Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第42話 I Am "Ashura" Of One. 10月16日(日) 天気:晴

君達が彼を引き揚げられるか?

 

…それはNoだ。

 

君達は彼の隣には立てない。

君達ではあまりにも才能と能力不足だ。

傷を舐め合うだけの、生温い人間関係なら、止めることだ。

そんな思いが彼を傷を深く抉っているのかもしれないのだからな。

 

キミたちも理解している通り、"残酷だ。"君達の現実はいつも。

 

いつか、分かるときがくると思うか?

彼の苦しみが、痛みが、後悔が…

幾星霜もの間、蓄積された絶望がいつか分かるときがくると思うか?

 

その答えもNoだ。

 

人は慣れる生き物だ。適応する生き物だ。

だからこそ、人はそれを素晴らしい事だと、私は思うのだ。

だから、彼はああして生きている。

多くの苦労があり、絶望しているが、慣れでなんとか生きている。

 

だが、見たまえ。

慣れてしまったが故に肝心な場所まで壊れてしまった。

 

悪魔を倒しすぎた彼は慣れていったのさ。

壊すこと、殺すことにな。

だがね?慣れれば慣れるほど、心の奥底の大事な部分が壊れてしまうんだ。

だが、慣れなければ、きっと、彼は壊れていただろう。精神的にね。

 

だから、彼は恐ろしく冷酷に相手を殺す。

真っ黒に染まりつつある闇の中で、無常なまでにな。

 

それはもう、心が無いのか、或いは粉々に砕けてしまったのかもしれない。

 

だから、私は彼を戻そうとここに連れてきた。

何時までも半身人間で居て欲しいためにな。

どちらの良いところを組み合わせ、それを維持したとき、私の目指した悪魔の完成だ。

あのくそったれにも勝つ為にそれが必要なのだ。

 

 

だが、君達がそれを実行することは不可能だ。

 

『深淵を深く覗き込むとき、深淵もまた貴様をじっと見つめているのだ』

 

 

 

君達は優しすぎる。

だからこそ、彼の側に立つことはお勧めできない。

優しすぎるが故に、君達は覗きたがってしまう。

…それが、君たちとそして、彼を苦しめることになってしまう。

 

彼の"仲魔"…或いは"親"として

そして、彼が君達の事を思っているが故に言わせて貰う。

あまり深く立ち入らないことだ。

君たちが想像しているより遥かに残酷なものが待っている。

 

…だが、本当に知りたいのなら、また来ると良い。

私の名前はルイ。ルイサイファー。

おまえらがおちたい(・・・・)なら来ると良い。

喜んで私はその手伝いをしよう。

 

今一度、君達のいう仲間とやらに相談するが良い。

それが君達の選択の正しさを祈る。

 

 

 

 

鳴上達は重いアパートのドアを開けた。

演奏イベントは成功に終わり、試験を終えた鳴上達。

 

シンの真実。それを知ろうとアパートへと来ていた。

 

だが、今日は金髪の男性が出てきた。

その男性は濃いめの金髪、オールバックで後ろは首元まで髪を延ばしている。

黒いスーツを着ており、不気味な笑みを浮かべていた。

 

「…何かようかね」

「間薙シンはいますか?」と鳴上が尋ねる。

「…入りたまえ」というとドアを開けた。

 

そして、あろうことかルイに尋ねてしまった。

 

「間薙シンという人物を知りたい」と。

それが一番初めに繋がるのだ。

 

 

 

一年組以外の者が歩いていた。

「…優しすぎる…か。」と花村は呟くように言った。

「そんなこと思ったこともなかったなあ。優しすぎるから傷つけるなんて。」

「でもね、あの人言ってたよね?知りたいなら来いって」と天城は言う。

「…俺達はきっと、大丈夫だ。」

「そうだな。相棒!」と花村は鳴上の言葉に応えた。

 

神社で皆で集合する。

「うぃーす。先輩。」「おはようございます」

「やっほー!センパイ」と完二とりせ、直斗が合流した。

 

そして、再びシンのアパートへと行った。

 

再び、ルイのいるリビングへと皆が来た。

「クマ…なんで、着ぐるみ着てんだよ…」

「危ないからクマ」

「危ない?」とクマの言葉に首を傾げる天城。

 

ルイは皆の顔を見渡した。

 

 

「成る程…覚悟が決まったようだな。」とルイは不敵な笑みを浮かべる。

 

「覚悟なんて、始めから決まっていた。」

「さっきはちょっと…あれだよ」と花村はルイに向かっていった。

 

「ふっ、まぁいい。来たまえ、現実を教えてやろう。」

「うぉ!」

そういうと、突然、鉄の円柱状のものが、現れ、そこには、読めない文字がズラリと書かれていた。

 

「これは『ターミナル』。シンのいた世界へと繋ぐことのできるものだ。」

「いた世界?」と花村は首を傾げた。

「…まさか、あいつが違う世界から来たことさえ知らないのか?」

 

 

鳴上達に衝撃が走った。

 

 

「だ、だからあいつが悪魔になった事件ってのも、俺達は知らなくて当然なのか。」

「然り。そして、君達を始まりの地へと誘おう。」

ルイはそういうと、ターミナルを手で軽く回した。

すると、徐々に加速していき、強烈なひかりを放った。

 

 

 

思わず、皆が目を瞑った。

 

 

 

 

「…な、なんだここ」

 

そこは無機質な広い部屋であった。

 

「ここは始まりの地。『新宿衛生病院』」

「…なんか、テレビの中みたいに空気が重いね」とりせが言う。

「…それに…なんか嫌な感じ」

天城がメガネをかけて言った。

 

「ここで、彼が生まれた。悪魔としての彼がな」

そういうと、ルイはターミナルを回し始めた。

 

「キミたちが満足するまでここに居ると良い。君たちの世界とこの世界の時間の流れは違うのだからな。」

「ちょ…」と花村が言おうとしたがすでにルイが消えてしまっていた。

 

「とりあえず、出てみる?」

「…ちょっと怖いなぁ」と千枝が言う。

 

「…僕も来たことがないので…なんとも言えませんね」

「…おめ、落ち着きすぎだろ」

 

鳴上達は自動ドアを抜けた。

 

 

そこは地下施設の様な薄暗い空間で所々に血が飛び散っていた。

蛍光灯は明滅し、薄気味悪い雰囲気が出ていた。

「…ここが…東京なのか?」

「東京ってこんなところなのかな?」

「恐らく…違います。」と直斗は呆れた様子で言った。

 

「でも、ここがシンにとっての始まりの場所ってことだよな」

「…進んでみよう」と鳴上の言葉に皆が武器を持って進み始めた。

 

少し歩くとすぐに、エレベータがあった。

「…動いているようですね」

「最悪、ここがどこか携帯で…って圏外…?」

「とりあえず、1Fに行こう。そんで外に出ようぜ…ここはなんか薄気味わりい」

花村はため息を吐くとエレベータのボタンを押し、乗り込んだ。

皆もそれに続くように乗り込んだ。

 

1Fに付くと、そこはドラマなどで見る、病院の入口であった。

「おおお!流石、都会の病院すね」

「でも、椅子とか壁に立てかけてあるし…誰もいないね…」

「なんか…怖い」

 

普段、人に賑わっている場所にふと自分たちだけになったときの恐怖。

それが彼らを襲っていた。

 

 

 

『彼はずっと1つの答えを問い続けている』

 

 

 

「?」

鳴上にはそう誰かがささやいたように聞こえた。

鳴上はキョロキョロと辺りを見渡す。

「な、なん、なんか聞こえたね」と千枝が恐る恐る口にした。

「…『彼はずっと一つの答えを問い続けている』と聞こえました」

直斗は冷静に答えた。

 

「間薙君のことかな?」

天城が言う。

鳴上はふと天井を見上げると、外からの光がどうもおかしい。

 

「…外に出てみよう。」

そういうと鳴上は走って外へと向かった。

 

 

外に出ると、そこは砂漠の世界であった。

「な、なんだよ…これ。」

「な、何にもないじゃん!!」

「…」

 

皆が絶望に落とされた瞬間でもあった。

するとクマが口を開いた。

 

「…シン君ここでずっと一人で暮らしてるクマ」

「クマ!知ってたのか!?」と花村が言った。

「…男のヤクソクだから、言わなかったクマ」

クマは胸を張った。

 

「クマさんにしてはちゃんと守れたんだ」

天城は驚いた顔で言った。

「ゆきちゃん、しどい!!」

 

 

「…人間?どうやって、現れた。」

重い声が鳴上たちに掛けられた。

咄嗟に全員が構えた。

 

「なるほど…恐らく混沌王の知人か…ならば、殺すだけだ」

そういうと、馬に乗った悪魔は槍を構えた。

 

「ペルクマァ!!ブフーラクマ!!」

「ぺ、ペルソナ出せんのかよ!!なら、来いジライヤ」

 

クマのブフーラが見事に当たり、そこに花村のソニックパンチが見事に当たる。

すると、相手は倒れ、赤いフワフワと浮くものを出して死んだ。

 

「なるほど…実に面白い力だ」

そういうと、再びルイが現れた。

 

「ど、どうして、悪魔が攻撃してくるんだ!?」

完二は少し驚いた様子でルイに言った。

「悪魔が全て、シンの味方だと思ったら大間違いだ。

考え方の相違でこの世界は簡単に殺し合いを始めるような世界だ。」

直斗は渋い顔をした。

 

「…まるで、人間と同じ。そう言いたいのか?白鐘直斗。君の思っている通り、そうだ。

しかし、現状では我々のカオスの勢力がこの世界を支配しているし、この先もそうだろう。」

「それは。すこし傲慢だ」

鳴上がそういうと、ルイは一瞬止まり、そして、笑い始めた。

「フハハハハ…まさか、私の為にある言葉をそのまま謂うとはな…それとも皮肉かな?」

そういうと、再びきえた。

 

 

「何だってんだ?」と完二は苛立ちながらも、空を見上げた。

「…それに…あの太陽…黒いよね」とりせも空を見上げてる。

 

「…あいつはこんなところで何年生きてきたんだろう」

「間薙さんは言っていましたね『友人との永別であってもだ』と」

「永別…永遠に会えないって意味だよね?」と千枝は少し俯きながらいった。

 

花村もぼーっと空を見上げた。

空には、同じような地面が広がっており、中心に黒い太陽があった。

花村は呟く。

 

「…たぶんだけどさ、あいつはあの中に居たんだよな。

だとしたら、こんなことになっちまった世界を見て、どう思ったんだろうな…誰もいないんだよな」

「…うん」と千枝もうなずき空を見上げた。

 

 

其々が其々の思ったことぐっとこらえて、空を見上げ続けていた。

自分が一人になってしまった時…そして、こんな世界を生きていけるのか。

そう思うだけで、友人の傷の深さを知った気がした。

 

だからこそ、彼らはぐっとこらえた。

 

言葉にしてしまうのはあまりにも簡単だ。

しかし、してしまうとあまりにも軽くなってしまうような気がしてしまうのだ。

 

 

「空を見上げている最中にごめんよ」

「うお!」と花村の後ろに雲に乗った如意棒を持った猿が居た。

「うお!!」と相手もびっくりした様子で言った。

 

「て、てき!?」

「敵じゃねーよ?たぶんな。」

そういうと、得意そうに如意棒を回した。

「俺はセイテンタイセイ。あのお方に"シブヤ"の警備を任されてるもんだ」

「あのお方?」と天城が首を傾げた。

「ひとs…ってこの呼び方は嫌いだったんだけか…混沌王様だよ!」

 

「混沌王…って…間薙センパイのことだよね?」

「あー…そんな名前だったな」とポリポリと頭を掻いた。

「そんでよ、お前ら、なんでまだ人間がまだいるんだ?

ちょっと前に、王の城の方に来た人間が居たらしいけど…それ以降、バアルさんが人間が来たら手出すなって言われてるしな…」

 

「ルイって人に連れてきてもらった」

鳴上がそう答えると、納得したような顔でうなずきながら「あのひとのやりそうなことだ」と言った。

 

「うっし。とりあえず、お前ら、こんなところじゃあぶねぇ。

とりあえず、シブヤまで一緒に来いや」

 

「それはありがたいかも…」とりせは言った。

「なんでだ?」完二は不思議そうな顔で言った。

「…バカでしょあんた。」

「あん!?」

 

「そこらじゅうに悪魔がいるってことだろ?」とセイテンタイセイは普通に言った。

「そんなもん、さっきみたいに蹴散らしていけばいいじゃねーか」

「そういうやつは嫌いじゃねーが…おすすめはしないぜ?運が悪けりゃ、上位悪魔まで出てくるかもしれねぇしな」

 

「じゃあ、とりあえず、その安全なシブヤってところまでいこ?」

「ってかシブヤってあの渋谷だよな!?ちょっと楽しみだよな!」

花村はテンション高そうに言った。

「どのシブヤかしらねぇがシブヤっつったら、あそこくらいしかねぇからな…

うっし、お前ら行くぞ」

 

そういうと、セイテンタイセイはふわふわと移動し始めた。

鳴上達は先の見えない砂漠を歩き始めた。

 

 

 

 

 

「…つれてきたのか」

「ん?何か問題があったか?」とルイは当然のように答えた。

「…別にかまわん」

シンはそういうと、オベリスクのターミナルへと移動した。

 

 

 

見渡す限砂漠が広がっており、所々に大きな山岳があり、ビルなどが埋まっているような場所もある。

 

「そのセイテンタイセイさんからみて、間薙君はどういう人なのかな?」

天城は尋ねる。

「さんづけはやめてくれぃ。背中がかゆくなりやがる。

そうだな…兎に角、バカみたいに強いってことだな。」

「それは…知ってるかも」

千枝は乾いた笑い声を上げた。

「この世界で強いってのはある意味一つのステータスなんだよな。

…実はこの世界ってのはちゃんとした形になる予定だったんだってよ」

「ちゃんとした形?」

直斗が首を傾げた。

 

「ああ、混沌王を除いたほかに、元々は人間が4人生き残ってたって話だ。

一人は静寂な世界、一人は弱肉強食の世界、一人は…なんだけか…ああ!干渉されない世界。もう一人は…創世までたどり着かなかったって話だけど、なんでも元の世界に戻すっていうものだったらしいぜ」

「シンは何を選んだんだ?」

鳴上が尋ねた。

「そのどれでもない、カオスって選択肢だったのさ。」

「カオス?」

 

 

「そ。そんな運命を作り出した、神にケンカを売ったのさ」

 

 

「…なんか、壮大すぎて実感なさすぎだな」と花村が言った。

「でなきゃ、この世界だって残っちゃいないさ。この世界は、なんでも"停滞"…未完成の世界らしいぜ?俺は詳しくしらねぇけど」

そういうと如意棒で頭を掻いた。

 

「その四人はどうなったんだ?」

 

「全員、死んだよ。うち三人は王が手を下して、最後の一人はその静寂の世界を作ろうとしたやつに殺されたって話だがな。

しかし…残酷なやつだよな、神ってやつは」

セイテンタイセイはため息を吐いた。

 

「その四人のうち、三人は王の友人だったんだぜ。

しかも、ちょうどお前らくらいの年齢でな。

コトワリ…っていうんだけどよ、世界のあり方を端的に示す理念のようなものなんだけど。

それを違えたから、壮絶な殺し合いをしたんだ。」

 

「…」と皆黙ってしまった。

 

「その頃から俺は仲魔として、王に仕えてさ。

あそこら辺はつらかっただろうな。王も。悪魔になったけどよ、俺たちだって、感情位ある。だから、そういうコトワリに参加したり、話し合いでは仲魔になったりする。

だから、あのころの王は本当につらそうな顔してやがったな」

 

セイテンタイセイはそういうと、皆を見た。

そこでやべっといった顔で

「あー!!!やべぇ!!オレ空気読めねぇのかな?」

「…いや。そんなことねぇよ。間薙センパイは自分の考え通したって立派な男じゃねぇか」

「でも…それって友達を殺してまでやらなきゃいけないことなのかな…」

 

「恐らく、そうなんだろうな。でなきゃ、カオスなんて選ばないだろうしな。本人は好奇心とか言ってるけど、恐らくもっと複雑な理由があると思うぜ」

セイテンタイセイはふわふわと浮きながら言った。

 

 

と、遠くに大き目の建物が見えてきた。

 

 

「あれは?」と鳴上が尋ねた。

「あれは『ヨヨギ公園』。妖精たちの住処になってるんだよ。

まあ…手を出すようなバカはいねぇな。滅茶苦茶つえぇ、親分みたいなやつがいるからな」

「なんか、ちょっとした東京観光だな…これじゃ」

花村は頭をかいた。

「でも、いいじゃない?間薙君のルーツになるかもしれないし、面白そうだし」

天城は少し嬉しそうに答えた。

「なんで、天城センパイは楽しそうなんすか」

「カッコいいじゃん。伝説みたいで」

「クマ伝説は?」

「…つまらなそう」

「ユキちゃんひどい!!」

 

そういうと皆が笑った。

 

 

 




やっと、この話を投稿できた。
本当なら、夏休み中になるはずの話だったんですが
「どうせなら全員そろってからの方がいいかも」と思い、急きょ直斗加入後になりました。

ボルテクス界編はそんなに長くは続かないと思いますけど、内容はすごい重要な話になると思います。
シンとペルソナ4組の距離がグイッと近づく話でもあると思うので…

あと最近、なんかフリガナがおかしいと思ったら、とある方法で正式に投稿しているのでそれのせいであったことに気が付いた。
直す…のは面倒だな…とか思いながらも見つけたら、直していきたいと思います。


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