Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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複数の話で出来ています。
それに、1つ1つは短いです


第x5話 Memories

―混沌王のとある一日―

 

 

退屈そうな顔でその緑色に光沢する板に白い文字を書く。退屈なのは、それが簡単だからです。

もう、正午の昼食も終わり、午後なので皆さんは眠そうにしています。

眠るまいと意気込みますが、どこか遠くへ船を漕ぎに行ってしまいます。

心地のいい場所でしょう。

 

「いいわよ。あってるワ」

 

少し特徴的な顔をした教師はそう告げると、自分は黒い革靴の音を鳴らしながら、席へと戻る。

窓と水滴で、光が乱反射して、教室を照らす。

外は(みぞれ)が降って変に明るいのです。

デッサンの陰影のような、濃く分厚い壁があるというのに、やけに明るのです。

雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなっているのでしょう。溶けて水になりつつあります。

 

古びた椅子に着く。

そこから、外を眺めようか将また、机の上にある本に書かれた記号の羅列を眺めようか…

それとも、机の深く刻まれた木目でも見ようか…

それが、どんな意味持つか、分厚い壁の先にいると信じられていたモノでさえ知らない。

 

或いは、知っているのでしょうか。

 

ただ、そこに彼が見てきた幾千もの陰惨な、或いは、その逆モノたちは、今ある天にある壁よりもずっとずっと沈殿し、何千層と積み上げられ分厚くなってきたのかもしれない。

 

その瞳に高く飛ぶ鳥を映す。白くその翼を広げている。

視界に入った、その理由だけで複数の選択肢の一個を選んだ。

 

外を見るという選択肢。

水が流れるようにただ、それだけ。

やがて、鳥も見えなくなるだろうだろう。

 

 

 

凍り付いたその足元から、積み上げられた雪を学校終わりの少年が蹴飛ばし、壊していました。

何の意味があるか……意味などない。

やりたかったから、やった。

 

そう思う。

 

「先輩はああいうことをしましたか?」

 

友人の直斗は寒そうにマフラーを巻いている。

 

「都会では雪が無かったからな。」

「…そうでしたね。」

 

そういうと、彼女は笑った。

それほど、面白い話でもないだろうに彼女は笑う。

それは、自分の話のフリが悪かった事について笑ったのだろうか。

それとも、バカにした笑いなのだろうか。

 

どうでもいいことでしょう?

 

自分の革靴が氷と共に軽快にリズムを刻んでいるように聞こえてきたのですから、どうでも良いのです。

壁に寄せられた白い雪には、土が混じっています。

白さに魂が錆び付く。魂が黒い事を自覚しました。

八雲に自己を投影しないことにしましょう。

自分の黒さが頭の中で明滅してしまいますから。

 

「先輩はどうして、高校に?」

「意味はない。行けと言われたから行っていただけだ。」

「そうなんですか。」

 

そう直斗は答えました。

 

帽子に着いた水滴が気になります。

制服の胸ポケットのハンカチ、靴の土、ワイシャツの襟、袖。

スボンの裾、ズボン右ポケットの膨らみ。

これは、財布でしょう?彼女は彼女に合った財布を持っています。革の良いやつです。

 

彼女は視線を逸らす、少し気まずいのでしょう。

瞳がICチップ生成のレーザーの様に高速で動いた事を実感しました。

彼女は気付かないでしょう。下を向いていたからです。

きっと、彼女は会話で反応を見ているような気がしました。

 

「…無理して会話する必要はない」

「あ、いえ。そういうつもりでは」

直斗は少し見透かされて、焦っているようです。

ですが、直斗はすぐに納得したような顔で頷きました。

 

「…そうですね。違いますね」

「話したいことを話せばいい。何も気負う必要はない」

「はい」

直斗は頷きました。

 

それからは、探るような会話ではなく、有り触れた話でした。直斗がこなしてきた仕事の話です。

直斗は楽しそうにそれらを語ります。

 

分かれ道で、直斗は足を止め尋ねました。

 

「…あの、また、一緒にか、帰りませんか?」

 

静かな住宅街にそんな言葉が響いた。

手を強く握っている。緊張しているのでしょう。

心拍数も早くなっています。視線も合わせません。

 

内心不思議です。何故それほど迄に高揚するでしょうか。

 

「…構わない」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

―災難―

 

 

え?間薙シン?

うーん、そうだな。アイツはなんて言うか…オーラがヤバイな。

明らかに高校生って感じじゃなくてさ、もっとこう、威圧感がね。違うんだよ。

それに、頭良いし、顔もまあ悪くない。

明らかにモテる要素を含んでんのに、そんな噂も聞かないし。

 

兎に角、変わったやつだよ。

それにさ…あの事合った後じゃあ…なおさらな…

 

 

 

間薙…シン?

あの転校生かな。って言っても、今年は転校生が多過ぎて誰だか分からないんだけどね…アハハハ。

えーっと、今柏木が担任の所だっけ。

でも、彼はテストのランキング上位っていうか、全部満点とか、あり得ない気がするけど…

実は教師になにかしてるんじゃないかって噂になったけど、本人は何処吹く風っていう感じなんだよね。

ガリ勉って雰囲気もないけどね。だって、足も速いしね。

 

それに、彼の悪い噂をしない方がいいって話だよね。

ほら、からかったら殺される位の気迫があるからね…彼

あの事で本性?というか、正体見せた!みたいな。

学校サイトはその話で盛り上がってたみたいだしね。

 

 

 

 

2年の教室。昼休みに鳴上、花村、千枝、天城は弁当を食べながら話していた。

 

 

「は?シンが病院?」

千枝の言葉に花村は驚いた。いや、通常ならそれほど驚く事はない。事故か病気。

ただ、彼は昨日まで普通だったので、病院は関係ないと思われる。結果的に事故の確率が高い。

 

問題はそこではなく、間薙シンにある。

 

彼は悪魔である。

そんな、ヤツが病院など、バイクがグシャクジャになっても、体の方はすぐに治ってしまうような、そんなシンだからこそ花村は驚いた。

 

 

「なんでも、登校中に氷でスリップした車で轢かれたみたい…結構、大変みたい…だよ?」

天城は真剣な顔で答えた。

「えっ…まさか…あの状態じゃなかったから、やばかったとか!?」

花村は椅子から立ち上がり慌てた様子で尋ねる

 

 

 

「うんうん。車が」

 

 

 

「…だよな…うん…そんな気がしてた。」

花村はスッと冷めて、椅子に座った。

「シンの話じゃ、轢かれて壁に挟まれたが、たまたま急いでて、バレないようにフードを被って人修羅化してるところに突っ込んできたから、車の方がバンパーとか壊れたらしい。」

鳴上が話す。

 

「それで、運転手は気絶しちゃったみたいで、自力で車を押して出て、警察に連絡したら、無傷なのにそのまま入院のながれになっちゃったみたい」

 

 

「あーなるほど。そりゃ大変だわ……病院が」

 

 

「そうだよね。シン君、病院嫌いみたいだったし、それに前に話してたけど、あまりにもシツヨウに調べる医者を脅したとか言ってたしね」

千枝は呆れた顔で言った。

「でも、明日には退院だろうと連絡が来ていた。」

「なら?大丈夫か…」

 

「それよりも。結構、その事が噂になってるみたい。」

「…あーそうか。見られたのか…」

花村は額に手を当て首を振った。

 

「…車に轢かれて生きてて、尚且つ無傷って、どんだけ頑丈なんだって噂になるだろうな」

「本人は気にしないだろう」

鳴上がそういうと、皆が頷いた。

 

 

 

 

シンは何もない均等間隔に開けられた天井の穴を見ていた。防音壁だろう。

暇なのだ。下らない検査、反応などする筈ない。

MRIもエラー、レントゲンは亡霊、血液検査は針が折れる。通常状態と言っても、歴戦の戦士の体。

通常状態であっても、通常の何百倍と頑丈なのだ。

 

反応を示さない検査など無意味だ、非常に無意味。

 

そこへ、ドアをノックする音。

ガラッと勢い良く開けられたドア。

居たのは、堂島遼太郎だった。

松葉杖をついてはいるものの、体調は良さそうだ。

 

「よぉ」

「こんにちわ」

「災難だったな。事故られるなんてな」

 

シンはため息を吐いて答えた。

「まぁ、2回目なんでね。1回目は自らなんで…」

 

「にしても、よく無傷だったな」

「体は頑丈ですから」

 

シンのその言葉に堂島は納得した。

それもそうだ。軽トラと正面衝突して、生きているような奴だから、恐らく大丈夫だろうと思いこの部屋に来たのだ。

多少の疑念はあるものの、自分の家族を救ってくれた人間を疑うような無粋な真似はしたくなかった。

 

シンの病室は非常に大きい病室で、個室であった。

シンは軽々とベットから立ち上がると、椅子に座るようにうながした。

堂島は椅子に座り、早々に頭を下げた。

 

 

「言い忘れててな、菜々子をありがとう」

「…此方こそ、申し訳なかった。犯人の疑いがありながらも、黙っていたことを」

「…もし俺がお前だったら、俺も同じ選択をしていたさ、気にするな。」

堂島はふぅとため息を吐いた。

 

「菜々子もお陰で、良くなりつつある…」

堂島はそういうと、ポケットから小さな輪っかで細いものの、どこか頑丈に作られていることが見てすぐに分かった。

 

「…この紐、なんだと思う。」

「…さぁ?なんでしょうね」

シンは堂島から受け取ると、それを見ていた。

 

「菜々子の手首に付いていた。菜々子本人も知らないと言っていた…鳴上も知らないと言っていた…」

「見当もつきませんね」

シンはそういうと、堂島に紐を返した。

 

堂島は数秒、シンを見ると

「相変わらず、表情に変化がないな」

「生まれた時くらいは泣いてたと思いますよ」

シンの皮肉に堂島は鼻で笑うと続ける

「…いや、悪かったな。事故、直後だってのに…それと、本当に菜々子をありがとう」

堂島はそう言って、松葉杖をつきながら去っていった。

 

 

 

「あのね、お父さん」

「なんだ?菜々子」

「菜々子ね…白い髪をしたおじさんに言われたの『陸に戻られよ』って。でね、菜々子みんなの声に呼ばれて歩いていたら、戻ってこれたの。」

「?何の話だ?」

「…うーん…わかんない…でも、気付いたらベットの上にいたの…」

「?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

―所謂、ツンデレ。―

 

 

 

 

ここはボルテクス界のギンザ。

嘗てはニヒロ機構という、氷川という人間が支配していたが、死亡後、数と圧倒的な強さを誇ったカオス、ヨスガ勢力に圧倒され、その息を潜めている。

 

 

「どうなの?ギンザ大地下道は」

「どうですかね…隠れ穴が多くて困ります」

ピクシーはクーフーリンは大きな噴水の近くで話していた。

 

「それにしても…つまらないわね」

「そうですね、実に退屈ですわ」

ピクシーの言葉にティターニアが答えた。

 

「…ヨヨギはどうしたのよ、あんた。」

「別に退屈なので?問題は起こらないと思いますけど?」

ピクシーとティターニアは睨み合いを始める。

「あらあら、さぞかし退屈なんでしょうねぇ?」

「ええ。それはもう、退屈過ぎて頭がもげるくらいですよ?」

「あら、なら、私がもいであげようかしら?」

 

クーフーリンは冷静に二人に言った。

 

「お二人方。こんな所では暴れられては困ります」

「……ふん」

「…では、私はまた、退屈な場所に戻るとしますよ。」

そうティターニアは言うと、ターミナルの部屋へとフワフワと行った。

 

「仲が悪いのですね。」

「…違うわよ。本当に仲が悪いんじゃ、補佐なんかにしないわよ。」

ピクシーはぽつりとそう答えると、どこかへ飛んでいってしまった。

 

 

クーフーリンは空を見上げると、呟く。

 

 

「師匠。私には分かりませぬ。」

 

 

 

 

 

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―遺物―

 

 

新宿に街を作っている悪魔たちから連絡が来た。

シンはすぐに新宿衛生病院のターミナルへと向かった。

 

通常、悪魔たちの作る造形といえば、禍々しいものを想像することが多いし、事実そういうものが多い。

しかし、人間であった悪魔が王ということもあり、今回のは人工的なビルが多く建ち並ぶ新宿になるとシンは建設中の街を見て思った。

 

シンはそこから少し、チヨダ寄りの場所で発掘をしている、トートに呼ばれていた。

 

「どうした?」

シンは浮いて目を閉じているトートに話しかけた。

「…恐らく、国会図書館の物でしょう。多くの知識が地下から見つかりました。」

「…ふむ…よし。それらは全部、アマラ深界に持ってくるように頼む」

「仰せのままに」

トートはそういうと、オニやモムノフなどに指示をする。

 

 

 

「…それが、この壮観な光景を作り出したってわけ?」

嘗てはシンがメタトロンと激戦を繰り広げた、広い部屋に本が大量に積まれ、山になっている。

 

「絶賛、部屋を作っている最中だ。」

多くのオニが床を作っている。

大きな真ん中にある柱をくり抜き、階段を作る。

そして、階層を増やしていき、本を置くつもりのようだ。

くり抜き作業は、力自慢のオンギョウギが行っている。

 

「はぁ…もう、アンタの趣味に関しては首を突っ込まないわ」

ピクシーはそういうと、手で丸い形を作る。

 

「…」

シンは無言でマカロンひと袋を渡した。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

―アマラ経絡―

 

 

 

「あれに関しては我々でもわからないことが多い。」

バアルはグラスを揺らしながら答える。

「何れ、違う世界にも繋がるのか?」

「…そればかりは分からんな。今回のもたまたま見つけただけだ。それに、常に移ろい行くあの経絡。

見つけたとしても、今回のように安定させられるほどの力を持った者と交渉出来なければ意味がない。」

ルイも少し濁った金色の壁を触りながら言う。

 

「…終着点があるとすれば、そこには膨大なマガツヒがあるのだろうな。」

シンは床を流れてゆくマガツヒを目で追い、真っ暗な闇へと消えていく様をみていた。

 

「或いは、終着点にヤツが居るのかもしれんな」

「…ヤツは概念でしかない。倒しようが無いだろう」

「何れにせよ、カオス勢力は常に進むのみ」

バアルはそういうと、グラスの中にあったマガツヒを床にわざと零した。

 

マガツヒは床に吸収され、大きな流れとなった。

 

 

「小さなものも、やがては大きくなる。雨粒が大海になる様にな」

「…流石は嵐の神か。」

「ふん。」

ルイの言葉にバアルは鼻で笑った。

 

 

「…ここのマガツヒは氷川の作ったシステムにしっかり流れてるのか?」

「…さぁな。ここまで離れていると、ニヒロの巨大ターミナルでも、集めきれないだろう。」

「では、やはり、どこかへ集められている…ターミナル以上の力で…」

「…そうでなければ、流れは起きない。大海が存在する筈なのだ…」

ルイもシンと同じく真っすぐと伸びた通路の先を見ていた。

まるで、その先に確かに何かが居ると確信しているようだった。

 

 

 

「…帰るか」

 

 

 

 

 

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複数の話がそれぞれ、短いのでくっつけました。
日常を書きました。
なので、面白くないです。

一番上の話だけ少し書き方を変えてみました。

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