Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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近付く心『神無月』
第40話 Take A Step Forward 10月6日(木)・7日


月日が経つのはあまりにも早い、少し前までは夏だったと思えば、すでに秋になろうとしていた。

 

しかし、それのおかげで直斗の回復がひどく早く感じた。

 

放課後…

ジュネスに皆があつまり、直斗の話を聞くことにした。

 

「初めに、チャイムが鳴ったんです。

ところが、玄関に出ても誰も居なくて…不審に思っていたら、急に後ろから

腕が回って、何かで口を塞がれたんです。

それからすぐに、袋のようなものを被せられて、恐らく担いで運ばれました。」

 

「よくそんな覚えてるね。」とりせは感心したように言った。

 

「意識を奪うために薬物を使ったようですが、完全には意識を失わずに済んだので。

想像していた手口と近かったし、心の準備が出来ていました。

それに、少しでも情報を得ておきたくて必死でしたから。」

 

「さっすが、メイタンテーね。」

「褒められた事かよ。冷静すぎんだっつの…」

完二は顔には出ていないものの、心配そうにそうに言った。

 

「手際や体格から言って、犯人は男でしょう。

会話も合図らしい声も一切無かったので、単独犯だと思います。

ただ、ここから先がどうもよく分からない…一度体に衝撃があって、恐らく僕はその時に、テレビの中へ落とされたんだと思いますが…それまでの時間が、短過ぎた気がするんです。

捕らわれてから、ものの数分という感じでした。」

 

「捕まった直後にテレビにって事…あ、道端にテレビがあったとか!?」

千枝は直斗に尋ねる。

 

「その辺りからの記憶は、流石にあやふやなんですが…」

直斗は残念そうに言った。

 

 

「そっか…しかし、驚いたな…まさか犯人、マジで"玄関からピンポーン"かよ…」

花村は驚いた顔で言った。

 

「"よく覚えてない"という、皆さんの証言の理由が、ようやく分かりました。

あれだけの異常体験と、心身の消耗…混乱をきたして当然です。

ただ、状況を見ると、僕と皆さんの失踪体験は、真似る必要の無い所までよく似ている…

恐らく、犯人は同一人物と見て間違いないでしょう。」

 

「それじゃあ、モロキンを殺したっていう、あの久保って子は…」

「これでハッキリしました。

本筋が証明できないうちは厳密には確定しませんが…

久保はやはり、諸岡さんを殺したに過ぎません。

真犯人の手口を真似ただけの"模倣犯"です。」

と直斗は言った。

 

「うちの名探偵はどう思うの?」と千枝はシンに言った。

 

シンはステーキを食べながら言った。

 

「…さぁ?」

 

ガタッと皆がこけた。

 

「なんだよ…」と花村が言った。

「…」シンは再びステーキを食べ始める。

 

その後、直斗が仲間になることが決まった。

そして、皆が解散する。

シンと直斗だけが残って…

 

 

「…用か」と未だにステーキを食べるシンに直斗は言う。

「こうして助かってみると、あなたのしていた行動の意味がすべて理解できます。

違う意味での監視…。」

 

シンはふぅと息を吐くと話し始めた。

「…あいつらには言わなかったが、恐らく、犯人はテレビを持ち運んでいる。

理由はお前が言った、『テレビに入れられる時間の短さ』。

仮にテレビを先に路上に置いておくとすると、不自然だ。かと言って偶然性を信じて、不法投棄のテレビに入れるにしては、どうも犯行が確実すぎる。」

 

そういうと、シンはステーキを食べ終わる。

 

「そして、それが怪しまれない人物。恐らく…宅配便。そして、この近辺の配達者は…」

 

 

 

「生田目太郎だろうな。」

 

 

 

 

「!?そうか!」と直斗は理解したようだ。

「…しかし、それだとおかしな点がある。」

「『山野真由美』、『小西早紀』の時の、生田目のアリバイはあります。」

 

「…というより、アリバイは成立しえない。何故なら、死亡時刻には生田目は違うところにいる…

だが、生田目が態々、渦中の山野真由美に会うなどとなっていたら、それは絶対に記事になっていただろう。

そして、2軒目の殺人を口止めともとれるが、死体発見とテレビに入れるラグを考えると、どうも口止めというのは無いだろうと推察される。」

シンは言った。

「その二件がどうしても引っ掛かる。だから、あいつらには言わなかった。それに、先走って、変な事をされても困る。」

「…そうですね」と直斗は納得したように言った。

 

「"バカ軍団"だからな」

そういうとシンはステーキの皿を片付け、直斗と歩き始めた。

 

 

ジュネスを出て商店街の方へと歩き始めた。

 

 

「そ、それで、いつから僕が女だと気付いていましたか?」

直斗は少し恥ずかしそうに言った。

 

「…骨格、それに付随する、骨の太さ、身長、顔、声。何より」

シンは直斗の靴を指差した。

 

「男は厚底を履くことは少ない。それは恐らく、身長が小さいことがコンプレックス。

つまり、そこまで身長を気にするということは、憧れるのは身長の高い人間だと思われる。

身だしなみがきっちりしており、ポケットにものを入れない性分。マジメなようだな。

ワイシャツに皺は少なく、几帳面な性格。」

 

 

「…すごいですね。そんなことまでわかるんですか」

直斗はキラキラした目でシンを見た。

 

「…役に立ったことはないがな」とシンはポケットに手を入れた。

「どうしてですか?」

「…勝手に頭がそういうことを始めるようになってしまった。」

 

そういうと、シンは向こうから歩いてきた男性を見て言った。

 

「アルコール中毒。最近、離婚した」と呟く。

 

「…なぜそうだと分かるんですか?」

「携帯だ。携帯の充電コードの差し込み口がひどく傷ついている。

小さなキズがたくさんあるのは手を震えるからだ。

それに、結構傷が多い。それほど、落とすことがあるということか、ポケットの中に小銭と一緒に入れたか…」

 

そういっていると、二人の横をその男が通り過ぎた。

ふと、男が指輪を落とした。男は慌てた様子で、それを拾おうとしたが、シンがそれを拾う。

「ありがとうよ…」と男は言うと、歩き始めた。

 

シンそれをちらりと見ると再び話し始めた。

 

 

「…最近、離婚した。携帯が新しい機種。

ストラップの付け跡がひどく濃いのは大量にストラップを付けていたから。

あんな男が大量のストラップはつけないだろう。

つまり、携帯は女にもらったもの…あるいは、譲り受けたもの…

しかし、アルコール依存症がひどく、離婚したのか、男の薬指には濃く指輪の跡があった。

指輪の錆からそれほど、結婚歴は短い。おそらく…3年から4年。

しかし、そんな指輪を外してはいるが、持っている。つまり、未練がある。」

 

「…すごいですね…」

シンは"どうでもいい"と言った感じで再び歩き始めた。

直斗はそんなシンを見て、勉強になると思った。

 

 

 

 

 

 

次の日の昼休み…

 

 

「失礼します。」

二年の教室に直斗が入ってきた。

 

「今日の放課後、時間ありますか?」

と皆に尋ねる。

「何か、事件?」

「いえ…実は、クマくんを医者に診せてみたいんです。」

と直斗は言った。

 

「医者?」

「獣医さん?」

 

「い、一応、人間用のです。

空いてるなら、今日の放課後、精密検査を受けられるように手配しましたから。

クマくんが何者なのか、まずは普通に医者に診てもらうのもいいのかなと。」

 

「それに、僕たち自身の事も、調べてみた方がいいかと思ったんです。

"向こうの世界"の霧や、あの"力"が、体に何か影響を蓄積させていないかどうか。

僕よりも皆さんの方が長いでしょうし、一度診てもらった方がいいかと。」

 

「えー、影響?こ、怖い事サラっと言うなよ…

そっか…その発想無かったわ…」

と花村が言った。

 

「巽くんや久慈川さんの分も頼んであります。」

 

「うわ、手際いー…あんた、ホントに高校生?」

と千枝は直斗にいった。

「見た目はチッサイけどな。」

 

「…じゃ、また放課後に。」

と少し困惑しながら教室から出て行った。

 

 

 

 

放課後、直斗に紹介された病院で全員、精密検査を受けた。

鳴上達を含め、シンもクマも全員が精密検査を受けた。

 

「フツーの健康診断だったな…」

と花村は少し驚いた表情で言った。

「すっげー機械に乗って回されたりすんの、ちっと期待したんスけどね。」

「受けた意味、あったのかな?お医者さんも、何か不思議そうな顔してたし…」

とりせは疑問の表情で言った。

 

「あ、戻ってきた。」

 

直斗と共に、クマが戻ってきた。

 

「お待たせしました。」

「お待たせしまクマ。」

 

「で、クマの事、何か分かったか?」

花村が直斗に尋ねる。

 

「分かりましたよ…分からないって事が。

レントゲンを撮ってもらったんですが、

映りませんでした。

何度撮っても、ボヤけてしまって。

見た目の様子や触診では、異常は無いそうです。

機械がおかしいかも知れないので、まだ心配なら別の病院に行けと言われました。

逆に迷惑をかけた気がしますね…

 

それと間薙さんですが…」

 

直斗は少し困惑した顔で言った。

 

 

「…クマ君とは違い、まるで心霊写真の様なレントゲンが取れました。」

 

「は?」

鳴上も思わず間抜けな声を出してしまった

 

直斗は少し大きい袋からレントゲンの写真を取り出した。

 

 

「きゃっ!」とりせが鳴上の腕に抱き着いた。

「な、なんだこりゃ…」

 

シンのレントゲンには無数の顔が映り込み、レントゲンというよりはただの心霊写真になっている。

 

「…正直、僕も困惑しました」

直斗はすぐにレントゲンを袋に仕舞った。

 

「それで…間薙君は?」と天城が直斗に訪ねる。

「医者と話してます」

 

 

 

 

 

「医者の私がいうのもなんだかね、お祓いに行った方がいい」

「…ええ、そうします」

シンはめんどくさそうな顔で答えとっとと診察室から出ることにした。

そんなものはシンにとっては無意味だし、"悪霊が憑いています"なんて話は今更だし、滑稽な気さえした。

こっちはその実体化したものを、殴り倒しているのだ。

当然、霊となって憑くなんて話はおかしな話でもないし、シンには驚くべきことでもなかった。

 

診察室から出ると、廊下の奥にクマが直斗に追いかけ回されていた。

 

シンはため息を吐き、窓からの景色をぼんやりと見た。

昔とは違った空だ。

 

 

 

 

 

あの頃は永遠に、こんな時間が続くと思ってたいた。

終わる恐怖も何かが起きる期待も、どこか自分とは関係のない誰かの退屈な物語を見ているような気分だった。

景色と時間ばかりが移ろいで、繰り返しては懲りずに唸っていた。

 

あの頃は自己なんてものはなかったように思える。

 

彼らのように見詰める勇気もなかった。

彼らのように変えることも望まなかった。

彼らのように誰かと分かち合うこともなかった。

 

あるのは平凡で退屈な物語。

ただ、ちょっとこの世の全てが虚しく見えただけ。

ありふれた人生、ありふれたビル群、ありふれた事件と時間経過だけ。

それに戻ることは、俺にとってはあり得ないことだった。

 

 

 

『コレハカワリマスカ?』

 

 

「…変わりません」

 

 

 

帰り道、シンがそう呟いた。

 

「ん?なんだ?シン」

隣を歩いていた、花村が尋ねた。

「少し、昔を思い出していた。」

「なんか、お前が言うとすげー昔の事みたいだな…」

「凄い昔の話だ。」

「ん?そうなのか?」

「ああ」

「…お前っていつも、そんな顔してんな。

いつも、考えてるような顔で、笑わねーし、泣かないし。

そのなんつーか…なんか、悩みとかないわけ?」

花村は少し恥ずかしそうに尋ねる。

 

「…無いな。特に」

シンは淡々と答えた。

「本当にないとしたらうらやましいな」

「お前のような悩みはない」

「…そうか、そうかいいな…って、俺のようなってなんだよ!!」

花村が乗りツッコミでシンに突っ込んだ。

 

 

 

 

 

「荒れてますな…主は」

『ボルテクス界』に来たシンは残党が居るとされる、ギンザ大地下道に来ており他のコトワリの残党狩りを始めた。

昔がマネカタが居た場所であるが、ほぼすべてのマネカタはアサクサへと集められた。

無論、それに異を唱えるものが居たことは確かだ。

ヨスガの連中が大量にカオスに流入したこともあり、選民思想のあるやつらは反発をした。

 

しかし、それでシンは王として何かをしたこともなく、誰一人文句を言わなくなった。

 

結局のところの、異を唱えるものは自分の弱さに気づいてしまったのだ。

シンの従えるメンツがあまりにも強大すぎた。

従える関係にはないものの、ルシファー。

仲間にはシヴァ、モトなど強大な悪魔がシンの近くに居た。

 

何より、ゴステンノウの補佐であったトールがシンに仕えていたこともあり、目立った争いは無かった。

 

一方、マネカタ達はフトミミの元、自分たちの聖地が安全であること。

それが彼らにとっては安らぎであった。

 

故に、ギンザ大地下道は今は残党が住みつくところとなり、荒れに荒れている。

 

シンは向こうではあまり使わない、『螺旋の蛇』『ソルニゲル』などの技を乱射する。

そこらじゅうの壁という壁が壊れていく。

 

 

「…やっぱり、あの強さ…痺れるぜ…」

「ああ、あれだけのマガツヒ…食ったら「その前に貴様が死ぬだけだ」…ぎゃぁああああああああ!!」

クーフーリンはオニの手を切り落とした。

 

「主に手を出すなどということは考えないことです。」

「ひぃいい…」

オニは苦しそうに悶える苦しみ、マガツヒを放出させ死んだ。

それに周りの悪魔が群れ、吸う。

 

 

「…終わったな」

大地下道の中央を流れる、水の中でシンはクーフーリンに言った。

「ええ。非常簡単でしたね」

クーフーリンは自分の槍に刺さったパワーの死体を放り投げた。

 

「…死体はいつもどおりでいい。そこら辺の連中が吸い来るだろうな。」

「了解しました」

シンはそういうと、ターミナルのある部屋へと入って行った。

 

 

 

 

 




ちょっと、時間進みすぎなんで、とりあえず、進めていきます。
ですが、挿入という形で話が思いついたら○.5話といった感じで挿入すると思います。

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