Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第63話 Christmas 12月25日(日) 天気:雪

いつもの様に目が覚めるシン。

ベットから這い出る。

 

「グルルル、主オハヨウ」

ケルベロスがシンに擦り寄る。シンは頭を撫でると、カーテンを開けた。

 

「…相変わらず爽やかでない朝だ」

 

それもそうだ、午前4時だ。日など昇っているはずもない。

シンは曇ったガラスを袖を使いガラスを拭く。

 

「ホワイトクリスマスというわけか」

「?ドウイウ意味ダ」

「雪が降っていて、積もっているからな。真っ白。故にホワイトクリスマスという訳だ。」

「ユキ…喰エルカ?」

「食べたきゃ、メリーに持ってきてもらえ。恐らく、もう起きて朝食がテーブルにならんでいるころだ。」

 

シンはそういうと、襖を開ける。

テーブルに着くと、朝の食事量とは思えないほどの量が出てくる。

 

「間薙様。おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

そういうと、シンはテレビをつけ、椅子に座った。

シンはそれをゆっくりと食べながら、テレビを見る。

テレビはクリスマスの事で溢れ返っている。

 

「…何故、これほど騒いでいるのでしょうか。」

「俺には、わからん。騒がしいというより、イベントを素直に楽しめなかったタチだからナ」

「…何故でしょうか。」

「…さぁ、な」

 

シンは濁すように首をかしげた。

 

 

「さてと、惨事は防ぐべきだな。」

シンはスマートフォンを取り出すと、メールを打ち始めた。

 

 

 

 

環境や場所が人を変えると言うが、俺の場合そうでもなかった。根本は何一つ変わらない。

 

無性に孤独感に襲われていた。

 

小学生の頃家に帰って誰もいない、夕食も一人で食べ、一人で布団の中に入っていた。

何もない天井をいつも見上げては、どうしてこうなんだろうと思う日々であった。

 

そんな時に、親が貸してくれた図書館のカード。

今でも覚えている。有名大作SFを初めて見た時の感動は未だにこの身に染み付いている。

 

派手なアクションシーン、キャラクター達の心情描写、面白いストーリー、仕掛け…

 

それがこの世界だと思った。

 

それから、毎日DVDか本を図書館で借りた。

それが楽しくて仕方なかった。

 

 

そのせいか、中学や高校でもあまり騒がしいことは苦手であったし、非現実的な事も案外すんなりと受け入れていた。

 

しかし、孤独感は消えなかった。

一人になった時、不意に襲ってきた。

 

 

「非現実的な事?」

鳴上は尋ねる。

 

「同級生が親を殺した事件があった。その第一発見者が俺だった。たまたま、近所の人だったしプリントを渡しに行った際に血まみれのその同級生が玄関から出てきたのを覚えている。」

 

「なんつー思い出だよ…」

花村は深刻そうな顔で言った。

 

 

「それでも、俺は特に変わりなかった。

どこか…映画の中のような感じがしてな。

結局、俺は現実逃避の為に空想という名の理想郷に逃げたのさ。」

シンの話に花村は唸った。

 

「…分かんなくもねぇかな…俺もこんな町、退屈だって思ってたしな。それで、ペルソナっていうすげー能力を手に入れて、浮かれてた。

でも、天城助けるときに軽く怪我した時に、本当に命のやり取りしてんだなって、実感したわ。

それに、どんな事にも終わりがある…

けどさ、今はそうは思わねえんだ。」

花村は思い返すように言う。

 

「俺は、たった一人の"花村陽介"だって気付いたからな。」

花村はそういうと、鼻の下を得意げに擦り、鳴上を見た。

「そうだな。」

鳴上も答えるように頷いた。

 

 

「ってか、センパイ達、なんで毎回ココ集合なんスか」

「さ、さささささむいクマ…」

完二とクマは椅子がガタガタと音を立てるほど震えながら言っていた。

 

「…ブェックシ!!」

花村はくしゃみをする

「…確かにな、中入るか」

 

真っ白なジュネスフードコート。

そこには無論、その5人しかいない。

 

 

 

「この時期は、流石の俺もバイトだわ。」

そう言って、花村とクマはバイト着に着替えていた。

そして、ケーキを陳列していた。

 

鳴上は用事があるそうで、どこかへ行ってしまった。

 

 

「とりあえず、夜までどうします?」

完二は革ジャンのポケットに手を入れていった。

「食材を買おう。」

「そうしますか」

 

 

シンは適当な鍋の食材を探していた。

完二がカートを押す。

 

「…豆腐は…りせのやつが持ってくるって言ってました」

「なら、肉や、野菜か」

「センパイは料理上手いっすよね」

「隣の家にコックがいた。親がいないことを知った為に俺に料理を教えてくれた。結果的に家庭科という授業は評価が高かった。」

「それで、なんか言われたりしなかったんスか?」

「…お前は言われた、たちか」

シンは完二の表情を見ていった。そして、カートに豚肉を入れた。

 

 

「…まぁ…そうスッね。」

完二は苦い表情をする。

 

「男じゃこうだ、女ならこうだって、それがウザったくて」

「…気にするなというのは無理な話だな。」

「そうっすよね。」

「…俺はそういうのを気にしなかったからな」

「ハハッ…そうすっよね。」

完二は少しだけ溜息をはいた。

 

「俺から言えることがあるとすれば、真面目に続けてみればいい。そのうち、周りも何も言わなくなる。」

「そんなもんなんスかね?」

「そんなモノだろう?」

シンはカートに牡蠣を入れた。

 

「…」

完二は考えているようだ。

 

「…あまり、悩むな。自分の好きなものが明確に分かっていれば、それをやっていればいい。」

「そうっスよね!!」

 

完二とシンは買い物を続けた。

 

 

 

 

 

夜…

 

 

「で、なんで、あいつらは別々にケーキを作ってきたんでしょうか?それも、全員別々に…」

「オレ達、死ぬンすか?」

「…クマまだ、死にたくないクマ…」

「…鍋に救いを求めるしかねぇ…」

花村は2人でコンロの前に立っている、鳴上とシンを見た。

「或いは、直斗か…」

本を読みながら、直斗は正確に量を測って作っている。

直斗は時間が取れなかったと言っていたので、急遽作っている。

 

他の面々は満身の顔つきで、テーブルに座っている。

そこには、普通のホールケーキの箱よりも、少しだけ小さ目の白い箱が3つあった。

 

「こ、今度こそは大丈夫だっつーの!!」

「味ちゃんとするから、大丈夫だと思う」

「私はタバスコいれてないから大丈夫ッ!!」

「…いや、ケーキにタバスコは入れねぇよ…」

完二は小声で突っ込んだ。

 

 

 

鍋は後回しにし、先にケーキを食べることにした。

三人がそれぞれケーキの箱開ける。

「お、見た目は悪くない」

それぞれ、別々の種類のモノを作ってきたそうだ。

だが、誰がどれを作ってきたのは秘密らしい。

チョコ、ショート、チーズ。

直斗はティラミスらしい。鋭意、製作中である。

 

「じゃぁ、オレァ王道のショートイタダキマス…」

完二はそういうと、ケーキを皿に取り一口食べた。

 

「ん!」

「なんだ!どうした!完二!ジャリジャリしてんのか!?ブヨブヨしてんのか!?」

「…美味いっス」

 

「な、なんだってー!!」

花村もショートケーキを一口食べる。

「あ、普通に美味いわ」

「じゃあ、クマはこのチョコ貰うクマ!!」

そう言ってクマはチョコのケーキを食べる。

 

「うーん………美味しいクマァ」

 

向こうは非常に盛り上がっている。

シンと鳴上は鍋の具合を見ている。

 

「…何かやったのか?」

鳴上はシンに言う。

「…防げるものは防ぐ、最善の方法だ。」

「…何をしたのか、教えて欲しいものですね」

直斗はシンに尋ねる。

 

「簡単だ。彼女達の性格を考えればな。

負けん気の強い里中さんは、簡単。『勝つには本を手本にすればきっと良くなる』と。

天城さんは真面目な性格だし、何故だか料理の腕も上がっているようにみえた。」

シンは鳴上はちらりと見る。

「?」

「天城さんに関してもクリアだ。

りせも簡単。『鳴上の為に美味しいケーキを作ってればいい』」

「それだけですか?」

「簡単な話だ。俺も一撃は避けたいのさ…」

シンはそういうと、遠い目をした。

 

 

 

その後、出来上がった鍋に舌鼓を打ったり、クマがサンタの格好をしたり、どのケーキが美味しかったかと鳴上に恋人三人が迫り、ある種の修羅場となったりなどで盛り上がった。

鳴上はこの時のスリルは探索よりもあったと後日語っている。

 

 

 

「…あー食った食った…」

「もう、食べられないクマ。」

ケーキもしっかりと全員で食べる。

直斗ケーキも美味しく出来ており、ぺろりと男性陣が食べた。

 

「うむ。余は満足じゃ」

「フフフ…千枝誰の真似…」

 

「でも、一年って早いね」

「そうだな。何か特に今年はいろいろあり過ぎてって感じだよな」

りせの言葉に花村が反応した。

 

「ってか、スキーの話だけど…」

「ああ!でも、どこ行くんだっけ?」

「近いところでとれた場所に行く予定だ。宿泊代は気にしなくていい」

「ってことだし、俺たちは交通費とかだけでいいみたいだな。いや、でもホントに助かるわ、年末なんだかんだで金使う時期だしな。」

「まぁ、そうだな」

花村は鳴上のほうを見ていって、鳴上はゆっくりと頷いた。

 

 

「クマ、トランプしたいクマ!!」

「毎度毎度、隣でデケェ声出すなよ!!クマきち!!」

「ヨースケはウツワが小さいクマ」

クマはそんなことをいいながら、ゴソゴソと上着のポケットからトランプを出した。

 

「まぁ、クリスマスだしやるか。」

「お、じゃぁ、何する?」

「みんなが分かるやつがいいね。」

「クマ、ババア抜きなら知ってるクマ!」

クマはそういうと、トランプを鳴上に渡した。

鳴上はそれを開けると、開封しジョーカーを一枚抜いて混ぜ始めた。

 

「ババなババ。ババア抜きとか、なんか失礼だろ。完二じゃねーんだから。」

「俺カンケーねぇじゃねぇっスか」

そんな事をいいながら、皆に配り終わった。

 

「やっぱ、こんだけ居るとそろわないね」

「そうだね」

千枝の言葉に天城が答える。

 

「…じゃあ、クマから引くクマ!!」

そう言って花村のカードを一枚引いた。

だが、揃わなかったのか、浮かない表情だ。

 

「へへっ、そんな、簡単にそろわねーっつーの!…うーっし!!」

花村は鳴上の手札から引いた。

 

 

 

 

「上がりだ」

「だー!!おかしいだろ!お前、なんかイカサマしてねぇか!」

花村は悔しそうに言った。

 

「花村センパイは運がないねホント」

「"ペルソナは心を表す"とはよく言ったものですな」

「う、うるせぇ、知ってるよ!俺のペルソナは明らかに運のステータス値が低いからな!!」

花村はカードを勢い良く置いた。

 

「それにしたって、6連敗ってどういう事っスか」

「ヨースケは本当に弱いクマ」

「…寧ろこれだけやって、負けていない、間薙先輩も先輩だと思いますが」

直斗はシンを見て言った。

 

「…お前!なんか、イカサマしてないか!」

花村はヤケクソだ。

「してない」

「クソーッ!!なんで、俺は毎回ついてねぇんだ!!」

ガクッと肩を通した花村であった。

 

 

「…でも、こうして、終わってみると本当に終わったって感じるね」

「そうだねー。犯人も捕まえたし、菜々子ちゃんは順調みたいだし」

「来年はクマはー、ナナちゃんとの約束を果たすクマ!!」

 

 

 

帰り道…

シン、直斗、りせは帰る方向がほぼ同じのため、共に帰っていた。

「センパイは楽しかった?」

「まぁ、な」

シンはポケットに手を入れて歩く。

「直斗は?」

「僕も…楽しかったですよ」

「もう、素直じゃないなんだから、センパイは」

「素直でいるには少しばかり精神的な年を取りすぎた」

 

皆が白い息を吐いた。

 

「でも、センパイってそういうところが、カッコイイかもね。普通に映画みたいなセリフもサラリと言ってのけるし…」

「そう言われると、照れる」

シンは表情は変わらないものの、髪の毛を2,3回掻いた。

 

「…センパイは私みたいに迷わなかった?」

「?」

「私はほら、自分自身と演じてるりせちーって言うのが、悩んでた…

センパイもきっとそうなのかなって」

りせはいつもより真剣な顔で尋ねた。

 

 

「俺は寧ろ、りせが羨ましい。」

「え?」

「りせは自分自身を知っている。

でも、俺はずっと仮面を付けていた。昔からずっとずっと、自分を殺してきた。

何度も"自分"が叫び声をあげていたのに、俺は耳を塞いで無視していた。」

シンは止まっている車の雪を手に取ると、小さく丸めた。

 

「そしたら、やがて聞こえなくなった。

でも、その代わりに"自分"を忘れてしまった。」

シンはその雪玉を本当に軽く塀に当てた。

雪玉はすぐに崩れ、真っ白な周りの雪にとけこんだ。

 

「…仮面を付けていた。ではない、仮面をつけざるを得なかった。

その点、りせは良い。お前は本当の自分にわずかでも耳を傾けた。

それが重要なことだ。少しでも怖くなったら、耳を傾けてみるといい。」

シンはそういうと、手を払った。

 

「…」

りせは納得したように頷いた。

 

「…今はどうですか?」

直斗はシンに尋ねる。

「今か?今というよりは、受胎後、他人という写し鏡が居なくなって、また自分の声が聞こえるようになった。俺はそれに従うことにした。

でなければ、こんな好奇心旺盛にこんな事件に首を突っ込んだりはしない。」

そう答えると少し笑った。

 

「なーんだ、センパイ笑えるじゃん」

「…」

シンは足を止めてふと、後ろを振り返った。

静寂の闇の中で何かが尋ねている。

前の様に姿が見えず、ただ声だけが聞こえている気がした。

 

 

 

 

 

コレハカワリマスカ?

 

 

 

 

「変わりません…」

「?」

直斗は足を止めたシンに気がつき、シンの元へときた

「どうしました?」

「…いいえ、変わっていきます…」

 

 

 

 

 






つまらない話で申し訳ないです。

恐らく、スキーイベントまで退屈な感じになると思います…。

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