Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第39話 Searching For My Place 9月17日(土) 天気:晴

「いやぁ…苦労した…このでけえテレビを無くすっていわれてさ。

それで、まぁあ?俺がいろいろと頼んでなんとか、残してもらった。」

 

「一時はどうなることかと思ったけど、なんとかね」と千枝はため息を吐いた。

 

実は直斗の救出をしようと、翌日ジュネスへ行くと、そこにはいつものテレビがなくなっていた。

なんでも、家電が売れない為に縮小の為に移動させるそうだ。

それには一週間くらいかかると花村が言われた。

一刻も助けたい、鳴上達が手伝い、なんとか、17日にはこうして、テレビが元の位置に戻された訳だ。

 

 

「直斗を救出に行こう」と鳴上が言うと、皆が頷いた。

 

 

 

 

秘密結社ラボ…

一番地下深く…

 

「直斗ッ!」

完二が勢いよく扉を開けると、医者のだぼだぼの服を着た直斗といつも通りの直斗が居た。

 

「待ちくたびれましたよ。

…この子の相手をするのに、ほとほと参っていたところです。」

 

「やだぁ!やだ、やだ、行かないで!!」

まるで駄々をこねる子供の様に医者の服を着た直斗が言う。

 

「なぁんで?なんで僕だけ置いてくの!?どぉしていつも僕だけひとりぼっちなのっ!?」

 

「寂しい…寂しい!」

「さみ…しい?」とシンがボソリとつぶやいた。

「僕と同じ顔…まるで僕だとでも言いたげだね。でも、君と僕とじゃ…」

 

「何をごまかしてんだい?僕は、お前だよ。」

突然、安定した口調で語り始めた。

 

「子供の仕草は"ふり"じゃない…お前の真実だ。

だってみんなお前に言うだろ…?"子供のくせに、子供のくせに"ってさ。

いくら事件を解決しても、必死に考えても、子供ってだけで、誰も本心じゃ認めない。

周りが求めてるのは、お前の"頭"だけだ。

"名探偵"扱いは、それが欲しい間だけ…用が済んだら"子供は帰れ"だ。

世の中の二枚舌に、お前はなす術も無い。独りぼっちの、ただの子供だ。」

 

そして、再び泣き出すようにシャドウの直斗は言う。

 

「僕、大人になりたい…今すぐ、大人の男になりたい…

僕の事を、ちゃんと認めてほしい…僕は…居ていい意味がほしい…」

 

 

「やめろ…自分の存在する意味なんて、自分で考えられる…」

直斗は頭を抱える。

「フッ…無理だって言ってるだろ?今現に子供である事実を、どうする?」

「や、やめろ…!」と払いのけるように直斗は言った。

 

「本心じゃ憧れてるだろ?強くてカッコイイ、小説の探偵みたいな、大人の男にさ。

そして、それを体現した人が現れた。

キミだよ。」

シンを指差してシャドウの直斗は言った。

 

「違う…」

「…それは裏を返せば、心の底で自分を子供と思ってるって事だ。

認めろよ…お前は所詮子供さ…自分じゃどうしようもない。

さあ…そろそろ診察は終わりだ…人体改造手術に移ろうか。

いいだろ…白鐘"直斗"くん?」

 

「やめろ!!」

 

「白鐘"ナオト"…男らしくてカッコイイ名前だよな?

けど、事実は変えられない。性別の壁はなお越えられない。

そもそもオトコじゃないのに、強い大人の男になんて、なれる訳ないだろ。」

 

シン以外の人間が驚いた。

 

「え、ちょ…あいつ今…スゲー事口走ったぞ…」

「お…男じゃねえだと!?」

 

「駄々をこねてるつもりはない…それじゃ、何も解決しない…」

それを聞いたシャドウの直斗は一瞬、唖然としてそして、笑い出した。

 

「ふ、ふ…あはは!その言葉はお前が言われたんじゃないか。

"駄々をこねていても、何も解決しないよ、ナオトくん"ってさ!

お前、泣いてたよな。自分の口から言うなんて、

何を守ろうとしてるんだ?」

 

「なっ…にを…」

 

「いいんだ、もう無理しなくていい。そのための"人体改造手術"だ。

駄々をこねたまま、一歩も動けずにいる…僕にはその気持ちがよく分かる。

僕はお前なんだよ…」

 

「違うっ!!」と直斗は大声で否定した。

 

「だめッ!」と千枝が直斗を遮ろうとしたが、完二が止めた。

「いや、いい…ちゃんと吐き出しゃいいんだ。

オレらはアイツを倒して、ケツ持ってやりゃいい…

じゃねえとアイツ…直斗のやつ、苦しいまんまだろ。」

 

そう言われると、本物の直斗が倒れた。

 

「フフ…あははははっ!!言うよね、偉そうに!

いいよ、来なよ…僕はキミみたいに粗暴で

情に流されるタイプが一番嫌いだッ!!」

 

 

 

 

『ライホー見参!』

 

 

 

「ヒホー!!!」という高らかな声が響いた。

 

「な、なんだ!?」

花村は驚いたこえで言った。

シンは呆れた顔でため息を吐いた。

 

すると、無数の召喚音がする。沢山のジャックフロストが現れ始めた。

 

「な、なんだよ!こいつら!」

シャドウの直斗はマハラギダインを唱え続けるが、一方に減る気配がない。

ジャックフロストはそのシャドウの直斗を殴ろうとジャンプするが、避けられる。

「クソッ!」

 

徐々に狭い部屋にジャックフロストだけになって行く。

「な、なにこれ!?」と埋もれそうになりながら、千枝はシンに尋ねる。

「知らん。俺は知らん」とシンは目を閉じたまま、ジャックフロストに流されるまま、埋もれて行った。

 

「ちょ、これ、な…あ、でも、フニフニ…」

完二はジャックフロストのフニフニにやられたようだ。

「クソ!なんだよ、これ」

「…眠くなってきた…」

鳴上は眠ってしまった!

 

シンは鉄柱を登って行き、天井にぶら下がった。

「ヒホー!!ライホー激怒プンプン丸ホー!」

「貴様の怒りなど知らん。」

 

「やめ、うわ…うわぁああああああああああああ!!!」

 

先ほどまで勢い良かったシャドウの直斗は疲労しており、自分に飛びついてくるジャックフロストが増え、地面に落ちた。

そこに更なるジャックフロストがポコポコとまるで子供のケンカのような殴りを続ける。

しかし、この数では圧倒的で最早何が起きているのか分からない。

 

「鳴上達は?」

「ライホー伝説には邪魔なんだホー!!」

「…俺は知らないからな」

 

「馬鹿!俺は味方だ!」

「ヒホ?違ったホー」

と花村を執拗に殴るヒーホー。

 

「きゃっ!どこ触ってんの!!」

と千枝に飛ばされるヒーホー。

 

シンは天井の鉄骨にぶら下がりながら

そんな状況をたのしんでいた。

 

 

 

 

ボコボコにされた直斗のシャドウはいつの間にか医者の服に戻っていた。

直斗が立ち上がる。

 

「ここは…そうだ、皆さんが来てくれて、

それから…そうか…

全部、見られちゃったんでしたね…

ほかの皆さんは?」

 

「…非常に疲労している」

シンが後ろを指差すと、ぐったりした様子で皆が座っていた。

 

「…幼い頃に両親を事故で亡くした僕は、祖父に引き取られました。

僕は友だちを作るのがヘタで…祖父の書斎で、推理小説ばかり読んで過ごしてた…」

 

「将来の夢は、カッコイイ…ハードボイルドな、大人の探偵…」

シャドウの直斗がそう答えた。

 

「両親は、自分たちの仕事に誇りを持っていて、僕も将来継ぐべきだと、疑ってなかった…

普通は窮屈と思うのかも知れませんけど、僕に拒む気持ちは無くて、むしろ憧れていて…

その辺も受け継いだのかも知れません。

祖父はきっと…いつも独りでいる僕の夢を、叶えてくれようとしたんだと思います。

祖父に持ち込まれる相談事を内緒で手伝う内に、気付いたら少年探偵なんて肩書きが付いてて…

初めは嬉しかった…でも、上手く行く事ばかりじゃない…」

 

「事件解決に協力しても、喜ばれるばかりじゃありませんでした…

僕が"子供"だって事自体が気に障っていた人も少なくなかったし…

それだけなら、まあ時間が解決するかも知れません。

だけど…女だって事は、変えようがないんですよね…」

 

「…そういうことか、故に男装か。」

シンは黙って聞いていた。

 

「僕の望む"カッコイイ探偵"というのと、合わないですよ…

それに警察は男社会…軽視される理由がこれ以上増えたら、

誰にも必要とされなくなります…」

 

「誰にも…か…」

シンが腕を組み言った。

 

「綺麗事を言うようだが、必要じゃない人間なんていない。」

 

「ええ…」

そういうと、直斗はシャドウの直斗を見た。

 

「ごめん…僕は知らないフリをして、君というコドモを閉じ込めてきた。

君はいつだって、僕の中にいた。僕は君で…君は僕だ。

僕が望むべきは…いや、望んでるのは、大人の男になる事じゃない。

ありのままの君を、受け入れる事だ…」

 

自分自身と向き合える強い心が、"力"へと変わる…

直斗は、もう一人の自分…困難に立ち向かうための人格の鎧、

ペルソナ"スクナヒコナ"を手に入れた!

 

直斗が倒れそうになるとシンが支える。

 

「それにしても、ズルいですよ…こんな事、ずっと隠していたなんて…

はは…これじゃ警察の手に負えないわけだ…

でも…これで、分かりました…事件はまだ…終わってない…」

 

「…それにしても、しまらない感じになって悪い」

「いえ…僕は大丈夫です。」

「ちょ、ちょっとまってくれ…はぁ…はぁ…」

花村は息切れをしながら言った。

 

 

 

シン以外は皆が疲労しながら外に出た。

 

 

 

 

直斗を警察に届け、帰り道…

 

「次やったら、ころすからね!」

千枝は皆と歩いて帰るライホーに見て言った。

「ヒホー…申し訳ないんだホ」

 

「…でも、気持ちよかったっす」

「そういう、お前の顔は気持ちわりぃな…」

花村が言うと完二と喧嘩を始めた。

 

「どうして、あんなことした?」と鳴上が尋ねる。

 

「ヒホー…向こうでジャックフロスト軍団を結成したホ…

でも、皆の高揚が抑えられなくなっているところに、シンの戦闘が始まることを察知したホ…それでみんなで行ったホ」

そういうと、シンの足に手を伸ばしまるで猿のように「反省ホ」とやった。

 

「ムキ―!!クマ以外のマスコットはいらないクマ!!」

「マスコットではないホ!それに、お前より強いホ!!」

と、次はライホーとクマがケンカを始めた。

 

「私もびっくりしたよ。突然、私の前に現れて、眠らせてきたんだもん…」

「大丈夫か?りせ」と鳴上が言うと、「大丈夫!」と嬉しそうに答えた。

 

 

直斗は既に病院に送った。

 

あとは回復を待つばかりである…

 

シンは締まらない終わり方にどこか、つまらなそうな顔でライホーを見た。

 

 

夜…

 

足立を連れて、自宅で飲んでいた所、鳴上が帰ってきた。

そこで、足立が直斗が見つかったと言うと、安心したと答えた。

しかし、それは知っていると言ったような顔で言っていた。

 

そこで足立がぺちゃくちゃと話すのでとっとと足立の家に帰し、鳴上の友人の間薙も揺さぶってみることにしてみた。

それはやはり、自分の"家族"が何かしていないか、それが不安であるからだ。

堂島は警察という立場を生かし、シンの家を調べた。

 

「はい」

堂島は出てきた人物に驚きながらも

「な、鳴上の叔父の堂島だ。申し訳ないが、間薙シンはいるか?」

「少々お待ちを」

その女性は頭を下げると、ドアを閉め、奥へとはけて行った。

 

すぐに、ドアが開くと、鳴上と同じ制服で居た。

ドアを開けると、外に出てきた。

 

「ご用ですか?」

「ああ、お前が心配してた、白鐘だがな、少し前にいなくなっちまってな

…でも、今日突然現れてやがった。」

「そうですか」

シンは淡々と一切の筋肉を動かすことなく答えた。

 

「…ああ、だからお前に知らせてやろうと思ってな」

「…それだけじゃないでしょう?」とシンは腕を組む。

 

「…まいったな…」

堂島は苦笑いをする。

「態々、俺のところに来る辺り、大胆すぎますよ。

…今、あなたが出来ることは、鳴上悠という人間を信じてやることだけですよ。」

「…そうか。すまなかったな、夜遅くに」と堂島は煙草に火をつけ去って行った。

 

 

 

 

 

俺はベットに寝っころがると思い出す。

 

 

『やだぁ!やだ、やだ、行かないで!!』

 

 

居場所か…全てが全て、うまくいくわけではない。

しかし、今回、直斗を救いだし、トラブルがあったものの、終わった。

今一度、俺の過去を思い出すようなことだった…

 

『置いて行かないで!!』

『…仕事なんだ…これでも読んでいていくれ…』

 

そういって渡されたのは、本。

俺は、本を読めばいつか親が自分に興味を持ってもらえると思っていたのかもしれない。

今思えば、滑稽で、そして、愚かに思える。

そんなことで何かが手元に残る訳でもない。

 

「似ている…か」

 

だからこそ、あいつのシャドウはいつもより見てはいられなかった。

まるで自分のように見えた。

ただ、俺は直斗のように親に憧れたことはなかった。

 

だから、俺は…絶望した。

…俺の信じることを信じることにした。

 

 

『俺の生きる意味…』

 

『ああ、そうか』

 

『一つもない』

 

 

昔の俺はそうだった。生きる意味。

そんなものは持ち合わせていなかった。

夢も希望もない。なりたいものも、やりたいことも、

俺の憧れも…なにもない。

 

そして、おれはあの世界で決めた。

自ら終わりのない絶望という地獄に跳躍してみせた。

俺はまだ飛んでいる最中。

着地もないだろうな。

 

落ちるだけ。

 

 




ネタ切れでクソつまんねーことしか書けてなくて申し訳ないっす。
しかも、大分早々と終わらしてしまった、直斗編…
申し訳ないです…

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