Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第43話 Abandoned World 10月16日(日) 天気:晴

「…ここがシブヤか」

「なんか、人のいねぇ町ってのはこわいっすね」

「そうかも」

 

ヨヨギ公園を通過し、シブヤへと着いた鳴上達は落ち着ける場所へと案内された。

そこは、小部屋の様な場所でソファがあった。

 

「うっし、とりあえず。何が聞きてぇんだ?」

「この世界についてと間薙先輩に関して何か教えてください」

直斗がそういうと、セイテンタイセイはうなずいた。

 

「おう…そうだな。あいつはもう何千年と王としてこの世界に君臨してるぜ。

混沌王…それを取り巻く、悪魔たちは上位悪魔ばかり、上位じゃない悪魔も見かけによらず強い連中ばかりだ。」

「何千年って…そんな生きてんのかよ」

花村は驚いた表情で言った。

 

 

「何かがない限り、悪魔は死ぬことはない」

「こんちわ。バアルさん」とセイテンタイセイは挨拶をした。

 

「この世界について教えてやろう。

この世界はお前らのいわば平行世界だ。ほぼ隣に存在する世界だ。

違う点は一つ。『東京受胎』が起きたか起きなかったか。

それだけの違いだ。」

「何度も出てくるけど、『東京受胎』ってなんですか?」

天城がバアルに尋ねる。

 

「世界の再構成に必要な破壊。すべてを無に帰し、そして再構成する。

その再構成に必要だったのが『コトワリ』。

コトワリを嘗て存在していた、カグツチに示し、世界を再構成する。

それが、東京受胎の真相だ」

「そ、そんな身勝手なこと誰がやったの?」と千枝は少し怒りながら言った。

 

 

「氷川という男だ。愚かな男だ。」

 

 

「氷川…ガイア教の事件…つまり、それがこの世界の要因ですか?」

「そうだ。その一点しか違わない。お前たちも存在したはずだ。

しかし、アイツは違う。あいつは円環から外された呪われし者。どの世界に行こうともあいつは存在しえない。」

 

「うーん。なんか、わかりずらいね」

「千枝。つまりね、高級なお肉がとある場所でしか食べられないって事だよ?」

「ああ!なるほど」

「お前…本当に脳のなか肉しかねえんじゃねーか?」

花村は呆れた様子で言った。

 

そんなことを言っていると、周りの景色がぼんやりとしてきた。

 

「ん?なんだ!?霧か?」

「ウソ!ここテレビの中じゃないでしょ?」

完二とりせが慌てた様子でソファから立ち上がった。

 

「間薙シンの追憶と興じようではないか」

そういうと、バアルは指を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

「…ん…ここは?」

鳴上達はマンションのような一室に居た。

 

その部屋は静寂に包まれていた。

「どこだろう。ここ」

そう天城が辺りを見渡すと少年が本を読んでいた。

それは今と変わらない無表情のシンらしき子供であった。

その格好は見慣れたパーカー姿だ。

 

「…あれが、シンか」

花村はそうバアルに尋ねた。

 

「そう。彼は幼少期、ずっとこうしていた。

彼は孤独だった、少し人と変わっているからと"変人"だと、同年代から罵られていた。

しかし、それは神の気まぐれで与えられた能力であり、そして、"業"でもある。」

そういうと、バアルはテーブルを指差した。

そこには、綺麗な字で『今日も帰りが遅くなります』と書かれたメモだけが置かれていた。

 

「親はそんな彼の能力に気づくことさえなかった。

何故なら、彼の親は仕事ばかりだったからだ。

彼の居場所はこの少し薄暗い部屋のなかしかなかった。」

バアルは淡々と話す。

「…だから、"僕と似ている"と言っていたのでしょうか。」

直斗は少しばつが悪そうに言った。

「…居場所…か。時々、思ったりするかもな」

「何々?ヨースケもそういうのがあるクマか?」

「お前は俺を何だと思ってるわけ?」

「ガッカリ王子?」

「なんだよ!ガッカリって!!」

そんなことを話していると、バアルの咳払いが聞こえた。

 

「…そんな、彼もとある人物に救われていた」

 

そこへチャイムの音が鳴った、すると子供のシンは少し嬉しそうに立ち上がり、ドアを開けた。

そこには制服を着た、黒い髪の毛をした女子高生だった。

清楚な出で立ちで、シンを見ると微笑んだ。

 

「子供なんだから、外で遊ばないの?」

「…遊ぶ相手がいない」

子供のシンは少し悲しそうに言った。

 

「…それなら、外の砂場でいつも一人で遊んでいる同い年くらいの子がいるから、その子に声をかけてみたら?」

「…バカにされる」

「それは、やってみなきゃ、分からないわ」

そういうと、女子高生は微笑みその手に持っていた、スーパーの袋を降ろした。

 

「…うん。分かった」

子供のシンは靴を履き、真新しいサッカーボールを持ち、階段ですぐ近くにある砂場へと走り出した。

 

バアルが指を鳴らしすと、時間が止まった。

「彼女は高尾祐子。この時は、高校生であり、その後教師となり、シンを受け持つ。彼女は巫女であり、彼女がいなければ、東京受胎はあり得なかった。」

「シンが言っていた、お見舞いの担任の先生か…」

鳴上は王さまゲームでの話を思い出した。

 

そして、すっと場面転換した。

 

「なにやってんの?」と子供の頃のシンが砂の城を作っている少年に声を掛けた。

「…別に」

そういうと、自分で作った砂の城を蹴飛ばし崩した。

 

「…一人で遊んでるなら、遊ぼう」

そういうと、サッカーボールを砂場の少年に渡した。

「うん」

そう答えた少年の顔は嬉しそうだった。

 

「僕は間薙シン。すぐそこの団地に住んでる。」

「僕は新田。新田勇」 

 

 

再び、時間が止まる。

 

「彼は新田勇。間薙シンの友人と呼べる唯一無二の友。

そして、誰にも干渉されない世界を望み、間薙シン、自ら彼の命を終わらせた」

「…さっきのお猿さんが言ってたこと?」

千枝が思い出すように言う。

 

「そうだ。彼は世界崩壊後、高尾祐子を探した。

しかし、その際に悪魔に捕まり、マガツヒを吸われ、その精神は耐えられずに、干渉されないというコトワリを開くことにした。

そして、アマラの奥に居た、ノアを呼び出した。

結果はシンに破れ、その命を終えた。」

 

そして、場所が変わる。

そこは図書館のような場所であった。

 

子供のシンは勇、少し嬉しそうに本を読んでいた。

その隣にはあの高尾という高校生が勉強をしていた。

そこへシンと同じくらいの少女が子供が来た。

 

「…それ」

「…これ?」と積んである本をシンが見た。

「貸して?」

「…うん」

 

そういうと、本を引き抜いて渡した。

その少女はすぐ近くに座り、言った。

 

「本が好きなの?」

「そうなんだ」とシンは答えた。

「名前はなんていうの?」

勇が少女に尋ねた。

 

 

橘千晶(たちばなちあき)…」

そういうと、再び本に目を向けた。

 

 

 

「彼女も?」

天城が尋ねる。

「そう。彼女もまたコトワリを啓こうとし、シンに殺された一人。」

そういうと、バアルは言う。

 

「貴様らならどうした。絶望的な世界の中で、変わっていく友人たちを。

貴様らなら、殺さなければ殺される世界で、友人を殺せるか?」

「…うーん」

難しそうな顔で、千枝は唸る。

 

「…愚問だよねそれって、ねぇ?バアル。彼らにはその問いは無意味だし」

「これは…ピクシー様」

そういうとバアルはワインを取り出した。

 

「どういう意味クマ?」

「だって、あんたたちは生死を共にしてきて、見られたくもないものを見られている。

良い意味で言えば、隠しごとの少ない"戦友"であり、"親友"であり、"仲間"でもあるわけ。

そんな、君たちにその問いは無意味。

言葉で語りきれるほど、人間ってやつはうまくできてないみたい」

そういうと鼻で笑った。

 

「…そういわれちゃうと、なんか照れるね」

りせはすこし嬉しそうに言った。

 

「だって、私はずっとシンと居たからわかるわ。だからこそ、言葉はいらない」

 

「なんか良いな、そういうの…」

そう花村は呟くと鳴上を見た。そして、何かを決心したような顔に変わった。

 

 

「でもね、私達とは違う点を教えてあげる」

そういうと、ピクシーは意地悪そうな顔で言った。

 

「いつかは、考えて選択しなきゃ、いけなくなる時が来るわ。どっちを選んでも悲しい選択、傷付く選択っていうのが。

でも、そこで立ち止まってはいけないの。

選択しなかった方で後悔するのは当たり前なの。

だからさ、君たちはシンと仲良くしてね」

「お前は保護者か何かか?」

 

「シン!?」

鳴上達は驚いた様子であった。

「何をやってるんだ。こんなところで」

 

 

いつの間にかシブヤの部屋に戻ってきていた。

 

 

「あまり人の過去を勝手にばらすもんじゃない」

そういうとシンはバアルにボディーブロウで喰らわし、強制的に帰還させた。

「おーこわい」とピクシーは欠伸をしながら、何処からともなく取り出した、クッキーを食べ始めた。

 

「なんか、滅茶苦茶自由な悪魔たちっすね」

「そんなものだ。ずっと寝っころがってるやつもいる」

シンも欠伸をした。

 

「シンはどう思ったんだ?」

鳴上はシンに尋ねる。

「何がだ」とシンは腕を組んだ。

「友人を殺すことに。」

 

シンは厳しい顔で間を開けた。

「…コトワリを違え、創世を争う、出会えば戦うしかない敵同士だった。

幸いなことに、お互いに涙も流れない体になっていた。

後悔がないと言えば嘘になる、だから、俺は世界を作った神に嫌悪した。

こんな運命を作り上げた神をな。」

 

「だから、カオスを選んだ。例え、永遠に呪われようとも、俺はこんな世界からの脱却を望んだ。」

「…それでも、迷いがあるということですか?」

「…いいところを突くわね」とピクシーは直斗を誉めた。

 

「…それは俺の性格上、致し方のない事だ。

前向きに生きていけるほど、ロクな人生を送ってない。

シンはそれを言うと、少し俯いた。

「…これは言い訳か」

「そうだな。」と鳴上は真面目な顔で言った。

 

 

「…俺の過去を知ってどうするつもりだったんだ?」

「…どうするって、正直そのあとのことは考えてなかったかな?」

千枝はポリポリと頭を掻きながら言った。

「私は、私達のだけ見られてるのはズルいかなって思っただけ?」とりせは完二と直斗を見ると二人とも頷いた。

 

 

「ふぅ…まぁいい。」

そこへセイテンタイセイが戻ってきた。

「残党が来たぜ?」

「どこのやつらだ?」

「たぶん、ニヒロだな。」

「…狩るぞ」

そういうと、シンはセイテンタイセイと共に部屋から出て行った。

 

 

「あなたは行かなくていいの?」

「なんで私が行かなきゃなんないのよ、メンドクサイ」

そういうと、ビスケットを食べる。

「…どうせなら、おいしいもの食べる?マネカタが最近始めたらしいの。アサクサで」

 

「おお!浅草!あの有名な、提灯のところか!」

「提灯…」そういうとクマを見て「ぶふっ!」と天城は噴き出し笑い始めた。

「…彼女大丈夫なの?」とピクシーは鳴上に尋ねる。

「いつものことだ」

 

 

ピクシーはターミナルで浅草のターミナルへと皆を連れて行った。

 

「おお!なんか、雰囲気あるな」

 

そこは随分とにぎやかな雰囲気があった。

香ばしい香りがあり、まるでお祭りの様な騒がしさであった。

 

「昔は、シャッターがしまってるところばっかだったけど、ここがマネカタ達の街になってから、悪魔向けに商売始めたの。

って言っても、元は人間の食べ物だし、知恵のある悪魔がいろいろ教えてあげて、作り方とか学んだみたい。

私はそういうのメンドウだからやらないけど、結構おいしいのよ」

 

鼠色の服を着たマネカタと呼ばれる土人が沢山おり、様々な悪魔が露店で買い物をしていた。

 

 

「おお!これは人形焼きか!?」

「そうだよ…買うかい?4つ300マッカだよ」

「マッカ?」と花村は首を傾げた。

「なによ、マッカ持ってないの?」

ピクシーがため息を吐くと皆に、1万マッカ渡した。

 

「シンにつけとくからね!」

「あざーっす!!」

 

そこへ、雰囲気の違うマネカタが現れた。

「…これはピクシー様」

「彼らは…人間ですか?」

「ええ。シンの」

「そうですか。」そういうと鳴上を見て言った。

 

「私はフトミミ。このアサクサを纏めているものだ。」

「鳴上といいます。シンとはどういう関係ですか?」

「…難しい質問だ。だが、今は彼に感謝しているよ。

苦しい時もあるが、今はマネカタ達は充実している。

ただ、虐げられるだけの我々を彼は保護した。

…未来が見えなくなった今、彼の真意は読めない。

だが、今、マネカタ達が望んだものが、ここにはある。

それだけで、私は満足しているのだ」

 

「私もこれだけはよくわからないわ。けど、お菓子がおいしいから、今となっては嬉しい」

「普通に悪魔たちが居ますが、暴れたりしないんですか?」

直斗がフトミミに尋ねた。

「時々、いるが…それほどの騒がしい悪魔はいない」

「それは、何故ですか?」

 

「それは、ここには嘗て東京を守護していた、四天王の二人がここにいらっしゃる。

それに、日本を守っていた必殺霊的国防兵器の『オモイカネ』さんが守護している。

私は他の悪魔を嫌っていましたが…最近はそうでもないのです。

こういった方法もあるのだと思いました。」

そういうと、マネカタの一人がフトミミに話しかける。

 

「…では、これで失礼するよ」

 

「さあ、フトミミの長い話も終わったし、食べましょう」

 

「いいっすねえ!こういう、雰囲気、まるで、まつ「完二…その単語は言うな」」

花村が完二を止めた。

「ヨースケは思い出すクマね?」

「お前のせいだっつーの!!」

 

「おお!肉!!」

「千枝はいっつもそればっかりだね」

「センパイ、太るよ」

「げっ、それは困る…」と千枝は慌てた様子で言った。

 

「その分動けばいいと思いますけど」と直斗は冷静に突っ込んだ。

 

「…君たちバカみたいに明るいのね」

「それが良さ」と鳴上は答えた。

 

「ま、嫌いじゃない」

そういうと、ピクシーは人形焼きにかぶりついた。

 

 

 

 

 

 




ただのカカシですな


というわけで、見事にオチが思いつかないもので大分グダってます。
それに色々とリアルの方がごたごたとしており、明日が山で…
いや、盛大にミスをやらかしましてね…
そんなことを避けるように、コマンドーを見ている今日この頃であります。

そういえば、この話が長くなるといいましたが。






あれは嘘だ




というのも嘘だ。
どうやってオチを付けようか困っている。

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