「…ここがシブヤか」
「なんか、人のいねぇ町ってのはこわいっすね」
「そうかも」
ヨヨギ公園を通過し、シブヤへと着いた鳴上達は落ち着ける場所へと案内された。
そこは、小部屋の様な場所でソファがあった。
「うっし、とりあえず。何が聞きてぇんだ?」
「この世界についてと間薙先輩に関して何か教えてください」
直斗がそういうと、セイテンタイセイはうなずいた。
「おう…そうだな。あいつはもう何千年と王としてこの世界に君臨してるぜ。
混沌王…それを取り巻く、悪魔たちは上位悪魔ばかり、上位じゃない悪魔も見かけによらず強い連中ばかりだ。」
「何千年って…そんな生きてんのかよ」
花村は驚いた表情で言った。
「何かがない限り、悪魔は死ぬことはない」
「こんちわ。バアルさん」とセイテンタイセイは挨拶をした。
「この世界について教えてやろう。
この世界はお前らのいわば平行世界だ。ほぼ隣に存在する世界だ。
違う点は一つ。『東京受胎』が起きたか起きなかったか。
それだけの違いだ。」
「何度も出てくるけど、『東京受胎』ってなんですか?」
天城がバアルに尋ねる。
「世界の再構成に必要な破壊。すべてを無に帰し、そして再構成する。
その再構成に必要だったのが『コトワリ』。
コトワリを嘗て存在していた、カグツチに示し、世界を再構成する。
それが、東京受胎の真相だ」
「そ、そんな身勝手なこと誰がやったの?」と千枝は少し怒りながら言った。
「氷川という男だ。愚かな男だ。」
「氷川…ガイア教の事件…つまり、それがこの世界の要因ですか?」
「そうだ。その一点しか違わない。お前たちも存在したはずだ。
しかし、アイツは違う。あいつは円環から外された呪われし者。どの世界に行こうともあいつは存在しえない。」
「うーん。なんか、わかりずらいね」
「千枝。つまりね、高級なお肉がとある場所でしか食べられないって事だよ?」
「ああ!なるほど」
「お前…本当に脳のなか肉しかねえんじゃねーか?」
花村は呆れた様子で言った。
そんなことを言っていると、周りの景色がぼんやりとしてきた。
「ん?なんだ!?霧か?」
「ウソ!ここテレビの中じゃないでしょ?」
完二とりせが慌てた様子でソファから立ち上がった。
「間薙シンの追憶と興じようではないか」
そういうと、バアルは指を鳴らした。
「…ん…ここは?」
鳴上達はマンションのような一室に居た。
その部屋は静寂に包まれていた。
「どこだろう。ここ」
そう天城が辺りを見渡すと少年が本を読んでいた。
それは今と変わらない無表情のシンらしき子供であった。
その格好は見慣れたパーカー姿だ。
「…あれが、シンか」
花村はそうバアルに尋ねた。
「そう。彼は幼少期、ずっとこうしていた。
彼は孤独だった、少し人と変わっているからと"変人"だと、同年代から罵られていた。
しかし、それは神の気まぐれで与えられた能力であり、そして、"業"でもある。」
そういうと、バアルはテーブルを指差した。
そこには、綺麗な字で『今日も帰りが遅くなります』と書かれたメモだけが置かれていた。
「親はそんな彼の能力に気づくことさえなかった。
何故なら、彼の親は仕事ばかりだったからだ。
彼の居場所はこの少し薄暗い部屋のなかしかなかった。」
バアルは淡々と話す。
「…だから、"僕と似ている"と言っていたのでしょうか。」
直斗は少しばつが悪そうに言った。
「…居場所…か。時々、思ったりするかもな」
「何々?ヨースケもそういうのがあるクマか?」
「お前は俺を何だと思ってるわけ?」
「ガッカリ王子?」
「なんだよ!ガッカリって!!」
そんなことを話していると、バアルの咳払いが聞こえた。
「…そんな、彼もとある人物に救われていた」
そこへチャイムの音が鳴った、すると子供のシンは少し嬉しそうに立ち上がり、ドアを開けた。
そこには制服を着た、黒い髪の毛をした女子高生だった。
清楚な出で立ちで、シンを見ると微笑んだ。
「子供なんだから、外で遊ばないの?」
「…遊ぶ相手がいない」
子供のシンは少し悲しそうに言った。
「…それなら、外の砂場でいつも一人で遊んでいる同い年くらいの子がいるから、その子に声をかけてみたら?」
「…バカにされる」
「それは、やってみなきゃ、分からないわ」
そういうと、女子高生は微笑みその手に持っていた、スーパーの袋を降ろした。
「…うん。分かった」
子供のシンは靴を履き、真新しいサッカーボールを持ち、階段ですぐ近くにある砂場へと走り出した。
バアルが指を鳴らしすと、時間が止まった。
「彼女は高尾祐子。この時は、高校生であり、その後教師となり、シンを受け持つ。彼女は巫女であり、彼女がいなければ、東京受胎はあり得なかった。」
「シンが言っていた、お見舞いの担任の先生か…」
鳴上は王さまゲームでの話を思い出した。
そして、すっと場面転換した。
「なにやってんの?」と子供の頃のシンが砂の城を作っている少年に声を掛けた。
「…別に」
そういうと、自分で作った砂の城を蹴飛ばし崩した。
「…一人で遊んでるなら、遊ぼう」
そういうと、サッカーボールを砂場の少年に渡した。
「うん」
そう答えた少年の顔は嬉しそうだった。
「僕は間薙シン。すぐそこの団地に住んでる。」
「僕は新田。新田勇」
再び、時間が止まる。
「彼は新田勇。間薙シンの友人と呼べる唯一無二の友。
そして、誰にも干渉されない世界を望み、間薙シン、自ら彼の命を終わらせた」
「…さっきのお猿さんが言ってたこと?」
千枝が思い出すように言う。
「そうだ。彼は世界崩壊後、高尾祐子を探した。
しかし、その際に悪魔に捕まり、マガツヒを吸われ、その精神は耐えられずに、干渉されないというコトワリを開くことにした。
そして、アマラの奥に居た、ノアを呼び出した。
結果はシンに破れ、その命を終えた。」
そして、場所が変わる。
そこは図書館のような場所であった。
子供のシンは勇、少し嬉しそうに本を読んでいた。
その隣にはあの高尾という高校生が勉強をしていた。
そこへシンと同じくらいの少女が子供が来た。
「…それ」
「…これ?」と積んである本をシンが見た。
「貸して?」
「…うん」
そういうと、本を引き抜いて渡した。
その少女はすぐ近くに座り、言った。
「本が好きなの?」
「そうなんだ」とシンは答えた。
「名前はなんていうの?」
勇が少女に尋ねた。
「
そういうと、再び本に目を向けた。
「彼女も?」
天城が尋ねる。
「そう。彼女もまたコトワリを啓こうとし、シンに殺された一人。」
そういうと、バアルは言う。
「貴様らならどうした。絶望的な世界の中で、変わっていく友人たちを。
貴様らなら、殺さなければ殺される世界で、友人を殺せるか?」
「…うーん」
難しそうな顔で、千枝は唸る。
「…愚問だよねそれって、ねぇ?バアル。彼らにはその問いは無意味だし」
「これは…ピクシー様」
そういうとバアルはワインを取り出した。
「どういう意味クマ?」
「だって、あんたたちは生死を共にしてきて、見られたくもないものを見られている。
良い意味で言えば、隠しごとの少ない"戦友"であり、"親友"であり、"仲間"でもあるわけ。
そんな、君たちにその問いは無意味。
言葉で語りきれるほど、人間ってやつはうまくできてないみたい」
そういうと鼻で笑った。
「…そういわれちゃうと、なんか照れるね」
りせはすこし嬉しそうに言った。
「だって、私はずっとシンと居たからわかるわ。だからこそ、言葉はいらない」
「なんか良いな、そういうの…」
そう花村は呟くと鳴上を見た。そして、何かを決心したような顔に変わった。
「でもね、私達とは違う点を教えてあげる」
そういうと、ピクシーは意地悪そうな顔で言った。
「いつかは、考えて選択しなきゃ、いけなくなる時が来るわ。どっちを選んでも悲しい選択、傷付く選択っていうのが。
でも、そこで立ち止まってはいけないの。
選択しなかった方で後悔するのは当たり前なの。
だからさ、君たちはシンと仲良くしてね」
「お前は保護者か何かか?」
「シン!?」
鳴上達は驚いた様子であった。
「何をやってるんだ。こんなところで」
いつの間にかシブヤの部屋に戻ってきていた。
「あまり人の過去を勝手にばらすもんじゃない」
そういうとシンはバアルにボディーブロウで喰らわし、強制的に帰還させた。
「おーこわい」とピクシーは欠伸をしながら、何処からともなく取り出した、クッキーを食べ始めた。
「なんか、滅茶苦茶自由な悪魔たちっすね」
「そんなものだ。ずっと寝っころがってるやつもいる」
シンも欠伸をした。
「シンはどう思ったんだ?」
鳴上はシンに尋ねる。
「何がだ」とシンは腕を組んだ。
「友人を殺すことに。」
シンは厳しい顔で間を開けた。
「…コトワリを違え、創世を争う、出会えば戦うしかない敵同士だった。
幸いなことに、お互いに涙も流れない体になっていた。
後悔がないと言えば嘘になる、だから、俺は世界を作った神に嫌悪した。
こんな運命を作り上げた神をな。」
「だから、カオスを選んだ。例え、永遠に呪われようとも、俺はこんな世界からの脱却を望んだ。」
「…それでも、迷いがあるということですか?」
「…いいところを突くわね」とピクシーは直斗を誉めた。
「…それは俺の性格上、致し方のない事だ。
前向きに生きていけるほど、ロクな人生を送ってない。
」
シンはそれを言うと、少し俯いた。
「…これは言い訳か」
「そうだな。」と鳴上は真面目な顔で言った。
「…俺の過去を知ってどうするつもりだったんだ?」
「…どうするって、正直そのあとのことは考えてなかったかな?」
千枝はポリポリと頭を掻きながら言った。
「私は、私達のだけ見られてるのはズルいかなって思っただけ?」とりせは完二と直斗を見ると二人とも頷いた。
「ふぅ…まぁいい。」
そこへセイテンタイセイが戻ってきた。
「残党が来たぜ?」
「どこのやつらだ?」
「たぶん、ニヒロだな。」
「…狩るぞ」
そういうと、シンはセイテンタイセイと共に部屋から出て行った。
「あなたは行かなくていいの?」
「なんで私が行かなきゃなんないのよ、メンドクサイ」
そういうと、ビスケットを食べる。
「…どうせなら、おいしいもの食べる?マネカタが最近始めたらしいの。アサクサで」
「おお!浅草!あの有名な、提灯のところか!」
「提灯…」そういうとクマを見て「ぶふっ!」と天城は噴き出し笑い始めた。
「…彼女大丈夫なの?」とピクシーは鳴上に尋ねる。
「いつものことだ」
ピクシーはターミナルで浅草のターミナルへと皆を連れて行った。
「おお!なんか、雰囲気あるな」
そこは随分とにぎやかな雰囲気があった。
香ばしい香りがあり、まるでお祭りの様な騒がしさであった。
「昔は、シャッターがしまってるところばっかだったけど、ここがマネカタ達の街になってから、悪魔向けに商売始めたの。
って言っても、元は人間の食べ物だし、知恵のある悪魔がいろいろ教えてあげて、作り方とか学んだみたい。
私はそういうのメンドウだからやらないけど、結構おいしいのよ」
鼠色の服を着たマネカタと呼ばれる土人が沢山おり、様々な悪魔が露店で買い物をしていた。
「おお!これは人形焼きか!?」
「そうだよ…買うかい?4つ300マッカだよ」
「マッカ?」と花村は首を傾げた。
「なによ、マッカ持ってないの?」
ピクシーがため息を吐くと皆に、1万マッカ渡した。
「シンにつけとくからね!」
「あざーっす!!」
そこへ、雰囲気の違うマネカタが現れた。
「…これはピクシー様」
「彼らは…人間ですか?」
「ええ。シンの」
「そうですか。」そういうと鳴上を見て言った。
「私はフトミミ。このアサクサを纏めているものだ。」
「鳴上といいます。シンとはどういう関係ですか?」
「…難しい質問だ。だが、今は彼に感謝しているよ。
苦しい時もあるが、今はマネカタ達は充実している。
ただ、虐げられるだけの我々を彼は保護した。
…未来が見えなくなった今、彼の真意は読めない。
だが、今、マネカタ達が望んだものが、ここにはある。
それだけで、私は満足しているのだ」
「私もこれだけはよくわからないわ。けど、お菓子がおいしいから、今となっては嬉しい」
「普通に悪魔たちが居ますが、暴れたりしないんですか?」
直斗がフトミミに尋ねた。
「時々、いるが…それほどの騒がしい悪魔はいない」
「それは、何故ですか?」
「それは、ここには嘗て東京を守護していた、四天王の二人がここにいらっしゃる。
それに、日本を守っていた必殺霊的国防兵器の『オモイカネ』さんが守護している。
私は他の悪魔を嫌っていましたが…最近はそうでもないのです。
こういった方法もあるのだと思いました。」
そういうと、マネカタの一人がフトミミに話しかける。
「…では、これで失礼するよ」
「さあ、フトミミの長い話も終わったし、食べましょう」
「いいっすねえ!こういう、雰囲気、まるで、まつ「完二…その単語は言うな」」
花村が完二を止めた。
「ヨースケは思い出すクマね?」
「お前のせいだっつーの!!」
「おお!肉!!」
「千枝はいっつもそればっかりだね」
「センパイ、太るよ」
「げっ、それは困る…」と千枝は慌てた様子で言った。
「その分動けばいいと思いますけど」と直斗は冷静に突っ込んだ。
「…君たちバカみたいに明るいのね」
「それが良さ」と鳴上は答えた。
「ま、嫌いじゃない」
そういうと、ピクシーは人形焼きにかぶりついた。
ただのカカシですな
というわけで、見事にオチが思いつかないもので大分グダってます。
それに色々とリアルの方がごたごたとしており、明日が山で…
いや、盛大にミスをやらかしましてね…
そんなことを避けるように、コマンドーを見ている今日この頃であります。
そういえば、この話が長くなるといいましたが。
あれは嘘だ
というのも嘘だ。
どうやってオチを付けようか困っている。