Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第45話 Festival 10月28日(金)·29日(土)

高校生の時、俺は何を思っていただろうか。

思い出そうにも、どうも思い出すことができない。

人の記憶などそんなものだ。

 

しかし、流石に人生に一回しかなかったことを覚えていないのはおかしい。

大切なことも、どうでもいいことも…すべて忘れてしまっている気がした。

 

いずれにしても、"文化祭"。

俺に文化祭という記憶がなかった。

確かにやったはずである。だが、記憶にない。

しかし、今回は…忘れることのない文化祭になるだろう。

それほど、田舎の文化祭というのは衝撃的なものなのだと、勝手に解釈した。

 

 

 

「…マジかよ…」

「…」

茫然と、花村と鳴上は掲示板を見ていた。

 

10月28日。

掲示板に告知された、それはシンを除く、探索男子メンバーへ公開処刑を知らせる告知であった。

 

女装コンテスト

エントリー者。

 

鳴上悠

花村陽介

巽完二

 

以上三名。

 

 

 

さながら、ヨーロッパの公開処刑を知らせる通知であった。

 

 

 

「どーいうことか、説明してもらおうか!?」

教室に居た千枝と天城に花村は問い詰める。

 

シンの記憶が正しければ、先日、コンテストに勝手にエントリーした花村に女性陣がキレていたことを覚えている。

シンはというと、事件のことを考えていて、話を聞いていなかった。

 

それへのあてつけだろう。

 

「それになんでシンがいねーんだよ!」

「それ、それ!」と千枝も声を大にした。

「それなんだよね。確かに私たち推薦状に書いたんだけど、何故か書かれていないことになってて」

「シン!何やった!どうせならお前も道連れにしてやる」

花村はヤケクソである。

 

「知らん」

シンも思い当たる節がない。

 

「でもね、シン君を落としいれると、呪いとか怖いし」

天城は真剣な顔で言った。

「…それは…否定できねぇっす」

完二はぶるっと身を震わせた。

 

「はーなるほどなー…ってシンは外す気だったってことか!?」

「結果的にそうなっちゃったって話」

千枝は弁明する。

 

シンは首を傾げていた。

千枝と天城が『シン君』と呼んでいることに少し違和感を感じただけなのだ。

どういう心境の変化かわからないが、シンはどうでもいいと思った。

それと思わず、念通する。

『お前らなんかしたか?』

『…私は知らないなぁ』とピクシーは何かを食べながら言っている。

『主!申し訳ありませぬ!この私めがやりました!主に仕えるものとして、恥をかかせるわけにはいきません!』

クーフーリンが言ってきた。

『…まあ、助かったとだけ言っておく』

『ははっ、ありがとうございます』

 

 

「…あれ?猫?」

千枝が花村とまさにケンカを始めようとしたとき、黒い猫が教室に入ってきた。

シンはその猫を見て驚いた表情で猫に寄った。

猫は理解したのか、止まり机にジャンプでシンの肩の上に乗った。

 

「ちょっと外す」

 

シンは教室から出て行った。

 

「な、なんだ?あれもアクマか?」

「さぁ?」

 

 

 

 

 

 

屋上…

『久しいな。間薙シン』

「こんなところまで、態々来るとは手間を掛けさせたなそれに、年をとっていないようで」

『何を言うか。お前と別れてまだ、半年も経っておらん。』

「時間の流れが違うのか」

シンは呟く様に言った

 

『…よもや、現に居るとはな…のう?ライドウ』

そうゴウトが少し嬉しそうにいうと、黒い疾風が屋上に現れた。

 

「久しぶりだな。ライドウ」

ライドウは頷くと、自分の帽子を指差した。

 

「持っているぞ。もちろん」

シンはそういうと、何処からともなく学生帽を取り出した。

すると、ライドウは少しだけ口を緩ませた。

「しかし、お前達が帝都の守から離れてまで来た理由はなんだ?」

『所謂、休暇というものだ。ヤタガラスからの通達でな』

「なるほど…ならば、良い旅館を教えよう」

シンはライドウに言うが。

 

「…学生たる身」

『うむ、それでこそ誉れ高き葛葉四天王の一角、ライドウを継ぐ者よ。

…と、いいたい所だが、今回は日々の疲れを癒せとの、話だ。今回ばかりは、良かろう。』

ゴウトの言葉にライドウは少し間を空け頷いた。

「なら、早速聞いてみよう」

そういうと、シンは屋上から学内に入る。

 

『幸いか、ここは悪魔の気配を余り感じぬ所のようだ。ヤタガラスの選んだ場所は適切であったな』

ライドウはこくりと頷いた。

 

 

シンは教室に戻ると文化祭の準備をしている天城に尋ねる。その後ろに学生帽を被った少年と猫が来た。

幸い、教室にはシンの見知った顔しかいない。

 

「なあ、天城。一人と一匹を泊めてはもらえないか?」

「え?ちょっと待ってね」

そういうと、天城は携帯で電話を掛けに教室の外に出た。

そして、すぐに戻ってきた

 

「多分、大丈夫だと思う」

「助かる」とシンは言うとライドウも頭を軽く下げた。

「みゃー『忝ない』」

 

「うんうん。いいの、シン君には色々と助けてもらってるし」

「ってか、雪子さん?普通に会話してるけど、誰?」

千枝がシンに尋ねる。

 

 

 

「友人だ」

 

 

 

 

 

 

夜…

 

天城屋旅館にライドウ、ゴウトとシンが来ていた。

雪子は案内役として仕事をしている。

 

「みゃー『中々、良い所だな』」

ゴウトは部屋に入るとそういった。

「…良い部屋」

「でも、よかった。ちょうどね?ウチの旅館もペットと一緒に泊まれるっていうのを丁度始めたの」

「みゃー!『我は"ぺっと"などではない』」

ゴウトはそう叫ぶが、無論天城には聞こえない。

 

「じゃあ、御用の時はお呼びください。失礼します」

天城はそういうと、部屋から出ていった。

ライドウは退魔刀を腰から外し、装備を畳の上に置いた。

 

『しかし、お主がタダで此処に来ることは無いだろう?』

ゴウトはテーブルの上に座り、シンにいう。

 

「まあ…そうだな。」

「…楽しそう」

『そうだな。今のお主は"ぼるてくす界"よりはましな顔をしているな』

 

「そうだな…なくなってから見える景色もあるということだ」

シンはそういうと、立ち上がった。

 

「さ、俺は家に帰る。ゆっくりしていくと良い。料金は気にするな」

『さすがは、王だな。太っ腹だな』

そう言われるとシンは髪の毛を掻いて出て行った。

 

 

 

『…どうだ?ライドウ、シンは』

「…更に強くなっている」

『どこまで強くなるのやら…』

ゴウトはテーブルから飛び降り、大きな窓から玄関から出て行くシンを眺めた。

 

 

 

『戦わないことを願うな』

 

 

 

 

 

次の日…

29日。八十神高校校門…

 

 

 

『なるほど、これが文化祭というものか。ライドウ、何事も経験だ』

ゴウトに言われると、ライドウは頷いて答えた。

 

「大正には無い風習だろうな。ライドウはどうなんだ?こういうのは」

「…特に何も」

ライドウは淡々と答える。

 

「…しかし、退魔刀と拳銃は大丈夫か?」

「…恐らく」

『ライドウ、注意するようにな。身分のない我々が捕まっては、恥も良いところだ』

ライドウは頷いた。

 

「模造刀とエアガンといえば、最悪何とかできるだろう」

そんな話をしながら、文化祭の雰囲気の学校へと入った。

 

 

 

『賑やかな場所だな。お主はこういうものを嫌いだと思っていたが…』

「嫌いだ。嫌悪するほどな。ただ、祭りとなると話が変わってくる。祭りに含まれる情緒と雰囲気、そして、その儚さが俺を満たす。それに、こういった好奇心を唆る謎の食べ物が出るのも、文化祭の一環だと思うと、好奇心を擽られる。」

そういうと、棒に刺さった"何か"を食べる。

それをゴウトは変な目で見た。

 

『…なんだ、それは』

「分からん。肉っぽいが…物体Xよりはマシだ。」

ライドウはそれを見ながら、ゴウトに塩のかかっていない、ポップコーンをあげる。

体に良いのか悪いのか、知らないがライドウはあげる。

 

その後、様々な場所を回った。

 

屋上へ行くと静かで、シンを安泰へと誘う

『なかなか、わるくないな。ぽっぷこーんとやらは』

「こうしていると、人間観察が捗るな」

『お主を我は評価している。お主の観察眼は優れておる。

事実、お主のおかげでライドウは成長出来たと言えよう。』

 

「…それはよかった。それでだ、1つ依頼を受けてくれ。」

『ちょうどよい、休養がてら受けてやろうではないかな?ライドウ』

そういうと、ライドウは頷いた。

 

「この街で、起きている出来る限り、悪魔を使役して事件について調べて欲しい。見落としている点がある可能性と、第三者の視点が必要だ。」

 

『成程…流石だな。間薙シン。わかった。特殊依頼として、ライドウ。記しておくぞ』

ライドウは頷く。そして、ライドウはゴウトを抱えると、超人的な跳躍で屋上から飛び降りた。

シンもそれに続くように、屋上から屋上入口の出っ張りに登り、まるで赤いコートを来た半身半魔の様に飛び降りた。

 

 

 

シンとライドウはとりあえず、文化祭が終わってから依頼をしてもらうことにし、文化祭を楽しむことにした。

 

二年生の廊下前…

 

シンとライドウはまるでお葬式のような合コン喫茶から離れ、歩きはじめる。

 

「あ、先輩」

 

シンに声を掛けてきたのは直斗であった。

「こ、こちらの方は?」

「…葛葉ライドウ」

そういうと、ライドウは軽く会釈した。

「それで、この猫は業斗童子」

『みゃ(よろしくな)』

 

「僕は白鐘直斗と言います。ヨロシクお願いします。一見…学生のようですが」

「お前と同業者だ」

「ええ!探偵ですか?」

直斗は驚い顔で言った。

 

 

『みゃー(白鐘…白鐘…聞いたことがあるか?)』

「…あるような、ないような」

シンは小声で言った。

「…ここは世界線が違うかもしれん、一種の平行世界という仮説がある」

『みゃぁ(なるほど…それなら我々が知らない理由に納得できるな)」

 

 

「?」

直斗が首を傾げるが、「いや、なんでもない」とシンはごまかした。

 

 

『みゃ(少し我々は自由に歩かせ貰っても構わないか?)』

「ああ。ただ、あまり派手に動かないことだ」

そういうとライドウとゴウトと別れた。

 

「…変わった格好ですね。彼らは」

「…ただ探偵としては一流だ。荒事も、観察眼も、情報の整理も見事だ。」

「なるほど…」

「しかし、如何せんライドウは口数が少ない。それがあいつの良さでもあるんだがな」

シンはそう言いながら歩く。

 

「も、物静かな人が好きですか?」

「そうだな。騒がしいよりは、圧倒的にしゃべらなくても良い静かなほうがいい」

「そうですか…」

直斗はかんがえこんだ。

 

 

屋台を見て回り、シンは何だか分からないものを食べている。

 

そして、休憩室をやっている教室へと二人は来た。

 

 

「…結局、まだ分かりません。どうして、こんなものを渡したのか」

紙を直斗は持っていたらしく、シンに見せた。

「…匂いがあるな…あぶりだしか?」

「!そうか…早速家に帰ったらやってみます」

直斗は嬉しそうにそれをポケットに戻した。

 

 

 

 

 

「グフフ…二人とも良い雰囲気クマ」

「ばか、声出すな…」

「…お似合いっちゃお似合いかぁ…」

「そうだね。二人とも静かなイメージだし」

「完二いいのぉ?とられちゃうよ?」

「な、なにがだよ!カンケーねぇだろ!」

 

 

 

「…あいつらは尾行には向かないな」

「そうですね」

直斗は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「そうねぇ…もう随分と前のような気がして思い出せないわ」

「…ありがとうございます」

ライドウはそういうと、軽く会釈をした。

 

『うむ…やはり、時間が経っていて証拠も出てこないな』

「…雷電属の現場検証で探してみる」

『そうだな。それがよかろう。現場までいくか』

 

 

第一被害者が吊るされていた付近…

 

 

封魔管を取り出し、あまり大きくないヌエを召喚した。

「ナニカ用カ、ライドウ」

「現場検証を頼む」

「ウム」

 

ヌエがのそのそと辺りを調べる。

 

「…何モナイゾ?ライドウ」

「…そうか…」

『どういうことだ?』

 

「やはり来ていたか」

「…シンか」

ライドウが後ろを向くと、シンがいた。

 

「犯行はテレビに入れて殺すというものだ。」

『てれびに入れる?』

「詳しく話す。」

シンは今回の事件をライドウに話した。

 

『…なるほど、その生田目という人間がお前の友人たちを攫っている。

しかし、殺人となった二件はどうもそいつではないということだな。』

「ああ、生田目のアリバイが完璧だからな。それは調べなくてもいい。

問題は殺人になった犯人だ。」

「…しかし、証拠がない。」

「ヒントがある。白鐘直斗宅にある、脅迫状。恐らく、それが犯人に繋がっているはずだが…」

『…何とも陳腐な犯人だな。脅迫状など…』

ゴウトは笑う。

 

 

二件目の被疑者発見場所…

 

 

 

「…やはり何もないか」

ライドウは唸る。

「殺人方法があまりにも特殊だ…証拠はないだろう」

『うむ…犯人の特定は難しいか』

「ああ、そうなると。生田目を引っ張ってから、やつの考えを聞いてこの二件と未遂事件を比較しなければわからないな」

シンは言う。

 

「とってきたよーライドウ」

フワフワとモーショボーが脅迫状を手に入れてきた。

「…何人か触った跡があるが」

シンはため息を吐いた。

 

「ああ、指紋がべたべたとついてしまっているか。恐らく、それは仲間のモノだろう。」

『不用心だな、まったく…』

「しかし、鳴上が持ってきたときも、指紋はなかった。」

『…現状ではわからぬか』

「…でも、少しだけ、明瞭になった気がする。」

 

『やはり、捜査会議というのは重要だろう?』

「そうだな…さて、報酬だ。それと、1つ頼み事を」

シンはマッカと手紙を取り出し、渡した。

 

ライドウはマッカよりも、手紙を先に開いた。

そして、表情を変えずに頷いた。

『…さて、我々はそろそろ、旅館に戻るぞ?温泉に入りたい』

「猫…ダメ」

『のう…』

ライドウに連れて行かれるようにゴウトは残念な顔で歩いていった。

 

 

 

 




出してみましたけど、派手な活躍はないと思います。

追記
ミスって投稿してしまったみたいですねww
でも、ほぼほぼ完成してたので、問題ないです。

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