Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第59話 Crime And Punishment 12月8日(木) ~9日(金)

足立の姿が変わって行く。

まるで、取りつかれたように黒い液体があふれ出てくる。

そして、その黒い液体が霧を放つ。

さながら、源泉の様な濃い煙である。

 

「な、なんだこれ」

「…別に毒性はないだろう」

花村の言葉にシンは冷静に答えた。

 

霧が晴れると、そこには黒い大きな眼球の様な形をしていた。

所々に噴出口のようなものがついている。

瞳はカメラのようになっていた。

 

 

『私に刃向う事は、即ち人世の望みに逆らう虚しい行い

…さあ…全てを、甘き迷いの霧の内に…』

 

 

「お前が決めることじゃない!」

鳴上がそういうと、武器を構えた。

「そうだぜ!テメェが決めんじゃねぇ!俺たちが決めるモンだ!」

 

『間薙センパイより、全然弱いよ!』

「比べる対象が違すぎんだ…ろ!!」

そういうと、完二は武器で相手を殴った。

 

「ええ」

直斗はペルソナを召喚すると、メギドラオンを放つ。

 

相手はアグネスヤトラを放ち、皆がダメージを喰らうと

「おいで、コノハノサクヤ!!」

と天城が回復する。

 

チームワークが良く、相手の動きもすぐに判断し、対処していた。

 

 

 

 

「手伝わなくていいの?」

ピクシーは鳴上達の戦いを見ているだけのシンにいった。

「…人の可能性か」

「全員が全員、彼らのようにはなれないけどね。

でも、全員が全員、盲目であることを望んでいないことは確かね。」

 

 

 

 

「世界は虚しい。故に儚く美しい」

 

 

 

 

シンは笑みを浮かべるとただただ、その戦いを見ていただけであった。

何をするわけでもない、ただ本当に見ていただけだった。

 

初めは鳴上達も敵が大きいからなのか、あるいはシンのおかげなのか、余裕のある動きであった。

 

 

 

『愚かな…なら、止むを得まい』

 

霧が相手の噴出口から出始める。

 

「うお!?なんだ」

花村はペルソナを召喚しガルダインを放つが当たらない。

相手が何をしているのかさえ、見えない。

 

 

「りせ!何かわからないか!」

鳴上の声にりせは答えるもその声に不安がある。

『…うん…何も見えない…』

 

 

霧が晴れた瞬間、相手は何かを溜めていた。

 

 

 

 

『ネブラオクルス』

 

 

 

 

その瞬間、相手の目から大きな光が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…』

だが、そこにはボロボロになりながらも立っている鳴上達の姿があった。

 

「へへっ…きかねぇよ」

「こんなの…シン君の攻撃よりショボじゃん…」

「そうっすね、見た目だけ…派手じゃ…意味ねェよ」

「僕たちは…こんな所では折れません…」

そんなことを言っているが、皆はぎりぎりのようだ。

 

『…何故だ。何故、あきらめない。そこまでお前達を駆り立てるものはなんだ。』

 

「シンクンが教えてくれたクマ!」

クマはしっかりと相手を見据え、ブフダインを放つ。

「どんなに、絶望的な状況でもね」

「僕たちは信じるしかないんだ…」

千枝と直斗はペルソナを召喚し、ゴットハンドとメギドラオンを唱えた。

 

 

『信じる?…何を信じるというのだ。』

 

 

「勿論、俺達の隣にいる仲間ァ!」

完二は思いっきりの力で相手を殴りつけた。

「それで、私達を信じてくれてる人達!」

天城はアギダインを放った。

 

『愚かな…真実など、見えはしない』

 

「見える見えないの問題じゃぁ、ねえんだよ!!

俺達は見えなくても自分を信じるしかないんだよ!」

花村は力を振り絞り、ペルソナでガルダインを放つ。

 

「だから、諦められないんだ…諦めたら…俺たちの信念を通せない」

鳴上は剣を支えに立ち上がった。

 

「…俺たちを信じてくれてる、人たちに…俺が信じる人たちの為に!!!」

鳴上はそういうと、イザナギを召喚した。

 

 

 

 

 

「俺たちは前に進む!!俺達の信念の為に!!!」

 

 

 

 

 

イザナギは大きく振りかぶって、相手を斬り付けた。

真っ二つに斬れ、徐々に相手が崩れ始める。

 

『なるほど…強い力だ…力は心が生み出すもの…人の可能性を、お前たちは示したのだ…』

そういうと、震えはじめる。

『いいだろう。お前たちが帰る場所の霧を晴らそう…

我が望みは人の望み…人が望む限り私はいつでも現れよう

…私は、いつでもすぐ傍「それは私の務めだ」』

 

その割り込んできた声の主にアメノサギリは消し飛ばされた。

そして、足立が現れ倒れ込んだ。

 

 

その主は、鳴上と同じ顔をして、鳴上のシャドウかと思われたがどうも違う。

シャドウよりもはるかに禍々しく感じた。

 

「おまえは…」

フラフラの花村が思い出す。

 

それは嘗てシンが自分の身代わりとして使っていた悪魔だと分かった。

 

「…私は、お前達すべての人間の影だ。

人間に(くら)き心がある限り、私はお前たちを見ているぞ」

 

「お前であっても、あいつでも、お呼びじゃねーンだよ」

「そうクマ!!」

「俺たちは…俺たちで"信じる運命"を切り開く」

 

 

その鳴上の眼差しにニャルラトホテプは思い出す。

 

 

 

 

『ああ、うるせぇ…運命運命…同じことしか言えねぇのか…?

いいか、達哉…運命なんてのはな…』

 

『運命などというものは、後出しの予言と何も変わらん。

何かが起こった後で、こういえばいいんだ…』

 

『「全部運命だった」ってね!』

 

 

 

 

 

「…私を嫌った者たちよ見ているか?

これが貴様らの残した可能性だ。

…忌まわしい。」

ニャルラトホテプはどろりと溶けるように消えた。

 

 

皆が足立に寄る。

「…足立さん…アイツに操られてたのかな?」

千枝は倒れている足立を見ながら言った。

「さあ…望んでいた面もあったと思いますが…」

 

 

足立は苦しそうな顔で言った。

「…なんだよ…これで終わりかよ…つまんねぇ…」

「…」

直斗はため息を吐いた。

 

 

 

「別にいいよ…君らは君らで…考えた通りに…生きりゃいい…

未来を変える…力ってのが…キミらにはあるって…いうんならさ…」

「んなもん…誰にだってあんだよ。」

花村が足立に言い放つ。

 

「…さぁ…な…」

足立はそういうと、シンを見た。

 

「…どうするんだい?…ぼくを」

「…どうするかな…だが、お前は俺とは違う。お前はあの世界の法で裁かれるべきだ。」

「裁けるか…わかりもしないのに?」

足立は覇気のない笑いを浮かべた。

 

 

「…お前は人を殺した。手口がどうであれ、それが"あの世界で生きるお前の罪"だ。

そして、裁く裁かれないにしても、お前が生き続けることが"こいつたちの考える罰"だろうな。」

 

 

「…お前がクソだと評した世界を生きろ。

あそこはあまりにも美しい」

 

 

 

「そ…っか…それが…罰ね…ははっ…なんだよ…クソ…つまんねぇ…」

 

 

 

 

シンが足立を抱えると、鳴上たちはテレビから出た。

 

足立は疲弊しているのか、テレビから出ると座り込んでしまった。

 

 

外に出ると、警官が歩いてきた。

 

「…どうも、白鐘さん」

「こんにちは。西崎さん」

直斗は頭を下げる。

 

「…堂島刑事から連絡を受けています。容疑は、山野真由美、小西早紀に対する殺人。

以上で宜しいでしょうか?」

直斗は頷くと言った。

「間違いありません。」

 

「了解しました」

そういうと、足立を見て言った。

「下に救急車を呼んでますが、ここから担架で運びますか?」

「救急車…?」

「ええ。堂島刑事が必要だろうと。

容疑者を手厚く保護してほしいと…その、あくまで個人の要望として、頼まれましたので。」

 

「相棒…だったもんね。」

「…」

足立は浮かない表情で座り込んでいた。

その心中は計り知れない。

 

「では担架を、お願いします」

「了解しました。」

そういうと、警官は階段の方へと降りていった。

 

 

 

「…なんだよ…ちくしょう…」

足立は少しだけ苦虫をかみつぶしたような顔で呟いた。

担架に乗せられるとそのまま運ばれていった。

 

 

 

 

帰り道は既に長期戦を呈したため、夜になっていた。

 

「今日こそ、雪が綺麗に見えるかもね!」

「まあ、さすがに霧が晴れたっぽいしな…夜だから分かりずれぇけど」

千枝の言葉に花村は空を見上げた。

 

「…なんか、実感、少ないっスね」

「それに…体中が痛いクマ…」

「仕方ありません、僕たちは随分と無理をして進みました。」

 

「…これで終わりなのかな」

「事件は一先ず…だがな。」

シンはポケットに手を入れると、白い息を吐いた。

 

 

 

「俺の役割は半分終わったか…」

 

 

 

「お?おおお!!!ユキクマ!!」

クマがテンションを上げて、大きな声で言った。

 

「ホントクマさんは元気だね…私はちょっと疲れちゃったかな」

天城は疲れた顔で言った。

 

「とりあえず今日は帰ろうぜ。みんな疲れてるしな」

「そうだね…私たちも疲れたあ」

 

そう言って、皆はそれぞれ帰ることにした。

 

 

 

深夜…

 

「…さながら、長編映画でも見ているような気分だった」

「とりあえず、終わっちゃったね…」

そういうと、ピクシーはベットで寝ているシンの横に座った。

シンは相変わらず、天井を見上げている。

 

「…娯楽。娯楽は終わりがあるから娯楽であり続けられるのか…終わりのない娯楽はただの害でしかない。」

「って、まだ終わってないよね?」

「…ああ、だから、脚本家が現れるまで舞台で踊ってやる…」

シンはそういうと、目を閉じた。

 

 

 

次の日、皆は疲れていたのか、殆どがウトウトしていた。

霧が晴れたこともあり、少しばかり学校の活気も戻ってきたように感じられる。

 

 

 

 

放課後…

 

皆、フードコートに集まっていた。

霧がないせいか、いつも通りのフードコートに戻っていた。

それでも、冬独特のどんよりした天気でイマイチ、感触としては薄くなる。

 

「なんか、こうしてみると、達成感っつーか?そういうのが身に染みるな」

「私たちがやった!って感じがね!」

「でも、やはり曇っているんですね…」

皆嬉しそうな顔で話していた。

 

しかし、相変わらず不動の男が居る。

言うまでもなく、間薙シンだ。

 

「こういうときも、センパイは変わらねぇっスね」

「…まあ、な」

 

「じゃあ、本当に終わったってことで、センセイの家でパーティーやるクマ!」

「お、ってことは、また私たちが料理のうd「いや!今度こそ、やめてくれ!!」」

千枝の言葉に花村は飛び上がる様にその言葉を遮った。

 

「えー!!せっかく、センパイにまた手料理を食べさせてあげようと思ったのに!」

「お、おう」

鳴上は動揺した顔で焦点が合わない。

 

「次こそは…一撃で…」

「いや、また天城センパイが一撃で沈むんじゃないっスか?」

「…?どういう意味なんでしょうか」

事情を知らない直斗は首を傾げる。

 

 

「料理がマズいクマ!」

 

 

「……なるほど」

「そこ!納得しない」

直斗は納得したようにりせたちを見た。

 

「正直、マッスルドリンコとかミステリーフードってレベルじゃなかったからな!あの物体X」

「い、言ったね!つ、次こそは大丈夫だからね!」

「その次ってあと、何回後だよ!!」

花村と千枝は喧嘩を始めた。

 

「…最悪、悪魔の物好きに食わせれば」

「ああ」

シンのぼそりと言った言葉に鳴上が期待するような目で見た。

 

「いえ、僕がなんとかしましょう。」

「…直斗が頼みだ。」

「は、はい」

直斗はシンの言葉に少し照れながらもうなずいた。

 

 

「それで、料理は何にするか…」

シンの言葉に男性陣が考える。

「…失敗しないもので」

「尚且つある程度食材が決まっているモノ…」

「冷たくないほうが良いっスね」

「クマはマズくなければなんでも良いクマ!」

 

 

シンの頭の上で電球が光った。

 

 

「おでん」

「来た!きた!!それだ!」

「あーそれなら、確かにある程度入れるものとかも決まってるスね」

男性陣はそれだと言った感じで盛り上がる。

 

「えーどうせなら、鍋とかの方がいいんじゃない?」

「お前らがやったら闇鍋になんだろ!!!」

 

 

皆で買い物をする。

 

 

「おでんって、タバスコいれ「ないです」」

「この肉の塊も「いれないです」」

「ケーキ「それはクリスマスです」」

直斗の見事な統制により、女性陣の料理は正常になりそうだと男性陣は直斗に感謝をしながら、その場を去った。

 

 

男性陣も飲み物など重いものを買うためにジュネスの食料品売り場をうろついていた。

 

「それで、シンはいつまでこっちに居るんだ?」

「…まだ、すべてが鮮明になったわけではないからな。それが済むまでだ」

「?」

「そもそも、何故テレビの中に世界などある。

マヨナカテレビをただの超常現象と片付けてしまうのはあまりにもお粗末だ」

シンの言葉に花村が唸る。

 

「まあ、確かにそうだよな…

シャドウとか霧とかの原因は分かって解決したけど、もっとなんつーか根本的なことが分かってない感じだな」

「クマは何にも分からんクマ。」

 

クマは少ししょんぼりとしているようだ。

「…だから言ってんだろ?お前には期待してないって」

「むきー!!クマにも期待していいクマよ!?」

 

「そういや、センパイも三月で帰るんスよね」

その完二の言葉にあ、と花村達は少し暗くなる。

 

 

「…別に会えなくなるわけじゃない」

鳴上はそういうと笑った。

「まあ、そうだな」

「寂しくなるクマね…」

 

 

「始まりがあれば、終わりがある。どんな世界でも終わるものは終わる。」

 

 

「…お前がいうと重さが違うな」

「世界一個終わってるからな」

「なんつー自虐ギャグっスか…」

 

 

そんなことを話しながら、飲みものを買っていった。

 

 

 




無理矢理綺麗に纏めようとして失敗してる感が半端ねぇ…
でも、なんていうか、僕の性格がこの作品にすごい反映されていて、恥ずかしい…
結果とかが実はあんまり興味なくて、そこに至る過程がスゴイ好きなんですね。

例えば、サスペンスでも犯人とかはどうでもよくて、そこまでの過程とか、つながった瞬間の快感がすきだったりします。

ニャルラトホテプが言っているのはペルソナ2罰の話です…
気になるひとは今すぐ、ペルソナ2の罰をやるしかないです。

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