Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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5月14日(土) 天気:雨


5月15日(日)天気:雨/曇





第4話 Midnight Channel 5月14日(土) ・15日(日)

その日はすぐに放課後になった。

 

 

千枝は教室の窓から外を眺めて言う。

「おっと、降って来てる・・・

天気予報、当たったね。」

「じゃあ、今夜だな、例のテレビ」

 

バアルの言う通り、天気は雨になった。

(さすがは嵐と慈雨の神だ)

 

すると天城は心配そうに「何も見えないといいけど・・・」と口にする。

「それが一番だけど、何か犯人に繋がるヒントでも見えればなあ・・・」

 

「そう、うまくはいかないだろう」とシンは言う。

「その小西さんの時も、天城さんの時もそういったのは見えなかったという話じゃないか。」

 

「そうなんだけどよ・・・」と花村は軽くため息を吐く。

 

「とりあえず、今夜テレビをチェックしよう」と鳴上が言うと皆頷いた。

 

 

 

 

 

 

学校から帰る途中、ビフテキなる肉がある。それを買い自宅へと帰った。

 

「・・・ん。固い」

シンはビフテキなる厳つい名前の肉を食っていた。

『ビフテキ』実に厳つい名前だとシンは思う。

トンテキとはまた違ったものだ。

 

 

「召喚」とシンが言うと、頭がひとつしかない白いライオンが出てきた。

 

 

「ウムム。ウマソウナ匂イダナ。主ヨ」

「食べるでしょ?」と大きなビフテキをケルベロスの前に出す。

「ワオーン。ウレシイゾ」とケルベロスはその肉にかぶりつき食べ始めた。

 

「ワレニモクレ。兄弟。」

「オルトロスカ・・・ムムム、主。モウ一ツナイノカ?」

「有るよ。」とシンはもう一つ同じサイズのビフテキを取り出す。

 

「アオーン。流石ハワガ主」とオルトロスは口にしようとした瞬間、ケルベロスが噛み千切った肉を少し分ける。

 

「兄者!」

「・・・オマエハ頭ガ多イカラナ」

「ワオーン!」と大きな雄たけびを上げ食べ始める。

 

 

 

(まだ引きずってたんだ)とシンは内心笑いながら自分もビフテキを食べる。

 

 

 

 

・・・少し思い出話をしよう

 

それは俺が『ボルテクス界』の『トウキョウ』に居た時だ。

確か『トウキョウ議事堂』に向かうために『ユウラクチョウ坑道』を通ったときだった。

その時、たまたまオルトロスを連れて居た時、このケルベロスと遭遇した。

 

 

そしたら急に会話を始めた。

 

 

「ヒサシブリダナ、ワガ弟ヨ。」

「グゥゥ・・・兄者ヨヒトツ質問ガアル。」とオルトロスが疑問を口にする。

 

「・・・?言ッテミヨ。」

 

「コウシテ 向カイ合ウト 頭ノ数ハ、ワレガ2ツデ兄者ガ1ツダガ、本当ハ兄者ノ方ガ頭ガ多イノデハナカッタカ・・・?」

 

「・・・」茫然とケルベロスはそれを聞いていた。

 

「ドウナノダ 兄者ヨ?」

 

「弟ヨ。・・・疲レテイルヨウダナ。」と心配そうにオルトロスを見る。

 

「ハグラカスナ兄者!」

 

「血族ノ ヨシミダ。コレヲ クレテヤロウ!!」

そう言ってチャクラポットを取り出しどこかへ行ってしまった。

 

 

 

流石の『ライドウ』も『ゴウト』もそれを見て笑っていたようだ。

 

 

 

 

「主。何ヲ考エテ居ルノダ?」

 

「何でもないよ。・・・うん・・・固い」とシンはライドウを思い出しながらビフテキを食べていた。

 

 

 

 

もうそろそろ、午前0時を迎えようとしていた。

 

(さて、映るか映らないか)とシンは大きなテレビを前にどっしりと座り真暗な部屋の中、真っ黒な画面を見つめていた。

外は雨である。

 

 

そして、時計の長針、短針、秒針が天辺に重なった瞬間。

 

 

(!!!)

 

シンは勢いよく立ち上がり画面に齧り付く様にテレビを見る。

 

画像が荒れたテレビに人影が映る。

 

(これがッ!マヨナカテレビ!)

 

 

そこには誰だかは分からないが、黒い影が見える。

 

 

(・・・肩幅や身長から男か・・・そして、高校生か?そして・・・?)

とシンは首を傾げる。

 

 

(何故だか・・・見たことがある気がする・・・わからない)とシンが考えている間にマヨナカテレビは終わってしまった。

 

 

(そして、犯人に繋がる様な情報も無い。黒い影だけが映る)とテレビに手を触れた瞬間。

 

 

「やめたほうがいい」

「!」シンはその声に身構える。

 

「やはり君は首を突っ込んだか。それに今の殺気・・・やはり私を倒しただけはある」

「ルイか」とすぐに構えを解く。

「・・・あれが『マヨナカテレビ』だ。」

 

「・・・知っていて、俺をここに連れてきたな」とシンが言うとルイは否定もせず肯定もせず。

ただ微笑みだけであった。

そして口を開く。

 

 

「でも、お前には面白おかしい話ではないか?」

 

 

「・・・ああ」とシンは笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

次の日・・・

 

シンは早い時間から既にジュネスのフードコートに居た。

幸い、雨も降っておらずシンはテントの下の席ではない席に座る。

 

「シンは早いな」と鳴上が一番に到着し席に着く。

「うむ。このジュネスのフードコートの味を確かめたかった」

「・・・よくこんなに食べられたな」とシンは綺麗に平らげられた皿を見て呆気にとられる。

 

 

「うーっす!ってすごい量だね」と千枝は空になった皿を見て言う。

「シン君は本当に良く食べるんだね。」

「でも、これで普通の体型だから、うらやましい」

 

「"腹が減っては戦は出来ぬ"って言うしな」とシンは言うと皿を返却所へと返しに向かう。

 

 

 

 

 

「えー、それでは稲羽市連続誘拐殺人事件 特別捜査会議を始めます。」と花村は噛まずにそれを言い切る。

 

「ながっ!」と千枝は思わず突っ込む。

「あ!じゃあここは特別捜査本部?」と天城は尋ねる。

「おー、それそれ!天城、上手いこと言うな。」

 

「"トクベツそーさほんぶ"・・・んー、そう聞くと惹かれるものが・・・」

 

「どうせなら、特命係でも良かったけど・・・」と鳴上は言う。

「相棒、言ってるやつもいるし」とシンは花村を見る。

 

「う、うるせぇ・・・つーわけで、昨日の夜だけど・・・」と花村が話を切り出す。

「マヨナカテレビは見た?」と鳴上が言う。

 

 

「見た見た!」と千枝は強調するように言い話を続ける。

「顔は分かんなかったけど、アレ、男だったよね?」

 

「背丈を見る限り男だし。恐らく高校生くらいだと思う」と鳴上は言う。

「そうだな」とシンは頷く。

 

 

「私も、あんな風に映ったんだ・・・」と天城は呟く。

 

 

「あれ、でも待って。」と何かに気付いたように言う。

「被害者の共通点って"一件目の事件に関係する女性"・・・じゃなかったっけ?」

 

「だと思ったんだけどな・・・」と花村は悔しそうに言う。

「でもまだ、映ってたのが誰なのかハッキリしてない。」

 

「確か私の時は、事件に遭った夜から、マヨナカテレビの内容、変わったんだよね?」

 

 

「なに?そうなのか?」とシンは驚きそう言う。

 

 

「言わなかったっけ?

急にハッキリ映って内容もバラエティみたいなものになっていた」と鳴上が補足する。

「今思えば、『クマ』の言った通り、中の天城が"見えちまってた"のかもな。」と花村は言う。

 

 

「待ってくれ。クマとは誰だ?」とシンは話を止める。

 

 

「・・・後日、会わせるよ説明する」と鳴上が言う。

「・・・ん・・・分かった」とシンはムズムズしながら席に着いた。

 

 

「それでね、昨日見えた男の人、はっきり映らなかったでしょ?」と天城は続けるように話を進める。

 

 

 

「もしかしたら・・・今はまだ"あっち"に入ってないんじゃない?」

「それなら、あの男の人・・・」

 

 

 

「まだ、さらわれていないということか」と鳴上は言う。

「うん。可能性高いと思う。」と天城は頷き同意する。

 

「誰なのかわかれば、被害に遭う前に先回り出来るな」とシンは腕を組み目を瞑る。

 

「ああ・・・それに、うまくいけば犯人とか一気にわかるかも知れない。」

花村は納得したように頷く。

 

「ハァ・・・けど、まず誰かわかんない事にはな・・・」

 

 

「・・・」とシンは目を瞑っている。

 

と千枝が咳き込み、口を開く。

「オホンッ・・・えー、ってことはつまり、ワタシの推理が正しければ・・・

映像は荒く、確かな事は言えないが、あれはどうも男子生徒だと思われる。

しかしそれだと、これまでに立てた予測とは食い違う・・・個人の特定がまだ出来ないので、つまりは、もう少し見てみるしかない!」

 

「・・・全部今言ったじゃねーか」

 

「う、うっさいな!」

 

と花村が突っ込みそれに少し顔を紅く染める千枝。

 

 

「んふふ・・・ぷぷ、あは、あーははは!!

おっかしい、千枝!

あははは、どうしよ!ツボ、ツボに・・・」

 

「出たよ……」と千枝は呆れ気味に天城を見て言う。

 

「ごめ、ごめええーんふふふ」とお腹を抱えて抱えて笑っている天城は俯き笑い続ける。

 

 

一方、シンは難しい顔をしたまま目を瞑っている。

 

 

「シン君。どうしたの?」と千枝はシンに尋ねる。

 

 

「・・・いや、まだ憶測の段階を超えてはいないがすこし被害者に関しては名前はわからないが特定はできている。」

「うっそマジで!?」と千枝は驚く。

 

 

 

「あれは恐らく、あの暴走族の少年だ。」とシンは腕を組むのを解く。

 

 

「あ!!そうだ!!私もなんかみたことあると思ってたんだけど・・・そうだ。」と千枝は思い出したように言う。

 

「そうだ!俺もなんか見たことあると思ったらそうだった!!」

 

 

「確か堂島さんが知ってるって言ってたけど・・・確か名前は・・・」と鳴上が思い出そうとするが、思い出せずに「・・・ダメだ」とあきらめる。

 

 

 

「あークソ!モヤモヤすんなあ!!」と花村はテーブルを叩く。

 

 

「で、雪子はいつまで笑ってんさ!この"爆笑大魔王"がっ!!」

「あはははは、千枝うまーい!」とやがて自分の腿を叩き笑い始める。

 

 

 

 

「・・・個人が特定できなければ、意味はない。もう一日待ってみよう。

バアル曰く、今日の夜は雨らしい」とシンは言う。

 

 

「バアル?・・・まあ、とりあえず今日も見てみよう。」と鳴上が言う。

 

 

「そうだな」と花村は言う。

 

そして、天城は笑ったまま千枝に連れられてフードコートを出て行き、花村はバイトへと行った。

 

 

 

 

既に夜になり掛けていた。

 

 

「お前の家はここだったのか。」とシンは一軒家を見上げる。

 

「・・・ウチに寄っていく?」と鳴上はシンを見て言う。

 

「ん?そうだな。少し寄っていくよ」とシンは頷くと堂島家に招きいれられた。

 

 

 

「あ、お兄ちゃん。おか・・・お友達?」とシンを見て恥ずかしそうに隠れ言う。

 

「お邪魔します」とシンは淡々と挨拶する。

 

「よお。・・・友達か?」

「ええ。少し話したらすぐにお暇します」

「彼はトウキョウから引っ越してきたんだ」と鳴上が紹介すると軽く頭を下げる。

 

「・・・そうか。ゆっくりしていくといい」と堂島はシンの目を見て何か思い、すぐに新聞を開いた。

 

 

 

 

そこからは他愛も無い話を鳴上としてシンは帰っていった。

 

 

 

 

「・・・悠。」と鳴上が見送りをした後リビングへ行くと堂島に声を掛けられる。

「なんですか?」

 

「彼は・・・その友達か?」とすこし戸惑いながら堂島は悠に尋ねる。

「そうだ」

 

 

「そうか。」と

 

「どうしたんです?」

 

「いや。あの目は大切なモノを失ってる目だ。」と堂島は新聞を閉じ、それをたたむ。

「・・・そうなんですか?」

 

 

 

 

「俺はあの目を何度も見てきた」と堂島の顔は真剣になる。

「あの歳で、俺も初めて見た。」

 

「・・・」

 

 

 

「お兄ちゃーん。お風呂。」と菜々子の言われるがまま、鳴上は風呂場へと向かった。

 

 

「お兄ちゃん。」とお風呂に入ろうとした鳴上は菜々子に話しかけられる。

「どうしたの?」

「お兄ちゃんの友達・・・少し怖かった」

「・・・そうか。でも、大丈夫だよ。いい人だから」と鳴上は菜々子の頭を撫でる。

「うん!」と安心したように頷き部屋へと戻って行った。

 

 

 

堂島は台所の小さな窓から外を少し眺め、新聞を再び開く。

 

(あの目を俺は知っている。あの目は絶望してる目だ)

 

そうおもいながら堂島は新聞を捲り、軽いため息を吐くのであった。

 

 

 

 

 

そして、シンの予想通り、マヨナカテレビに映ったのはあの暴走族の少年であった。

シルエットがそうだとそれを証明していたと言える。

 

 

シンにその『マヨナカテレビ』が終わると電話が掛かってくる。

 

「見たか?」

その電話は花村であった。

 

「ほぼ・・・というか確定だな」とシンはテレビの近くのソファに座り、言葉を返す。

「ああ、名前は相棒から聞いたんだけどさ、『巽完二』っていうらしい」

「『巽完二』か・・・」

 

とシンは思い出す。

(商店街の近くの『巽屋』と何か関係がありそうだ)

 

 

「でさ、話変わるけど、相棒にも聞いたしついでにいいか?」

「ん?」とシンは答える。

 

 

「お前さ、ぶっちゃけ天城と里中どっちが好み?」

 

 

「ん?そうだな。それぞれいいところがある。

別にどっちがとかと言うのはない。」とシンは無感情に且つ淡々と答える。

 

「そ、そうか。相変わらずお前は冷静だな」と花村は少し残念そうに返答する。

 

「鳴上はどうせ『両方とも』とか言ったんだろうな」とシンは呆れ声に近い口調で花村に言う。

 

「おお!そうなんだよ!あいつ守備範囲広すぎだろ!」そういうと花村は電話の向こうで笑っていた。

 

「あー心配しなくても、もちろん内緒にしておくからな。じゃあ明日な!」

 

そう言って花村は電話を切った。

 

 

 

 

 

シンは大きなため息を吐く。

 

此処まで女を狙った犯行だったが、次は男・・・。

 

・・・どういうことだろうか。

 

これで犯人がなお一層わからなくなった。

共通点がない。巽屋に何かあるのか?

・・・いや、それも考えにくい。

 

いずれにしても今は解決しないだろう・・・




マヨナカテレビって英語で「Midnight Channel」なんですね。
直訳で「TV Midnight」だと思ってました。

文中の「これがッ!マヨナカテレビ!」はなんか書いてて笑ってしまいました。

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