Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第38話 Crack 9月13日(火) 天気:晴

シンは教室から、外を眺めていた。

そこに鳴上や花村、千枝、天城が教室に来た。

 

「なんだったんだ?あいつ」

「?」とシンは花村の言葉に首を傾げた。

「直斗君…確証を取れる行動って言ってた…」と天城がシンに言った。

 

シンは無言で反応しなかった。

 

「流石の間薙君もわかんないでしょ…それだけじゃ…」

千枝は呆れた顔で言った。

 

 

そして、その二日後…

マヨナカテレビに直斗が映った。

 

 

9月16日金曜日…

ジュネスフードコート

 

「昨日の…直斗くんだったよね。」

天城が会話の切り口を開いた。

 

「クマくん、どう?やっぱり…いる?」

「におい、するクマ。」

 

「これじゃ…おんなじだ…今までと、なんも変わってねえ…」

「当たり前だ。やつはそれを狙っていた」とシンは淡々と言う。

 

「…え?…そうか、だから直斗くん、急に特番の取材に…!

直斗くん、"違和感がある"って言ってた。

"納得できない"って言ってた。

それと、“誘拐されるのはテレビに出た人だ”って、言ってたでしょ?」

 

「ちょ、ちょっとまて、シンの口ぶりだと直斗が何かするってわかってたのか?」と花村がシンに言った。

 

「ああ。知っていた。」

すると完二がシンに掴みかかった。

 

「わかってるんすか!?センパイ!」

「承知の上だ。それに、これ以上ない絶好の機会だ。」

「でも、直斗君死んじゃうかもしれないんだよ?」と千枝は怒りながら言った。

 

「…なんだ、お前らはそんなに腑抜けか。助ける前提で俺はアイツを煽った。」

「あいつの情報は俺がすでに知っている。

それにあいつなりの"覚悟"だ。遊びではないことを承知でやつはこの作戦を決行した。」

完二はシンを離した。

 

「…シンはいつもそうだ。勝手になんかやっていて、先の先まで読んでいる…」

鳴上は軽くシンをどついた。

 

「シンにしちゃ珍しく分かりやすくいうじゃねーか。つまり、裏を返せば、俺たちを信用してるってとっていいんだよな、それ。」

花村は立ち上がり準備運動を始めた。

「…」

シンは顔を背けた。

「でなきゃ、私たちにそんなこと言わないでしょ?間薙センパイ、シャイだから」

りせは言った。

 

 

「…俺達のすることは変わらない。それに今回は情報がある分楽にできる。

絶対に助けるぞ。」

鳴上の声に皆が応えた。

 

 

 

 

テレビの中…

 

シンがりせに特徴を言う…

「端的に言う。

まず、あいつは子供っぽい。執着的に事件を捜査していた。

それ故に、警察では子供扱いされていたようだ。

それに背の小さいのがコンプレックスだ。

貪欲に知識を欲していた。それは家系がそうさせるのか、あるいは別か。

そして、居場所を探していた。というより、居場所にこだわっていた。

客観的に物事を見すぎていて、主観を見失っている節がある。

今回の行動は俺が煽ったにせよ、普通の人間なら行動には移さないだろう。

そして、安定…というよりは理論に沿ったものが好みのようだ。

恐らく、料理なんかはレシピ、大匙まで正確にやるタイプだ。

しかし…」

「ちょ、ちょっと待ってセンパイ」

「ん?」とシンはりせのほうを向いた。

「それって本人から聞いたの?」

 

「…いや、見て聞いて相手の行動などの情報を統合すれば、おのずと結果出てくる。」

「え!?ってことはまさか、私や鳴上センパイのもわかったりするの?」

「まあ…幾分には」

「えーっ!じゃあ、鳴上センパイの「今はそんな場合じゃねーっつの!!」」

花村が空気を察して止めた。

 

「…それと」

シンは言葉を詰まらせた。

 

「それと?」

「…いや。これはいい。このくらいでいいか?」

「もう十分すぎるよ。すぐ見つけられる」

 

そういうとりせはペルソナを召喚しサーチし始めた。

 

「そういえば、シン…これ、なんだかわかるか?」

鳴上が櫛を見せてきた。

 

「…これは誰のものだ?」

シンは櫛を手に取った。

 

「マリーちゃんの。記憶無くす前に持ってたみたい」

「でも、うちのお袋によれば、贈り物にはしねぇって、話なんっすよ」

 

「いや。これは贈り物だ。"別れの為"に送った代物だ」

シンは鳴上に櫛を返した。

「何かわかったクマか!?」

クマはシンに飛びついていた。

 

シンはまるで神に祈る様に言った。

 

「呪われてあれ…貴様の眼前で幾億もの呪言を貴様には吐き捨ててやろう…」

 

「ど、どうしたの間薙君」と千枝は少し焦った様子で言った。

「…現実は残酷だな。これ以上の事は俺は言わない。君たちで彼女の助けになるといい」

 

「また、隠し事?」と天城はシンに言った。

「隠し事…というよりは、恐らく真実は残酷だという話だ。俺が言ったところで、それは君たちのためでもないし、彼女自身のためにもならない。」

「それに、お前等なら辿り着くだろう。」とシンは腕を組んだ。

 

 

「見つけたよ!センパイ!」

りせが直斗を見つけたようだ。

 

その言葉に皆が今すべきことを思い出す。

 

 

…秘密結社改造ラボ

 

 

「…なんスかね、ココ。」

完二がそんな建物を見て言った。

「SFチック…て言うか、あー分かった、特撮の秘密基地っぽくないか?」

「あー、ガキん頃は憧れたっスね。」

 

「あれ、シンドいらしいよー、現場。滝とか火の中とか余裕で本人飛び込むらしいし。」

「俺は子供の頃はそれを想像してしまって、内容を見れなかった。」

シンは建物の材質を触る。

 

「どんな、ませた子供だよ…でも、ま、男のロマンの基礎だな。」

「ま、そうね、気持ちは分かるかなー。カンフーと一緒でアクションだしね。

それに"秘密基地"って響きも、結構トキメクよね!」

「…クマ、知ってるクマ!真っ赤な『"マガツヒ"』が流れてるクマね!!」

 

「マガツヒ?」と天城が首を傾げた。

「当てにしない方がいいだろ…こいつの発言なんて…」と花村が言った。

 

 

 

「前回とは違うんだね」

天城、千枝、そして、シンという珍しいメンバー構成になった。

 

「クマは騒いでいたがな」

シンは欠伸をした。

「まぁ、前回の事もあるし…ね」と千枝はシンに言った。

 

「もう、『リベラマ』は唱えんさ」

「でも、私たちそんな魔法知らないんだよね」

「…それは確かにおかしな…疑問だ」とシンは首を傾げた。

 

「その魔法の逆ってあるの?」

「無論。ある」

シンはエストマを唱えた。

 

「…特に実感はないよね」

「あ…」と天城が正面に居るシャドウを指差した。

そのシャドウはこちらを向く、思わず千枝と天城は戦闘態勢に入り、近づこうとしたがシンが腕でそれを止めた。

シャドウはこちらを向くが、まるで見えていない様子でこちらに近づいてきた。

 

そして、何事も無い様に横を通り過ぎて行った。

 

 

「…ホントだ。まるで、鳴上君のあれみたい」

「あれ…あの謎の間か。」

 

鳴上は戦闘後少しぼーっとしているときがある。

それが何度かあるため、鳴上にシンが尋ねたところ

「…カードシャッフルだな」と訳の分からない回答が来た。

 

「鳴上君ってどっかおかしいっていうか、不思議な雰囲気があるよね」

「雪子が言うかな…」と千枝が頭をポリポリと掻いた。

「大丈夫。千枝もおかしいから」

「そういう意味じゃないつーの」

 

シンはそれを見て淡々と言った。

「仲が良いな君たちは」

 

「え!?…まあ、そうだね」と千枝は恥ずかしそうに言った。

「小さい頃から、知り合いだしね」

「…そうか。いいものだな」

 

「なんかそういわれると…恥ずかしいかな」

「間薙君はいなかったの?」

「…どうだろうな。キミたちほど、仲が良いとは言えなかったな。」

シンがそういうと、警報が鳴った。

 

 

『保安システム:正体不明ノ侵入者ハ

現在、地下4階ニ到達…警戒レベル、オレンジ。

施設内ノ重要区画ヲ閉鎖。

侵入者ヲ排除セヨ!』

 

 

「あいつらは地下四階か」

「速いなあ…」

千枝はそう言った。

シンたちはまだ地下二階でまったりと歩いている。

 

 

「ってか大分、間薙君も馴染んできたね。このド田舎に」と千枝は言った。

「それが良いところだ」

「でしょ?私もそう思う」と千枝は少し嬉しそうに言った。

「…空気がおいしい。静かなところで良い。」

シンは深呼吸をした。

 

「…私は…嫌いだった。」

と天城は言った。

「だってね、私は旅館の跡継ぎとか、嫌だったの。

でも…そうじゃないってわかったの。

自分で決めてなかったから…レールに乗せられた気がして、嫌だったの。

嫌なら、逃げるしかないって決めつけて…

でも、今はそうじゃないの…あの旅館を守りたいって思う。

やっぱり、あそこは私の大切な場所だから。」

 

「雪子…」と千枝は少し嬉しそうな顔で言った。

 

それをどう感じたか。シン自身にはどうにも分からなかった。

しかし、何とも言えない感情が湧いた。

 

 

 

(悲しい…これが…悲しいだったか?)

 

 

 

自分にはもうない故郷。親の顔も、勇の顔も、千晶の顔も、先生の顔も。

もう見ることはないと思うと、海の底に沈んだような気持になった。

だが、それはすぐに押し出すようにした。

 

なんだか、そんな考えがひどく退屈に思えてしまったからだった。

 

 

 

 

 

「おかえりーみんな!!」

鳴上達は奥まで言ったがカードキーの関係で一旦戻ってきた。

それに合わせてシンたちも戻ってきたのだ。

 

花村が倒れ込む。

「敵強くなってねぇか?」

「そうっすね…」

 

「こっちは別にって感じ。」

「そりゃそうだろうよ!」と花村はシンを見て言った。

「あれ…ってか間薙センパイは?」

 

「まだ、中。今頃、大暴れしてると思う。」

「なんつーか、それが普通になってるってのが俺は怖いな。」

花村はリボンシトロンを飲みながら言った。

 

 

 

「…弱過ぎる」

シンは軽くフォースアニマルを蹴飛ばした。

相手は物理反射。しかし、シンの攻撃は万能属性であり、そんなものは無意味でしかなった。

全能のバランサーが攻撃を仕掛けるが、それを綺麗に躱され、十字の根元を掴まれ、壁に叩きつけられた。

全能のバランサーは地面に落ち、それをシンが踏みつけ軽々と蹴飛ばす。

追い打ちに追い打ちを重ねる。まるで機械のように。

しかし、その表情はどこか子供が新しいおもちゃを与えられたような笑みを浮かべている。

 

耐性など意味はない『貫通』がある。

 

貫通、万能攻撃。そして、全属性(万能以外)反射。

 

正に最強の矛に、最強の盾。

そして、残酷に非情に相手を蹴散らしていく。

これが、混沌王たる所以。特殊な能力は無い、寧ろ、メタトロンなどに比べれば小さい躰

しかし、それをも利点と生かす素早い動きとその体に見合わないパワー。

 

だから、こそ『混沌王』、『人修羅』などという名称がつけられる。

 

 

 

そこに鳴上達が来た。

 

 

 

「カードキーはあったのか?」

シンは邪魔な相手を投げ飛ばした。

 

「ああ。これで奥に進める。…しかし、今日は一旦引き上げよう」

「な、なんでっすか!?」

完二が鳴上に言った。

 

「…皆が疲れている」

鳴上が皆を見て言った。

「オレァまだ「やめておけ。完二。お前が一番力み過ぎている」」

シンが完二に言った。

 

「冷静になれ。肝心な場所でとちることになりかねん。」

「…うっす」と完二は納得したようにうなずいた。

 

「鳴上も良い判断だと思う」

「…それにアイテムも尽きてきたしな」

鳴上はそういうとカエレールを使って帰った。

 

『間薙先輩はどうするの?』

「俺は…もう少しいる」とりせの言葉にシンは答えた。

『…ふーん。私も残るね』

「…別に帰っても構わないぞ」

『いいじゃん!ね?』

「…好きにすればいい」

 

そういうと、シンはシャドウを蹴散らす為に走り出した。

 

 

シンはシャドウを探すために歩いていた。

 

『間薙センパイって、なんか不思議だね』

「…よく言われていた。"変わっている"、"お前は変だ"と」

『…それって嫌じゃなかったの?』

「…別に…変えるつもりもなかった。変えてしまったら、きっと退屈になるに違いないと思った」

『強いんだね…センパイは』

「…"強い"…というよりは、ただ自分に愚直に居ただけだ。それを曲げてしまったら、世界が退屈で息苦しくなると思った。…それだけの話だ」

 

シンはシャドウを見つけ、走ったままの勢いでなぐりつけた。

相手は無論、吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。

シンはそれを見て、再び歩き始めた。

 

『センパイってたんじゅーん』

「単純なほど、気楽に生きていける。」

『それって、羨ましいかも…私は…どれが自分だかわからなくなっちゃったから』

 

「…自分か。

そんなものは無いのかもしれないし、すべてが自分なのかもしれない。

"他人は自分を映す鏡"だ。

だが、他人が多すぎて、それぞれにそれぞれの自分が居る。

それでそれを拒否し、自己改革するか、あるいはそれら全てが受け入れ、自己を見つめ直すか…

それは人それぞれだ。」

『…やっぱりセンパイって変。』

「褒め言葉と受け取っておく」

 

シンがそういうとりせは笑った。

 

『センパイのこと、ちょっとわかったかも…』

「これがすべてではない。君が一人の"久慈川りせ"であるように、あるいは"りせちー"であるようにな」

シンは一階へと登った。

『…うん、知ってる』

りせは少し声が暗く聞こえた。

 

 

 

 

夜…

 

シンの趣味は?とシンが聞かれた場合、シンは三つのことを言うだろう。

一つはテレビ鑑賞。これは映画やドラマが含まれている。

一つは退屈しないことという曖昧なことをいうだろう。

 

そして、最後は…

 

 

 

「知らなかった…日帰り入浴が出来るとは」

「そうだよね。今年から、始めたことなんだ」

シンは天城雪子の居る、天城屋旅館へと来ていた。

 

そう。シンの趣味。最後は入浴だというこたえる。

実にじじぃ臭いと言われる。

しかし、のんびりとすることもシンは必要だと考えている。

 

「おお。」

シンはその広い露店風呂に感動する。

源泉かけ流しらしく、しかも、日帰り入浴が出来るということを知っているひともいないため、人はいなかった。

 

シンは体を洗い終わると、そうそうに入った。

少し熱いくらいのそのお湯加減はシンにとっては最高であった。

 

シンは肩までつかると、これまでのことを考える。

 

 

 

直斗、俺の疑念は見事に当たった。

これまでと変わらず犯人は居ることが、直斗の行動によって証明された。

そして、こいつが鳴上と同じ能力を持っていること。

理由は簡単だ。テレビに入れられること、つまり、ペルソナ能力を有しているか、あるいはそれに付随する能力を所持していること。

 

そして、鳴上に能力を与えたやつがいること。

そいつは見事に隠れている。

事実、ルイやニャルラトホテプがこれだけ探し、見つけられていないのだ。

そして、そいつが、マリーに関係していることである。

こいつが、神を気取っている。ならば、ぶち殺すだけだ。

 

しかし…

 

 

 

「露天風呂は良いな…」

 

 

シンはそんなことを想いながら、暗い空を見上げた。

 




活動報告に書いたんですが、少し投稿ペースが恐らく落ちます。

落ちる落ちると言いながら落ちなかったですが、今回は本気で落ちる気がします。

でも、失踪はしないとは思いますので、ゆっくりと待っていてください。

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