Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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第66話 Watch Me Over 1月4日(木)・5日(金)

 

 

ラウンジで皆で持ち寄ったお菓子をつまみながら会話をしていた。

 

 

「クマのやつ風呂入ったつーのに、また出ていきやがった…」

花村はそうはいいつつも、少しだけ期待しているような顔であった。

 

「ああ。あの女子大生がどうのこうのってやつか」

「とか言って、花村もクマ吉に加わりたい派なんでしょ?」

「えーサイアクー」

花村はその言葉で少し凹んだようだ。

 

「悠先輩はそんなのより、私達と、ってか、私と一緒に過ごす方がいいよね?」

りせの質問に鳴上も困っているようだ。

「ま、まぁ、さ、泊まりで男女混合って言ったら「やだ。」」

天城に即答され、花村のテンションが更に下がった。

 

「ごめん、トランプて意味だった?」

「ナイトスキーとか行っちゃう?憧れちゃうな…」

「でも、それまたお風呂とか入ることになっちゃわない?それに、もう今日は疲れたかな…」

 

千枝の言葉にりせもうーんと唸る。

確かに疲れもある。

 

「じゃ…ってか、間薙センパイは何やってんスか。」

「百物語だろ?」

「賛成!」

天城は嬉しそうに賛成した。

 

百物語。本来はロウソクを100本に火を灯す。

そして、怖い話をそれぞれがしていく。

1つ終わる度に、ロウソクを一本消していく。100本目が消えたとき、何かが出るというものである。

 

 

「いや、そういうのは普通、夏でしょ? 」

「うっ…それは私も不賛成かな…」

りせは少し嫌そうな顔であった。

 

「あれ?実は怪談とか苦手派か?」

りせはその言葉に少しおこる。

 

「山はあるんだって、マジで!あんな体験、ロケん時だけで十分よもう…」

「ななな何!?ややややめてよ!」

千枝は慌てだした。

 

「うちの旅館、けっこう色々あるよ!?おトイレ無いはずの離れに泊まったお客さんに"おトイレ暗いですね"って言われた話とか、そこのお部屋ね、お盆になると、写真がうまく写らなくなる時があるの!」

「ホンモノすぎるッ…」

「ライドウも何かを感じると言っていたしな…」

「更に補強された…」

シンの話に千枝は震える。

 

「あ、そうそう。この辺の山、はにわとかよく見つかるんだって。実はこの山自体が大きなお墓だったりして」

 

その言葉に直斗が慌てて立ち上がった。

 

「ででで伝承というものはあくまでも物語的要素が強い文化的な産物でして、かか科学的裏付けなどはなく、「怖いんだな」…」

花村の言葉に直斗は恥ずかしそうに席についた。

 

「じゃあ、せっかくだし、怪談しようぜ」

「…」

 

 

 

一部は仕方ないと言った雰囲気でうなずいた。

 

「天城かシンが最後な。まず、俺から…」

 

花村はそういうと、丸い一人用ソファに座った。

するとしーんと静かになった部屋に時計の針の音だけが響き始めた。

妙に心地悪い速度で針の音が刻まれるのだ。

 

 

「えっとな…もう3年前か。中学ん時、ダチから聞いた話なんだけどさ。

なんかそいつの高校の姉貴が、結構いいトコの私立の高校行ったんだけど、悪い友達できてさ。女同士ツルんで、同じ学年の子イジメてたらしんだよ。毎晩遅く帰ってきちゃ、携帯で仲間とギャハハつっていじめのこと話してたんだけどさ。」

 

「ある日、いきなり真っ青な顔で帰ってきて、以来、黙って部屋に閉じこもるようになったらしんだ。事情訊いても全然シカト。けど、耳澄ますと独りの部屋で繰り返しつぶやいてんだってさ…」

 

 

「"次は私の番だ…"って」

 

 

「流石に心配になってそいつ、姉貴の仲間から話聞こうとしたらしんだ。ところがさ…仲間の子、みんな原因不明で倒れて病院送りになってたらしい…

いよいよ怖くなって、どうしようって悩んでたら、その晩の11時半過ぎにいきなり…」

 

 

「ギャーーーッ!」

花村が驚かせるように立ち上がった。

怪談怖い組はビクッと反応した。

 

「…って部屋に居た姉貴が叫んでさ!部屋入ってみたら、両耳手でふさいで、"呼んでる…!聞こえる…!"って!

でもそいつには何も聞こえなくて、その直後、姉貴は家を飛び出してってさ…

次の日の朝、学校の校門前で、仲間と同じく、意識不明で見つかったらしい。

結局、病院運ばれて助かったらしいんだけど、あとで学校の人に事情聞いてみたらさ…イジめてた子…死んでたらしんだ」

 

 

「その子の怨霊が、一人ずつ呪っていったんじゃないかって…」

 

 

「ギャァァー!!!」

千枝は思わず叫び、耳を塞いで立ち上がった。

「アハハハハ」

天城は笑い始めた。

 

直斗は焦った様子で言う。

「あ、あり、あり得ない!その話には、け、決定的な矛盾があるっ!」

だが、直斗はふと、思い出した。

「…あれ、でもその話、確か実際、警察に届け出があったような気が…」

 

 

「辰巳ポートアイランド」

シンが言う。

 

 

「?」

「俺の知っている話なら、いじめられていた子は生きている」

シンは冷静にそう言った

 

「「「「え!?」」」

「名前は山岸風花。今では大学に行ってる。」

 

「な、なによー…」

ふぅと何となくリアル性が薄れたのかため息を吐いた。

 

 

「でも、その話は本当だ」

「え?」

「…これ以上はややこしいから、想像に任せる」

シンはそういうと、ソファに寄り掛かった。

 

 

「じゃあ、次シン。」

「えぇえ!?」

「いや、もっと怖い方が良いかと思って…」

 

 

「…じゃあ、オレも一つ。」

 

シンはそういうと、いつもと変わらぬ表情で語り始めた。

 

 

「こうやって、とあるコテージで若い人が怖い話をしていた。

その日は湖でみんなで釣りをしてコテージに泊まるって話だった。

それで、とある男が一人で違うところに釣りに行ったんだ。

その後、夜にもなったし、合流して、夕食を食べて怖い話をってなったんだが、それが酷く盛り上がったせいか、その男が一人でトイレに行った。

 

その男は素直な奴で、ちょっと間抜けだが、根はいいやつ…まさにクマみたいなやつだった。

それで、まぁ、あいつは置いておいて怖い話を続けようってことになったんだが、

いつまでたってもその男が帰ってこない。」

 

「流石におかしいってなって、みんなでトイレにいくと。誰もいないんだ。

おかしいなってなって、コテージ内を探し回るんだけど、どこにもいない。

それで靴を見てみるとどうやら、外にいってる。

そしたら、仲間の一人が、その男が湖に向かって歩いているのが見えたっていうから、みんなで外に出たんだ。」

 

「でも見つからなくて、おかしいってなって、みんなで探してみると案外昼間にそいつが釣りをしていた場所に居たんだ。

そいつは湖を眺めてて、"どうしたんだ?"って聞くと、何にも答えずにコテージの方へと歩いて行ったんだ。

皆、首を傾げてまぁ、寝ようってことになった。」

 

 

 

 

「そしたら、次の日…起きると、そいつがいなくなってて、死体で上がったんだ。」

 

 

 

 

「それで、死んだのはどうやら。脚を滑らせて、頭を打って気絶して死んだらしい。

そして、そのまま湖に落ちて呼吸が出来なくなって死んだんだが…」

 

 

 

「その死亡時間が…夜じゃなくて、昼間だったんだ。…ということは…夜一緒にいたのは…」

 

 

「キャァアアアアアアア!!!」

と次はりせが叫び声をあげた。

「アハハハハッおもしろーい!!!」

天城は笑っている。

 

「…なんか、いまの妙にリアルだったな」

流石の花村もブルッと震えた。

 

 

 

 

「霊ってのは案外、すぐそこに居るものだ」

「え?」

 

 

 

シンが窓を指差す方向を皆が一斉に見ると、そこには血まみれのクマが立っていた。

 

「た、たずけるクマァアアアアア」

「キャァアアアアアアアアア!!!」

 

それと同時に電気が落ちた。

千枝やりせなどの悲鳴が響きわたった瞬間、ドタバタ何かが飛んだり、誰かが動いたりと、もうひっちゃかめっちゃかになる。

 

「うおっ!誰だ!つかむんじゃねえ!!!グホッ…」

「怖くない…怖くない…怖くない……」

 

「ちょっと!!どこ触ってんのよ!!!!」

 

鳴上はリーダーとして、電気を付けるスイッチを手探りする。

椅子から立ち上がった瞬間、何者かのパンチを喰らうも、鍛えられた"根性"で耐える。

そして、壁にたどり着くと、手探りでスイッチを探した。

 

 

そして、パチりとスイッチをオンにした。

 

 

そこに広がっていた光景はひどいものであった

 

 

いつの間にかクマはテーブルの上に立っており、お菓子をむさぼっていた。

りせは千枝と抱き合っており、天城何事もなく座っていた。

花村は腕を組んでたっており、完二は倒れていた。

直斗はシンに倒れ込むように蹲り、シンは不動のまま、鳴上の方を見た。

 

 

「みぃいぃぃーたぁあああーなぁああああ。

クマの居ぬ間にお菓子ザンマイとは…のろっちゃうくまぁあああああ」

 

そんなクマのテンションとは一切違うさんにんがいた。

 

()っちゃおうか」

千枝は無表情で立ち上がった。

「うん。()っちゃおう」

りせも無表情で立ち上がる。

「ごめんよ…クマくん…人権は人間にしかないんだ」

直斗も無表情で立ち上がった。

 

クマの周りを三人が囲む。

「ちょ…ベイビーちゃんたち!?目が光を失ってるクマ!!

な、なんでそんな本気クマ!?」

 

「あったりまえでしょ!?クマ吉!あんな手の込んだことして!サイッテーッ!!!」

「な、なんのことクマ!?クマは、みんなに見られないように電気を消しただけクマ!!」

 

 

「「「「「…え?」」」」」

皆が驚いた顔で言った。

 

 

「え?だ、だって、クマさっき窓からのぞいてたじゃねーか」

花村も恐る恐る尋ねる

「?クマはふつーに玄関からひっそりと入ってきたクマ。

その時に、シン君が怖い話してたから、その時を狙ったクマ!」

クマは耳を塞いでおどおどとしている。

 

 

「おかしぃ、じゃねーか。だって、間薙センパイの話が終ってから、窓にクマがいたんじゃねーの?」

完二は殴られた顔をさすりながらいった。

 

「…え?じゃあ、窓のクマって…」

「そ、そん、そんなはずありません。だって、クマ…、クマ、クマ、クマ君は…」

「?何を皆、怯えてるクマ?…ハハーン、分かったクマ!クマの登場にみんな放心状態クマ」

クマは嬉しそうに答える。

 

 

 

「きゃぁああああああああああああ!!!!」

 

 

皆が意味を理解した皆が叫び声をあげた。

 

 

 

 

 

 

『よくやった。』

シンは皆が怯えている中、念通でニャルラトホテプに言った。

『ハハハハッ…面白きことだった。しかし、適当に話を作り出すとはな』

『真実なんていつもそんなモノだ。』

シンはそういうと、ため息吐いた。

 

 

 

 

 

 

深夜……

 

 

皆、シンの話が相当きたのか、ラウンジで眠り始めた。

仕方なく、皆をシンや鳴上、天城が連れていくのだが、不安だと抗議があり、なおかつ、シンのせいだと皆に言われ、シンは仕方なく、起きていることにした。

 

無論、女性陣と男性陣の部屋は分かれており、もう、皆眠りについたのだろう。随分としずかになった

 

 

「…」

シンは真っ暗な部屋の中、小さい音でテレビを見ていた。

 

 

『ユウレイ!?見えるのか、シン!!』

『ま、まさか…』

『すっげーっ!いいなぁ。』

その言葉に驚いた。

『え?…し、信じるの?』

『当たり前じゃん!だって、お前ヘンな所あるし、何より友達だし』

 

 

 

 

シンは勇との会話を思い出す。

シンは初めて、人に信じられたと思い返す。

いつも、シンは嘘つき呼ばわりされ、やがてそれを口にする事さえ止めた。

 

勇ははじめはオドオドしているところがあったが、いつの間にか社交的な人間になっていた。

驚く位の早さだった。

 

だからこそ、そこから落ちてしまった時の絶望に耐えられなかったんだと思う。

誰もいない世界。そして、誰も助けてはくれない世界。

 

やがて、昔の自分を思い出し拒絶することを選んだ。

 

 

シンはそんな、考えを払った。

(夜というのは嫌なことばかり思い出す…)

 

暖炉に魔法で火を灯す。

 

 

 

 

 

 

朝…

 

 

「…」

直斗が真っ先に目を覚ました。

と言っても、目覚めは悪い。悪夢だ。

幽霊の話など聞くんじゃなかったと今後悔をしている。

 

だが、妙なのはシンが悪魔ということを受け入れていることにあると直斗は思う。

 

自分はそういうものが苦手であることを感じた。

しかし、悪魔というとどうもニュアンスというか、身近な雰囲気がない。

しかし、自分がペルソナ使いとなったためなのか、幽霊よりは、恐怖の対象になっていないのが事実だ。

 

 

直斗はラウンジへ行くと、シンがソファに座り、後ろ向きのまま手を挙げて言った。

 

「おはよう」

「お、おはようございます」

 

直斗はお湯を沸かす。

 

「本当に起きていたんですね」

「…ああ。色々と嫌なことを思い出していた」

「夜というのはそういうものですからね」

「違いない」

 

シンはソファから立ち上がると伸びをする。

そして、窓から湖を見た。

 

 

雪のその燐光が眩しく、湖一面が光っていた。

また、日は昇り、日は沈む。

 

 

「また、"今日"が始まるのか」

 

 

 





あけましておめでとうございます。

さて、今回はちょっとホラーな感じでしました。

理由はといいますか、元々、こういう話にする予定でした。
半年くらい前に、『古伝降霊術 百物語〜ほんとにあった怖い話〜』の実況を見まして、『ああ、こういうの使えるかなぁ』と思いながら早半年たちやっとかけたわけであります。

まあ、本当にクマのくだりは適当な話なので。




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