Persona 4-マニアクス-   作:ソルニゲル

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お詫び


マリーの話は少しカットします。
理由は後書きで。






第69話 Fake Me 1月9日(月) 天気:雪

「改めてくると、不思議な場所だね」

天城の言葉に皆が辺りを見渡す。

 

あたり一面が真っ白に染め上げられている。

勾玉と注連縄で仕切られた扉や不規則に並び敷き詰められた石畳が深い霧の中から見える。

 

 

「ってか、完二のサウナと違って若干、寒ィ」

「い、いやな思い出を思い出さねぇでくださいよ…」

花村と完二はブルっと震えた。

 

「私、冬ってあんまり好きじゃないのよね…ほら、寒いし」

千枝はポリポリと頭を掻いた。

 

「…『順境は春の如し。出遊して花を観る。

逆境は冬の如し。堅く()して雪を()る。

春は()と楽しむ()し。

冬も(また)()しからず。』」

 

「?」

シンの呟きに皆が首をかしげた。

 

「…順境は春の日に外に出て花を見る。一方、逆境は冬で部屋の中にいるという例え。だから、春は楽しむべきだが、冬も別に悪いものではない。逆境もまた然り。という意味がある。」

 

シンは上着のコートに手をいれると言った。

「寒くても、俺は夏より冬の方が好きだ。」

「私も冬好きかな?」

シンの言葉に天城も同意した。

 

「それって、名前に雪があるからスか?「違うよ」」

完二の言葉を天城は即座に否定した。

 

「クマには関係のないはなしだよな」

「失敬な!クマは…ミズギの…あーでもでも、どっちも捨てガタイクマ!!」

「…お前に振ったのが間違いだったよ」

 

「…というか、これ…花びらですね」

直斗が地面の白い何かに触れた。

 

「雪じゃないのかよ…」

 

 

すると、どこからともなく声が聞こえた。

 

 

『ねえ、聞いてアタシの声を

叫んでいるこの声を…アタシはここにいる

血を声に替えて世界の果てで叫んでいる…

アタシは人魚姫

もう帰れない人魚姫 泡へと還る 人魚姫』

 

「これって…マリーちゃん?」

りせは辺りを見渡すがそれらしき人物はいない。

 

シンは改めて皆の顔を見た。

そして、鳴上も同じことをしていた。

 

「緊張しているようだな…」

そんなシンの呟きに鳴上は頷いた。

 

皆、緊張の面持ちである。

それには理由がある。

 

 

 

 

 

ジュネスのフードコート…

人の気配はない。まだ、寒くこのフードコートは鳴上達しか居ない。

 

「あの世界は今日で消える」

シンの突然の宣告に皆が驚いた。

 

「な、なんでだよ!?」

「理由は分からない。ただ、今日がリミットだけが確かかもな。あるいは、マリーが気付いたか…」

シンはステーキを食べながら淡々と答える。

 

「どうしてそこまで…」

りせは悲しそうな表情でいう。

 

「…『人は愛しい人のために犠牲になれるものだ。』…とドラマで言っていた。」

「だからってわたし達に何も言わないなんて…」

 

シンは溜息を吐く。

「…愛しい人にお前たちが含まれているからだろう?」

 

シンは自分のことを思い出しながら言った。

 

「…永遠の別れというものは、悲しくなるから何も言いたくないものだし、何か残して行くことはどちらもが胸の張り裂けそうな心情になる。」

 

「…何より、永訣する方が愛しいものを残していくことが何よりも辛いことなのだ」

 

シンはステーキにフォークを刺した。

それはまるで、親の敵のように少し憎しみを込めて刺した。

 

「…ここで止まるわけにはいくまい。」

 

シンは大きな口を開けて、鋭く尖った犬歯で肉を噛みちぎった。

 

「…へへっ、やっぱ、年の功ってやつか?随分と臭い事言うな」

花村はそういうも、どこか清々しい顔になっていた。

 

「そうだ。俺たちは助けられる。俺たちにしかできないんだ。」

鳴上の言葉に皆の顔つきが変わった。

 

皆が強い意志を持った一方で、シンは自分を嘲笑していた。何故なら、シンはそうは言ったものの、去っていく側の気持ちを自分は知らないからだ。

 

自分はいつも、残される側だったからだ。

 

親に取り残され、先生に残され、生きるために仲間を殺し、恨みを持って氷川を殺した。

しかし、気がつけば、俺はあの広く狭い世界に一人になっていた。

 

 

 

1人、ぽつねんと残されたのだ。

 

 

 

そして、シンは思う。

これらが全て終わったとき、俺は初めて去る側になるのだと。

どんな心境で、どんな言葉を掛けるのか。

あるいは、あの残される側の切ない気持ちと無言の見送りと変わらないのだろうか。

 

自分もマリーのように無言で去ることを選ぶのだろうか。

マリーの気持ちに深く同意をした。

言葉を紡げば紡ぐほど、辛くなってしまうからだろう。

 

しかし、別れに関しては今はただ、分らないという言葉に尽きる。

 

未来というものはいつもそうだ。

 

 

 

 

「…綺麗な場所だ」

シンは悠々と1人で探索していた。

理由はこの場所に装備が持ち込めないことにより、皆がゆっくりと来る事にした。

 

理由は不明だ。だが、結界があった場所から装備を持って先に行こうとすると、弾かれてしまう。

仕方無く、このダンジョンにあるモノで凌ぐしかないと考えたようだ。

 

一方、シンは装備はないので、問題ない。

 

 

シンは突然、後ろから飛び掛ってきたシャドウを軽く裏拳で消し飛ばした。

 

 

「なんか、悠々と歩いてるね」

「焦ったところで、何も解決はしない。それに、自分で閉じこもったなら、焦る必要もない。」

「なるほどね」

シンの横に監視者がいた。

 

「…それに、助けるのはいつもHero(・・・・)の役割だ。俺はヒーローじゃない。」

「まぁ、そういうならね。」

 

シンはそう話しながら、考えていた。

そもそも、この監視者はがこの世界が消えることを教えてきた。

しかし、その情報元が、どうもきな臭い。とシンは疑った。

裏があるような気がした。

おそらく、こいつはハメられていることに気がついていない。

 

こいつが空間の歪みに気付くのか?

 

 

 

『ピクシー』

『なに?』

『…少し調べて欲しいことがある』

シンは少し重い声で言った。

 

『…その感じは、ちょっとばかしヤバそうね』

『"やつら"の動きを調べて欲しい』

『…そんなこと?』

『…ハメられたかもしれない…』

『…わかったわ。』

『…頼む。あと』

『?』

『鳴上たちを頼む。』

『??分かった?わ』とピクシーは言っている意味が分からないのか疑問形のまま、念通を切った。

 

すると、多くの足音が聞こえてきた。

 

「じゃ、またね。」

「…」

シンは答えることもなく、足を止めた。

監視者はすっーと消えた。

 

 

 

「はぁ、一通り揃ったけど…やっぱ、違和感あんな」

花村は防具を確認しながら言った。

 

「仕方ないでしょ?入れなきゃ、助けらんないし」

「でも、やっぱ万全の状態で行きたいよな」

「今、とりあえずはなんとかなっているから、あとにするべきだろう。」

そんな会話をしながら再びその足を進めた。

 

 

 

 

「ヒホー!!頑張るホー」

「応援するホー!!」

「「あ、そーれっ、タールカジャ♪タールカジャ♪」」

戦闘中の鳴上たちの後ろ踊りながら、ジャックフロストとジャックランタンが応援という名のバフを掛けている。

 

シンはそれを眺めていた。

 

「いくぜ!!ペルソナァ!!!」

花村は勢い良く回転し、ペルソナのカードを割る。

それと同時に突風が吹き乱れ、相手を消し飛ばした。

 

シンはそんな中、辺りを見渡していた。

 

「どーしたの?キョロキョロして」

戦闘が終わった千枝がシンに尋ねる。

 

「いや、景色が酷くごちゃごちゃというか、ハチャメチャでな」

シンはそういうと、看板を指さした。

「あ、惣菜大学の看板」

 

「…おそらくだが、彼女がここで死ぬ気なら、矛盾した景色というわけだな。死への恐怖が拭えないか。」

「それに、おそらくですが、大切な思い出なのでしょう。僕たちとの記憶が…」

直斗が付け足すように言った。

 

 

 

 

階層が下がるごとに聴こえるポエムが妙に物悲しく聞こえていた。

内容は恥ずかしいものだが、マリーの叫び声に似たようなものもあった…

 

 

 

そして、入ってから数十分が経った。

さすがに皆疲れている。

 

 

ふと、先行していた千枝が言った。

「みて!誰かいる!」

 

その一言に皆が走って進んだ。

 

 

そこには白いローブを着た人物が居た。

 

 

「誰…?」

皆の足音に気がつきちらりとその人物は向いた。

 

「その声、マリーちゃんか?

すげー探したんだぜ…つか、何だよその格好。どうしちまったんだ?」

花村は安心した様子で声をかけた。

 

「来ないで…!」

「一緒に帰ろう」

鳴上がそういうと、マリーがこちらを向いた。

 

 

「!?」

マリーのその瞳は片方が緑色になっていた。

 

「オメェ…そのツラ…」

 

マリーは困惑した表情で言った。

「信じらんないよ…何で来たの?どうして?」

その言葉に千枝が返した。

 

「聞いてマリーちゃん。

どんな記憶が戻って、どんだけ辛いか、あたしたちには分かんないよ。

でも、死ぬなんて間違ってる!!」

 

マリーは不安そうな顔に変わると答えた。

「分かってるんだ…君たちの思っている通り、ここはお墓…私のお墓。

私はここで死ぬの…」

 

「だから、止めに来たんだ」

「うん、先輩の言う通りだよ。そんなの絶対許さないから!」

 

 

「うるさいッ!何にも知らないクセにッ!」

マリーは声を荒げていった。

「マリチャン…」

「"マリー"なんて…私の名前じゃない!…思い出した…全部思い出したよ。」

 

マリーはそういうと、思い出したことを話し始めた。

 

「私の本当の名前はね、"クスミノオオカミ"。

キミたちは、戦ったんでしょ?クニノサギリ、アメノサギリと…

私はアイツらと同じ。町を霧で覆った、キミたちの敵だよ。」

 

その言葉に皆が驚いた。シンは"ふむ"とうなずいた。

 

「マリーちゃんが…あたしらの…敵?う、嘘でしょ!?」

「そうだよ…人の世界にまぎれて…人の意思を感じて…

"人世の望み"をサギリたちに知らせるのが、私の役目。だから、私だけ、人の姿…

キミらの言葉で言うと、スパイってヤツだよ。」

 

「自分でも知らないうちに、スパイさせられていたってこと?」

 

「そんなこと、関係ない。」

鳴上はマリーを見ていった。

 

「マリーの正体なんて関係ない。」

「バッカじゃないの!?私は悠の望むような人間じゃなかったの!!分かるでしょ!?」

「だから、言ってるじゃないか。関係ないって」

鳴上は強くマリーに言った。

 

「そんなこと、言ったって、埋められない溝なんだよ」

「マリーが勝手に作った溝なんて知らない。」

鳴上は頑なに答える

 

そんな鳴上の肩にシンが手を乗せた。

 

「まぁ、そう焦るな。それだけじゃないだろう?」

「?」

 

 

 

「キミが死ななければ、鳴上たちの世界が消える。そういうことだろう?」

 

 

 

「!?」

シンの言葉に皆が驚いた。

 

「…正解…。知ってるなら、なんで、あんたは来たの?」

「テレビの事件と通じていると思ったから。そうでなければ、退屈だ」

シンは濁りなくニヤリと笑みを浮かべ、答えた。

「バッカじゃないの…」

 

 

 

 

マリーはそれだけ言うと霧のように消えた。

 

シン以外はマリーのいた場所に行くがすでにもう姿はない。

 

 

 

「おい、おいおい!!どういうことなんだ!?シン?」

「足立の時を思い出してみろ。町中が霧に覆われた。おそらく、それが深刻化して、町自体がこのテレビの世界に呑まれる。」

さながら、アバドンがヴァルハラを呑み込んだようにとシンは言おうとしたが、それは違う世界のことで口をつぐんだ。

 

 

「とにかく、追いかけねぇと」

「…悪いな。客が来たようだ」

シンはそういうと、アギダインを来た道の方へと放った。

 

すると、何かに当たり燃えた。

 

それを合図に無数の悪魔召喚音が鳴り響いた。

 

 

「な。なんだぁ!?」

 

天使達である。

 

「…混沌王 間薙シン。貴様の裁きに来た。悔い改めよ。」

「…お前たちは先に行け。俺の客だ」

シンは鳴上達に言った。

 

「俺は大丈夫だ」

 

 

鳴上はすぐに頷くと、走り出した。

皆もそれに続くように走り出した。

 

 

 

 

 

「いたよ!マリーちゃん!」

「何で…何で来るの?どうして? 敵だって言ったじゃん…もう、いいって。何でこんなトコまで来てくれるの…?」

 

 

「助けたいから」

鳴上のその言葉でマリーは戦闘態勢に入った。

 

「…ありがとう…でも、力づくでも帰ってもらうから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方…

 

 

 

 

「やはり…はめられたか?」

シンはラグナロクで敵を焼き尽くした。しかし、減る気配はない。

 

「かもしれんぞ?混沌王よ」

シンの周りには必殺霊的国防兵器の面々が来ていた。

 

「それに、よいのか?この奥で邪悪な気配がしている」

「…問題ない。それにしても、どこに、これほどの!!」

 

シンは飛んできたメギドラを横に避けた。

 

「…ハニエルか…」

そこには赤い6枚の翼に身を包み、目を閉じた者が浮いていた。

 

 

 

 

 

「神の命により。混沌王、ケガレを消し去る…悔い改めよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつつつ…ほんと、やばいな…」

マリーを助けた後、ノロノロと皆が歩いていた。

 

傷を負ったのだ。それも、深い傷だ。

しかし、シャドウがいない。それが幸いだった。

帰りは皆で傷を癒しながら、なんとかシンと別れた辺りにこれた。

そこには無数の悪魔とシャドウの死体が転がっていた。

 

「だ、大丈夫だよね?」

 

皆が入口に近づくと、シンが居た。

 

「シン!」

「…早く戻れ。お前たちの後ろから来てる。」

シンは悪魔を召喚した。

 

鳴上たちが後ろを見ると、無数の白い翼が生えた天使たちが居た。

パワー、ラミエル、ドミニオンなどがゾロゾロ集まっていた。

 

「い、いつの間に!?」

千枝は苦しそうな顔で言った。

 

「…早く戻れ。」

 

シンは鋭い目つきで鳴上たちに言った。

「…行け。」

「でも、っつ!!」

クスノオオミカミとの戦闘で負傷したメンバー達は、大量の悪魔が迫るなか、足を止める。

 

「…死ぬには早過ぎる。」

 

シンは仕方無く、鳴上達に『ドルミナー』を掛けた。

まるで、人形のように倒れる。

油断していたこともあったし、何より体力を消耗していたため、誰も耐えられなかった。

 

シンの意図を理解した仲魔たちは鳴上達を抱えて、次々とアマラ経絡へと脱出する。

 

「…テレビの外に出してやってくれ」

「…よろしいのですか?」

「…」

 

シンは答えずにポイッと1マッカをマーガレットに投げた。

「誰かにやってくれ…今生の別れになるかもしれないからな」

「…承知しました」

 

マーガレットは頷き眠っているマリーの抱えると走って出口へと向かった。

 

 

シャドウの黒い波と天使達がシンの方へと近づいてくる。

 

 

「裁かれる準備ができたか?」

「…」

 

シンはペロッとマガタマを飲み込むと、ニヤリと笑った。

 

 

「雑魚風情が…」




カットの理由は色々ありますが、一番の理由はちょっと、書く気持ちが上がらないことにあります。

書きたいという気持ちが空回りしてて、イイ感じにかけないので、とりあえず、話を先に進めます。

今後、話を進めながら書きたすと思います。



大変申し訳ないです

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