彼と初めて会ったときのことを思い出してみた。お互いの家は300年前から親交があったためか、私と彼は婚約者という関係だった。
「ほら、海、彼女が君の婚約者だよ」
「上里海くんだよね~私は乃木園子。よろしく~」
「よろしく……」
笑顔で挨拶をするけど、何故か海くんは笑ってくれない。
「海くんだからカイくんって呼んで良い?」
「……いいけど……」
これが私と彼との最初の出会いだった。
海SIDE
神樹館
今日の授業が終わり、皆が帰る中僕は椅子に座ったまま眠っているそのっちを見つめていた。
「よく寝てるな……」
そう呟くと黒髪の少女鷲尾須美が怒った顔をしていた。
「よく寝てるなじゃなくって、起こしてもらっていいかな?上里くん」
「いや、寝てる子を無理やり起こすのは悪い気がしてな」
「いやいやこれから訓練があるんだからさ……」
活発そうな少女、三ノ輪銀が苦笑いをしていた。しょうがない、これ以上待っていたら須美が怒りそうだな。
「そのっち、そのっち、起きろ」
「ん~あともう少しだけ~五分だけ~」
本当に五分だけって言う人がいるとは……とは起こすように頼まれた以上は……
「仕方ない」
僕はそのっちをおんぶし、銀にそのっちの鞄をもたせた。
「訓練場まで行くか……」
「上里くん……そのっちに甘くない?」
「そんな事無いよ」
「まぁまぁ須美。園子と海は婚約者同士だから仕方ないだろ」
「でも……」
「婚約者同士だからって訳じゃないぞ。本当に好きなやつにしかこんな事しないぞ」
僕がそう言った瞬間、背負われているそのっちが一瞬体をビクつかせた。僕、須美、銀の三人は顔を見合わせ……
「ちなみ上里くん、訓練場について眠ってたらどうするの?」
「まぁ眠り姫を起こすにはやっぱり……」
「キスしか無いと……」
「!?」
また体をビクつかせた。こいつ……
「そのっち、起きてるだろ」
「……………………く~」
「「「………………」」」
「上里くん、急いでいきましょうか」
「そうだな。起きないって言うならキスするしか無いな」
「私と須美は少し席外してるからな」
「わぁ~!?ごめんなさい~」
やっぱり狸寝入りしていたか。僕はそのっちを降ろすと
「いつから起きてた?」
「えっと~カイくんに起こされた時にかな?」
「何でその時に素直に起きなかったのよ」
「だって~起きなかったらカイくんにおんぶしてもらえるかなって?」
そのっちが笑顔で答え、僕らは溜息をつくのであった。ちゃんと叱るべきなのだけど、これ以上遅れたら安芸先生に怒られそうだから、僕らは先を急ぐのであった。
そのっち、須美、銀の三人が訓練に励む中、僕は三人から離れた場所で木刀で素振りをしていた。
彼女たちは人類の敵であるバーテックスと戦う勇者に選ばれた。バーテックスとの戦いは厳しいもので、彼女たちが戦いから戻ってくるといつも傷だらけだった。
僕はそんな三人を見ていて、ただひたすら何もできない自分が悔しくなり、彼女たちを守り、彼女たちと一緒に戦えるようになりたくって、必死に訓練を続けていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、今日のノルマ達成……」
僕は日課であるメニューを終わらせ、そのまま倒れ込んだ。少し休憩したらもう少しだけ訓練を続けないと……
「カイく~ん~大丈夫?」
声が聞こえ、目を開けるとそのっちが僕の顔を覗き込んでいた。
「そのっち、休憩中か?」
「そんなところ~カイくん、頑張ってるんだね」
「当たり前だろ。お前たちだけ戦わせて、僕はただ帰りを待つのは嫌だから……」
「男の子だもんね~」
「なぁそのっち、戦うの辛くないのか?」
「辛いけど……勇者だから……世界を、みんなを、わっしーとミノさんと一緒に守らないとね」
「……僕も一緒に戦いたいよ」
どうして僕は彼女と一緒に戦うことができないのだろうか?大好きな人が頑張ってるのに……
「カイくん」
そのっちが正座し、何故か膝を叩いていた。まさかと思うけど……
嫌がったら嫌がったらで何を言い出すかわからないし、僕はそのっちに膝枕をしてもらうのだった。
「膝枕どうかな?」
「………何だか言ったら色々とやばいかもしれないから言わない」
「え~」
「残念そうにしても言わない」
口が裂けてもやわらかいよとか言えないよな。
「そのっち」
「ん~」
「好きだよ」
「えへへ~私も好きだよ。大好き」
こうしてお互いの気持ちを言い合えるくらいになったのはあの時から考えられなかったな。
第1話でした。こんな感じにただひたすら二人がイチャイチャし、須美と銀の二人がやれやれしたりします。
そして申し訳ありませんが、銀は………生存しません。本当にそこは申し訳ないです。