣の美人たちや中学生と居る彼。

ラボに居る彼。

 

そんな彼は夏の終わりに居なくなった。

だが、周りに居た彼らは特に変わらず生活をしている。

 

それは恐らく…記憶が消えているからだ。

 

でも、それは彼が望んだこと。

シン様に見張りを頼まれて、最後の最後に私に願った。

「彼らの記憶を書き換えてほしい」と。

 

だから、私を置いたのかとシン様の先見の目は相変わらずだと痛く感服した。

 

なら、それに答えるだけである。

 

だが、彼らの顔は前よりも明るく笑っているような気がする。

 

私はそう思うのだ。

 

 

PS:私は女神転生本編に出たい。

こんなチンケな二次創作じゃなくて、私もアギダインとか使いたい!(切実)

ムネモシュネ

 

「…恐らく無いホー」

「あら、奇遇ねライホー。私もそう思った所よ」とピクシーは報告書を読み終わると、苛烈なアギダインで燃やした。

「さ、行くわよ。あんたの初仕事」

 

 

 

 

時は戻り、八十稲羽駅へと向かうシン。

 

「…何かわかったか?」とルイは電車に揺られながら、尋ねた。

「ああ、恐らく。今回の事件とは無関係だ。」

「だろうな。シャドウの存在意義そのものが違った訳だ。」

「それに、テレビの世界に説明がつかない。バラバラに散らばった、大型シャドウも居なければ、影時間もない。無関係極まりないな」

「ただ、どうだ?与太話としては面白かったのではないか?」

 

 

「そうだな」とシンは笑みを浮かべた。

 

 

「そっちは?変わりないか?」

「ああ、変わりない」

「そうか」とシンは欠伸をした。

 

 

 

 

 

「この世界は変わらぬな・・・」とオベリスクに居る、ヴィシュヌはそう言った。

太陽神であるヴィシュヌがボルテクス界に光をもたらしている。

だが、太陽と言うにはあまりにも黒い太陽だ。

 

「調子はどうですか?」とクーフーリンが来た。

 

「変わらぬ。それにシンが寄越した部下が優秀で助かる」

「在り難き言葉。それに私の部下達が優秀なのです」とトールは頭を垂れた。

「ハハッ。見よ、この謙虚さを、我はこういう輩は好きだぞ?」

 

「それはよかったです。トール殿あやつらは来ますか?」とクーフーリンは言う。

「ああ、無論だ。だが、先ほども言ったように、ビシャモンテンが上手く守護している。

流石は四天王と称すべきだ」

「はい。了解しました」

 

 

 

「あのクマとか言ったかしら?可愛かったわ」

「そうですか?私には謎の生物極まりなかったですが」

「ああいうのが、おばさんの受けを狙うのよ」

ギンザのママ(ニュクス)にクーフーリンは状況を聞きに来ていた。

 

「ギンザは少し荒れてるみたい。」

「やはり、シジマの勢力が居ますか?」

「ええ…でも、思い出すわね。彼が創世したとき、一瞬だけど、この世界が消えてしまったときのこと」とニュクスは言う。

「・・・」

「でも、まるで電気が付いたようにまた私はここに居た。それに悪魔全員が全員、"カオス"になっているというわけでもないことにも驚いたわ」とニュクスは言う。

 

 

「カオスってやつは混沌と思われがちだが、実はあるいみ自然的状態なのかもしれんぞ?」

とカウンターで飲んでいたロキはクーフーリンに言った。

「自然的状態?」

「ああ、そうだな…例えるなら、待機状態、つまり待ってるのさ」

「待っている?」

 

 

 

 

「世界の始まりをさ」

 

 

 

 

 

 

「ロウの連中は相変わらず、骨無しばっかりだぜ。」

「そうだな。淫猥な野郎も居やがったしな。ハハハハハハッ」とオニたちが笑っていると、そこへイケブクロを治めるオンギョウギが来た。

 

「「おつかれさまです!」」

 

「うむ、ご苦労だったな。今回の討伐も酷く簡単であったな!」

「ええ、そうですぜ。」とオニたちは笑っていた。

 

 

「どうですか?イケブクロは」とそこへクーフーリンが来た。

「おー!来たかクーフーリンよ。順調だ。ロウの奴をつぶしてきたばかりだ」

「そうですか。仲間割れはご法度ですよ?それはご存じですよね?」

「ああ!もちろんだ」

「ただ、やっぱりオレには理解できんのですよ」と一匹のオニがクーフーリンが言った。

 

「いや、確かにあいつを倒すためにはもっと数が必要なのは分かりますけど、だからってそれを仲間とかにするってのはどうなのかなって」

「・・・わかっとらんな。だからこそだ」とオンギョウギはオニに向かって言った。

 

 

「この今のボルテクス界でムスビだぁ、シジマだぁなんてのは本当にごくわずかしかいねぇ。何れ、やつらも鞍替えするだろう。あの見たこともねぇ、"大いなる意志"ってやつのほうか、カオスの"ルシファー"かってな。

だから、わざわざ数を減らす必要なんてねぇってことだろ?」

「はあ。でも実際、残党のせいで未だにナイトメアシステムのあったニヒロ機構や神殿は危なっかしいですぜ?」

 

 

「その為の私です」とクーフーリンは言った。

 

 

「命が出ました。掃討命令です」

「「「うぉおおおおおお!!!」」」

 

 

 

 

「ヒホー。よわっちーんだホー」とライホーはグルグルと腕を回し、相手をなぐりつけた。

「つ、つよいぞ。こい…」と言い掛けたところで『絶対零度』でエリゴールは氷漬けにされた。

 

「クールでほっとなライホーだほ!!」

「て、撤退だ!」とべリスなどが奥に逃げていくが、ライホーの後ろからたくさんの悪魔がなだれ込んできた。

 

 

「…ふん。所詮は残党だ」とバアルは相手の躯を踏みつけ、消し飛ばした。

「しかし、いまさら、掃討か…なぜだ?」と隣に居たピクシーに尋ねた。

「そうね。流石に数が増えてきたみたい。ここのシジマ勢もムスビも間引きしない。別に毎度してることだわ」とピクシーは退屈そうに言った。

 

「実に退屈だ」とバアルはワインを傾けた。

「…あいつがいれば、きっと退屈しないわ」

「ふん。違いないな」とバアルは頬を釣り上げた。

 

 

 

 

俺にとって命はなんだ。

そう考えたとき、昔のように尊いであるとか、重いなどという発想は完全に薄れている。

 

自分以外の命を考えたとき、あの世界では恐らく自らの死に直結する。

 

少しでも敵に情を持つべきではない。

敵は敵。そして、少しでもこちらに寄るつもりがあるなら、試してみる価値はあるが。

 

失敗すれば後は殺されるだけ。

 

そんな世界で生きてくると、この平和な世界が違った見え方をする。

街灯の光さえ、酷く明るく見える。

夜の闇もまたまだまだ明るい部類だ。

 

あの世界に居たからこそ、見える景色がある。

感覚がある。

 

それが、なんだと言われればそれまでだが、結城たちを見ていて少し…何かモヤモヤとした感情がある。

 

「”仲間”…か。」

俺は思わず呟き駅に降り立つ。

そして、新鮮な空気を吸い込んだ。

 

この電車が終電なのか、降りる人は俺以外誰もいない。

静寂に包まれている、八十稲羽駅。

ここに初めて降りたったとき、俺は何かを期待していた。

 

そして、その期待を上回る事件が起きた。

 

恐らく、傲慢なルイには複数の目的があるはずだ。

 

 

それは、恐らくこの世界には何かいる。

 

 

それが、マヨナカテレビを作った。

理由などに興味はない。どうせ、驕ったやつだ。

相手によっては評価してやらんこともない。

ただ、ルイは怒っていることは確かだ。

俺が殺さなくても、ルイに消されるだろうな。

 

見つかり次第にな。

 

「存外、そんなに大したやつではないかもしれんぞ?」

とニャルラトホテプがシンの影を使い、黒い影が形作られ、”シン”が現れた。

 

「それなら、それで、構いやしない。

気の赴くままに、足を進めるだけだ」

「…それが、良い。どうせ、驕ったクズだ。」

「奇遇だな同じことを考えていたよ」

「私ならもっと、残酷な選択を迫る…

嘗て、”周防達哉”にしたようにな」とニャルラトホテプは違う世界の話を思い浮かべて、皮肉そうに笑みを浮かべた。

 

 

「…聞くか?その話。」

「いや。この問題が終わってからでいい。」

「なんだ、いいのか…結構面白いんだがな。」

 

 

「これが終わったら、また退屈になるからな。」

 

 

その言葉にニャルラトホテプは声を出して不気味な声を上げ、笑った。

「違いないな」

 

 

 

 

 

 

 




P4GAが始まりましたね。
今回の鳴上は明らかに二週目だなって思いました。

さて、一応p3の話はこれにて幕引きです。
「え?は?つまんな!」とか思うかもしれませんが、心の内に閉じこめておいて下さい。

そして、今回はすこしだけボルテクス界のその後みたいのを書きました。
フラグも書いたんで、すぐにでも回収するつもりです。

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